クロスロード【武部貴則/再生医療研究者】 2015.10.31


今月2日連続で駆け巡った日本人ノーベル賞受賞のニュース。
その吉報に日本中が沸いていた頃…。
夜遅くようやく家路に着く1人の青年がいました。
そのラフないでたち同様…。
自宅もまるで学生の一人暮らし。
家賃4万円の4畳半はズラリ並んだ洗濯物がカーテン代わり。
服は脱ぎっぱなし。
彼にとっては洗濯機も今やものを入れる箱。
いやまあなかなかそのへんは探してるとこですよね。
こんな草食系男子の28歳。
実はただ者ではない。
そう太鼓判を押してくれたのはこの人。
よろしくお願いします。
すごく褒めてる。
すみません。
一応頑張りますんではい。
そう実は武部さん今世界的に注目されている再生医療とは人体のパーツを作り出し疾患のある部分と取り替える治療法。
なかでも機能が複雑な肝臓を世界で初めて人工的に作ったのが彼なんです。
その快挙を世界トップの科学雑誌はもちろん…。
まさになんかどう捨てていいかもわかんないしもうこれ何ゴミなんだっていうのもわかんないんで。
ちょっと待った本当に彼は天才?朝8時半。
おはようございます。
おはようございます。
武部さん出勤です。
基本はジーンズしかもやや腰ばき気味。
まるで授業でも受けに行くようなスタイルで研究室へ現れます。
すると早速。
来た来た。
ジーパンリクエストが。
っていうかいつもどおりの服装でっていう。
ツッコミ上手の研究員たちはおよそ20人。
この研究室で日々再生医療に関する実験を行っています。
やっぱそうですよね。
武部さんはそのチームリーダー。
実験データをもとに新しい理論や仮説を考えるのが彼の仕事。
研究となるとガラリと豹変する武部さんの才能をいち早く見抜いたのは教授をもうならせるゼロベースでものを考える力はあるのに。
はんぺん?はんぺんは何からできてるか知ってますか先生。
聞いたら「え?そんなの知ってる人いるんですか?」。
いや〜なんだっけな〜。
前にきな粉だねきな粉を…。
いやそれ言っちゃいます?それやめます?やめといたほうがいいんじゃないですか?きな粉って何からできてるんでしたっけ?ワラって言いました。
ワラって言ったんですけど…。
あちゃ〜。
興味のない一般常識はう〜んどうやらゼロに近い。
そんな武部さんのもとにこの日嬉しい知らせが届きました。
ちょっと一瞬お時間いいでしょうか?去年書いた論文がまたもや海外の有名な科学雑誌に掲載されたのです。
それはまぎれもなく彼が世界トップクラスの研究者であることの証し。
武部さんたちが取り組んでいる再生医療。
今それは現代の医学を大きく変えようとしています。
例えばわずか4cm四方の小さな細胞を人工的に培養して作った心臓の筋肉組織です。
つまり臓器を移植するのではなく…。
その進歩を格段に早めたのが万能細胞とも言われるiPS細胞の登場でした。
このiPS細胞を使って現在目の網膜などさまざまな組織を作ることが可能となっています。
ただし肝臓などの臓器は複雑な構造をしているため実際に作ることははるか先のこととされていました。
ところが3年前その肝臓作りに武部さんは世界で初めて成功したのです。
ボール状の構造なんですけど。
これこそが武部さんがiPS細胞から作ったこれ自体はちょうど妊娠2か月ほどの胎児の肝臓と同じもの。
しかしこのミニ肝臓を大量に移植することで徐々に病気の肝臓と入れ替わり正常な肝臓の機能が取り戻せるのです。
大きな肝臓を作るのが難しいなら小さい肝臓をたくさん移植して大きくすればいい。
まさに逆転の発想でした。
しばらくそれをただし現在は1人の患者につき100万個ものミニ肝臓が必要。
そのコストは90億円以上と言われています。
そこで将来性ありと判断した国や市によって作られたのがこの施設。
ロボットなどでミニ肝臓を大量生産することで人件費を大幅に削減。
しようとしているのです。
同じようにその将来性に目をつけた人がここにも1人。
超大量製造を…。
元ライブドア社長名目上は自身が運営するウェブサイトの取材。
しかしその本当の狙いは…。
そうですねあれがロボットです。
再生医療は将来日本経済の柱になる。
いわばカネのなる木。
だからこそビジネス界からも大注目されているのです。
その最先端にいる武部さんの発想は今や本業以外の分野でも引っ張りだこ。
この日訪れたのは広告代理店。
こんにちは。
再生医療の研究者がなんでまたこんなところに?一応持ってきてる…。
あすごい色が変わったのがある。
ツーパターン…2バリエーションの…。
そうなんですかお〜すごい。
実はこれ武部さんの経験から開発された健康グッズ。
これはですね…。
こういうのを作りました。
通称太るとパンツの色が変わるという商品です。
健康診断でメタボを言葉で注意してもみんな聞いてくれない。
そこで目で見てわかるようにすれば自ら生活習慣病を意識する。
そう考え開発に協力しました。
しかしこれはあくまでボランティア。
忙しい身でありながらまたどうして?言いましたっけ?ラディアルシンキング?ある物事があるとしたときに僕らは研究者の目を持っていて研究者目線でこうこの目標に向かってこう計画を立てるんだみたいなことをやるわけなんですけど。
それを全然違う研究者の目とかはたまた研究者じゃない人たちの目とかここから見ないほうが意外とよかった。
っていうことでこっちからやるとめっちゃ早いみたいなっていうことってすごいしょっちゅう生じることなんです。
つまりこうした異分野の人たちと仕事をすることで新たな発想が生まれると彼は考えているのです。
この風変わりな研究者いったいどんなふうに育ったのでしょうか?1986年武部さんは横浜市で産声をあげました。
家族は建設会社に勤める父と専業主婦の母。
そして3つ年上の兄。
好奇心旺盛でいったん興味を持ったらまっしぐら。
そんな子供でした。
ちっちゃいときからそうなんですけど。
ずいぶんこれは…。
医者になろうと思ったのは早くも小学生の時。
お父さんが重度の脳卒中で倒れたことがきっかけでした。
すごくインスパイアされたんですよね。
しかし受験はことごとく失敗。
進学したのは第3志望の横浜市立大学。
実は武部さんには苦手なものがあります。
通知表はほとんどがA。
ただし…国語だけがなぜかいつもB。
読めないですね。
そうなんですよね。
たぶんそうなんですよね。
しっくりこないんでしょうね。
なんかざっくりとしていてなんともこう…。
説明しきらないような原理が背景にあるとちょっとそれは僕にはわからなかったりしますね。
論理で割り切れないことはすこぶる苦手。
しかしそうも言っていられないのが人間関係。
この日研究室はいつになくピリピリとしていました。
深刻な顔をしていたかと思えば…。
なぜか廊下をウロウロ…。
いったい何があったのでしょうか。
何があったんですか?あんまあれですけど…。
いっぱいっていうか限られた人数いるんですよ。
今日なんかねやっぱり…。
今の研究予算ではこれ以上人を増やすことはできません。
もっとお金があれば…。
武部さんの目下の悩みです。
そんななか思わぬ知らせが彼のもとに届きました。
武部さんに来てほしいという海外の大学からの引き抜きのメールです。
オファーはなんとイギリスの名門ケンブリッジ大学など相次いで5か所から。
いずれも研究予算は年間数億円という破格の待遇。
しかし武部さんは迷っていました。
それで僕が例えば異動して3年後さっき言ったような論文っていうのが…。
海外では研究者の世界も競争社会。
安定した今の立場で研究を続けるかそれともチャレンジか。
武部さんは意を決して岐阜県へと向かいました。
医師ではなく研究者になるきっかけをくれたその人に会うために。
海外の大学に行くべきか悩んでいた武部さんはある人のもとを訪ねました。
こんにちは。
ご無沙汰してます。
お久しぶりです。
いやぁ〜。
全然見違えるように。
今は小学校の先生として元気に働いていますが33歳のとき肝臓の難病を発症。
やがて余命わずかと宣告された彼は…。
その病院で外科医を目指し現場に携わっていたのが留学中の武部さんでした。
なんとかしたい。
その一心で術後彼はつきっきりで世話をし続けたのです。
海外での移植手術には莫大なお金がかかります。
浅野さんの場合その額およそ1億円。
家を売っても借金をしても払えない金額。
周囲の人々の募金活動のおかげでようやくまかなうことができたのです。
しかしそれはごくまれなケース。
その現実を目の当たりにしたとき武部さんは外科医ではなく研究者になろうと決めました。
おそらく浅野さんの病気のような状態に治療する技術っていうのはまだまだ開発が必要だと正直思うんですよね。
ただ一部の肝臓の病気でいやぁでもほんとよかったですね。
意識がないような状態だったもんね…。
いやなんかあとあとで浅野さんが再び彼に教えてくれました。
今自分が本当に進むべき道を。
横浜に戻って1週間後。
研究室のメンバーでの飲み会でその発表がありました。
実はですねこの皆さんご存じの武部貴則先生がついにやりました。
まさか!アメリカでついに教授になられるということで。
(拍手と歓声)そうアメリカの研究機関に移ることを決めたのです。
一流大学を蹴ってまで選んだのは肝臓の難病を持つ子どもたちの治療を急ぐため。
ほんとにありがとうございます。
(拍手)おめでとう!おめでとうございます!更に先方と交渉して横浜の研究室にも籍を残すことができました。
ちょっと酔っ払ってないとき。
講師のインタビューを。
そして出発の日。
まあこんなもんですよ。
少し落ち着いたジーパンにしとこうかなと思って全然あれですよ落ち着いた…。
一般常識には疎くともひとつ命を救えたことに心から涙するそんな愛すべき天才あなたを応援します。
2015/10/31(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【武部貴則/再生医療研究者】[字]

28歳にして横浜市立大学臓器再生医学の准教授。再生医療の世界で“若き天才”と呼ばれる武部貴則に密着する。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
再生医療の世界で“若き天才”と呼ばれる武部貴則(28歳)。26歳の時にiPS細胞を使って肝臓の原基となる“ミニ肝臓”を作り出すことに世界で初めて成功。「複雑な臓器を作るのは困難」という常識を覆した。臓器移植の外科医を目指していたアメリカでの研修医時代に肝臓移植が必要な日本人患者に出会ったことがきっかけとなり、より多くの命を救いたいと現在の研究者の道に変更した。武部の素顔に迫る。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「youth」竹原ピストル
(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:46110(0xB41E)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: