浦和のミハイロ・ペトロビッチ監督(58)が、主力の出場停止の穴をどう埋めるかの議論をきっかけに「哲学」の一端を示した。
【写真】浦和監督が日程に提言「代表期間中でもリーグ戦を」
7日のホーム川崎F戦では、3バックの右を務めてきたDF森脇が出場停止で不在。2週間のインターバルの間、左ウイングバックのMF宇賀神のコンバートや、DF加賀、岡本の抜てきなど、いくつかのパターンをテストしてきた。
6日の試合前日会見では、指揮官は「まだ決まっていない」と言った。では何を重視して決めるのか。質問に対して「私は自分たちのやり方を変えるつもりはない。それを完遂できる選手を選ぶ」とし、理想のストッパー像を語り出した。
「我々にとってのストッパーは、チームとして攻撃的なサッカーをするために、攻撃的な能力が必要。また、攻撃参加してボールロストしたなら、自陣に戻るための運動量も必要。そしてストッパーも加わっての攻撃の組み立ても非常に大事。起点の質が高ければ、その先も質が高くなる。だから、組み立ては我々のサッカーを大きく左右する要素だ」。
浦和ではボール保持の際、ボランチ1枚が最終ラインに下がる。代わりに槙野、森脇の両ストッパーがともに中盤に上がり、攻撃に参加する。パスで攻撃の起点になったり、ウイングバックのようにサイドをえぐってクロスを上げたりと、チャンスをつくる場面は非常に多い。もちろん攻撃的なチームにとって永遠の課題である、相手のカウンター攻撃への対処も担わなければならない。
「サッカーというのは常に変化している。昔のストッパーであれば、相手の攻撃的な選手をつぶす、ボールを前に蹴る、そしてカウンターにつなぐ程度だった。今はそうではない。守備も攻撃もできなければならない。フィールド選手の中でも、最も多くの能力を必要とされる。技術も多くを求められる。そういう方向にサッカーは進化している」。
さらに「最も球際で戦うのは、DFではなく前線の選手」と続けた。
「みなさん欧州のサッカーも見られていると思いますが、球際で競り合ってファウルをするのは前線の選手です。DFの選手が多くファウルするわけではない。守備で多くを担うのは前線の選手。奪われた瞬間に再奪取するために切り替えないと速攻を許す」。
会見終了後、いったんは席を立ったペトロビッチ監督だが、報道陣の方を振り返って付け加えた。
「攻撃的な選手が、最も多くファウルをとられるくらいに守備をする。DFが最も幅広く、ハイレベルな能力を求められる。それがサッカーの現在の方向性。みなさんもそういう観点を持てば、サッカーはより面白く見えてきます。昨今、DFの選手の移籍金がどんどん上がっているのは、そういう傾向を表しています。考えてみてください。バイエルンのストッパーは誰ですか? バルセロナは?」。
ペトロビッチ監督はすでに、来季も指揮を執ることでクラブと合意している。現在浦和は3位以下を大きく離し、首位広島と年間勝ち点68で並んでいるが、その広島もペトロビッチスタイルが今も残るチームだ。
年間勝ち点1位になる。そしてチャンピオンシップを制し、年間王者になる。クラブにとって、そしてペトロビッチ監督にとっても悲願だが、一方ですでにその先も見据えている。
世界のサッカーのトレンドを正確に把握した上で「日本人に合うサッカー」を提示する。恩師である元日本代表監督のオシム氏の意志も継いでの、ペトロビッチ監督の人生を懸けた取り組みは、来季以降も続いていく。【塩畑大輔】
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