アガサ・クリスティー トミーとタペンス(3)「秘密機関(3)」 2015.11.01


(トミー)この人を見なかった?2週間前に失踪した。
(アネット)地下室に監禁されてるんだ。
ジェーン。
(ウィティントン)暗殺は始まりに過ぎないと聞いてる。
(アルバート)あさってアメリカの国務長官がイギリスを訪問する予定だって事を思い出した。
ブラウンはこのタイミングを狙ってたのか。
(悲鳴)
(カーター)トミー!2人ともいいかげんにせんか!絶対行ってはならん!
(ジュリアス)言われたとおり警察を呼んだんだがトミーもジェーンも出てこなかった。
(タペンス)アナッサ…。
仕事を手伝ってもらいたいんだ。
断れないぞ。
息子がかわいけりゃ。

(タペンス・ベレスフォード)ハァ…。
ハーッ。

(ため息)フン…。
フーッ…。
ウッフン。
(呼び鈴の音)ウッ。
ああジュリアス。
(ジュリアス・ハーシャイマー)やあ朝食を持ってきたんだ。
一緒にどうかと思ってね。
アァ…。
だがもし…ああ…。
ああいいの。
さあ入って。
ハァ…。
ああ…アァ…連絡は?1度も来ないわ。
トミーからもジェーンからも。
ありがとう。
ああ…。
でもトミーならきっと大丈夫。

(トミー・ベレスフォード)ハッハァ…。
ハッ…。
(ウィティントン)予定を変更させられてブラウンさんは怒ってる。
どうしてほしい?昔「菩提樹」っていうコードネームの作戦があった。
陸軍の記録保管室にファイルがある。
そのファイルを見つけ出して持ってこい。
でもどうやって?必要な情報があるんだ。
フン。
ブラウンさんに考えがあってな。
持ってこれなかったら?ウン。
どうなるかな。
自分の息子がかわいいんだろ?アァ…。
息子が2度とクリケットをできなくなってもいいのか?詳しいことは追って連絡する。
ハァ…。
電話の近くにいろ。
アァ…。
僕はただの養蜂家だぞ。

(テーマ音楽)
(ドアの開閉音)
(ため息)ハァ…。
(鍵を置く音)タペンス!帰ったよ!ジョージ。
タペンス?ああ!帰ってきたか!タペンスは?てっきり死んだと思ってた。
そのほうがよかったのかな。
今までどこへ行ってた?僕のパイプだ。
ジェーンの事は何か分かったか?いや何も。
そのカーディガンも!寒いから借りた。
かまわんだろ。
どうせ死人のだから?じゃ手がかりは無しか?あいにくね。
(ため息)タペンスは?今コーヒー買いに行ってる。
帰ったら喜ぶぞ。
よく言うよ。
ちょっと失礼しますよ。

(ため息)
(ため息)
(ドアを開ける音)トミー!アッ…。
ああ!よかった!ハァ…。
何があったの?ハァ…。
ハァ…大丈夫?フッ…。
ああっ。
アッ…。
あいつ僕のカーディガンを…。
もう帰ったでしょ。
パイプもだ。
万一僕に何かあったら…。
バカなこと考えないで。
どんなにあなたを心配してたか分からない?ウン…。
フーン…。
どうして解放されたの?そりゃ自力で脱出したんだよ。
あらそう。
だけどどうやって?あいつらと闘ったんだ。
何でも正直に話すってハネムーンで約束したわよね?もちろん。
意外と弱くて…。
リタを殺したわ。
リタを?どうやって?・・アァ…僕が出る。
いいの。
出るわ。
・もしもし?
(電話が切れる音)
(不通音)変ね。
切れちゃった。
(受話器を置く音)ジョージと話した?今日はまだ。
どうして?リタの死因は?アァ…。
首を絞められたの。
ウウン…。
・トミーどうかしたの?
(アルバート・ペンバートン)ああタペンス。
トミーの目撃情報だ。
村から8km辺りでヒッチハイクしてたって。
ああ!トミー!この文字が壁に書いてあったんだね?ハァ…。
ジェーンは10号室にいたの。
そうでしょ?トミー。
トミー?何?それで調べたか?地図で調べてみたわ。
うん。
グラスゴーにアナッサっていう名前の通りがあるしカーディフには同じ名前の小さい造船所がある。
どっちかにジェーンがいるのかしら?・アッ…。
(アルバート)きっと何か見落としてる。
もしもし。

(男)電話ボックスに行け。
2分以内だ。
(アルバート)昔デビッド・アナッサっていう政治家がいたぞ。
いつ?確か20年代。
ちょっと古いね。
トミー?アッ…間違い電話。
これで2回目よ。
牛乳買いに行ってくるよ。
まだたくさんあるのに。
(ドアを閉める音)
(奥さん1)嫌ね。
(奥さん2)だからまだ注意しなくちゃ。
そうしたほうがいいわ。
(イザベル)福引きはそっちにね。
それとロバの尻尾ゲームはこっち来て。
(男)はい。
(イザベル)これがなきゃお祭りは始まらないわ。
皆さんケーキありがとう。
(女)まあとってもおいしそう。
(イザベル)ジョン。
その旗はもう少し高い所で結ばなくちゃ駄目よ。

(ノック)フン…。
(イザベル)フォーサイスさんの旗に問題があったの。
先にいい?収穫祭はまだ先でしょ。
あしたよ。
かけてないじゃない。
かかってくるんですよ。
家に電話があるのにわざわざ公衆電話を使う人がどこにいるの?ほら出なさい。
いいわね。
待ってくれ。
駄目よ!急ぐんだから。
ウン。
ちょっとだけでいいの。
かけさせて。
・駄目だ。
どいて!ちょっと!お〜お!はい。

(男)今夜10時に埠頭にファイルを持ってこい。
ねえ見た?トミーったらひどいのよ。
ファイルがある場所も知らないし中に入る許可もない。

(男)報告会に呼ばれて3階に行くことになる。
・記録保管室は4階だ。
でも勝手にうろつくわけには…。

(男)機密扱いの極秘文書だ。
「菩提樹」と書いてあるファイルだぞ。
何か彼らを信用させる話題が欲しい。

(男)「砂の城」の話をしろ。
それは何だ?・
(男)言えば分かる。
覚えておけ。
・女のことを口外すれば罰を受けるのはジョージだ。
アァ…。
息子に手を出すな。

(男)頼んだぞ。
(電話が切れる音)待て!
(受話器を置く音)ハァ…。

(イザベル)相手は女友達ね。
タペンスに言いつけるわよ。
ああ〜。
(車の止まる音)
(ジェームズ・ピール)帰ってきたらしいね。
放蕩者の夫が。
カーターが呼んでるぞ。
どうして?報告を聞くためだ。
ご主人は任務中に失踪した。
我々は何があったか把握しておく必要がある。
話があるんです。
お時間あります?もちろん。
興味深いね。
カーターには見せたかい?いいえまだ。
ジェーンのメッセージなら…。
ああありえる。
アナッサ…アナッサ?フン…。
ジェーンが拘束されてるのは確かかね?まあそれはアネットが…。
アネットとは?例の…クラブにいた…女性です。
ああ。
監禁されてると教えてくれたんです。
君の希望を打ち砕きたくないが私は法廷でそのアネットのような女性をさんざん見てきた。
どこまで信用できるか怪しいね。
それにブラウンの仲間なんだから冷酷な一面があるだろう。
・カーターに報告すべきだね。
・ありがとう。

(ピール)時間が取れるかどうか…。
(犬の吠え声)・トミー帰ったの?
(ピール)私がトミーを報告会に連れていこう。

(アンソニー・カーター)ただいくつか聞かれるだけだ。
心配には及ばん。
通常業務だ。
よくある問題だからな。
それじゃみんなウズウズして待ってるんだ。
行こうか?進行役は友人でな。
ブルドッグってやつだ。

(ブルドッグ)ベレスフォードさんあなたは知的に見える。
だが連中が…あなたを逃がしたと信じるほど我々がバカだと?はい。
アァ…いやつまり…。
フン…。
1人が向かってきたとき暗くてドアが開いてるのにやつは気付かなかったんでしょう。
フーン…。
ソ連と何らかのつながりがありますか?いいえ。
(ブルドッグ)それではブラウンと名乗る男と面識は?ありません。
アァ…水を1杯もらえませんか?もしあなたがブラウンの手先として働いているならそれは何を意味するか?裏切り者という事になるんだ。
アァ…。
連中が電話で…ある場所の名前を何度も繰り返してました。
それは?「砂の城」と聞こえました。
「砂の城」だって?はい。
ハァ…アッ…。
「砂の城」とは一部の海岸線の呼び名だ。
かつてそこから密輸品が持ち込まれた。
警戒が必要だな。
ブラウンがそこから逃亡を企ててるならその情報は役に立つ。
よくやったトミー。
立派にやり切ったな。
(グラスをぶつける音)アァ…。
タペンスが来たら食事に出かけよう。
彼女ちょっと遅いな。
アァ…欠けちゃいました。
何?ああ!じゃ別のを。
僕が行ってきます。
どこへ?グラスはここだ。
ああ…。
不器用は相変わらずか。
ハハハッ。
ああ…。
メンバーに紹介したい。
チームで働くならな。
すみませんがおじさんトイレに行ってきます。
何?今か?アァ…我慢できないの知ってるでしょ。
アァ…いまだにそうかい。
すぐ戻ります。

(ノック)
(ドアを開ける音)ウン…。
ウン…。
何してるの?トイレを探してる。
ここで?静かにしておじさんのとこにいてくれ。
何かあるのね。
ずっと様子が変よ。
頼むから…。
その前に説明して。
(ブルドッグ)ベレスフォード!報告会での話は非常に参考になった。
大いに君を見直したぞ。
すぐチームに来い。
すぐに。
ああ…。
こちらは奥さんかな?ああはい。
え〜タペンスねこちらブルドッグさんだ。
みんな「ナイジェル」と呼ぶ。
よろしく。
なあトミー君の意見を聞かせてくれ。
ソ連はまた「砂の城」から工作員を潜入させる気かな?
(ブルドッグ)ああ。
前から監視の中止には反対だった。
説明して。
解放された条件は記録保管室のファイルを渡すことだ。
ファイルを盗み出すの?そうだ。
陸軍情報部から?ジョージを救うためだ。
やっぱり。
あの子とどんな関係が?トミーどう思う?アッ…おじさんと同じ意見です。
ほら賛成してる。
暗殺が第一段階なのは分かっていたが君が心配するとおりなら…。
言うとおりにしないとジョージが…。
ハァ…ジョージが危険な目に遭う。
危険なんて何?2度とクリケットができないようにしてやるって。
多分…ああ…リタのように…。
フンハーッ。
おじさんには言えない。
どんなファイルなの?「菩提樹」っていう極秘作戦のファイルだ。
(ため息)2分たったら火災報知機を鳴らして。
…効率的に待ち伏せできる。
部隊間の連携を…。
ちょっとお化粧室に。
ああ。
バランスよく配置しないとな。
これをここに移して…。
いやいやここはそんなに大勢は必要ない。
それより問題はここだ。
「砂の城」の脅威が分かってよかった。
国務長官訪問の前にレベル4に移行しないと。
この件はCIAには内密に進めよう。
ああ嗅ぎつけられたら大変だ。
訪問は中止。
協定は延期。
アチッ!ハハッ。
おいはやり手なんだ。
蜂蜜で手広く商売してる。
なあトミー?へぇ〜!そう?ええまあ。
庭に巣箱を置いて本格的にやってるよ。
ああそうだ。
一瓶やろう。
いやいいよ。
そんな…。
いやいやこの辺にしまってあるんだ。
確かえ〜と。
いいって。
早く。
一番下にあった。
なかなかうまいぞ。
高級な味わいがある。
アンソニーいいよ。
たくさんあるんだ。
いやいや。
大々的にやってるから。
遠慮しとく。
ぜひ味見してくれ。
本当に要らんよ。
(非常ベル)ハッ!うん?火事か?トミー!ごみ箱!えっ?
(非常ベル)ハァ…。
(非常ベル)ハァ…フッ。
おじさんの蜂蜜?人にあげようとしてたから腹が立って。
ハァ…。
フーン…開けるべき?内容を知りながら渡すのもな。
うん。
でも開けないのもね…。
カーターおじさん!ハァ…どうしておじさんのファイルなんか?それは知らないほうがいい。
ウン…。
全てジョージのためよね。
もちろんだ。
私たち追い詰められてるのよ。
おじさんに関係があるからってどうすることもできない。
ウン…。
誰だって同じことをする。
フーン。
覚悟はいい?ああ…。
(ノック)ハッ!ハァ…。
(アルバート)伝言受け取って急いで駆けつけた。
ああそう。
何かある?ああ。
こいつが役に立つかと思ってね。
ハァ…。
じゃあ行ってくるよ。
幸運を祈ってる。
気をつけて。
ウィティントン?持ってきたぞ。
(ライトをつける音)ああ…。

(アネット)来ないと思ってた。
アネット!10時の約束よ。
アァ…ファイルだ。
何をされた?
(ウィティントン)ああトミー!その女にほれたか?もらうわ。
「菩提樹」だ!ブラウンさんが喜ぶ。
指示どおりにした。
息子が無事かどうか知りたい。
(手下1)いいよ。
(手下2)吸わないのか?
(手下1)今日はもう吸い過ぎた。
アァ…。
(手下1)冷えるなここは。
1杯やりてえな。
ヘヘッ。
頼むウィティントン。
ジョージに手を出さないでくれ。
また連絡する。
じゃあ気をつけてねトミー。
君も。

(引き戸を閉める音)
(ため息)アァ…。
ハッ…。
ハッ…上出来よ。
時間は足りたかい?ああギリギリ。
ウィティントンの車に設置した器械から発信された短波の無線信号をこいつが受信する。
この目盛り盤が信号が来る方向を示してる。
精度はイマイチだしテストもしてないけどこれが精いっぱい。
フッ…。

(信号音)もう随分走ったわ。
彼らはどこ?この器械が示してる方向はあっちだけど…。
そっちには道路がないわ。
でも信号の間隔が狭まったから近づいてるんだよ。
(信号音)今15秒に3回の間隔で鳴ってる。
変だわ。
何がだ?この車点検に出した?もちろん出したよ。
ウン…。
ブレーキもチェックした?ああそのはずだ。
でも全然利かないのよ。
(ハンドブレーキをかける音)ハンドブレーキかけて。
もうかけてるわ!脇にそれて!トミー!どこへ!?おい何とかしろ!どうするの!?
(クラクション)
(柵を突き破る音)
(止まる音)このポンコツ!ウッああ!大丈夫かい?ええ多分。
ハァ…。
ハッ…。
何かしら?ハァ…私たちの住所も…車も知ってる。
ジョージのことも。
ハッ…。
ハァ…大変。
ハァ…。
さあ行こう。

(車の走る音)
(クラクション)アッ!アァ…。
ハーッ…ハッ…。
分かった!確かに計画したとおりには…。
もううんざりだ!冗談でしょ!だからこそブラウンの正体を突き止めるべきよ。
死にかけたんだぞ。
リタと同じように消されるところだったんだ。
そりゃもちろん勢いはそがれたわ。
もう諦めろ!こんな田舎で車は壊れたしジョージに危険が迫ってるしうちに帰る金もないんだ。
お財布持たずに来るからよ。
タペンス!頼むよ。
もうやめたいんだ。
失踪者はいるし暗殺計画もあるけど僕はヒーローじゃない。
ごく普通の男だ。
分かったわ。
いいのか?また普通の生活に戻っても。
ええいいわ。
ありがとう。
行きましょ。
ハァ…。
しばらく歩けばきっと駅があるわ。
ああ。
(汽車の走る音)
(ドアを開ける音)ティフィン!アァ…。
アァ…ハァ…。
(犬の吠え声)アァ…ティフィン?ティフィン!ティフィン。
大変だわトミー。
何てこと。
・タペンス見ろ。
ハァ…。
ハハァ…。
これも警告だと思う?さあ分からん。
でもラジオはとられてない。
それに銀食器も。
君が買った悪趣味だけど結構高価な置き物も持ってかれてないし玄関の所に置いてあった小銭の2ポンドも手をつけられてなかった。
目的がお金じゃないなら何を探したの?ウン…。
ウッ…。
これここに置いた?いや。
僕は何もいじってない。
寝室のサイドテーブルにあったの。
だから?分からない?こんな古くさくて退屈そうな外国語の本をわざわざ2階から持ってきてキッチンで読むような物好きいると思う?ジェーン・フィンが失踪する前に読んでたって知らないかぎりそんな事しないはずよ。
もうやめると言ったろ?ただ疑問に思っただけ。
おかしいわ。
そう思わない?ちょっと見せて。
古代ギリシャ語だな。
それは分かってるんだけど習ったことある?んん。
学校でフランス語はやったけどね。
例の言葉は?「アナッサ」。
まさかそんな…。
そうよ。
忘れてた。
ジェーンは語学を勉強してた。
何ていう意味?「女王」だ。
女王…。
彼女何が言いたいの?女王が標的ってこと?まだ即位してないわ。
その言葉知ってる人は?あなたとアルバートとピールとカーターよ。
フーン…。
ジュリアスも。
信用できないと思ってた。
ねえどこ行くの?女王に会いに行く。
畜生。
一体どういう意味?あの列車でジェーンと会ったとき彼女がおびえてるって言ってただろ。
僕は箱を渡したんだ。
覚えてる?女王の。
女王って?女王蜂!アナッサってそのこと?じゃ彼女はあの箱にテープを?本を持ってるのを知ってて伝えようとしたんだ。
連中も謎を解いたらしいが養蜂の本は読んでない。
あなたもでしょ。
僕は読んだよ。
あのあと。
だから女王蜂を物置にしまっといた。
ほかの蜂たちの準備ができるまで巣箱には入れるなって本に書いてあったからだ。
箱はあのままだ。
アッ…。
アァ…。
ずっと私たちが持ってたのね。
・そうです。
忙しいのは分かってますよ。
おじさん。
でも保証します。
来て損はしません。
フッ…。
(受話器を置く音)ハァ…。
信じられない。
ついに見つけた。
でもジェーンはまだだ。
でもブラウンの正体が分かれば…。
フーン。
いい?ああ。
(レバーを回す音)
(ロシア語)学校でロシア語は習わなかったわよね。
(レバーを戻す音)
(ジュリアス)動くな。
ハッ!テープをよこせ。
やっぱりそういうやつか。
ジュリアス。
バカなマネはやめて。
そこを動くな。
じっとしてろ。
こうするしかないんだ。
連中はこのテープを渡せばジェーンを助けると言ってる。
それじゃブラウンの正体が…。
ブラウンなどどうでもいい。
ジェーンさえ無事ならいい。
やめろ!タペンス。
(銃声)
(悲鳴)何するんだ!そこから一歩も動くな。
アァ…。
もしあとをつけてきたら今度は本気で撃つぞ。
撃てるわけがない。
銃を下ろすんだジュリアス。
ウッ。
アッ。
アアッ…。
(銃声)
(犬の吠え声)
(犬のうなり声)ウーッ!おお!アッ…フッ。
トミー大丈夫?ただのクリケットバットだ。
(犬の吠え声)アァ…。
ああ…。
車ないんだ!自転車で!アァ…アッ。
彼らが追ってくる。
落ち合う場所を言ってくれ。

(男)ではテープを破棄しろ。
破棄?だが…。

(男)追っ手が来るなら破棄しろ。
監視してるぞ。
(電話が切れる音)
(不通音)
(受話器を置く音)やめろ!ジュリアス!待って!何してるの!?ジュリアス!危ない!
(クラクション)おお!
(うめき声)アァ…。
アァ…。
証拠のテープが…。
なんと!しっかり。
これが例の?復元できます?こんなに溶けていてはな。
2人とも手を貸して。
(うめき声)ハァ…どうして燃やしたの?何かおかしいわ。
最初からおかしなやつだった。
だから信用するなって言っただろ?ジェーンにおじさんがいるかどうかも怪しい。
(看護婦)何してるの?意識が戻るまでは入っちゃ駄目!説明ぐらい。
誰だって関係ないの。
出てって。
しっ!しっ!しっ!行ってみようか。
もう起きたろ。
ねえさっき何て言ったの?何か言いかけたでしょ。
僕が?あなたって鋭い。
ホントに?ジュリアスはおじさんじゃない。
えっ?だってあなたも見たでしょ。
テープを奪って逃げていくあの必死な様子。
めいのためにあそこまでする?アッ…。
(裏蓋を開ける音)ほら見て!これが家族写真に見える?じゃこの2人は…恋人同士?そうに決まってる。
それで全て腑に落ちる。
「ジェーンへ。
愛を込めて。
ジュリアスより」。
おじさんじゃないのよ。
なぜウソついたんだ?分からない。
それを聞き出さなくちゃね。
彼起きた?ええ。
今ちょうどあなたたちに知らせようと思って下りてきたとこよ。
先生の診察が終わったからもういいわ。
それはどうも。
ありがとう。
どういたしまして。
疲れさせないようにね。
カーター少佐に会いたいと言ったのに。
向かってるよ。
じゃあ来るまでほっといてくれ。
フーン…アァ…。
あなたはジェーンのおじさんじゃないんですね。
しかも敵と接触してた。
あなたに好意的に解釈することもできる。
全てはジェーンを思ってやった事だったって。
でも…。
何も話す気はない。
それは残念だ。
だが僕たちは帰らないぞ。
ビスケットもらうよ。
(ドアを開ける音)意識が戻ったか?ああアァ…。
何もかも白状する。
よろしい。
何を?私が…アァ…ブラウンだよ。
ブラウンのはずないわ!自分でそうだと言ったじゃないか!さあそこを通してくれ。
腑に落ちません!筋は通る。
証拠のテープを隠滅した。
それにジェーン・フィンとは何のつながりもないのに彼女のおじのふりをしてた。
君たちに近づいて3階の動きを探るためだ。
でも2人は恋人同士なんです。
彼の動機は愛よ。
バカ言うな。
彼はスパイなんだよ。
私はCIAに監視されてるんだ。
暗殺計画など嗅ぎつけられたら国務長官の訪問は中止になる。
幸い事前にブラウンを捕まえた。
つじつまは合うんだ。
もう蒸し返す気はない。
そりゃ愛する人の命を助けるためならウソだってつきます。
誰かに言わされたんです。
病院に着いたら急に態度を変えるなんておかしいでしょ?いやそうは思わん。
2人とも協力感謝する。
だがこれを言うのは最後にしたい。
頼むトミー。
タペンス。
プロに任せてくれ。
(ため息)
(ため息)自分を犠牲にするなんてよっぽど愛してなきゃできないわね。
しかも相手は生きてなきゃな。
誰かがそう伝えたんだ。
(看護婦)もう退院してしまった患者さんの話なんかしてるほど私が暇そうに見える?もちろん見えません。
すごく忙しそうだし責任もある。
もし看護婦が楽してるなんてやつがいたらそいつは何にも分かってない。
でもひとつだけ。
彼が寝てる間に誰か来ました?目を覚ましたあとでも。
誰かと話した可能性は?もちろんないわ。
意識のない状態の患者さんに近づけるのは私と先生たちだけ。
そう言ったでしょ。
今日診察した医師は誰です?そんなの全部覚えてないわよ。
フン。
勤務表見れば分かるけど。
勤務表はどこに?フン…。
ウン。
ハァ…破りとられてるわ。
えっ!?見せて。
まあ!でもこれは私の責任ではないわ。
規律は守ってますから。
怪しそうな人や訪問者は来ませんでした?全員追い返したわよ。
代理の先生以外はね。
代理の先生?ええすごく慌てて…。
何て人?今その先生に薬を用意するよう言われたからやろうとしてるとこ。
処方箋よ。
インシュリン。
(看護婦)あの人よ!
(薬剤師)ではこちらです。
(ピール)どうも。
逃げるわよ。

(ウィティントン)おい!アァ…。

(女)気をつけて!
(男)何だい。

(足音)ハァ…ハァ…。
気付かなかったな。
ホント。
ピールが黒幕か。
大変だわ!国務長官の訪問と協定の調印の日って…。
今日だ。
おじさんに知らせよう。
おじさん!
(ブルドッグ)ここには居ないよ。
じゃどこに?重要な会議に出てる。
今大変な騒動が起きてるんだ。
どうしたんです?どこかのバカがカーターの昔の作戦をマスコミにリークした。
カーターは停職かもしれん。
ピールが擁護してたがね。
ピールがここに?さっき来てた。
国務長官は?許可は取ってるのかね?長官の命が狙われてるんです。
ああ長官はピールが大使の別荘にお連れしたから安全に外務大臣と会見できる。
そんな!ピールが?ああ心配ない。
あの別荘は要塞みたいなものだからな。
いつ行ったんです?ついさっき。
出たばかりだ。
ハァ…。
早く止めないと!何だって?おい待て!どうした?ピールです!何が?ブラウンよ!ピールがブラウン?
(バイクのエンジン音)ハァ…ハァ…。
車がなきゃ無理よ。
ジェーンのヘアピン貸して。
どうするの?おじさんの車を借りる。
(足音)じゃあ運転させて。
冗談じゃない。
男が運転する車だ。
ウン…もう。
アァ…。
こんなの運転してみたかったんだずっと。
(車のエンジン音)ああ!ああしまった!やんなっちゃう。
あああ〜!
(車のエンジン音)トミー!クラッチ!
(車の走る音)国務長官こちらでお待ち下さい。
ほかの者も間もなく。
(国務長官)何だろう?蜂にでも刺されたようだ。
恐らくミツバチでしょう。
季節ですからね。
薬をお持ちします。
ああすまん。
どうぞごゆっくり。
ありがとう。
アァ…ピールの処方箋に書いてあった薬何だったっけ?インシュリン。
命に関わるわ。
(CIA職員1)待ってください。
許可証は?ああここに。
それじゃ駄目です。
アメリカの許可は?MIファイブのパスだ。
CIAの検問ですので。
3階の人間だぞ。
国務長官の命が狙われてるんだ。
そういうご心配なら…。
きっと名簿にあるわ。
ああ失礼!
(殴る音)
(うめき声)アァ…。
家でもこうかい?いや〜。
(CIA職員1)待ってください。
ああ…。
中に入れて!早く!長官の命が危ない!アァ…。
まずい。
砂糖が要る。
ブドウ糖よ。
ビスケットかあるいはジュースでもいい。
蜂蜜!完璧だ!何の騒ぎだ?
(CIA職員2)ご苦労。
(CIA職員3)交代だ。
(CIA職員2)そうか。
下で何か騒ぎがあったらしいな。
(CIA職員3)今連絡があったよ。
ピールはどこです?彼がブラウンです。
国務長官を暗殺しようとした。
何!?中にいるはずだ。
まさか。
捜せ!カーター。
長官聞こえますか?蜂蜜です。

(戸を開ける音)
(ベルの音)
(ベルの音)ウッ…。
フッハッ…。
そこで止まれ。
アァ…。
よく突き止めたな。
実に勘がいい。
平凡な男と専業主婦にしては上出来だったがやはり蜂蜜を作ってるほうが似合いだ。
家にいるべきだった。
ここまでだ。
もう逃げ場はないぞ。
ジェーンはどこ?なぜ教えなきゃならん?アァ…ハァ…。
ジェームズ。
(荒い息遣い)なぜだ?私はみすみす捕まるつもりなどないぞ。
刑務所で死ぬのを待つなんてお断りだ。
この国を愛してたはずだ。
(ピール)堕落に不道徳に汚職。
法廷で見てきた。
そんな国を愛せるか?イギリスに未来はない。
いつか分かるはずだ。
銃を下ろせ。
未来を語り合おう。
ハァ…。
かつては私も輝いてた。

(3人)ああ…。
アァ…。
アァ!アッ!アァ…。

(車の走る音)ハァ…。
アァ…。
(ジェーン・フィン)ウン…。
フン…ウン…。
ジェーン。
ハハッハハッ…。
彼女は本当に無事かい?ハァ…。
無事です。
少し疲れてるけど。
ミルクは?ああ。
きちんと説明しなきゃならんな。
ああ…。
謎は解いたわ。
初めから正直に言うべきだったが…。
結婚してる。
形だけで今離婚手続き中だ。
あっそう。
そんなつれない態度しないでくれ。
君たちには苦労かけた。
控えめな言い方。
離婚が成立する前にジェーンのことが知れたら全て駄目になってしまうと思ったんだ。
アァ…。
身勝手なんだが混乱しててめいと言ってしまったらあとに引けなくなった。
許してくれ。
許してあげる。
ジェーンを大事にしてあげて。
ジェーン!これからはもう2度と君を遠くへやらないぞ。
(キスの音)ああ!あの部屋で死んじゃうかと思ったわ。
し〜っ。
大丈夫。
(キスの音)フフッ。
もう安心だ。
そういえばあなたに愛人がいるって噂になってるわよ。
へぇ〜!本当。
うん。
ある筋によると外でこっそり電話をしてたんですって。
相手は誰かな?さあね知らない。
でも私も黙ってないわ。
もし今度結婚指輪を外したら…。
それは説明したろ。
見つけたのか?もうなくさないでよねトミー。
君って人は本当に最高だよ。
タペンス。
前にも言ったっけ?トミー!腰痛めるわよ。
ああ!やっぱり普通の生活ってのは一番だ。
普通って?普通だよ。
君と僕とジョージと犬。
養蜂なんて諦めたっていいんだ。
本当に?本当。
探偵ごっこはこれきりにするって条件だけどね。
ウッ?「ウッ?」って何?どうしてこれきりなの?やめるって言ったよな?分かってる。
あれは一時の気の迷いよ。
ねえトミー。
すごい冒険が待ってるわ。
この世界にはまだまだスパイや暗殺者や国家の敵が大勢いる。
挑戦はまだ始まったばかりよ。
(ため息)せめて週末ぐらいのんびりしたいんだよな。
車も買い替えたし。
ドライブでもしたいよ。
おおよしよしお前も行きたいか。
わが国は今深刻な危機にある。
やつらの目的は?原子爆弾だ。
試作品を国外に持ち出すはずだ。
正直に話しなさい!トミー今すぐよ!危険すぎるよタペンス。
(アルバート)青酸カリだ。
(銃声)
(悲鳴)情報漏洩が発覚した。
(ハリソンの叫び声)ああ!ああ!
(ハリソン)スパイがいる。
それはエン…。
「N」って言ったの?それとも「M」?
(アルバート)しくじれば命に関わる。
カール・デニムカーン少佐シーラ・プレナミントン夫妻スプロット夫人ヴェロニカ。
全員疑え。
誰も信じるな。
2015/11/01(日) 23:00〜23:54
NHK総合1・神戸
アガサ・クリスティー トミーとタペンス(3)「秘密機関(3)」[二][字]

アガサ・クリスティー原作のおしどり夫婦が活躍する探偵ドラマ。日本初放送!ブラウンが誰かを探り当てたトミーとタペンスは、暗殺の標的である国務長官のもとへ急ぐが…。

詳細情報
番組内容
暗殺犯の一味に拘束されたトミーは、陸軍の極秘ファイルを盗み出すことを条件に解放された。言う通りにしなければ息子ジョージの命はない。寝返りを疑われたトミーは、情報部の報告会に呼ばれて厳しい追及を受ける。トミーはスキを見て記録保管室へ向かうがタペンスが邪魔に入る。だが息子の命が交換条件と知り、協力しファイルを盗み出そうとする。
出演者
【出演】デビッド・ウォリアムズ…大塚明夫,ジェシカ・レイン…世戸さおり,ジェームズ・フリート…浦山迅,マシュー・スティア…佐久田脩,アンドリュー・ヘイヴィル…田原アルノほか
原作・脚本
【原作】アガサ・クリスティー,【脚本】ジニー・ハリス
監督・演出
【演出】エドワード・ホール
制作
〜イギリス Endor Productions/Agatha Christie Productions制作〜

ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
サンプリングレート : 48kHz

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