【球界ここだけの話(349)】
前DeNA監督の中畑清氏(左)は通りかかったヤクルト・山田哲人(右)を呼んでアドバイスを送った=福岡空港(撮影・吉澤良太)【拡大】
5試合であっさり終わった今年の日本シリーズ。私は全戦取材をしたが、もっともインパクトを残したのは2、3、4戦にゲスト解説で来場したDeNA前監督の中畑清さん(61)だった。
10月26日、偶然にもヤクルトと中畑さんは同便で帰京。私は福岡空港で出発を待つ中畑さんと話をしていると、なぜか近くにカメラマンがずらり。試合がないため「中畑さんが誰かと絡まないか」とシャッターチャンスを狙っていたわけだ。
そこで期待を上回ることをしてしまうのが中畑清だ。通りかかったヤクルト・山田を呼び止めると、握手だけでは終わらず「当てにいくんじゃなくて、しっかり振り切れ!」などと、まさかの熱血指導。この光景が次の日の紙面を飾ると、第3戦で山田は3打席連続本塁打を放ち、日本中の度肝を抜いた。
ところが第4戦の試合前、TBSラジオの放送席にいた中畑さんに「凄かったですね」と感想を聞きに行くと、意外な答えが返ってきた。
「本当は他球団の人間がああいうアドバイスをしたり、立ち入ったことをしたらいけないんだよ。小さな親切、大きなお世話なんだ。杉村(ヤクルト打撃コーチ)とか教えてきたコーチに悪いなと思ったもん。打ってくれたからホッとしてるよ。まぁ野球界全体が盛り上がってくれればいいんだけど…」と反省していた。
「中畑さんのアドバイスで打ったわけではない」という意見も聞くが、私はそんなことはないと思う。短期決戦、大舞台はちょっとしたことがきっかけで流れが変わるものだ。
中畑さんも「きっかけなのよ。どういったきっかけを与えてやるかが大事。余計なことはいらない。1つでいい。あのスイングができれば文句なし」と、この点に関しては同意してくれた。
そして衝撃の一言が飛び出した。
「自分の選手にもやれよって話だよな」