課外授業 ようこそ先輩▽歴史は、過去と今のキャッチボール〜歴史家 磯田道史 2015.11.02


およそ30年ぶりに母校を訪れた今回の先輩。
(磯田道史)あっそうそう…これを跳ぶのが好きだったんですよ。
あっまだ跳べますね。
何だかとっても楽しそう。
磯田さんは借金に苦労する幕末の侍の生活を描いた「武士の家計簿」でデビュー。
映画にもなりました。
今や新聞雑誌テレビ番組にも引っ張りだこの人気です。
戦国時代500年ぐらい前です。
(飲む音のまね)あ〜。
ムカデも一緒に飲んじゃったんだよ。
まるで見てきたかのように史実を生き生きと語る磯田さん。
ほら行け行け!こっちこっち…。
磯田さんにとって歴史とはまだ終わっていない事件です。
よし一緒に読もう。
みんなが歴史の現場で目撃したものとは?泣けてくる俺は本当に。
磯田さんの母校。
岡山県の…あっ…。
(拍手)おはよう。
(一同)おはようございます。
入っていいかな?入っていい?授業を受けるのは1年A組36人。
おはようございます。
磯田道史です。
今日授業をさせて頂きます。
僕のお仕事っていうのは歴史学者なんです。
自分はいろんな教科の中で歴史は好きな方だっていう人ちょっと…お〜!でも結構いるんだね。
大体半分ぐらい。
嫌いな人いる?あっいいですね。
聞いてみよう。
嫌いです。
なぜ?あっ覚えたくない。
ここは大切なポイントです。
歴史はまず覚えるものであるか?え〜歴史って暗記ばっかりだよねひろゆき君。
でも磯田さんは…。
今日から始める2日間の授業は…そういう授業をやりたいんだな。
そこでまず磯田さんが用意したのは信長家康秀吉の三英傑の肖像画。
歴史の偉人が学校の近くに来てたなんてみんなにとっては大事件。
まずゼロ。
来た事がないだろう。
ゼロが12345。
5人。
じゃあ1人は来た事がある。
15。
多いな。
じゃあ2人来た事ある。
111213。
じゃあ3人とも来た事がある。
ゼロ。
…という結果になりました。
実はこの中の一人があの半田山の植物園の下の所まで来たとはっきり史料に書いている人がいます。
それは…秀吉でした。
そうか秀吉なんだ。
みんなは知ってたのかな?知ってる人いる?豊臣秀吉は何で来たんですか?おっ備中高松城を攻めに行った。
すごいな〜。
どうして攻める事になったのかちょっと日本地図を描いて説明しよう。
時は1582年安土城の織田信長は天下統一を目指し備中で毛利軍と激突。
その最後の戦いの舞台がこの学校近くにある高松城でした。
織田信長の子分としてこの備中高松城を攻めに行ってこいって遣わされたのが豊臣秀吉。
どういう攻め方をしたか。
お城をなんと水没させて中の人たちを降伏させるという方法をとりました。
それが世に名高い「備中高松城水攻め」事件。
お城を水没させるという前代未聞の奇策でした。
磯田さんは子どもの頃この事件を知り大興奮。
自ら想像して芝居を書き秀吉を演じるほどの熱中ぶりでした。
そしてこの事件には手がかりが今も残っているのです。
古い紙に書いたものを古文書っていう訳ね。
古文書でこの高松城で本当に城を水没させたかを君たちに見てもらいたいんだよ今日は。
古文書ってどんなとこにある?歴史好きはい。
どこにある?城とか寺?お城とかお寺な。
どうしてお寺に残るの?こういうものは。
昔の人が住んでたりしたから。
そうなんだよ。
昔から住んでいる所へ行けばいいんだよ。
この学区で一番昔から住んでいる人に「すみません古い紙に書いたもの見せて下さい」ってお願いしたんだよ。
そしたら「いいですよ」って言ってくれたの。
行きたい人?
(一同)は〜い!よし行こう!水攻めの手がかりを得るため訪れたのは学区内にある旧家。
550年前の室町時代から続く…迎えて下さったのは…金万家は代々続く豪族で江戸時代はこの地域の農民を束ねる庄屋でした。
金万さんも岡北中学校に行かれたんですかね?うちの先祖は嘉吉の変とか応仁の乱とかこれから習うかもしれないけどもそういう戦に中に入って戦っていってというふうなのでかなり古い部類に入るんじゃないですかね。
金万家に大切に保管されている古いつづらを特別に開けて頂きました。
これが備中高松城水攻めについて書かれた書物です。
あの時はこうだったっていう伝説を書き記した本。
これは世界で一つしかない本だと思います。
歴史を知る手がかりとなる貴重な古文書。
しかし崩し字で書かれていて難しそう。
初めて古文書を目の当たりにしたみんなは…。
よし一緒に読もう。
これ何ていう字?
(男子)「備中」。
これは?
(男子)「高松」。
読めてる。
全部全問正解してる。
(男子)「水び」?これは成績の「績」の糸偏を取ったやつ。
何て読む?そうそう「水責」。
あなたすごいな。
8文字のうち6文字読んだよりゅうせい君は。
磯田さんは高松城水攻めの文書を一つ一つ読み解きました。
備中高松を水攻めにした時の様子の順序みたいなそういう話だよ。
だから本当に水攻めをした事が分かる。
その水攻めをするためにはお城の周りに実はどういう方法をとったかというとここに書いてあるんだな。
「長さ34丁堤を築かせられ」。
土手を造ったんだな。
34丁って単位が難しいな。
1丁どのぐらいだと思う?あてずっぽうでもいいけど。
どのぐらい?知ってる人いる?豆腐は1丁2丁って…なるほどな。
それはいいボケだな。
面白い面白い。
1丁っていうのは当時の単位で大体109mぐらい。
…って事は34丁っていうと3.5km以上。
長いだろ。
3.5kmの堤防を造ったんだ。
季節は五月雨の時期。
現在の6月梅雨時でした。
古文書によるとおよそ3.5kmの堤防を造り増水した川をせき止める事によりお城を水没させたというのです。
長さ3.5kmに及ぶ堤防とは一体どんなものだったのでしょうか?君たちが堤防を造ろうとしたら頭の中で想像して。
3万人持っていて軍勢のほかに周りの…だから3万人以上多分使えたはずだよ。
この城を水没させる堤防ってそもそもさ結構高さが必要だと思わない?例えばお城の高さが5だったとするでしょ。
このお城の地面よりも高い堤防が造られているかどうか。
堤防は城の地面よりも高く造られたはず。
ではどれくらいだったのかな?あなた何mぐらい?あなた何m?18m?結構すごいな。
(男子)はい。
高さをみんなこのぐらいだったら沈むだろうという話をみんな言ってもらったので明日確かめようこれを。
昔から住んでいる古いおうちの中に上げてもらってこういうふうに歴史っていうのは残っているんだっていう現場を見せる事ができたかなと思いますがやはり2日目現場に行ってもらって…いよいよ堤防の大きさを実際に感じるために現場へ。
さあ堤防を探せ。
学校から30分やって来たのは蛙ヶ鼻と呼ばれる場所。
ほらほら…あれどう見たって土手じゃん。
(男子)ほんまや。
マジかあれか。
残ってんだよちゃんと。
土手に突撃!行け〜!これが430年前秀吉が造った堤防の痕跡です。
長年の雨風にさらされ今は僅か3mほどの高さしかありません。
かつて秀吉もこの堤防の上に立ったのでしょうか?あそこの鳥居の向こうに山が見えるでしょ。
あの下まで全部水浸しになったんだよ。
この辺りは一面水浸しとなりました。
高松城はここから1km先にありました。
立体模型でお城と堤防の位置を確認します。
今僕たちがいるのはあの赤い丸の所です。
金万家の古文書ではここから川までおよそ3.5kmの堤防が築かれたと記されていました。
そうすると水が入ってきて梅雨時だった事もあってどんどんどんどんここへ水が入っていく。
出来た湖の面積は実に東京ドーム40個ほどの大きさ。
はい。
思ったより広く水浸しになって…。
広く水につかってるね。
これを水没させるには相当な高い堤防じゃないと駄目だよな。
どのぐらいの大きさがあったんだろうって事を考えないといけないよね。
一体秀吉はどれくらいの規模の堤防を造ったのでしょうか?堤防の大きさには実はいろいろな説があります。
さまざまな古文書や調査から現在は底辺がおよそ24m。
高さが7m。
上辺が10mと考えられています。
この7mという高さが多分縮んじゃった可能性が高いのねこれ。
じゃあ7mの堤防をここで見てみたくない?見てみたい人?
(一同)は〜い。
協力してくれます?奇策として歴史に名を残す「備中高松城水攻め」事件。
その堤防の再現は磯田さんの長年の夢でもありました。
やりたかったんですよ。
元の高さをこうやって寝っ転がってどんな大きいのかなとかって想像する訳ですよ座ったりして。
ところが頭の中でやるから「ここな段ボールか何かで造ってみたいな」ぐらいに思う訳ですよ大きな7mの…。
一人じゃできないじゃないですか。
今日は夢がかないましたよ。
さあいよいよ秀吉の堤防が430年の時を超え再現されます。
端持っている人は動かない。
(男子)うおっ!
(男子)高い!すごい立った!お〜!
(男子)すげえ!高い!へえ〜!壮観だねやっぱり。
どう?感想は。
高いと思った?
(男子)高いと思った。
(男子)やっぱりこんだけあったら水も詰まりますよ。
3km!今じゃ無理だね。
今造ったら無理だよね。
これ今無理だと思う?今無理無理…。
秀吉は3万の兵と地元の農民を使い僅か12日間でこの堤防を造り上げたのです。
(掛け声)歴史は今につながるさまざまな事件の連続。
その現場で何が見えてきたのかな?実際造ってみたら自分で思っていたよりも大きかったのでそれにこういう体験はあまりできなかったのでできてよかったです。
教科書で習っていた豊臣秀吉のイメージが変わったって人?自分だけ楽にやろうとずっと思ってたのかと思ったら人の使い方がうまいと思いました。
天下統一っていう事について秀吉が一人でした訳じゃない事も今回分かったかもしれない。
なぜかっていうと3kmにわたる堤防を造ったかもしれないのは僕たちの祖先かもしれない訳だ。
…っていう事は皆さんの祖先も天下を統一するというような事に関わってたって事になるよね。
そういう事も分かるから教科書に書いている事っていうのは皆さんと決して無関係ではない。
皆さんの祖先や皆さんの住んでいる場所がとっても関わっている。
だから一層身近になったんじゃないでしょうか。
(一同)ありがとうございました。
こちらこそ。
若い感性がすごく今日はみずみずしかったから光り輝いていたから自分も歴史を見る感性を影響を受けてそれが研ぎ澄まされて一瞬窓が開いたように秀吉が見えた気がしましたね今日は。
実際に体感したりできてとてもためになったのでよかったです。
ただ覚えるだけじゃなくて仮説を立てて自分でうのみじゃなくて考えて授業を受けていきたいです。
2015/11/02(月) 12:25〜12:50
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩▽歴史は、過去と今のキャッチボール〜歴史家 磯田道史[解][字][再]

岡山市立岡北中学校。学区には四百年前の歴史的事件の古文書が残されていた。豊臣秀吉の高松城水攻めの記録。生徒たちはひもとテープで、当時の堤の大きさの再現に挑む。

詳細情報
番組内容
歴史家磯田道史の母校は、秀吉の水攻めで有名な高松城の近く。磯田は幼い頃からその史実に大きな関心をもってきた。学区に七百年続く旧家金万(こんま)家には、水攻めを記録した古文書がある。そこに書かれた「秀吉の堤防」の情報を利用して堤の再現に挑むことにした。堤防は高さ7m長さ3キロにおよぶ巨大なもの。果たして、当時の技術でどう建造したのか?ひもとテープを使って、磯田と生徒たちはその大きさを検証していく。
出演者
【出演】歴史家…磯田道史,【語り】宮崎美子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – その他
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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