中国は2013年にパキスタンに原子炉「ACP1000」2基を輸出したのを皮切りに、「走出去(中国語で海外進出のこと)」を本軌道に乗せた。中国政府は当時、建設費95億ドル(現在のレートで約1兆1500億円)の82%(約78億ドル=9400億円)を長期的に低利で融資するという太っ腹な姿勢を見せた。昨年にはアルゼンチンとルーマニアに中水炉の原発3基を輸出し、エジプト、南アフリカ共和国、トルコに対しても原発輸出を推進している。
10月下旬、習近平主席が英国を訪問した際にも大きな成果を上げた。中国国営の原発企業「中国広核集団(CGN)」が120億ポンド(約2兆2300億円)を投じて英国エセックス州ブラッドウェルに中国独自開発の原子炉「華竜1号」を建設することで合意したのだ。イ・ヒヨン韓国電力原発輸出本部長は「この原発は、中国が自国の原発技術を世界に展開するための足掛かりとなるだろう」との見方を示した。
中国は国内でも原発の開発を加速化させている。温室効果ガスの排出削減のためにはクリーンエネルギーである原発が最適との判断からだ。中国は来年から始まる第13次5か年計画(2016-20)の期間に毎年6-8基の原発を新たに建設する計画を立てている。計画通りにいけば、中国国内の原発は現在の26基から20年には57基に増えることになる。中国は30年までに計110基の原発を稼働させ、米国を抜いて世界第1位の原発大国になるのが目標だ。
■韓国、過去6年で海外での原発受注数は「0」
注目されるのは、中国の指導部が原発を次世代の輸出産業として集中的に育成しているという点だ。習主席は今回の英国訪問で、独自開発原発の初の先進国輸出に向けて400億ポンド(約7兆4400億円)に上る大規模な貿易・投資協定を結んだ。これは英国へのプレゼントともいえる内容だ。今年9月の習主席訪米時には、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏が創立した「テラパワー」と中国核工業集団公司(CNNC)間で「未来型原発開発」に関する了解覚書(MOU)を締結した。
韓国は09年、UAEへの原発輸出を実現して以降、新規の受注がない。今年3月に朴槿恵(パク・クンヘ)大統領がサウジアラビアを訪問した際には「スマート原子炉」の輸出覚書を締結したが、サウジの財政悪化などにより契約がいつ実現するのか見通しが立っていない。業界関係者は「いまだに韓国国内にはスマート原子炉の安全性を検証するための試験発電所すら建設されていない」と話す。
原発反対を叫ぶ韓国国内の世論も、国際的な受注競争で不利な要素として働く。韓国政府の関係者は「国が総力戦を展開しても中国に押されてしまう。さらに国内の原発反対勢力があまりに強いため、建設地の選定だけで何年も無駄に費やしている」と語った。
専門家らは、原発産業の輸出競争力強化のためには米国などとの緊密な協力が必要だと指摘する。韓国科学技術院(KAIST)のイム・マンソン教授(原子力・量子工学科)は「核燃料の供給や使用済み核燃料の管理など、原発建設国が必要とするサービスを同時に提供できなければ輸出競争力は生まれない」として「これらは韓国が独自にはできない分野であるため、米国・日本・ロシアなどとの協力体制を構築することが重要だ」と指摘した。