(萩原)
1250年前の天平時代
都には華やかな音や色があふれていました
♪〜
(琵琶)
愛らしい花の文様に埋め尽くされた琵琶
その美を作りだしたのは…
(三浦さん)こうはめるわけですね。
(植村)きれいにはまりましたね。
石を削り出して作られた笛
天皇も耳を傾けたというその音色は…
♪〜
力強さにあふれた面
♪〜
演じられたのは…
♪〜
時を超え守られてきた宝物が天平の世界をよみがえらせます
正倉院宝物美の謎を解き明かします
古都・奈良
10月。
67回目となる正倉院展が始まりました
こんにちは。
よろしくお願いします。
(内藤さん)よろしくお願いします。
まずは今回の正倉院展のみどころを教えてください。
はい。
今回の正倉院展は…。
(内藤さん)…とわたくし感じています。
非常に細かい彫り…こういうものを丹念にご覧いただけたらというふうに思っております。
会場に並んだのは63点
いずれも1250年前から正倉院で守り伝えられてきた宝物です
まずは聖武天皇が持っていたとされる鏡
壮大な風景が浮き彫りにされています
高い山とうねるような水面
山の間には鹿やうさぎといった動物が生き生きと野を駆ける姿を見ることができます
動物はほとんどがつがいのようなんですね。
ですから何かそういう動物たちが仲良く暮らすそういうふうなひとつの理想世界というんでしょうかね。
そういうものを表現しようとしていたのではないかと思われます。
鮮やかな赤い色
臙脂という染料で象牙を染め…
裏の面には舞うように飛ぶ…
古代中国には皇帝が臣下に長さの基準を示す物差しを与える儀式がありそうした儀式に使われたと考えられています
焼き物で作られた小さな塔
緑・白・黄色のうわぐすりを塗り分ける奈良三彩の技法が使われています
東大寺の中にあるお堂に飾られた180の塔のひとつだとも言われています
奈良・東大寺
正倉院展の前には毎年関係者が集い…
はるか1250年前この巨大な大仏を建立したのが聖武天皇でした
天皇は仏教の力によって国を救いたいと願い9年の歳月をかけて大仏を建立
悲願を成し遂げた4年後亡くなりました
后の光明皇后は悲しみにくれ四十九日の法要の後天皇の身の回りの品々を…
聖武天皇の遺品に東大寺の品々などが加わりおよそ9千点が校倉造の正倉院正倉で守り伝えられてきました
正倉は天皇の命がなければ開けることができないとされ宝物は奇跡的な保存状態で今に伝わったのです
聖武天皇の遺品とされる袈裟
元は中国の高僧のものだったといい織り目がひし形になるように織られた絹が使われています
大仏を造るために1本の草一握りの土でもいいから協力して欲しいと民に呼びかけた聖武天皇
仏に仕えるため守るべき戒律を自ら受けるなど仏教を深く信じていました
…だったと思うんですね。
また残された光明皇后としてもですね聖武天皇が実際に…お召しになった衣装という事でまた特別な思いがあったのではないかと思います。
同じく聖武天皇の遺品とされるのがこちらの横笛です
「蛇紋岩」と呼ばれる緑色を帯びた石でできていて表面に山や鳥草花など細かい模様を浮き彫りにしています
こうした楽器は竹で作られるのが一般的で石で作られたこの笛も竹の節や枝をかたどっています
こちらは縦笛である尺八です
同じように蛇紋岩で作られ鳥や草花が彫刻されています
石を削り出して彫刻をしさらに音がうまく出るように中に穴を開けていくのは高い技術が必要です
極めて珍しいこれら石の楽器を復元演奏している人たちがいます
正倉院の楽器を復元された天平楽府のみなさんです。
よろしくお願いします。
長年古代の曲や楽器の復元に取り組んできた中国出身の音楽家・劉宏軍さん。
石の笛と尺八の復元に10年以上の歳月をかけたといいます
(劉さん)下の方は細いでしょう。
前の方が太くてね。
だから…。
一体どんな音色なのか。
横笛から吹いていただきます
♪〜
続いて…
♪〜わぁ〜何か尺八っていうイメージとはちょっと違う…シャープな音が出ますね。
そうですね。
やっぱりちょっと固い音がすると思います。
あの〜やっぱり我々が今吹いている尺八と違って…。
劉さんが中国に伝わる古代の楽譜から復元した曲を吹いてもらいました
♪〜♪〜
聖武天皇もこのような音色を楽しまれたのでしょうか?
♪〜
さてこちらは貴重な紫檀の木が使われた琵琶です
背面には小さな花の文様が規則正しく並び現代にも通じるモダンなデザインです
紫檀の板の上に見える3種類の花の文様は実は描かれているのではありません
「木画」といって象牙やツゲ紫檀などの素材を組み合わせて花の文様を作り埋め込んでいるのです
木画の技法は正倉院の宝物にはよく使われています
この「紫檀木画箱」では象牙の他にツゲやカリンといった木材金属のスズを細かく削って縞模様を作り箱を飾っています
幻の技法「木画」
現代ではほとんど行われていません。
工芸作家の三浦信一さんは正倉院の宝物を研究しこの「木画」を自分の作品に取り入れています
こちらが三浦さんの作品です。
正倉院の箱にも用いられている木画を取り入れ箱の輪郭を細かい縞模様で飾っています
これはどういった作りになってるんですか?
(三浦さん)材料はこういうものを使ってますね。
錫紫檀鹿角…これは鹿の角欅象牙黒柿柘…。
三浦さんはこれらの材料を薄い板にして重ねて貼り合わせそれを薄く切る作業を繰り返すことで自然の色を重ねた縞模様を作り箱に埋め込むと言います
この木画の技法が琵琶を埋め尽くす花の文様にも使われていました
花の文様を形作っているのは…
緑色をしているのは鹿の角です
(三浦さん)こういった鹿の角をつけこむわけですね。
緑青を水で溶いて。
で何年かつけこんだ後のものがこういう色になって出てくるわけですね。
やっぱり何年もつけこまないとこういう色にはならないんですね。
(三浦さん)つけないとダメです。
緑に染まった鹿の角と紫檀象牙を削って…
(三浦さん)一枚一枚作るんじゃなくってある程度厚みを持ったものを作ってそれを細かく裁断して。
手の感覚…。
花びらの形が他の部品とぴったり合うように調整します
何度も確認しながら少しずつ削ります
形が整った花びらを今度は厚さ1mm程度に切っていきます
(三浦さん)一枚できました。
でこれでこう合わすと。
ぴったり合いましたよ。
古来から使われてきた動物性の接着剤「膠」で花びらを一枚一枚貼り合わせていきます
うわ〜すごい!かわいらしいこうやってお花ができ上がってくわけですね。
さらに花を埋め込むため紫檀の板を花の形にぴったり合うように削っていきます
(三浦さん)はい入りそうですね。
キレイにハマりましたね。
わあすごい!ほんとにピタッと隙がなく。
すごい細かい作業ですよねぇ。
時間がかかりますねとにかく。
私これ3つしてみただけですけどこれを数百となると…引きますよね。
当時の人々の美への限りないこだわり
その熱い思いが琵琶を通じて伝わってきます
再び正倉院の宝物を見ていきます
「花氈」は大きな花の文様が大胆に染め上げられた敷物です
羊の毛を重ね合わせて固めたものですが1250年の時を感じさせない美しさを保っています
「琥碧魚形」は天平人が身に着けたアクセサリー
腰の帯に下げてその身を飾りました
魚の形に細工した琥碧
華やかな布が彩りを添え現代でも通用しそうなデザインです
こちらは法要などの場で僧侶が威厳を高めるために持った如意です
長さ60cm
ウミガメの一種である「玳瑁」の甲羅でできていますがあえて竹に見えるよう節や枝を加える細工をしています
大きく見開いた目に歯をむき出しにした口
一度は姿を消した仮面劇「伎楽」に使われた面です
♪〜♪〜
シルクロードを経て日本へ
幻の伎楽がよみがえります
今年の正倉院展では私たちになじみの深い宝物も公開されています
こちらは「筆」
先端に黒い墨が残り実際に使われたことを物語ります
穂先の根元の金には鳥や雲が浮き彫りにされもう一方は塔の形に削った象牙で飾られています
(内藤さん)一部に輪っかが削り離されているのがちょっと見えますでしょうか?恐らく書いているとですねこれがカタカタと音を立てていたんでしょうがそういうものを楽しむようなそういう風流を楽しむというようなですね。
そういう場で使われたものではないかと。
こちらは銀で作られた大きな針
長さが30cm以上もあります
糸を通す穴が開いていて特別な針であることを示しています
正倉院には針といっしょに糸も残されていました
しかしこれらの針と糸で実際に縫い物をするわけではなく宮中の行事に使われたと考えられています
それは毎年七夕に営まれた…
平安貴族の伝統を受け継ぐ京都の冷泉家では乞巧奠が今も旧暦の七夕に行われています
宮中の女性たちが織姫に裁縫や音楽の上達を願って針や糸楽器や食べ物を供えました
迫力のあるこの面は幻の仮面劇「伎楽」で使われたものです
悪者を懲らしめる力士の面で目や歯には銀が塗られています
正倉院には伎楽面が171も残されていて伎楽が盛んだったことが伺えます
一方こちらは子供の顔を表した面
漆と布を重ねて形を作る「乾漆」と呼ばれる技法で作られています
笑っているようなどこか愛敬のある顔です
さらにこちらは伎楽の伴奏に使われた鼓です
伎楽にはセリフは無く音楽に合わせてそれぞれの役を演じます
昭和になって文献などを基に復元されました
♪〜
伎楽の復元に取り組んできた天理大学雅楽部に演じてもらいます
♪〜
獅子が眠っているところにペルシャの王酔胡王と家来たちが登場します
♪〜
大きな杯を取り出し酒盛りを始めました
♪〜
すっかり酔っ払った家来たち
♪〜♪〜
手がつけられません
♪〜
そこへ中国の王である呉公が現れ笛で獅子を鎮めようと試みます
♪〜♪〜
最後は…
華やかでユーモラスな内容です
この伎楽実は私たちがよく知っているあるものに姿を変え生き続けてきました
縁起物として今も親しまれている獅子舞
そのルーツははるか昔大陸から来た伎楽にあったのです
シルクロードの美が凝縮された正倉院の宝物
今も当初のままの姿を見ることができるのは世界的にも非常に珍しいことです
いろいろ権力が移り変わってもですね幸いなことに守られてきた文化というものがあると思いますその代表的なものが正倉院宝物だと思うんですね。
現在の我々の文化のいってみれば源流それを正倉院宝物に見出すことができるんですね。
1250年の間守り伝えられてきた奇跡の宝物
私たちに日本の心を語りかけてきます
(佐藤正宏)『遠くへ行きたい』!2015/11/01(日) 06:30〜07:00
読売テレビ1
よみがえる天平の美と技〜第67回正倉院展〜[字]
第67回正倉院展の見どころを宝物の美しい映像と分かりやすい解説で紹介▽琵琶を華やかに飾る驚きの技法とは?▽聖武天皇ご遺愛の笛の音は?…1250年前の世界を堪能
詳細情報
出演者
内藤栄(奈良国立博物館 学芸部長)
植村なおみ(読売テレビアナウンサー)
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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