山下奉文は、マレー半島を「帝国の領土」、マレー人を「大日本帝国の臣民」と考えていた。
訓示
懸軍長躯「ジョホール」を制して新嘉坡攻略作戦を開始するや僅かに一週日にして難攻不落を誇りし堅塁を抜き英国東亜の侵略の根拠を覆滅し世界歴史を転換すべき成果を収めたるもの偏に御稜威の下各兵団の勇戦奮闘によるものと謂ふべく予は将兵の絶大なる労苦に対し深く之を多とし衷心満足する所なり
今や第一期の作戦を終り戈を転じて直ちに新作戦に邁進せんとするに方り改めて所懐を開陳し諸子の厳粛なる実行を要望せんとす
一、軍紀を振粛し皇軍の真姿を顕揚すべし
あたら戦場に勇士にして掠奪暴行に依り軍法に処断せられたる先轍を踏まざることに関しては上下深く戒心を加ふべし
二、馬来は帝国の領土たるべし
将兵一時の過失は経営百年の将来を毒すべきことを銘心し無辜を憐み不逞を制へ良民を戦禍より救ふことに努むると共に苟も敵性分子に対しては其の鑑別を誤らず徹底的に粛正し未然に禍根を芟除すべし
(三~五略)
昭和十七年二月十五日
第二十五軍司令官 山下奉文
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レファレンスコードC14110585200歩兵第11連隊第3中隊 陣中日誌 昭和17.1.1~17.5.31
大阪朝日新聞 1942.4.29(昭和17)皇民として更生歓びの馬来、スマトラ住民【昭南島特電二十九日発】皇軍精鋭の攻略後日ならずして治安回復したマレー半島及びスマトラ島の在住民はそのマレー人たるとインド人たると、また支那人たるとを問わず山下最高指揮官の天長の佳節における談話にもあるとおりひとしく帝国新附の民として天皇陛下の赤子として皇国の恩沢に浴することになり、かれらの今後の行くべき道はこれで明々白々となり、明朗の色全土に溢れるにいたったのである、元来マレー、スマトラの住民は多種多様の種族より成り、昭南島の如きは人種展覧会をもって稍されていたのであるが、この多種多様な種族が天皇陛下の赤子として更生し、帝国南方の護りとして永く日本民族と協力邁進するにいたったことはわが有史依頼の盛事であり、ここに大東亜戦争下初の天長節の佳き日にこのことを見たるは極めて意義深いものがある楽土建設へ 山下最高指揮官謹話【昭南特電二十九日発】天長の佳節にあたり山下マレー方面最高指揮官は昭南島において次のごとき談話を発表した戦火の余燼ようやくおさまり建設の曙光燦然と輝かんとする今日、マレーの陣中において畏くも天長の佳節を迎うるは誠に感激の極みにして、とくにこのたび新たに大日本帝国の臣民となれるマレーの住民とともに聖寿の万歳を寿ぎ奉り得るにいたれるはこの意識極めて深遠重大にして、本職のまた衷心より欣快に堪えざるところなりつらつら顧るに大日本帝国の国体は真に尊厳にして万邦に冠たり、すなわち国を肇むること悠遠無窮、万世一系の天皇は天祖の神勅を体し現神として帝国を統治し給うに宏大無辺の御仁慈を示し給い、一億の臣民また赤誠をもって一天万乗の大君に仕え、ここにおいて義は君臣にして倩は父子の美わしき国体の精華を発揮し、弥栄えてその窮まるところを知らず、しかして帝国の理想とするところは万民をして各その生に安んぜしめ万邦をして各そのところを得しむるに存し、その道義的にして公明正大なるは世界にまた例を見ず顧るに十八世紀以来西洋文明の興隆はいたづらに物質に偏重して道義を忘れ弱肉強食飽くところを知らず、米英蘭の貪欲なる魔手は東洋を蚕食搾取して腹を肥やしために東洋の秩序は乱れて同胞は塗炭の苦しみに呻吟せり、ここにおいて帝国は破邪顕正の剣をとりて起ち、さきに支那を英米の魔手より救い、ついで師を南洋に進めて米英蘭の勢力を駆逐一掃し、いまや東亜の天地に新しき秩序は生れ王道楽士の建設また近き将来にあり、然りといえども建設は無為□安を貪りてなるものにあらず、産みのあるところ悩みあるは当然なりよろしく民衆は光輝ある帝国の新附の民たるの光栄に感激し、帝国の尊厳なる国体と大東亜戦争の真意を明識し、各その生業に励み日夜努力し、もって一時の苦悩を克服し、敢然として建設の一途に邁進し正義に立脚せる神聖にして永遠なる平和を築き、道義を基とする文化を進めざるべからず、これ天皇陛下の忠良なる臣民たるゆえんなり、今日の佳節にあたり恭しく聖寿の万歳を寿ぎ奉る