昭和十五年十一月八日
西貢地方に於ける対日感情及一般情勢

西貢地方に於ける対日感情及一般情勢
西貢における反日情勢及ドゴール派の動向並に一般情況を視察の為め派遣せる仏人(註)の報告概要
印度支那産業会社

一、一般情勢
西貢地方に瀰漫せる反日感情は驚くべきものにして反日的ならざる部分なきほどである、是等の反日空気を醸成した要因は仏国の対日政策と華僑の策動によるものである、日支事変後仏国が執った親支反日の政策は日本の進攻に比例して度合を益し其手段も苛酷となった。又西貢に於ては支那人が書記、会計係、倉庫番として各商社に働いて居ない処はなく、且つ全市に散在する支那商人が反日宣伝反日空気伝波〔ママ〕の細胞となって居る、殊に本年七月の日本進出以来は、汎ゆる言論機関を動員し、各職業部門の仏人及華僑が必死に反日工作をなした、之れに対し日本側は一つの対抗工作もなさず成行委せの状態であったから現在の如く全面的反日情勢を誘致したことは当然の帰着である。・・・

四、結論
西貢に於ける対日感情の悪化は既に如何なる方法手段を以てしても牢固として打開し難きものなれば西貢の現勢力派を絶滅する以外に方法なしと思はる。現下の情勢に於て現勢力と協商をなさんとしても徒労たること瞭かなれば彼等を一掃し新人を起用して新組織を作ることに努力すべきものと考ふ。・・・

(註)
本文筆者は印支産業仏人社員にして元河内特高課の牒〔ママ〕者たりしものなり。
西貢に於ける主要人物との会談内容中中国内治安問題其他情報は省略す。

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レファレンスコードC14121110900
昭和15.6~16.6 仏印進駐関係記録(1)


 
大阪朝日新聞 1942.1.23(昭和17)
『大東亜建設宣言』に応う

わが大理想を安南人に浸透 仏印
【サイゴン本社特電二十二日発】東条首相の施政方針演説は仏印にも多大の反響を喚び二十一日の夕刊新聞のトップを飾った、すなわち東条首相は今次大東亜戦争が過去の米英のなせるが如き侵略戦争とは全く揆を異にするゆえんを明かにし、日本帝国は米英らが非難する如き人種闘争の様相をもつものでないと述べたことに注目している 
仏印千八百万の安南人が一昨年九月わが軍の仏印進駐当時日本軍の南方進出によってついに積年の欧米侵略主義排除と東亜民族解放問題が解決を与えられたものとひそかに待望しわが軍進駐当時に仏印内に燎原の火の如き安南独立運動が展開されたのは記憶に新しいところであるが、当時政府は複雑な国際情勢に鑑みて心中ひそかに期していた東亜開放の大理想を全世界に闡明することを差控えたため結局仏印内各地に蹶起した勇敢なる安南独立党の志士は弾圧に沈黙、一部安南人の間には東亜解放を目ざす日本の大理想に一抹の疑惑を持つに至ったものも少くなかったが、今や東条首相らにより議会の壇上から全世界に向って明白に闡明した大理想を知るにおよんで深い感動を受けたことはいうまでもなく、大アジヤの黎明はこの日より始まるとさえ感激している 
仏印当局も日本のこの不退転の大理想の前に反省を求められたことはいうまでもなく仏印内になお残留して甲斐なき蠢動を続けているド・ゴール派にとって東条首相のこの傲然たる宣言は最後の覚醒に一大警鐘となって響いたであろう 
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10105971&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1