中国は南インド洋にあって、インドを南西から地政学的に脅かすモルディブ群島に濃密に接近した。これはインドを刺激する。ついで中国は国際的な海賊退治で協力行動の拠点であり、独裁国家であるジブチに目を付けた。
米軍はジブチの空港と港湾を借り受け、巨大な軍事基地(=レモニエ空軍基地とオボック海軍基地)を設営しているが、米国務省はゲレ大統領の独裁を強く批判している。このため、ジブチは中国にも軍事基地建設を持ちかけた。渡りに船の中国は「海のシルクロード」構想の一環として、ジブチを活用する方向にある。
さらに中国は、ケニアやタンザニア、マダガスカル、セーシェル、モザンビーク、ジンバブエから、アフリカ大陸の最南端・喜望峰をまたぎ、南西アフリカのナミビア、アンゴラへまで伸ばす壮大な戦略に傾いている。
米国のイラ立ちは尋常ではない。
しかし、上海株暴落を契機とした経済失速によって、中国のこれまでの軍拡路線は維持が難しくなったのも事実である。
■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書・共著に『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』(ワック)、『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店)など多数。