これからは誰でも自分で人生を好きに生きていけるんです!松下村塾も初めは狭い部屋から始まりました。
ステキなものたちに囲まれて過ごす自分だけの時間。
芦名星さん。
魅力的な器に出会いました。
この何っていうんですかこの器芦名さんの出身地福島県で作られた「会津本郷焼」。
「しのぎ」と呼ばれる縦のラインがもたらす美しい姿。
手のフィット感も生み出しています。
今この会津本郷焼ひそかな人気を集めているんです。
日本全国から日用雑貨を選りすぐった人気のお店。
あの「しのぎ」の器が色とりどり。
若い女性を中心に色の組み合わせを楽しむお客が多いんだとか。
そもそもお店に置くきっかけは?会津本郷焼は東北最古と言われる焼き物。
近年暮らしを彩る器を次々と生み出しているんです。
この流れるような模様が印象的な青い器も結構お手ごろ。
(芦名)すごいですね。
知られざるみちのくの器の魅力に迫ります。
会津本郷焼のふるさとは福島県会津美里町。
かつて本郷町と呼ばれていた場所で焼かれてきたことからその名があります。
今も14の窯元が操業中。
芦名さんまずしのぎの器を作る工房を訪ねました。
わ〜かわいい!見事にどの器にも「しのぎ」が。
器の形や色溝の幅の違いも入れるとその数300種類になるんだそう。
こういう色があるのはちょっと意外ですね。
こんにちは。
よろしくお願いします。
佐藤大寿さん朱音さんご夫婦。
9年前からしのぎの器を作ってきました。
こちらになります。
ありがとうございます。
早速拝見。
どうもすみません。
(佐藤)どうぞ。
あ今作業されてるんだ。
え〜!しのぎを入れるのは国分美樹さん。
お碗状に成形した粘土を「カンナ」という金属板を丸く曲げた道具で削ります。
すごいですねこれ。
間違ったりしないんですか?話しかけちゃって大丈夫ですか?大丈夫です。
アハハハ…すみません。
えすごい!緊張する!特別に芦名さんも挑戦。
力を入れて…。
この辺からす〜っと。
この辺からす〜っとすると。
まっすぐ…。
ああ〜。
(佐藤)もっと近づけて。
もっと近づけないとですね。
エッジが出るような感じです〜っと。
うまい!
(国分)あうまい。
最初は好調でしたが…。
え〜やばい!フフフ…。
(佐藤)うまい。
全然うまいですよ。
(笑い声)芦名さんゆがんでしまいました。
国分さんのお手本を見るとどの線も上は太く下に行くに従って細くなっています。
芦名さんは削る力をコントロールできずにゆがんでしまったんです。
ではどうしたらきれいに削れるんでしょう。
ポイントはカンナをなるべく動かさないこと。
左の手首を返して器のほうを大きく動かしています。
こうすると器の膨らみに沿って正確に刃を当てやすいんだそう。
さらに右手の小指にご注目。
常に器に沿わせています。
小指を支点としてカンナを入れる深さを調整していたんです。
こうして国分さんは1本1本上から下へとまっすぐに削っていました。
最後も…ピタリ。
え〜すご〜い!僅かなゆがみも美しさと手ざわりを損ねてしまう。
鍛え上げられた正確無比な削りだけが生み出す形です。
削り終わった器は素焼きの後釉薬をかけます。
器をコーティングし水漏れを防ぐとともに色も付けるんです。
釉薬をかけ終えたのがこちら。
この時点ではどんな色になるのか見当がつきませんが焼き上がるとあめ色に。
これは会津本郷焼の伝統的な色。
しのぎがある器とない器を比べるとしのぎがあるほうが色の濃淡が際立っているのが分かります。
いったいどうしてなんでしょう?それは焼くと釉薬が溶けてしのぎの溝に流れ込むから。
たまり方は火のまわり具合によって変わるため濃淡の現れ方は1つとして同じになりません。
うちで作っているものは美しさ手ざわりそして味わいのある色。
一見シンプルな「しのぎ」のワザが最大限の効果を発揮していました。
しのぎの器には今新たな色が加わっています。
色のバリエーションはおよそ50とおり。
「少しでも多くの人のニーズに答えたい」という思いが込められているんです。
色は鉱物や金属などの原料の割合を微妙に変えながら調合して作り出します。
しかも焼いてみないと色は分かりません。
焼く温度や時間の僅かな違いが発色の差をもたらすため佐藤さんは逐一チェック。
膨大なデータを積み重ね理想の色を探り当てようとしています。
町の人が大切にしている神聖な場所があります。
会津本郷焼の発展に尽くした人々がまつられていました。
中央にいるのは「陶祖」とたたえられる…瀬戸出身の陶工です。
1645年初代会津藩主保科正之が源左衛門を召し抱え本郷に窯を開かせました。
源左衛門は期待に応え良質な粘土を発見。
茶碗などの器作りに努め会津本郷焼の礎を築きました。
芦名さん江戸時代から作り続けられている本郷焼を象徴する器があると聞き民家を訪ねました。
どうぞ。
最初に出てきたのは郷土料理。
身欠きにしんをしょうゆ酒酢山しょうの葉などで漬けたもので会津の家庭ごとにそれぞれ受け継ぐ味があるんだそう。
私郡山出身なんですけど初めて食べますきょう。
そうですか。
うん。
おいしい。
そうですか。
作るために使うのがこちら。
へぇ〜。
ちょっと取ってみますね。
はい。
わ〜すごい。
幅27センチのニシン漬け専用の大鉢。
大きさはニシンの長さに合わせたもの。
魚が取れないこの地方で貴重な保存食を作るための器として昔はどこの家庭にもあったと言います。
ちなみにこのニシン鉢は?これは30年ぐらいですよ。
30年ですか!私はもう本当に…そうなんですか。
30年ってすごいですね。
しかもすごいきれいな状態で。
ニシン鉢は造形性も際立っています。
素朴な中に強さと美が備わっていると高い評価を受けました。
今も海外で人気があります。
この鉢を今も作っている窯元を訪ねました。
江戸時代から続く窯元の8代目宗像利浩さん。
日本陶芸展賞などさまざまな賞を受賞した名工です。
力強い作風で知られ大鉢や花器など幅広い作品を作ってきました。
金をあしらった華やかな器も。
その中でニシン鉢は代々受け継いできたもの。
宗像さんの原点とも言える器作りを見せていただくことに。
ところが…。
こんにちは。
よろしくお願いします。
奥様でいらっしゃいますか。
そうなんです。
奥様がニシン鉢を作ってらっしゃる。
そうなんですそうなんですか。
はい。
妻の眞理子さん。
ニシン鉢を結婚して以来30年作り続けているんです。
それ何のために置くんですか?これで寸法を測ってるんです。
寸法…。
鉢作りは粘土を板状に切ることから始まります。
まず粘土の塊の横に木片を重ねて…。
この木片に沿って強く張った糸を引くと板が出来ます。
しかも切るたびに木片を外していくと簡単に板を決まった厚さにすることができるという仕組み。
力は必要なく女性でも作りやすいんだそうです。
実はこの板にはある工夫が。
それは…。
あ!ホントだ!こっちが薄くてこっちが厚いってことですよね。
よく見ると確かに右と左で厚さが違います。
これはおよそ4キロにもなる鉢を実際に使う女性のために少しでも軽くする工夫なんだそうです。
切り出した板を組み立てる前にもう一仕事。
天日干しにして乾燥させます。
板は組み立てる時崩れないくらいのかたさが必要。
その見極めが眞理子さんの腕の見せどころ。
干したばかりの板はぐにゃり。
ちょっと触ってみますよ。
(夫婦)どうぞ。
思いきって。
ベストな状態はこちら。
さっきのと全然違う。
乾燥時間は温度や湿度によって異なり1時間の時もあれば2日かかることもあります。
乾き具合はこまめに手で確かめるしかありません。
作業しながらよく触りにこう来るんです。
こうして。
へぇ。
だんだんいいなって時にしまいます。
なるほど。
いよいよ組み立て。
あいよいよくっつけちゃうんですね。
女性のための工夫はここにも。
口が広くなるよう外側に開き気味にするんです。
そうするとニシンの出し入れがしやすいんだそう。
つなぎ目はやわらかい粘土で埋めます。
最後にたたいて全体を引き締めます。
こうしてニシン鉢の形が完成。
女性による女性のための工夫が随所に凝らされていました。
ここから先は利浩さんの仕事。
眞理子さんが作った鉢釉薬をたっぷりとかけます。
伝統の「あめ釉」です。
ひしゃくでこうやってですね…。
あめ釉が乾いたらその上に白い釉薬を掛け流します。
ささっと掛けていますが多すぎても少なすぎてもダメなんだそう。
焼き上がった時あめ釉と絶妙なまじり具合になるのが理想です。
焼くとこのとおり。
あめ釉の落ち着いた色に映える一筋の白。
家庭の味を守り続ける女性の日常に明るさを加えます。
すごく深いものなんだなぁというのを感じたんですけど。
江戸時代から会津の暮らしを支えてきたニシン鉢。
男女の共同作業が生み出した珠玉の器です。
会津本郷焼は今も続々と暮らしを豊かにする器を誕生させています。
これ赤べこ。
すご〜い。
14ある窯元が競い合う個性。
へぇ〜。
こういうのあるんだ。
すごい。
芦名さん不思議な器に魅せられました。
お〜。
青い器に流れるような模様が印象的。
それは器に施した釉薬が溶け流れて出来たもの。
表面がガラスのように光っているのはこの器が「磁器」だから。
他に類のない器ですが1つ900円程度と手ごろ。
人気の湯飲みなんです。
青い磁器を作っている窯元を訪ねました。
こんにちは。
(社長)こんにちは。
どうもよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
こちらは磁器専門の工場。
会津本郷焼は地元で良質の陶石が採れたため江戸時代から磁器作りも盛んなんです。
ここでは石を砕き粘土作りも行っています。
従業員は30名。
量産が可能な大きな工場です。
先ほどの湯飲みは型を使って成型されていました。
この器が神秘的な青をまとうことになるのですが。
その前に弓田さん器のルーツを見せたいと芦名さんを案内しました。
いったい何なのこれは?それがこちら。
いったい何だか分かります?名前は聞いたことないでしょう。
ないです。
碍子は電柱や鉄塔に設置される絶縁体。
天候の変化にも強いため磁器が使われるんです。
実は碍子の生産は明治以降会津本郷焼の大きな柱でこの窯元の前身も碍子製造会社。
ところが高度経済成長の時代が過ぎると碍子の生産は落ち込んでいきます。
この時器作りを始めたのが…碍子と同じ粘土を使いながら従来にない焼き物を開発して活路を見いだそうとしたのです。
注目したのは青い碍子。
工業製品の均一的な青を焼き物らしい表情を持つ青に進化させようとします。
苦労の末たどり着いたのがあの流れるような模様を持つ器だったのです。
独特の模様はどうやって生み出されるんでしょうか。
ポイントは「2度がけ」という技法。
まず素焼きした湯飲みを1つ目の釉薬に。
これは青を発色するコバルトを含んだものでこのまま焼くと黒に近い青になります。
ではどうしたら美しい青になるのか。
それがこの2度目の釉薬がけ。
コバルト釉の上に石灰を含んだ白い釉薬をかけます。
この2種類が熱で溶けてまざると美しい青に変化するのです。
そしてあの流れる模様を作り出す作業はここから。
湯飲みを伏せて置くと白の釉薬が底のほうから口の周囲にたまりますが乾ききらない絶妙のタイミングでひっくり返すとたまっていた釉薬が流れ落ち水滴のような形になります。
これが肝なんです。
この後窯の中に入れ温度を1250度にまで徐々に上げながら24時間焼くと…。
初めはこの状態。
これを釉薬が溶け始める1170度で特別に取り出すと…。
グレーのような色合い。
水滴の形もまだくっきり。
さらに温度を上げると透明感のある青が。
水滴は溶け独特の模様に。
こうして斬新な器完成。
我々が考える「ものづくり」っていう部分においては皆さんのお手元に渡せるようなそんな仕事をしていければいいかなというふうに思ってます。
人々が喜ぶ個性的な器で未来を切り開く。
流れる青の模様は新しい時の流れを表すものでもあったのです。
芦名さんが最後に訪れたのはニシン鉢を作る宗像さんが代々伝えてきた登り窯。
7つの窯が連なる全長20メートルの大窯。
作られたのは江戸中期。
会津本郷焼の歴史を体現する存在です。
しかし2011年東日本大震災で被災。
半分が崩壊しました。
復旧は危ぶまれましたが全国の有志が結集。
復興プロジェクトを発足させます。
よみがえったのは震災の2年後。
これまで数えきれないほどの会津本郷焼を生み出してきた大窯は今も生きています。
芦名さんふるさとの焼き物に触れていかがでしたか。
昔ながらのものを大事にしている人たちが福島にたくさんいらっしゃってそれを現代とこれからにもつなげていこうと思っている方たちがいるんだということと自分の育った福島県という土地にやっぱりそれだけ大事にしているものを守っている人たちがいるというのはすごくすばらしい事だなぁと思いました。
2015/11/01(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「暮らしを彩る みちのくの器〜福島 会津本郷焼〜」[字]
東北屈指の焼き物、会津本郷焼。素朴な生活雑器で知られるが、近年はしゃれたカフェボウルや、流れるような青が美しい湯飲みや皿を生み、人気を博している。芦名星が探訪。
詳細情報
番組内容
会津本郷焼は、400年の歴史を持つ、東北屈指の焼き物。素朴で力強い生活雑器を作ってきたが、近年では、美しい色合いのカフェボウルや、流れるような青の模様が神秘的な湯飲み茶わんなど、斬新な器を生み出し人気を博している。一方で、郷土料理を作るためのたくましい伝統の器も健在。その優れた造形性により、万国博覧会のグランプリを受賞したこともあるイッピン。知られざる焼き物の里を、女優・芦名星が徹底リサーチする。
出演者
【リポーター】芦名星,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
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