(人工呼吸器の音と筆をふるう音)
(風間)
筋ジストロフィーという難病に侵されながら書と向き合い続けています
代表作…
書道界の芥川賞と呼ばれる手島右卿賞を受賞した作品。
いくつもの「生」という文字がうごめきせめぎ合っています
石井さんはこれまでいくつもの大作に挑み生きるエネルギーをぶつけてきました。
作品のテーマは「生と死」。
死への意識と生へのこだわりを表現してきました
創作の日々を支えるのは学生時代からのパートナー…
徐々に体が衰え思うように書けず悩み苦しむ石井さんを見守ってきました
石井さんは今病が急速に進行し入退院を繰り返す日々を送っています
生きるとは何か。
極限まで自分に問い続けたい。
命を懸けて書に挑み続ける書道家からのメッセージです
いやもう…少し離れた所から見てる時もすごかったけれども近くで見ると本当にエネルギーが伝わってくるよう。
(安藤)…っていうかねちょっと怖いぐらいの感覚を受けていてこれタイトルが「魂」ってタイトルだけども「魂」ってタイトルじゃなくて魂だよ。
これ自身がね。
うん。
動いてるような…これ自身が脈打ってるようなそんな感覚がすごいするんだよね。
うん。
今日は生きるとは何か問い続ける書道家石井さんの「ブレイクスルー」をお送りします。
休日のお昼過ぎごはんの準備をする朋子さんの横で石井さんは…まだ夢の中。
この日のメニューは石井さんの好きなチヂミ。
(取材者)典型的な男の料理?そうそう…。
はいはいみたいな。
よう多いですよね。
食事が何よりも楽しみな石井さん。
朋子さんは一日2食好物を工夫して作ります。
しかし食事には危険が伴います。
食べ物が気管に入り込み肺炎を起こさないよう呼吸を整えます。
おいしそうやろ?流動食を勧められた事もあります。
でも普通の食事こそが生きる力になるとこだわり続けています。
(朋子)うそ〜?チヂミの味するやん。
全身の筋力が徐々に低下する…体重は僅か25kgです。
人工呼吸器は外せません。
24時間容体の変化に注意しながらヘルパーの介助も受けて自宅で暮らしています。
石井さんの手が動き出しました。
創作の合図です。
墨を含んだ筆の重さは300g。
今の石井さんには大きな負担です。
息を止めて一筆一筆。
長時間は体力がもちません。
15分後。
再び筆を執ります。
納得いく「月」に出会いたい。
全ての力を振り絞ります。
ちょっと頑張り過ぎたよね。
書いてたらもたへんかった?限界と闘いながら生み出したこの日の「月」。
命を削りながら書と向き合う。
石井さんが自らの作品のスタイルを確立するまでにはさまざまな葛藤がありました。
生まれてすぐに筋肉の病気だと診断された石井さん。
成長とともに筋力は低下し一人ではどこにも行く事ができなくなりました。
そんな石井さんが書道と出会ったのは5歳の時。
すぐにその魅力のとりこになります。
頭角を現しコンクールでも度々入賞します。
一方書道に夢中になるほど友達と距離を置くようになります。
手助けを断られると家に籠もる事もありました。
その後大学へと進んだ石井さん。
自分に自信が持てず心の殻を破る事ができなかったといいます。
そんな石井さんに転機が訪れます。
介助に入った先輩が石井さんに何気なくかけた言葉。
人からの評価ばかり気にしていた石井さんの胸に響きます。
頼る事は恥ずかしい事ではない。
自分を受け入れ一歩踏み出した石井さん。
周りに人が集まり始めました。
周りとの関わり方が変わる中石井さんは自らの書道のスタイルを見つめ直します。
それまで伝統的な書道の型を重んじてきました。
しかしそれは本当に自分がやりたい事なのか?そんな時石井さんの悩みや不安に向き合ってくれたのが大学の後輩の朋子さんでした。
本当毎日いろんな話してました。
進行する病と闘いながら型にとらわれず書でありのままの自分を表現する。
石井さんは覚悟を決めます。
2012年石井さんはその創造性豊かな作風が評価され若手に贈られる手島右卿賞を受賞します。
作品は…「生きる」という文字が力強くせめぎ合うこの作品。
石井さん自身の生への叫びです。
自らの書の道を見つけた石井さん。
更に書く事に没頭していきます。
病院でリハビリをしながら10mの大作にも挑みました。
無数の人の魂がうごめき激しくぶつかり合っています。
創作活動が波に乗る一方病は容赦なく進行しています。
この日も石井さんは肺炎をこじらせ緊急入院をしていました。
ここ数年1年の半分は病院で過ごす事を余儀なくされています。
1週間後。
退院した石井さんはどうしても行きたい場所がありました。
ここですね。
到着〜。
カフェギャラリー。
これまで何度も個展を開いてきた場所です。
前回は壁一面に1,000枚の「花」という書を敷き詰めました。
体力が落ち大作を書くのが難しい中1文字に気持ちをぶつける事に挑戦しました。
自分の書が誰かに届き思いが伝わっている。
石井さんを奮い立たせます。
再び石井さんの創作の日々が始まります。
書道の世界ってもともと研ぎ澄まされた世界だと思うんですよ。
けど石井さんは本当にそこから出てくる力強さというかエネルギー量が素人の僕にもすごいエネルギー量だって分かる…。
書いている作品とご自身が直結していてそこに全く迷いがないっていうか作品と直結できるそのパワーやっぱり圧倒的というか…。
だから本当に力強さとパワーですよね。
そんなような作品だなと思うんですけれども。
今日は石井さんが体調がすぐれず急きょスタジオにお越し頂けないという事なのですが今電話がつながっておりますので。
石井さん。
はい。
もしもし。
よろしくお願いします。
風間です。
安藤です。
よろしくお願いします。
石井さんVTRの中で自分の殻を破って人とのつきあいが増えていく中自分が変わっていくのと同時に書も変化してくような感覚っていうのはありましたか?
(石井)ありましたねやっぱり。
やっぱりVTR拝見していてとても大きな存在として朋子さんがいらっしゃると思うんですけれども朋子さんの存在って石井さんにとってどういうものなんだろうなと…。
くだらない質問なんですけれども…。
全然いいですよ。
チヂミに文句をおっしゃられてましたが「これはチヂミじゃないかもしれない」と。
一番好きな朋子さんの手料理って何なんだろうなというのは…。
僕も聞こうとしてました。
そうですね…。
おいしそう。
結構こってりしてる。
ありがとうございます。
石井さん本日スタジオの方に「魂」という作品をお借りさせて頂いてありがとうございます。
「魂」という作品に込めた思いというのを改めて教えて下さい。
このむき出しの…本当にむき出しの魂がガ〜ッと集まってるっていう…作品の感想というか受けた印象なんですけれども。
2015/11/02(月) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV ブレイクスルー13「“生”の証しを叫ぶ 書道家・石井誠」[字][再]
ハートネットTV「ブレイクスルー」。第13回は、筋ジストロフィーの書道家・石井誠さん。覚悟の書に迫る。【出演】風間俊介(俳優)安藤桃子(映画監督)【音楽】若旦那
詳細情報
番組内容
ハートネットTV。月曜日は、壁にぶつかって悩んだ時、一歩前に進むためのヒントを探る企画「ブレイクスルー」。第13回は、書道界の芥川賞と言われる「手島右卿賞」を受賞した書道家・石井誠さん(32)。難病・筋ジストロフィーを患いながらも、書に向き合い続けている。テーマは一貫して「生きる」。限りある力と時間で、書き続ける石井さんの覚悟に迫る。【出演】風間俊介(俳優)、安藤桃子(映画監督)【音楽】若旦那
出演者
【出演】書道家…石井誠,【司会】風間俊介,安藤桃子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
福祉 – 障害者
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