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いじめに悩む君へ「あきらめるな、死んじゃだめだ」 内藤大助さん

 名古屋市西区の市立中学校一年の男子生徒(12)が自殺した問題を受け、中学生時代にいじめられた経験を持つボクシングの元フライ級世界王者、内藤大助さん(41)が、自身の体験を通じ、いじめに苦しむ子どもたちへのメッセージを本紙に語った。「絶対にあきらめるな、死んじゃだめだ」

内藤大助さん

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 俺は中学二年の進級時、クラス替えをきっかけにいじめられるようになった。七人くらいのグループ。最初は遠くから俺を指さして、「ボンビー」と言ってくすくす笑ってた。「なんだよ」と聞くと、「貧乏ってことだ。自分の目で自分の家を見たことあるのか」とからかわれた。

 北海道豊浦町の母子家庭で育ったから、トタンの家で、冬になると窓にビニールを張ってすきま風を防いでた。それまで貧乏を気にしたことはなかったけど、急に恥ずかしくなった。

 「母子手当をもらって税金で優遇されてんだ。みんなに返せ」とも言われた。きつかった。いじめっ子の子分に殴られて、「何すんだ」って言うと「命令されただけ」って。

 神様なんて絶対いねえ、俺は不幸なんだって思い込んでた。死にたい、殺してくれと思った。いじめから逃れるために、いじめっ子のグループにこびを売った。そのうち下痢が止まらなくなって、胃潰瘍に。朝昼晩と胃腸薬を飲んでいた。

 高校卒業後に上京して、身を守るためにボクシングを始めた。いじめっ子たちと違う高校に進学していじめは終わったけど、「いつかまた始まるんじゃないか」と思うと、まだ怖かったんだ。二十四歳で全日本の新人王になった時、地元の祝勝会に俺をいじめてたやつが来た。もし殴りかかって来ても、今なら「やめろよ」って言えると思った。腕力じゃなくて、心が強くなったんだ。仕返しなんてどうでもいいと思えた。

 いじめられて死にたいと思っている子は、親でも先生でも、誰にでもいいから相談してほしい。電話やインターネットにも窓口はある。匿名でもいい。一人で抱え込まないで。

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 終わらない、いじめなんてない。とにかく絶対にあきらめないでほしい。死んじゃだめだ。

 俺は今幸せ。いじめられてる時はこんな将来は思いも寄らなかった。生きていれば必ず良いことあるよ。

    ◇

 子どもたちへ、さまざまな大人からのメッセージを随時お届けします。

 <ないとう・だいすけ>1974年、北海道豊浦町生まれ。高校卒業後に上京し、ボクシングと出会う。2004年6月に日本王座、07年7月に3度目の挑戦で世界王座を獲得した。同年10月の初防衛戦で亀田大毅選手との“因縁の対決”を制し、話題を呼んだ。引退後はタレントとしても活躍。

 

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