地球ドラマチック「アイスランド トリとヒトとの優しい関係」 2015.11.02


アイスランド。
北極圏に隣接する美しい自然に満ちた島国です。
アイスランドの人々は「ホンケワタガモ」という鳥との間に特別な関係を築き上げています。
一体どのような関係なのでしょうか?身近にホンケワタガモがいる生活は魅力的ですよ。
野生の鳥なのにまるで家で飼っている鳥のように慣れています。
人は鳥を守り育て一方鳥は人に羽毛を提供してくれる。
まさしく共存共栄です。
とても懐いています。
人に保護してもらう事を望んで玄関先にまでやってくるんですからね。
アイスランドで育まれてきた鳥と人との特別な絆の物語です。
ヨーロッパの北西部。
大西洋と北極海が出会う場所で野生の鳥と人が世界でも類を見ない関係を築いています。
アイスランドはヨーロッパ大陸から1,000キロ近く離れています。
周囲を流れる大西洋海流のおかげで緯度が高いにも関わらず気候は比較的穏やかです。
栄養豊富な海には多種多様な生命があふれています。
何百万年にも及ぶ火山活動によって作られた島には数多くの活火山があります。
巨大な海底山脈が国土の真ん中を走っています。

(鳥の鳴き声)アイスランドの海岸や崖には春から秋にかけて数多くの海鳥が訪れ北大西洋における一大生息地となっています。
ホンケワタガモはアイスランドの海岸で最もよく目にするカモです。
大きな群れを作り一生のほとんどを海で過ごします。
他のカモ類のように内陸の湖などに移動する事はありません。
オスの羽毛が白と黒なのに対しメスは茶色。
メスの羽毛は巣作りの時周りの風景に溶け込んで敵に見つけられないようにするためだと考えられています。
特徴的な鳴き声はアイスランドの人々にとって春の到来を告げる音です。
アイスランドにいるホンケワタガモはおよそ100万羽。
ヨーロッパ全体に生息する数の1/3に当たります。
アイスランドの人々は1,000年以上にわたってホンケワタガモを保護してきました。
巣が作られるのは主にアイスランドの西部と北部ですがその姿はほとんどの海岸で見る事ができます。
巣を作るのは開けた場所。
しかし他の多くの海鳥と違うのは農場や民家など人が住む場所の近くを好む事です。
自然の多い郊外はもちろん都市部でもお構いなしです。
時にはありえないような場所に巣を作る事もあります。
(管制官)こちら管制塔。
現在地上の気温は9度。
風速は7ノット。
気圧は1,004ヘクトパスカル。
第8滑走路を使用してください。
空港内を通行中の車両はありません。
また滑走路上に鳥はいません。
ホンケワタガモは飛行機の大きなエンジン音も気にしません。
ここに巣を作れば空港の職員が安全に気を配ってくれる事を知っているようです。
人と野生のカモがこれほど親密な関係を築いている国は他に見られません。
その背景にはアイスランド独特の歴史と文化があります。
何百年も前からホンケワタガモは人の家の近くに巣を作り人はその羽毛を利用するという関係を築いてきました。
羽毛の採取を代々の仕事にしている農家も多くそれぞれの家に伝わる独自のやり方があります。
冬。
アイスランドでは日照時間が4時間ほどしかありません。
大きな群れを作り沿岸の海で冬を過ごすホンケワタガモ。
冬の初めにつがいの相手を探し5月の繁殖期に備えます。
それまでの数か月間食料となる貝やウニなどを食べ体内に脂肪を蓄えます。
アイスランド北部の海岸には流れの強い海流によってシベリアから流木が運ばれてきます。
木が乏しいアイスランドではこのような流木は建築資材や燃料として活用されます。
牧畜業を営むヴィグニル・スヴェインソンも流木を利用しています。
来たるべき春に向けて冬の間に準備をするのです。
5月。
冬が過ぎ日照時間も長くなりました。
羊の出産がピークを迎えヴィグニルの農場は大忙しです。
合間を縫ってヴィグニルは家族や隣人とともに海に向かいます。
彼が所有する小さな島に毎年2,000羽のホンケワタガモがやってきて巣を作り卵を産むからです。
その巣作りの場所を整えておくのです。
冬の間に流木で作った小さな家。
これを島に並べておくとホンケワタガモが巣として利用するのです。
1つの家が1羽のメスの巣になります。
羽毛を採取する農家にはそれぞれ独自のやり方があります。
これもその一つで手作りの家は雨や風をしのぐ場所になり大切な羽毛を守る事もできます。
居心地を良くするため中に干し草を敷きます。
ヴィグニルの家では何代にもわたってこのようなやり方でホンケワタガモの世話をしてきました。
ホンケワタガモも人を恐れる事なく毎年この島にやってきます。
ホンケワタガモと人との密接な関係は1,000年以上前に始まりました。
無人島だったアイスランドに最初に住みついたのは9世紀後半にやってきたバイキングでした。
彼らは自分たちの歴史を詳しく書き記しました。
13世紀にまとめられた神話「エッダ」には「ホンケワタガモの羽毛に包まれて眠る者は財宝の上にいる」という言葉があります。
ホンケワタガモの羽毛は中世のヨーロッパでは王族への贈り物とされ同じ重さの金と変わらない価値がありました。
生産量が限られているため現代でも非常に高価です。
昔からアイスランドではホンケワタガモが巣を作る土地には最高の価値があると認められてきました。
レイニル・ベルグスヴェインソンは毎年春から夏にかけてアイスランド西部のフィヨルドにある自分の島でホンケワタガモの世話をして暮らしています。
数年前この島に通じる橋が架けられたためホンケワタガモを襲うホッキョクギツネやミンクが侵入してくる可能性が出てきました。
レイニルは対策に頭を痛めています。
ここが切り離された島だった時は毎年1〜2匹のミンクに対処するくらいで十分でした。
それくらい平和な場所だったんです。
橋が架けられてからレイニルは自分の島を守るため小屋を建ててホンケワタガモの安全を常に見守る事にしました。
ホッキョクギツネとミンクはこの地域で最も警戒すべき動物です。
ホンケワタガモだけでなく他の家畜を襲う事もあります。
レイニルは毎朝島の見回りを行います。
ホッキョクギツネは人間がやってくる前からアイスランドに生息していました。
一方ミンクは20世紀になって持ち込まれ逃げ出して野生化したものです。
レイニルは高さ5メートルの見張り台を作り監視を続けています。
前日橋の向こうにホッキョクギツネが1匹いるのを見つけました。
敵を退散させるためにレイニルが使っているのは意外なもの。
香水です。
これが一番ですよ。
香水の強い匂いはホッキョクギツネ対策として今のところ効果を上げているようです。
アイスランドにおよそ400あるホンケワタガモの営巣地で農家はそれぞれのやり方で危険な動物を追い払おうとしています。
よく使われるのが音楽です。
ホンケワタガモは気にしないようですがホッキョクギツネやミンクは音楽を恐がって逃げ出します。
アイスランドではホンケワタガモは法律で保護されています。
保護に向けた最初の動きが起きたのは1787年ですがそれ以前からアイスランドの人々はホンケワタガモを大切に扱ってきました。
冬の間に既につがいの相手を見つけているホンケワタガモは5月になるとそれぞれ巣作りを始めます。
巣作りの場所として好まれるのは自分が生まれた場所。
そして以前に巣を作った事がある場所です。
最も大切な条件は安全な事。
アイスランドの場合それは人間の近くを意味します。
アイスランドのホンケワタガモは巣作りの期間オスがメスのそばにいます。
これは他の営巣地では見られない珍しい特徴です。
ホンケワタガモは鮮やかな色が好きだという説があります。
それでこんなふうに虹の色を全部使ったロープを張っているんです。
ホンケワタガモを引きつける一方でカラスを遠ざける効果もあるような気がします。
ホッキョクギツネも恐がるようですね。
ホンケワタガモの大きな営巣地はアイスランド西部他の動物が近づけない小さな島々にあります。
中でもヴィグル島の営巣地は最大規模です。
この島にはおよそ200年前に作られた石の壁が今も立っています。
海岸の侵食を防ぐためのものですがホンケワタガモの巣にもなるよう工夫されています。
1800年ごろには既に人がホンケワタガモのためにいろいろしていた事が分かっています。
この壁もその一つです。
私の先祖は1880年にこの島にやってきてホンケワタガモの世話をするようになりました。
サルヴァル・バルデュルソンはこの島で生まれました。
島の住人は彼の一家だけです。
先祖と同じように3,000ほどの巣を世話しています。
さまざまな鳥が集まるこの島には夏になると観光客が大勢やってきます。
この島で春になってもホンケワタガモの鳴き声が聞こえなかったら大きなショックを受けるでしょう。
想像もつきませんね。
あの鳴き声はもうすぐ春が来るっていう合図なんです。
どんなに天候が悪くても4月に鳴き声が聞こえてくればああもうすぐ春が来て鳥でいっぱいの島を歩けるんだなと思います。
最高の季節の訪れです。
この島はホンケワタガモ以外にもさまざまな鳥の営巣地になっています。
かん高い声が特徴のハジロウミバトは海岸沿いで卵を産みます。
数万羽のニシツノメドリも海岸の近くに巣を作っています。
カラフルなくちばしが特徴で崖の上の地面に穴を掘ります。
ニシツノメドリは1シーズンに卵を1個しか産まない珍しい海鳥ですが数は増えていてそれがホンケワタガモに悪影響を及ぼしています。
ホンケワタガモはニシツノメドリがそばにいると安全な繁殖ができません。
かえって間もないヒナがニシツノメドリの掘った巣穴に落ちてしまうからです。
もし穴に落ちたら自力ではい上がって安全な場所に戻るのはまず無理です。
ヒナがニシツノメドリの巣穴に落ちるのは珍しい事ではなく私もこれまでに10数回見た事があります。
生きているものもいましたが既に死んでいるものもいました。
ホンケワタガモの羽毛を採る時期になりました。
採取方法を次の世代に伝えるため子供も連れていきます。
繁殖期の間に島全体で羽毛を採取します。
私たちのやり方では1週間から10日の間隔で3回ほど行います。
数千羽のキョクアジサシが同じ一帯に巣を作っています。
はるばる南極から飛んできてここで繁殖するのです。
キョクアジサシは危険な動物を見つけると高く舞い上がって警告するような声を出します。
人を攻撃してくる場合もあるので時には棒で追い払わなくてはなりません。
繁殖期の間ホンケワタガモのメスはホルモンの変化で胸の羽毛が自然に抜け落ちます。
ホンケワタガモはまさに北欧の鳥で寒い気候に適応した進化を遂げています。
アイスランドではホンケワタガモの生態や行動羽毛の特徴についても詳しく研究されてきました。
ホンケワタガモの羽には2つのタイプがあります。
1つは体を覆う外側の羽。
もうひとつはその下にある断熱材の役割をする羽毛。
こちらがいわゆるダウンです。
寒い気候の中で卵を産む際ホンケワタガモのメスは断熱材の役目を果たしている羽毛を捨てます。
自分の体温が直接卵に伝わるようにするためです。
その結果腹部の羽毛ダウンが抜け落ちて卵の周りを囲むような形になります。
自分のエネルギーをあまり使わず効率的に卵を温めるための自然の仕組みです。
ホンケワタガモのダウンはとても軽く類を見ないほど断熱効果にすぐれています。
ホンケワタガモのダウンを顕微鏡で拡大すると大きな特徴が見えてきます。
端の部分はとても複雑な形をしています。
フックのような形になった部分も見られます。
これが断熱材として大切な要素です。
フックのような部分がある事で一つ一つの羽毛がしっかりと絡み合います。
そして羽毛と羽毛の間にある小さな空気の塊が温度を保ちすぐれた断熱効果を生み出すんです。
人は何百年も前からホンケワタガモの羽毛を採取していますが悪影響は認められないようです。
余分な羽毛は雨や風で失われてしまうのでその分を人間が採取しても害は無いと考えられています。
ソルバルドゥル・ビュルンソンの一家は春になると首都レイキャビクからクヴァールラウトゥル島に向かいます。
毎年ここで1か月間ホンケワタガモの世話をし羽毛を採取しているのです。
他にも2つの家族が同じ事をしています。
間もなく卵がかえるこの時期期待と興奮が高まります。
周りの小さな島々にも営巣地があるためゴムボートで回ります。
この一帯にある小さな島のうち137の島にホンケワタガモが巣を作ります。
私たちは巣から羽毛を採取したあと代わりに干し草を置く事にしています。
ホンケワタガモがまだ巣を使っている間に羽毛を採取する事を非難する人たちもいます。
でも前に羽毛と干し草の比較をしてみた事があるんです。
羽毛は防寒着の素材としては最高ですが巣に置かれている分には羽毛でも干し草でも温度にほとんど違いはありませんでした。
私たちのやり方はホンケワタガモの生態に何も悪い影響は与えていないと思います。
雨がたくさん降るともともとあった羽毛は役立たなくなってしまいます。
ぬれて巣の底で潰れてしまうんです。
そうなった場合ホンケワタガモは自分で干し草を取ってきて巣の底に敷いていますよ。
今年の春はこれまでになく雨が多いです。
5月の中旬までに60ミリの雨が降りました。
過去40年間ほとんど降らなかったのに。
驚きです。
こんなふうに居心地よくしてあげます。
よ〜しいいぞ。
その調子だ。
よ〜しよし。
よしよし…ハハハッ。
卵の世話をしてあげているんだね?あ〜立派なものだ。
きっと立派なヒナが生まれるぞ。
よしよ〜しよし。
本当に大したものだ。
営巣地の世話をする時はブラブラ歩きながら鳥にどうでもいい事を話しかけます。
アメリカのニュースでも何でもいいんですよただ話せば。
ちょっと中を見ていいかな。
あっあ〜あ〜ありがとう。
ほ〜らよしよし。
恐がらなくていいよ。
いい感じだ。
危険は至る所に潜んでいます。
オジロワシが襲いかかればこの営巣地を数分で破壊してしまうかもしれません。
カモメやカラスも卵やかえったばかりのヒナを襲います。
ホッキョクギツネやミンクといった哺乳類も脅威です。
ホッキョクギツネは1万年以上前の氷河時代に凍った海を渡ってアイスランドにやってきたと考えられています。
1970年代から急激に数が増え大きな問題になっています。
レイニルが世話をしている営巣地にもホッキョクギツネが姿を現すようになりました。
もはや香水の匂いでは追い払えないようです。
親鳥は水の中に逃げています。
放っておけば被害がますます拡大します。
レイニルはホッキョクギツネを見つけ出し駆除する事にしました。

(銃の発射音)私の目的はこの一帯でホンケワタガモが安全に巣作りできるようにする事です。
キツネの駆除はやむを得ません。
ホンケワタガモは私を信用しすぐ近くまで来てくれます。
60年にわたってホンケワタガモを守り続けているレイニルの闘いはこれからも続きます。
6月に入るとホンケワタガモの繁殖は最盛期を迎えます。
ヴィグニル・スヴェインソンの一家が用意した小屋にもたくさんの巣が作られています。
いよいよ羽毛を採取する時期がやってきました。
この小さな島にはホッキョクギツネのような動物はいないためとても安全で平穏に見えます。
しかし世界的な気候変動が思いがけない影響を及ぼしていました。
以前よりも営巣地の面積がだいぶ狭まりました。
海水面の上昇や強い波による海岸の侵食などが原因です。
どれも比較的最近見られるようになった変化です。
間違いありません。
今年の冬は気温が高めで地面が凍りませんでした。
そのため波による海岸の浸食が特に目立っています。
繁殖期は次の段階に入ろうとしています。
卵からヒナがかえるのです。
ホンケワタガモは3個から8個の卵を産みおよそ9割がかえります。
ヴィグニルは卵を日に透かして状態をチェックします。
この土地の自然環境とホンケワタガモに関わる暮らしはとても魅力的なものです。
野生の鳥なのにまるで家で飼っている鳥のように慣れています。
アイスランドの自然の中でホンケワタガモと一緒に過ごす時間。
他には代えられない得がたいものですよ。
採取されたばかりの羽毛には干し草や海草などの不純物が混じっています。
それを取り除く方法は1,000年前からほとんど変わっていません。
きれいなダウンを1キログラム生産するためにはおよそ60個の巣が必要です。
アイスランドではホンケワタガモのダウンを年間およそ3トン生産します。
これは世界全体の供給量のおよそ8割に当たります。
実に楽しい生活です。
人と自然がこの上もなく平和で理想的な関係を結んでいます。
もしダウンの値段が数年間下がったとしてもホンケワタガモの世話をやめる気はありません。
そんな目先の利益のためにやってる事じゃないんです。
ホンケワタガモは私たち人間を信頼し安全な環境を作ってくれると思っています。
その信頼を裏切るつもりはありません。
こうしてホンケワタガモは人間が暮らしている場所のすぐ近くに巣を作る事ができるのです。
アイスランド西部にある火山スナイフェルスヨークトル。
ジュール・ヴェルヌの小説「地底旅行」はこの山から地底に入っていく物語です。
大工のスマリ・ルーヴィクソンは40年前近くの池に石や海草を運び込んで人工の島を作り上げました。
次の年その島に1羽のホンケワタガモが巣をもうけました。
営巣地をゼロから作れるかどうかという実験のつもりでしたが幸運な事にホンケワタガモがすぐに来てくれました。
それから40年間営巣地の世話を続けているという訳です。
小さな人工の島に巣を作るホンケワタガモは今では300羽に上ります。
スマリはこの実験を始めて以来営巣地の様子を記録してきました。
1993年には鳥に標識を付け新たにやってきたものと戻ってきたものを区別できるようにしました。
この記録は研究者にとって貴重な資料となっています。
最近スマリは鳥類学者のヨン・アイナー・ヨンソンと共同でホンケワタガモの調査プロジェクトに取り組んでいます。
標識には識別番号がついていてそれぞれの鳥が毎年どのような行動をするかを追跡できるようになっています。
記録済みの鳥には赤い色を付けてすぐ分かるようにします。
この島で標識を付けられた鳥が他の営巣地で見つかった例はありません。
ほとんどのホンケワタガモは毎年同じ場所に巣を作るという従来の説を裏付ける結果です。
スマリが1993年に標識を付けた鳥は今も毎年ここに戻ってきます。
混み合った営巣地ではホンケワタガモが巣やヒナを取り違える場合があります。
血縁関係のあるカモが同じ巣を使うのかもしれませんしそういうカモは最初からすぐ近くに巣を作るのかもしれません。
ホンケワタガモはいつも同じ営巣地の同じ場所に巣を作ります。
毎年卵が無事にかえる場所なら間違いなく同じ場所に戻ってきます。
うまくいった事を繰り返すんです。
卵を温め始めてそろそろ1か月。
もうすぐヒナがかえります。
メスはヒナがかえるまでの4週間巣を離れず食事もしません。
冬の間に蓄えた脂肪だけが頼りで巣にいる間に体重の3/3近くが減ってしまいます。
かえったヒナは1日もたたないうちに巣を離れます。
陸上にいれば動物に狙われるため海に行くのです。
海の中なら群れに紛れ食べ物を見つける事もできます。
母親がヒナを引き連れて最短ルートで海へ向かいます。
ヒナが親からはぐれたり母親が死んだりした場合自分の産んだ子でなくても他のメスが面倒を見ます。
至る所にヒナを狙う動物がいます。
生き残るためには一刻も早く自分で食べ物を取れるようにならなくてはなりません。
アイスランドの夏は短く冬は駆け足でやってきます。
ヒナは十分に成長すると親兄弟のもとを離れ独り立ちしていきます。
クヴァールラウトゥル島では親からはぐれたヒナの面倒を人間が見ています。
世話をしているのは子供たちです。
ヒナは人間の子供を親だと思っています。
ほとんどは巣に取り残されていたり営巣地の外で迷子になったりしているところを助けられたヒナです。
ある程度成長するまで世話をしたら安全な巣を作れる場所に連れていきます。
ほとんどのホンケワタガモは毎年同じ営巣地に戻ってくるので新たな場所に連れていけば営巣地の拡大にもつながります。
子供たちは1日2回必ずヒナを海に入らせます。
自然界で生き残るため幼いうちに本能を発達させる事が重要だからです。
ヒナは2か月もすると飛べるようになり更に沖まで行けるようになります。
子供たちはヒナと一緒に楽しい時間を過ごし野生の友達とのつきあい方を学んでいきます。
何百年も前から祖先がしてきたようにこの子たちもやがてホンケワタガモの営巣地を世話するようになる事でしょう。
アイスランドには豊かな自然があふれています。
そして人間は自然に対してある種の責任を負っています。
次の世代もきっとその責任を引き継いでくれるはずです。
このような美しい自然や鳥たちに囲まれて年をとっていくのは悪くないものですよ。
実に楽しい生活です。
厳しくも豊かな自然にあふれた国アイスランド。
ここに暮らす人々と鳥との優しい関係は未来へと受け継がれていく事でしょう。
2015/11/02(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「アイスランド トリとヒトとの優しい関係」[字][再]

最高級の羽毛を生み出す野生のカモ。アイスランドの人々は千年以上もこの鳥と絆を結び、大きな恩恵を受けてきた。厳しくも美しい自然の中で脈々と育まれてきた絆の物語。

詳細情報
番組内容
北極圏に隣接する島国、アイスランド。豊かな自然に恵まれたこの国では、野生のカモと人とが世界でも類を見ない共存関係を築いている。ホンケワタガモというこの鳥は、人家や空港などあえて人に近いところに巣を作り、キツネなどの外敵を遠ざけ、人間に守られながらヒナをかえす。人は彼らの巣作りを助け、落とした羽毛を採取する。はるかバイキングの時代から育まれてきた鳥と人との暮らしを見つめる。(2015年アイスランド)
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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