(中川進)うっ…ああ…。
(パトカーのサイレン)
(野上刑事)中川進さん48歳。
(野上)背中と…腹をナイフのようなもので刺されてます。
腹の方が致命傷になってるようで…。
(遠藤刑事)さほど時間は経ってないな…。
まだホシはこの近くを逃走中かもしれん。
緊急配備だ。
(警官)おい!何してる!止まりなさい!止まりなさい!
(阿久津里子)放して!放し…。
(警官)大人しくしなさい!私じゃない…私じゃない!私じゃないって!放して!
(遠藤)あんたが持っていたこのナイフの刃形と被害者中川進の刺し傷が…一致した。
(野上)現場から中川の血液の他に容疑者のものらしき血液も検出されてる。
もみ合ってた時に容疑者は傷を負ったんだろうな。
あんたのその手の傷。
どうしてできたんだ?現場の血液な…中川はA型。
容疑者はB型とわかった。
あんたはB型だよな?素直に吐いたらどうなんだよ。
聞いてんのかあんた!私が…殺しました。
(朝日奈耀子)これからあなたの取り調べをする検事の朝日奈です。
まず名前と生年月日を教えてください。
阿久津里子。
昭和39年3月23日生まれ。
現住所は?栃木県那須町20の4。
家族は?夫がいたけど…6年前に死にました。
ご主人の他には?娘が…1人いた。
「いた」というのは?夫が死んだあと私たち大ゲンカしたの。
それで娘が家を飛び出したっきり音信不通。
今もどこで何してるかも知らない。
職業は?小学校教諭。
これからあなたの被疑事実について取り調べをします。
ただしあなたには黙秘権がありますから言いたくないことは言わなくて結構です。
伺います。
あなたは中川進さんを殺害しましたか?はい。
教育者として殺人を犯したことをどう思われますか?もともと教師なんて向いてなかった。
死んだ父親が教師をしていたからなっただけ。
被害者の中川進さんはフリーの雑誌記者ですね。
出版社に記事を持ち込んで採用されると報酬を得る。
ええ…。
金のために記事を書くろくでもない男。
あなたと中川さんの関係を聞かせてください。
動機については西麻布署で黙秘を続けていましたね。
阿久津さん。
男と女の仲だった。
出会ったのは…1年ほど前。
あいつが那須にスキーに遊びに来ててたまたま出会ったの。
でそれから?それで私も休みに東京に遊びに出て偶然街で出会った。
そして男と女の仲に…。
でも私は那須で中川は東京だもん。
会いたくてもうまくいかない。
そのうちあいつ…私のこと避けるようになって。
夫を亡くして6年。
その寂しさを中川は埋めてくれた。
会いたかった…。
諦めきれずにあの夜中川をあの公園で待ち伏せた。
あの公園…駅から中川のマンションへの帰り道だから。
よりを戻さないなら…殺してもいいつもりで。
(中川)バカな女だな!ただの遊びだよ。
(里子の声)私はカッとなって…。
もみ合って…手にケガをしたわ。
中川さんのどこをどう刺しましたか?覚えてない。
夢中だったから。
刺したのは何度ですか?1度。
でもやっぱり覚えてない。
夢中だったから。
あなたの処分はまだ決められません。
山さんはどう思った?
(大山聡)さあ…。
しかし検事が処分を決めなかったのはわかる気がします。
よりを戻さないなら殺してもいい…。
そう思ってナイフまで…。
彼女らしくない気がした。
ええ。
それに刺し傷は2か所あったのに刺したのは1度と…そう答えて慌てて…。
言い繕いましたね。
ええ。
被害者中川の血液はA型。
そして被疑者のものと思われる血液はB型。
阿久津里子もB型です。
ええ。
血痕が続いてるわね。
この先から消えてるわ。
確かに。
この出口から被疑者は住宅街の方へ向かっていますね。
血痕はないわね。
ええ。
検事…。
あそこに。
ここで阿久津里子は身柄を確保された。
ええ。
しかし公園の出口からあそこまで血痕はありません。
ですがそこからここまではまた続いている。
どういうことなんでしょうか。
ええ。
西麻布署ですか?鑑識にまわしてほしいんですが。
東京地検の朝日奈です。
阿久津里子の件なんですが現場の公園と彼女が逮捕された場所の血痕は調べたわけですね?ええ。
で詳しい分析は?まだ…。
至急分析してほしいんです。
ええ結果は検事室まで。
はい…。
(立川正人)ええ?朝日奈検事また処分決めなかったんですか?
(北野留美)確か被疑者自供してますよね。
ええ。
(立川)朝日奈検事の病気…また始まっちゃったかな。
へへっ…みたいですね。
(倉持哲也)朝日奈君はね何かに引っかかってんだよ。
はい。
君たちね…あっ…。
部長…。
(宮崎礼子)歯が痛いの。
少し前からなのよ。
(倉持)でも歯医者行ったら虫歯なんかどこにもないって言われちゃってね。
部長すいません。
ちょっとこちらへ。
なんですか?口を開けてください。
痛いですか?あご。
いや痛くないけど何だか重たい感じがするんですよね。
狭心症の症状の1つかもしれません。
狭心症!?狭心症って君…。
専門医を紹介します。
一度精密検査を受けられた方がいいと思います。
おっ…おっ…俺死ぬの?礼子さーん。
早期発見早期治療が大事です。
(倉持・礼子)はい。
礼子さん…。
早めに検査してもらってね。
いやぁさすが朝日奈検事は名医ですね。
部長言いつけ守った方がいいですよ検事の。
わかっとる。
病気の症状には色々ありますから軽くみない方がいいと思います。
たとえば足がむくんで心臓病という可能性もありますし。
(留美)あっ!私足むくんでます。
(立川)むくんでるのは顔だろ?検事僕最近ダルさが抜けなくて。
それは肝機能障害の疑いがあります。
だらしない生活してるバチがあたったのよ。
あっ検事。
ちょっとよろしいですか?妻のサユリなんですが…最近肌荒れとですねそれからこのあたりに急にシワが増えましてね。
あら。
シワぐらい私だってあるわよ。
ほら。
それは君あれだよ。
はい?年のせいだ。
(立川)部長!
(倉持)なんだよ。
(礼子)ダメでしょ。
女性にそういうこと言っちゃ。
そのとおりです。
(ため息)那須警察?私那須警察に阿久津里子の人柄や家庭環境娘の居場所などがわかったら教えてくれるようにと頼んでおいたんです。
さすが山さんね。
それで?阿久津里子…那須の学校ではいい先生だと評判だったそうです。
ですから今度の一件で大騒ぎみたいで。
そんないい先生がなぜ殺人をと。
中川は金のために記事を書くろくでもない男か…。
検事。
今度の事件何かウラがありそうですね。
中川の記事が関係してるかも。
それと那須警察の古手の交通課の巡査部長が昔阿久津里子の事故を処理したことがあって覚えているそう言っていました。
どうやら里子は駆け落ちをしようとして男と駅で待ち合わせをしたのに事故に遭って間に合わなかったそんな噂を聞いたそうです。
駆け落ち…。
(里子)血痕?中川さんを殺害した被疑者のものらしき血痕が現場の公園の出口まで続いていましたがそれから先突然消えてそしてまたあなたが身柄を確保された道の少し前から続いています。
どうしてですか?さあ…?そんなこと言われても。
でも残された血痕はあなたのものですよね。
検事さん夢中で覚えてないって何度言ったらわかるの!?昔駆け落ちをしようとしたそうですね。
なんで今頃そんな話を…。
本当なんですか?そうよ。
私はやると決めたらやるの。
では駆け落ちはしたんですね?那須の外れの小さな駅で男と待ち合わせた。
でも私は行かなかった…。
それだけ。
事故があって行けなかった。
その後その相手の人とは?別れたっきり会ってない。
今もどこで何してるかも知らない。
もう終わったことよ。
検事さん私は罪を認めてるの。
自供した…。
私は中川を殺した。
さっさと処分決めてよ。
まだ決められません。
なんで!?調べることがあります。
(衝突音)
(編集長)中川は確かにうちに記事を売り込みに来てましたが阿久津里子っていう人のことは聞いたことが…。
この人ですが…。
(編集長)ああ〜覚えてます!
(編集長)この人なら何度かこのビルの表で中川と言い合いになったのを見たことありますねえ。
でも男と女の仲だったとは…。
私はてっきり2か月前の記事のことでもめてるのかと…。
(野々村伸一)編集長その件なら私の担当なんで…。
わかった。
野々村です。
東京地検の朝日奈です。
その2か月前の記事を見せてください。
(野々村)これです。
(野々村)はいどうぞ。
(野々村)その記事も中川が持ち込んだんです。
私も被害に遭った女子大生に会いました。
中川の記事が事実だというので2人で編集長にかけ合って掲載したんです。
この「城南大学の講師」というのは…。
(野々村)名前は杉本哲雄。
杉本は結局大学を辞めさせられた。
(野々村)で大学の校舎の屋上から身を投げて自殺した。
自殺…!その事件を担当した西麻布署の遠藤っていう刑事がそう言ってました。
そうですか。
杉本の入籍したばかりの奥さんがうちに抗議に来ましたよ。
(杉本友子)夫がセクハラなんてするはずないんです!!記事を訂正してください…!せめて…夫の濡れ衣だけでも晴らしてください!お願いします…。
お願いします…!
(野々村の声)ウラとってあるんでね相手にしませんでした。
中川さんと阿久津さんはこの記事のことでもめていたんですか?いえいえ…まったく関係ないと思いますよこの記事とは。
そうですか…。
(遠藤)あれは事件じゃありませんねえ自殺です。
遺書はありませんでしたが自殺と断定できる根拠があったんです。
根拠…といいますと?
(遠藤)杉本哲雄…当時32歳でしたが遺体の様子からも事件性はありませんでした。
ああそれに…この記事のせいで杉本は人生に絶望してました。
次の准教授候補だったそうですが全部失ってしまって…。
杉本が尊敬してた大学の学部長…。
ああ!検事もご存じでしょう。
よくテレビでコメンテーターやってる米山って学者さん。
(米山辰也)「一部の人間が甘い汁を吸って弱い人々につらさを押しつけている」「そんな格差社会じゃダメなんですよ!」
(遠藤)格差社会の是正を…って叫んでる。
その米山さん杉本さんが飛び降り自殺した夜直前まで大学の近くの店で一緒に飲んでたんだそうです。
直前まで…ですか。
ええ。
杉本さんは米山さんに言ったそうです…。
(杉本哲雄)学部長…僕はもう死にたいです。
おいおい…!バカなことを言うな。
ほら飲め…。
(杉本)すいません…。
(遠藤)2人が別れたあと杉本さんは大学の校舎に向かい…。
うわーっ!!
(遠藤)飛び降りた。
そのあと杉本さんの身重の奥さんが署に来ましたよ。
刑事さん…自殺じゃない!夫は自殺なんかする人じゃないんです。
奥さん…。
お願いします…!もう一度…調べ直してください!その奥さんの名前は?確か…杉本友子だったと。
杉本友子。
はい。
あのもうよろしいでしょうか。
私署に戻らないといけないものですから…。
ご苦労さまでした。
失礼します。
身重の妻と夫の自殺…。
2か月前のこの記事が今度の事件に繋がるんでしょうか…。
山さん…調べてほしいことがあるの。
はい。
(尾崎幸夫)友ちゃん?ええ。
こちらで働いてらっしゃると聞いたんですが…。
(尾崎)いないんだよ。
5日前から連絡がとれない…。
5日前から…ですか。
妊娠していて予定日が近いんで心配してるんだ。
行方不明なんですか?そうなんだよ。
携帯にも出ないし。
そうですか…。
杉本友子さんってどんな方ですか?いい子だよ。
うちの看板娘。
明るくって元気がよくって常連さんの人気者だ。
杉本さんともここで出会ったんだ。
そうだったんですか。
杉本さんもいい人だったよなあ。
あんな雑誌のでたらめな記事さえなければこんなことには…。
あっそうだ。
あの人なら友ちゃんの行方知ってるかもしれないな。
あの人?うん。
うちの常連で江口っていうタクシーの運転手がいるんだ。
江口洋司さん。
この近くに住んでる。
友ちゃん江口さんのことを「おっちゃんおっちゃん」って懐いていたなあ…。
おっちゃん。
これ私が作ったきんぴら食べて。
(江口洋司)おおー…!んっ!友ちゃんうんめえよ。
江口洋司さん…ですか。
そこに写真が張ってあるよ。
杉本友子…
5日前中川進が殺害されてから姿を消している…
(チャイム)
(チャイム)江口は5日前から休んでるんです。
連絡もないしこっちも困ってるんです…。
ありがとうございました。
江口も5日前から…
(江口美枝子)東京地検の検事さんがうちの人になんの用?実は中川さんという方が殺害された事件について調べているんです。
中川進さんをご存じなんですか?会ったことないわ。
あっでも自殺した杉本さんなら知ってる。
記事を書いたのが中川って男だってことも。
そう…死んだんですか中川って人…。
はい。
でもなんでそのことでうちの人に…?伺いたいことがあるんです。
杉本友子さんの行方をご存じないかと思って…。
あの定食屋の人よね?行方…わからないの?ええ。
うちの人知らないと思うわよ。
私も知らない。
ご主人5日前から会社を休んでらっしゃるそうですね。
今どちらに?急になまけ病が出たみたいで困ってるの。
仕事行きたくないなんて言い出して…。
たぶんどっかでパチンコでもしてんじゃないかしら。
ではうちへは帰られてるんですね。
ええ。
あっ…話それだけならもういいかしら?私仕事に戻らないと…。
はい。
ありがとうございました。
(米山)杉本のことを…なぜ今頃?担当している事件にかかわりがあるかもしれませんので。
そうですか…。
米山さんは杉本さんが亡くなる直前まで一緒にいらっしゃったそうですね。
ええ。
一緒に飲んでました。
(米山の声)元気出せ。
つらいことは酒飲んで忘れろそう励ますつもりが…裏目に…。
あのあと飛び降りるなんて…。
私の励ましが足りなかった…。
杉本さんは米山さんを尊敬されていたと聞きました。
ええ。
こんな私を慕ってくれてました。
いい男でした。
だから私は今でも信じられない。
あの杉本が女子学生にセクハラなんか…!記事はねつ造だと思われますか?もちろんです!でも記事をくつがえすだけの証拠がない。
悔しいですよ!あいつの汚名を晴らすことができなくて。
(藤村真紀)何…?何を聞きたいの?2か月前に出た『週刊ズーム』の記事のことなんです。
事実よ…。
私は悪くない。
(真紀)関係を迫られて断った。
そしたら落第点をつけられたの。
それだけのことよ…!私はもう忘れたい。
杉本先生が死んだの私のせいじゃない!もう来ないで!!
(美枝子)あなたどこ行ってたの!?仕事休んであの子捜してたんだ?
(江口)俺はあの子が心配なだけだ。
昼間…東京地検の検事が来たわよ。
…え?中川が殺された事件のことで。
新聞見てないの?ほら。
(美枝子)「女が逮捕されて罪を認めた」って書いてある。
あの子か!?
(美枝子)違う。
罪を認めた女の名前は阿久津里子。
でも検事はあの子の行方捜してる。
中川を殺したのはあの子なの…?そんなはずはない!じゃあ…。
あなたなの…?…そんなはずないわよね!ねえねえねえ明日那須でしょう?あなたを育ててくれたおじさんの七回忌。
私も一緒に行っていい?ねえどうなの〜?勝手にしろ…。
私仕事休みとったの。
支度しなくちゃ!里子は…?心変わり。
え?来ないの里子は…。
気持ちが変わったって。
やっぱり君は2か月前の記事が今回の事件にかかわりがあると。
それはまだわかりません。
うん…。
ん?ああ…そうだ。
あの…朝日奈君ありがとう。
はい?耀子ちゃんに言われて部長精密検査したの。
やっぱり狭心症だった。
ああそうでしたか。
心筋梗塞の一歩手前だったよ。
でも間に合ったの。
あとは治療受けてねまあ摂生するようにって言われたよ。
ほんとよ!摂生よ摂生!!わかったよー。
もう礼子ちゃんさあもう段々僕の母親に似てきちゃったよ。
どうした?朝日奈君。
あっすいません…。
ちょっと事件のことを。
娘とケンカをした母親がいて娘がうちを出て6年間音信不通。
平気ではいられませんよねえ母親でしたら。
そうだな。
そうですよねえ。
母親っていうのは特別だ。
「お袋」っていうぐらいだから。
ねえ。
お袋ねえ…。
胎盤や子宮があって初めて子供は産まれる。
それを「袋」って呼んでたからお袋って呼ぶようになったって。
俺の聞いたのは違うなあ。
昔は家の切り盛りをしていたのは母親の役目だったんだよ。
だから金の入った袋を管理していたからだっていうんだよ。
ねえ。
耀子ちゃんはどう思う?子供は母親の懐に抱かれて育つ…。
やわらかな袋に包まれるように。
母親の懐に抱かれて…。
やわらかな袋に包まれるように…。
検事昼間言われた件ですが…。
阿久津里子の娘の行方がわかったの?それはまだ…。
ただ娘の名前がわかりました。
阿久津友子です。
友子…。
それと里子と娘のケンカの経緯もわかりました。
里子と中学教師をしていた夫の阿久津勇作そして友子の3人は仲のいい親子だったそうです。
友子は父親っ子で父親を慕っていた。
でも6年前勇作は病気で倒れました。
緊急の輸血が必要だったのですが間に合わずに病院は娘の友子に輸血を頼んだ。
ですが里子が輸血はさせないでくれと言ったそうです。
それで友子は知ってしまったんですね。
勇作が実の父親ではなかったことを。
問いつめられて里子はとうとう本当のことを言ったようです。
26年前勇作と出会った時自分は妊娠していたと。
相手はかつて駆け落ちをしようとした男。
勇作はそれを知ったうえで結婚しようと言った。
里子は勇作と結婚。
家族になった。
でも病気で勇作は死んだ。
勇作が実の父親だと信じ込んでいた友子には耐えきれない事実だったでしょう。
(友子)お母さんとお父さんは愛し合ってなかったんでしょう。
お母さんは別の男を愛して…!だから私が生まれたんでしょう!?…友子!口論の末に友子は家を飛び出したそうです。
(美枝子)このバスだとホテルに直行できるのよ!東京から3時間で行けるの。
あっ…。
初めての旅行ねえ。
新婚旅行みたい!
(鐘)
(美枝子)うわーきれい…!ホテルにチャペルがあるんだ。
(美枝子)ねえ私たちもいつか式挙げようよ。
私一度でいいからウエディングドレス着てみたい。
ねえ?ちょっともう…。
検事…西麻布署から血液の分析結果です。
ありがとう。
やっぱり違う。
中川殺害現場で採取された血液と里子が逮捕された場所で採取された血液は一致しなければおかしい。
2つの血液は違うんですか?ええ。
現場の血液はSTS法とTPHA法で生物学的偽陽性が見られるけど里子の血液にはそれが見られない。
どういうことですか?その生物学的偽陽性というのは。
体の状態を示す1つの検査結果なの。
関節リウマチに罹患してるかもしくは妊娠してる可能性が。
妊娠…?ええ。
検事実は先ほど那須警察から連絡があったんです。
阿久津友子の高校時代の友人というのが10日前に偶然東京で友子を見かけたそうです。
でその時友子は妊娠していたと…。
阿久津友子と杉本友子は同一人物。
あなた杉本哲雄さんをご存じですか?知らないわよ。
誰よ?それ。
この記事でハレンチな大学講師と名指しされた人です。
知らないわね。
では杉本友子さんは?知らない。
杉本哲雄さんの奥さんあなたの娘さんです。
なぜ答えないんですか?検事さん最初に言ったじゃない。
私には黙秘権があるって。
答えたくないことには答えなくていいって。
杉本友子さんが娘さんだとは認めないんですか?答えないって言ってるの。
ではあなた関節リウマチに罹患してますか?妙なこと言わないでよ。
医者でもないのに。
朝日奈検事お医者さんなんですよ。
答えたくない!私は中川を殺したの。
早く起訴して有罪にしてよ。
座りなさい!あなたの処分はまだ決められません。
なんでよ?中川さん殺害現場で採取された血液とあなたが逮捕された道に残されていた血液は違う血液だったんです。
あなたの血液を採取し検査します。
え?何…。
あなたの血液を検査すると言ったんです。
いい法事だったわね。
おじさん喜んでるわよきっと。
何よ…ムスッとしないでなんか言ってよ。
あのねこんな時ぐらいあの子のこと忘れたらどうなの?お前には関係ない。
あるわよ関係は。
う〜ん!美味しい!こんなごちそう久しぶりね。
あの子が殺したのよ。
中川を。
お前…。
そうなの。
だから里子があの子をかばって…。
俺は東京に帰る。
検事中川の周辺を洗っていたらある人物が浮かびました。
実は中川に金になりそうな記事を斡旋していたのは栄林出版の契約記者の野々村という男だそうです。
野々村です。
野々村が仲介して中川に記事を書かせていたそうです。
そう…。
うわあっ!
(チャイム)なんだ?あんたら。
あの江口洋司さんですか?ああ。
東京地検の朝日奈と申します。
事務官の大山です。
検事さんが俺になんの用だ?杉本友子さんに会いたいんです。
あの子に?今どちらにいるか…。
知らない。
俺も捜したけど見つからなかった。
奥さまはお仕事ですか?いえ。
では今どちらにいらっしゃいますか?那須のエピナールってホテルにいるよ。
俺も行ってたけど俺だけ先に帰ってきた。
江口さん中川進さんという方ご存じですね?知ってる。
杉本さんのひどい記事を書いた男だ。
野々村さんという記者は?中川さんの同僚ですが。
知らない。
では阿久津里子さんをご存じですか?知らない。
もう帰ってくれ。
(パトカーのサイレン)
(遠藤)朝日奈検事!何があったんですか?殺人事件です。
殺されたのはこのマンションの住人で野々村って男です。
検事さんはなんでここに?阿久津里子の件で野々村に聞きたいことがあったんです。
そうですか。
凶器は?まだです。
なんで野々村が…?車を降りたところで襲われたようですね。
死亡推定時刻はわかりますか?夜の7時頃だと思われますが。
(美枝子)そうなんだぁ。
那須に来てんだ。
何年ぶりだっぺ。
そりゃ会いたいけどでも明日帰んないと…。
里子の駆け落ちしようとした相手がわかった?ええようやく。
江口洋司です。
江口ね。
江口は早くに両親を亡くして父親の友人に育てられたそうです。
その江口と阿久津里子は高校の同級生だったそうです。
で里子は江口に引かれた。
しかし中学の教頭をしていた里子の父親は2人の仲を許さなかった。
それで駆け落ちしたのね。
ええ二十歳の時だそうです。
車の事故があって里子は駅には行けなかった。
で江口は今同じ高校に通っていた別の同級生と結婚しています。
同級生…?その同級生の名前は…。
江口美枝子ね。
はい。
友ちゃんと江口さんの出会ったきっかけ?友子さんの旧姓は阿久津さんですよね?ああそうだよ阿久津だよ。
那須には多い名字だって友ちゃん言ってた。
杉本さんは東京出身で…だから友ちゃんのしゃべり方が面白いって。
これ食べてみて。
この赤ナスうんめえから。
赤ナス?フフフフ…。
え?ごめんごめん。
なんかいつも友ちゃんがしゃべんの見てうれしくなっちゃうんだ。
トマトを赤ナスだなんて。
あそっか…。
ハハハハ…。
うまい!でしょ。
あんた栃木の人かい?え?そうですけど。
俺も栃木だ。
栃木のどこ?那須です。
俺も那須だ。
あそうなんだ!それで親しくなったんですか?
(尾崎)ああ。
ある時江口さん…。
名字なんていうんだい?え?なんでそんなこと…?昔の知り合いによく似てるから。
阿久津です。
阿久津友子。
(尾崎)江口さんなんだか驚いていたな。
(美枝子)いませんようちの人。
私が今日の昼前に那須から帰ってきたらもういませんでした。
どちらに行かれたんですか?さあ…私にもさっぱり。
どうぞ。
ありがとうございます。
実は中川さんの事件を調べてるうちに色々とわかってきたことがあるんです。
阿久津里子さんに娘さんがいたこと。
その娘さんが杉本友子さんであること。
そう…。
里子さんと江口さんの関係そしてあなたが里子さんの同級生であったこと。
昔をほじくり返したいんですか?真実を知りたいだけです。
昨夜のことなんですけど中川さんに記事の仲介をされていたと思われる記者仲間の野々村さんという方が殺害されたんです。
野々村…?ええ。
失礼ですが昨夜の7時頃どちらにいらっしゃいましたか?那須にいました。
ご主人がその頃どちらにいらっしゃったかはご存じありませんか?8時過ぎに私たちがここで会ってるんです。
うちの人が7時にどこにいたかなんて知らない。
うちの人を疑ってるの?うちの人じゃないわよ。
あの人は人殺しなんかできる人じゃない。
ゆうべから何度かけても電話に出ないのよ。
どこにいるか捜してよ。
検事さんなら捜せるでしょ?那須へ…?大山君を?今回の事件は阿久津里子江口洋司そして妻の江口美枝子。
那須の高校時代の同級生3人がかかわっています。
そうか。
それに阿久津里子の娘が中川が殺害された日から行方不明になってます。
江口も奥さんからの電話にも出ず消息がわかりません。
2人は那須にいる可能性も考えられます。
わかった。
行ってきたまえ大山君。
わかりました。
この2人を見かけたことありませんか?さあわからないですね。
どうもありがとうございました。
この2人を見かけたことはありませんか?ちょっとわからないですねごめんなさい。
遠藤刑事朝日奈です。
阿久津里子のことで調べてほしいことがあるんです。
そうですかありがとうございました。
宿泊者リストを見せていただけますか?はいではラウンジでお待ちください。
はい。
お待たせいたしましたこちらです。
拝見します。
ああまた降ってきましたね。
あのこれどうぞご利用ください。
ああ助かります。
この1週間ずっと夜になると決まってにわか雨が降ってるんです。
そうなんですか。
そう…。
2人の行方はまだわからないのね。
ええ。
杉本友子が心配だわ。
臨月の体で無事いるのか…。
はあ…。
山さん…?あいえ江口と友子の行方を捜すうちに母親の気持ちになってしまって思わずお袋のことを思い出しました。
お母さんの…?ええ。
ですから阿久津里子の気持ちがわかるような気がするんです。
私の死んだお袋でも里子と同じことをしたんじゃないかって…。
私のお袋は怖かったです。
私が悪さをすると本気で怒った。
バンバン尻をたたかれました。
すごい力で目一杯。
でも優しかった。
私を守ってくれました。
私のためならなんでもしてくれた。
母親って…お袋ってそうなんですよね。
何があっても我が子を守ろうとする。
それがたとえバカな愚かなことだとわかっていても。
(大山美穂)パパおかえりなさい!ただいま。
(大山サユリ)おかえり。
食事まだでしょ?うん。
お母さんを大事にするんだぞ美穂。
大事にするんだぞお母さんを。
あなたは中川進さんを殺害していませんね。
何をバカなことを…。
犯人の血液にはある特徴がありました。
関節リウマチを患っているか妊婦の可能性があります。
警察に補充捜査も依頼しましたし那須でも調べてきました。
あなたの病歴は見当たりませんでした。
あなたから採取した血液の分析結果も出ました。
あなたの血液に異常は見つかりませんでした。
あなたが犯人ではないことを示しています。
殺害を自供した理由は1つ。
娘の友子さんをかばうためです。
私…。
真実を話してください。
検事さんのおっしゃるとおりです。
私は友子が家を出てからのすべてを知ってました。
(里子の声)住まいも仕事も…。
かわいい娘…私の子ですから…。
友子が私のことをどう思おうと娘…。
(里子の声)杉本さんと出会ったことを知りました。
いい人だということも知りました。
その杉本さんが中川の記事で絶望していることも知りました。
すべてを失った。
マスコミは怖い。
嘘が真実になる。
杉本さんは将来を消され身重の娘を残して死にました。
友子は中川を恨んでました。
私も…男と女の仲なんて嘘…私も中川を恨みました。
友子は中川を殺すかもしれないと思った。
事件の前の日私見たんです。
中川を?決めたの。
明日の夜…。
(里子の声)次の日の夜私は必死で友子を捜しました。
でも見つからない。
もしかしたらあの公園かと思って…。
そうしたら私の目の前を…。
(里子の声)友子は途方に暮れたように歩いてました。
私はハッとなって急いで公園に行きました。
(里子の声)友子が殺したと思った。
そのまま現場から走り去って離れた道で友子の血が現場から出口まで残されていたことに気づいて…。
うっ…。
(里子の声)友子の指紋を消すために血の付いた私の手でナイフを握り直しその血をわざと道路に垂らした。
私と友子は同じ血液型だから…。
(警官)止まりなさい!
(里子の声)そして私は逮捕されました。
私じゃない!私じゃない!私は自分を犯人に見せるための芝居をし勾留された2日間で必死に動機を考えた。
すべて友子さんのためですね?里子さん友子さんの行方がわからなくなっています。
中川さんの殺害事件が起きてからです。
友子さんの行方に心当たりはありませんか?自殺…。
自殺?あの子死ぬわ…。
あの子はそういう子なんです!検事さん止めて!友子を死なせないで。
おなかには赤ちゃんが…杉本さんの子供がいるんです。
友子さんの行方に心当たりは?杉本さんはもういない…。
あの子が行くとすれば大好きだった父親がいた那須…。
そのあとも杉本友子さまという方のご宿泊はありませんが…。
そうですか。
阿久津友子という名では?いいえ…。
ありがとうございました。
この人なんですが見かけませんでしたか?
(男性)さあ知らねえなあ。
そうですか。
ありがとうございました。
(女性)知ってる?
(男性)知らない。
そうですか。
ありがとうございました。
この人を見かけませんでしたか?知らないねえ。
見てませんね。
そうですか。
ありがとうございました。
他に友子さんが行きそうなところは?あ…あの子が小さい時好きだった場所が。
もう廃校ですけど私が元勤めていた小学校です。
幼い友子が遊びに来て私の帰りを待ってました。
(里子)友ちゃん。
(友子)お母さん!今日も待っててくれたの?うん!ありがとう。
さあ帰ろうか。
(里子の声)友子は私の命でした。
(物音)ちょっとあなた!
(里子)友子!待ちなさい!来ないで!友子さんですね?来ないで!お話があります。
来ないでお願い来ないで!友子!友子!友子さん!私は死ぬの!友子さん落ち着いて。
(友子)嫌よ嫌!死なせてお願いだから!本気で言ってんの?本気よ!私はもうどうなったっていい!バカなこと言うんじゃないの!おなかに赤ちゃんがいるんでしょ?あなた母親になるんでしょ?あっ…あっ…。
友子!陣痛始まってるんですか?
(うめき声)陣痛間隔が3分を切ってるわ。
救急車を?それじゃ間に合わない。
おそらく1時間以内に産まれるわ。
山さん車を回して。
近くの病院に連れていく。
わかりました。
すいません。
息を吸って吐いて…。
そうそうそう。
先生は?今往診に。
すぐに連絡をとってください。
陣痛間隔が3分を切ってるんです。
わかりました。
隣の分娩室の方へ。
はい。
(里子)もうちょっと後ろ。
そうそうそう。
そこそこ…。
大丈夫?ゆっくりゆっくり。
先生は戻るのに1時間ぐらいかかります。
間に合わないわ。
検事さん助けて。
お医者さまなんでしょ?友子を助けて。
おなかの赤ちゃんを助けてください。
わかりました。
私がやります。
お願いします。
お願いします。
ありがとうございます。
ハァ…ハァ…ああっ!シート敷きますから持ち上げてくださいね。
12の3!はいオーケーです。
友子!友子!もう少しですからね。
大きく息を吸って止めて。
いきんで!
(産声)
(産声)よく頑張ったわね。
よし!よかった。
私の子…。
元気な男の子です。
うれしい。
ありがとうございます。
お礼ならお母さんに言うのね。
お母さん…。
友子…。
ごめんなさい。
ありがとう。
検事さん私…。
あの時は死ぬしかないと思ってたんです。
でも…。
この子を思うと死に切れなかった…。
かわいい…。
(友子)信じられないくらいかわいい。
母親になるってこういうことなんですね。
そうですね。
お母さんのあなたへの思いも同じです。
こうしてこの子を抱いて初めてわかった気がします。
…母の気持ちが。
検事さん私が中川を殺しました。
俺は金をもらって記事を書いたんだよ。
嘘八百の記事をな。
やっぱり…!ハッハッハッ…俺たち記者はなんでもできるんだよ。
(中川)亭主が死んだのはお前が浮気してよその男の子を宿したからだって書いてやろうか?帰れバカ!
(友子の声)そのひと言で私は決めたんです。
(友子の声)中川を殺すと…。
(友子の声)逃げる中川を後ろから刺しました。
それから?
(友子の声)逃げました。
呆然となって途方に暮れて…。
あなたが歩いてるその姿をお母さんが見ていたんです。
だから自分が殺害したと名乗り出たんです。
母親だから。
でもね友子さんあなたは中川さんを殺害してはいないんです。
あなた背中を刺したと言いましたね?確かに背中に傷はありました。
でも臨月のあなたは大きなおなかが邪魔をして深くは刺せなかったんです。
致命傷は別だった。
おなかの刺し傷が致命傷となったんです。
おなか?だからあなたは中川さんを殺害してはいないんです。
検事さん本当ですか?ええ。
私夫が死んで何もかもなくしたと思った。
故郷には帰れない。
お母さんともあんなことになって…。
もう家族はいないと…。
友子…。
あなたは私の子よ。
そして阿久津勇作の娘。
(友子)えっ?たとえ血は繋がらなくてもあの人の子なの。
愛のない結婚だったってあなたは私を責めた。
確かに最初はそうだった。
私は駆け落ちしようとしていた相手を愛してた。
そしてあなたが生まれた。
それでも忘れられなくて私は何度も駆け落ちしようとしていた駅のホームに立ったわ…。
(里子の声)何度も何度も。
結婚してからも。
そしてある時…。
(里子の声)あの人は知ってた。
私の心はまだ相手にあることを。
そして言ったの。
(阿久津勇作)行けよ東京へ。
それがお前の幸せならそうすればいい。
後悔しないように生きろよ。
(里子の声)あの人はそう言ってくれた。
その時初めて知ったの。
阿久津勇作の深い愛を…。
あの人は私をそしてあなたを心の底から愛してくれた。
お母さん!だからあなたはあの人の娘なの。
あなたのお父さんはあの人なのよ。
検事さん…。
(友子)お母さん抱いてくれる?検事?少し2人にしてあげたくて。
遠藤刑事朝日奈です。
頼みたいことがあります。
検事。
江口さん!里子…!検事さん私が駆け落ちしようとした人この人です。
あの日私はこの駅に急ぎました。
(里子の声)美枝子が車で送ってくれました。
あっ!里子…里子!里子!
(美枝子)里子里子!美枝子…あの人に伝えて…。
私はすぐに行くからって…。
わかった。
わかったわよ。
俺はそんなことは聞いていない。
俺が聞いたのは里子の心変わりだ。
一緒に東京に出る気はなくなったと…。
意識が戻ったのは10日後。
この人はもう東京へ。
私と美枝子は東京へ出てこの人を捜しました。
でも見つからない。
1か月捜して那須へ帰って…。
東京へ残った美枝子が戻ってきて言ったんです。
やっと彼を見つけたわ。
ほんと!?でも女がいるの。
えっ?もう東京で2人で仲良く暮らしてるわ。
嘘だ。
俺は…俺はずっと1人だった。
ずっと1人で…。
2年経って突然美枝子が訪ねてきた。
(江口の声)美枝子が俺に言ったのは…。
里子はもう1人じゃないわ。
えっ?阿久津という男と結婚したの。
(江口)検事さん友子は?無事です。
無事男の子を出産しました。
よかった…。
友子は…友子は俺の子なんだろ?違う。
えっ?確かに血は繋がってる。
でも友子はあの人の子なの。
阿久津勇作が心から愛した娘。
だからあなたとは親子ではないの。
(遠藤)検事!
(遠藤)検事!美枝子…。
友子さんは中川さんを刺したと自供しました。
でも友子さんが刺した傷は致命傷ではありませんでした。
犯人は他にいます。
中川進さんを殺害したのはあなたですね?それに野々村伸一さんを殺害したのも。
なんでそんなことを?私じゃないわよ。
(美枝子)中川も野々村も殺してない。
第一動機がない。
ご主人が中川さんを殺害すると思ったからです。
(江口)確かにあの夜俺は公園へ急いだ。
友子が中川をやると言った夜だった。
友子を止めたかったし止められなければ自分が…。
でも間抜けなことに渋滞に巻き込まれてしまってたどり着けなかった。
中川さん殺害現場から犯人の血痕が採取されました。
関節リウマチを患ってる可能性のある人の血液でした。
あなた自宅近くのさつき医院で軽い関節リウマチの治療をなさってますね?でも…でも野々村のことはどうなの?野々村は夜の7時に東京で殺されたんでしょ?私はあの夜は那須にいたの。
殺せるわけがないじゃない。
あなた那須にはずっといたんですか?ホテルの部屋にいたわ。
部屋から那須岳を見ていた。
星がきれいだった。
山さん。
はい。
おかしいですね。
ホテルの人が言っていました。
ここ一週間夜になると決まってにわか雨が降っていると。
雨だったのに星がきれいでしたか。
あなたは夜東京に向かっていたから雨を知らなかった。
あなたは野々村さんを那須で殺害したんです。
私よ…。
私が殺した。
うわっ!うっ…。
(美枝子の声)野々村を殺して野々村の車で東京に行きマンションの駐車場で車の脇に野々村の遺体を置いた。
(美枝子の声)そして急いで新幹線に乗り那須に戻った。
中川も私が…。
この人から聞いたの。
今夜友子が中川を殺すと。
この人は友子を止めようとしてた。
止められないのならこの人はきっと自分の手で…。
だから私は公園に行った。
(美枝子の声)中川は…。
(中川)ああ…。
くそ…。
(美枝子の声)「あの男許さねえ」って言ったんです。
男?だからこの人が刺したんだって…。
中川が生きてたらこの人が罪になる。
(美枝子の声)だから…。
(中川)ううっ!ああ…。
(美枝子の声)公園の表で血が出てるのに気づいて慌ててハンカチで血を止めた。
(カメラのシャッター音)
(美枝子の声)それを野々村に見られていた。
中川とお金の分配でもめていた野々村はあの夜あの公園で…。
中川にお金を渡すことになっていた。
そして私のやったことを見て脅してきた。
(美枝子の声)だからあの日ホテルから那須に呼び出した。
うまくいくはずだった。
この人の前でわざと友子や里子の話をすれば怒って帰る。
俺は東京に帰る。
(美枝子の声)アリバイ工作ができると思った。
(美枝子)すべて検事さんが言うとおりよ。
(美枝子)何よその目…。
私を哀れんでるの?私があんた騙して江口を奪ったから…。
(里子)美枝子…恨んでなんかない。
嘘よ!ずるいわよそういう言い方。
なじりなさいよ。
思いっきりなじったらいい!美枝子本当なのよ!あなたの嘘のおかげで私は阿久津に出会えた。
阿久津勇作私の大好きな人。
(里子)それに美枝子…。
あなたは親友だったはずなのにある時から私を避けてた。
理由はわからなかった。
友子が家を出て私も東京で友子を見てた。
そしてわかった。
えっ?友子を見てて杉本さんを知った。
この人と友子が出会ったことも知った。
この人の暮らしが知りたくて私アパートまで行ったわ。
そこにあなたがいた。
(里子の声)この人に寄り添うあなた…。
幸せそうだった。
私はすべてを知ったわ。
あなたはこの人が本当に好きなんだって。
愛してるんだって。
里子…。
だからもういいの!もういいの。
(泣き声)さあ行きましょうか。
(美枝子の泣き声)あなたは来なくていいのよ。
バカ言うな。
お前を1人にできるわけがない。
あの頃の俺は東京で荒れた暮らしをしてた。
でもお前はずっとそばにいて俺を支えてくれた。
あなた…。
もういいんだよ。
俺にはお前が必要だ。
これからも2人で生きていこう。
でもまだ事件は終わっていない
杉本さんの死の真相は何も解明されていない
検事。
こんなものが…。
メモリーカード…。
ある男から話を持ちかけられました。
この人ではありませんか?はい。
この人です。
(美枝子の声)野々村は本気だ。
黙らせた方がいいって…。
車を使ったアリバイトリックも考えてくれた。
もう1つ聞かせてください。
あなた中川さんが殺害される前にこう言ったと言いましたね。
「あの男許さない」と。
(美枝子)はい。
本当に「あの男」とそう言ったんですか?中川さんを最初に刺したのは友子さんです。
「あの男」とは言ってないんじゃないですか?美枝子さん。
どっちでもいいじゃない。
よくありません。
「あの女許さない」そう言ったんじゃありませんか?くそ…。
あの女許さねえ!このままだと友子さんの罪になる。
あなたはそう思った。
だから友子さんを救うためにも中川さんを刺した。
だって…だってあの子はあの人の娘だもん。
惚れた男の…愛した男の娘だもん。
そうするしか…。
そうするしかなかった。
それにあの子はもうすぐ母親になる。
生まれてくる子の母親だもん。
そうするしか私には…。
私には…!江口美枝子さんあなたを殺人の罪で起訴します。
(真紀)検事さんの言うとおりです。
私…ほんの冗談のつもりだったんです。
落第点よ落第!えっ?こんなことならさ杉本先生に体で迫って点数稼げばよかったわよ。
やめてよ真紀。
(真紀)冗談よ!私は杉本先生が好きだった。
でも落第点をつけられた。
留年なんてことになったら父親に怒鳴られる。
そう思ってたら米山学部長に呼び出されたんです。
米山さんはなんと?落第点を及第点に変える方法があるんだ。
私の知り合いの雑誌記者に話せば記事をねつ造することができるんだよ。
えっ?
(真紀の声)そして本当に記事になった。
やがて真実を知ったんです。
米山さんの本心を知ったんですね。
ええ。
米山学部長には不正入試の噂。
それで得たお金は学長選挙資金に。
それを杉本先生が内部告発しようとしてた。
記事のことで杉本先生に問い詰められました。
本当のことを言ってくれ!頼む!
(真紀の声)そのことを米山学部長に漏らしたら杉本先生は死んだ。
怖くなってますます真実を話せなくなった。
そうです。
私怖くて…怖くて…。
私を誰だと思ってるんですか?私が何をした?不正入試で得たお金を使って学長選挙に勝とうとしました。
名誉毀損で訴えますよ。
それを告発しようとした杉本さんの記事をねつ造しそのうえ杉本さんを殺害した。
君私は社会的地位も名誉もある男だ。
その自分の地位や名誉のためにあなたは尊い人の命を奪ったんです。
証拠はあるのかね?証拠は。
江口美枝子さんの証言それから藤村真紀さんの証言があります。
そんなもの…。
不正入試については調べれば真実は明らかになります。
他には?他ですか?これがあります。
ここれは…!
(米山)なんでこんなものが!野々村さんはあなたを隠し撮りしていたんですね。
那須の野々村さんの殺害現場から出てきました。
あなたに裏切られた時のためかそれともあなたを脅すつもりだったのか。
それは動かぬ証拠です!杉本が邪魔だった。
私を告発するなんて言い出したから…記事をねつ造したんだ。
でもあいつはまだ私を信じてた。
わかったよ。
不正入試はやめる。
選挙も降りる。
君の言うとおりだ。
やっと悟ったよ。
よかった!それでこそ僕が尊敬する米山先生です。
どうぞ。
(米山の声)そのあと酔いざましにと大学の屋上に誘って…。
(杉本)先生!先生!うわーっ!!そして江口美枝子さんに野々村さん殺害を指示した。
中川は死んだ。
ところが今度は野々村が…。
金だ金!金さえ出しゃあんたの思いどおりになる。
ええっ?どうなんだよ米山さん!ええ?どうなんだよ!!野々村さえいなくなればすべては闇に…。
そう思ったんだ。
米山さんあなた自分が何をしたかわかってるんですか?人の命をなんだと思ってるんですか!あなたのために夫を失い泣いた妻がいるんです。
その娘をかばった母がいるんです。
あなたのために罪を犯した女がいるんです。
許さない。
私はあなたを許さない。
絶対に許さない!!あなたを殺人及び殺人教唆で起訴します!美枝子が?ええ。
あの人私のために?美枝子さんには江口さんがついてくれています。
美枝子さんを何年でも待つとそう言ってくれました。
よかった…。
友子さん。
美枝子さんのためにも赤ちゃんを大事に育ててくださいね。
はい。
あなたは中川さんに殺意がありました。
殺人未遂の罪になります。
どんな理由があろうと人の命を奪おうとすることは許されません。
でも情状酌量されるでしょう。
友子さん自分の命も人の命ももう粗末にしないでください。
でもよかった。
あなたは母親になれた。
そして里子さんは母親に戻れた。
里子さん。
しばらく赤ちゃんをお願いしますね。
(立川)乾杯!検事。
うん?今回つくづく思った。
やっぱり母親ってすごいなって。
ええ。
あっそういえば検事のお母さんってどんな方だったんですか?えっ?そうそうどんな人だったの?私の?おかしな人だった。
おかしな人ってどんな?子供みたいな人だった。
母と娘が逆転しててデパートとか遊園地に行くでしょ。
そうするともうはしゃいで走り回って。
しばらくするとアナウンスがあるの。
アナウンスですか?朝日奈耀子さま朝日奈耀子さまお母さまが迷子になられてます。
もうその連続。
でもいろんなことに興味がある人だった。
最初はヨガでしょそれから合気道。
70過ぎてフラダンス。
おお〜。
笑顔がかわいかった…。
もう亡くなりましたけど。
今でも心配になるんです。
天国でまた迷子になってるんじゃないかって。
さあどうぞ。
お肉の焼けるおいしそうな音
2015/11/02(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
検事・朝日奈耀子[再][字]
医師&検事…2つの顔を持つ女!那須温泉へと続く“透明な血痕”背中のかすり傷で腹部に致命傷!?
詳細情報
◇番組内容
眞野あずさが東京地検検事・朝日奈耀子を演じる人気シリーズ第9弾!雑誌記者刺殺事件の被疑者の女が送致されてきた!殺害を認めながらも、動機や状況の供述はあいまい!?疑問を抱いた耀子は、捜査を開始!半年前のあるセクハラ記事との関連を直感するが…
◇出演者
眞野あずさ、内藤剛志、北村総一朗、大島さと子、床嶋佳子、野村真美、天宮良、中丸新将、松田悟志、木下あゆ美 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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