京都で広がる「民泊」 トラブル懸念、業界団体「実態調べる」
外国人観光客が急増し、国内の宿泊施設不足が叫ばれる中、マンションの空き室や古民家を活用する「民泊」が、外国人観光客の人気を集めている。政府が規制緩和を打ち出し、簡易な予約や安さを売りに民泊ビジネスは、京都市でも急速に拡大している。一方、衛生面や災害対策など課題があり、周辺住民とのトラブルも出ている。民泊に慎重姿勢を取る京都市が宿泊先をいかに確保するか。難しい選択を迫られている。
■ホテルより安く、地域文化触れられる
「滞在先で地域文化に触れられ、ホテルより安かった」。10月下旬、旅館業の許可はない右京区の民家に宿泊したパキスタン人ウマール・アフターブさん(25)は振り返る。インターネットで予約し、1泊4800円。4日間の滞在中、家人が勧めた寺院を訪ね、緑茶を楽しんだ。
市内の昨年の外国人宿泊客は、前年より70万人多い過去最多の約180万人。ホテル稼働率は今年9月、予約が非常に困難な約92%(京都文化交流コンベンションビューロー調べ)に達した。そんな中、世界各地で民泊を仲介する企業「Airbnb(エアビーアンドビー)」に登録された府内の物件は現在約2千件で、1年前の4倍に。清水寺や伏見稲荷大社など、観光地近くのマンションや民家が登録され、手ごろな価格で人気という。
左京区の不動産業者「ルームマーケット」は、約60万円かけて京町家に防火設備を整えるなどし、旅館業法の許可を得た。10月末、民泊物件として仲介サイトに登録したところ、11月分の予約が外国人観光客でほぼ埋まった。平野準社長(42)は「町家暮らしを1泊単位で楽しみたい観光客は多い」とし、今後の継続した需要に期待する。
■相次ぐマンション住民とのトラブル
一方、京都府警が同法違反容疑で旅行会社幹部らの事情聴取に踏み切ったケースと同様、無許可でホテルに代用された別のマンション住人からも騒音や防犯対策などへの怒りや不安の声が上がっている。
下京区の分譲マンションを所有する女性(53)によると、約5年前から1室で民泊が始まった。日替わりで宿泊する各国の旅行者は入り口でたむろし、バルコニーで深夜まで騒ぐ。民泊をやめるよう部屋の持ち主に掛け合ったが「短期賃貸で違法ではない」と拒否された。
他のマンションなどから市にも「深夜にインターホンを鳴らされる」「ごみの出し方が不適切」といった苦情が寄せられているが、担当者は「民泊業者が絞れず、現状は立ち入り調査ができない。今後、実態調査したい」と述べるにとどまる。
昨年5月に国が打ち出した旅館業法の規制緩和の通知に反発し、府旅館ホテル生活衛生同業組合(中京区)は同7月、府と市に対し、民泊施設への立ち入り検査や日常的な行政指導の徹底を要望した。北原茂樹理事長は「事故時の責任の所在や近隣住民の平穏確保など検討すべき点は多く、民泊容認は拙速だ。組合でも民泊の苦情を受け付ける窓口を設置し、実態を調査したい」としている。
【 2015年11月06日 11時30分 】