核兵器を持つ国と持たぬ国の対立がまたもあらわになった。

 国連総会の第1委員会で、核兵器廃絶への行動を呼びかける日本提案の決議案が156カ国の賛成で採択された。中ロは反対し、米英仏が棄権した。

 今回の決議で日本は指導者らの被爆地訪問を促し、核の非人道性に、より焦点をあてた。これが核保有国の賛同を得られなかった一因のようだ。

 核兵器が非人道的な被害を及ぼす以上、条約で禁じるべきだという主張は、近年、非核保有国の間で急速に支持を広げている。日本の決議案は禁止条約の必要性にまでは触れていない。だが非人道性に対する核保有国の警戒感が強く、米国まで棄権する予想外の展開となった。

 最終文書をまとめられなかった5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議に続き、核軍縮はますます停滞の兆しだ。

 日本の決議案は、安倍首相が「被爆70年にふさわしく、今後の核軍縮の指針に」としてのぞんだものだ。事前に核保有国の理解を得る努力は十分だったか。被爆国として重要な外交政策である核軍縮を進める上で、課題を突き付けられた形だ。

 核保有国は「段階的な核軍縮だけが廃絶への唯一の道」と繰り返す。核は安全保障の根幹であり、急激な削減は世界の安定を乱す、との考え方だ。

 だが冷戦終結から四半世紀を経ても1万数千発の核兵器が存在し、核ゼロへの展望が開けないことに、国際社会はいらだちを募らせている。

 核兵器が非人道的であり、二度と使ってはならないことは明らかだ。その脅しで安全を保つ考えを核保有国が改めていかない限り、核廃絶は望めない。

 日本政府はこれまで「核保有国と非核保有国の橋渡し役を目指す」といってきた。

 だが、日本は米国の「核の傘」に閉じこもる姿勢をとってきたのが現実ではなかったか。オーストリアなどが提案した核兵器の禁止を求める決議案に、日本は棄権に回り、被爆者を失望させた。

 核の傘から直ちに脱却するのが難しくとも、朝鮮半島や中東などの非核化にもっと積極的に関与して核の役割を下げ、核軍縮への機運を主導するため努力していく。それが日本のとるべき道ではないか。

 再び核廃絶への潮流を起こすには、核保有国と非核保有国の間の溝を埋めていくしかない。

 日本には被爆の経験を世界に訴える責任がある。今回の決議の採決結果を、核軍縮外交を練り直すきっかけとしたい。