往復7カ月かかる厳しい海路に命まで懸けて日本に渡った申叔舟であれば、慨嘆してやまなかったことだろう。申叔舟は臨終の際、成宗に「日本と親しくするべき」と言い残した。「日本を警戒しつつも、決して『失和(関係が悪化すること)』してはならない」という忠告だった。現在、韓日間には北東アジアの安全保障や北朝鮮の核、経済など、国の命運を左右する重大な懸案が山積しており、緊急状態にある。過去史の名分論と感情的な争いで対日関係を4年近くも空転させた李明博・朴槿恵政権の短見を皮肉る、「先見の明」といえよう。
韓国社会にはいろいろな「烙印(らくいん)」があるが、中でも「親日」の烙印は最も過酷なものだ。「親北」や「親独裁」は、指弾の対象にはなるものの、それを擁護する少数の集団がいる。しかし親日派を支持する人は見つけ難い。「トラウマ」に基づいた反日感情が、韓国の民族主義と韓国人のアイデンティティーをつくり上げているからだ。過酷極まりなかった植民統治の悪夢は、韓国人の集団記憶の中に生々しく残っている。植民統治が結果的に近代化に寄与したという「植民地近代化論」や、独島(日本名:竹島)・慰安婦問題関連の異論に対して、多数の韓国市民が激しい実存的反感をあらわにする理由だ。また、選挙シーズンのたび、政治家がポピュリズム的反日民族主義を刺激する理由もここにある。