放送90年ドラマ 経世済民の男「小林一三」(後編) 2015.11.03


おうよく知ってんな。
どういう事…?確かここは昔…墓地だった…。
幽霊見たのか。
あ…。
よかったよかった。

(一三)私はねこれからの日本というものをいろいろ考えておる訳です。
専門家の話も聞き研究もしこの国はすばらしい国になるという結論を持っています。
ただ…ただそうなるには一つ条件があるんです。
(冨佐雄)
これは僕の父です
(子どもたち)・「東風ふく春に魁けて」・「開く梅田の東口」・「往来ふ汽車を下に見て」・「北野に渡る跨線橋」出発進行〜!
夢見が過ぎるしがない銀行員だった父は失敗すれば全ての責任を負うという大博打を打って…
僕が借金をしてでも全損失を補填します!
小さな電鉄会社を発足させました。
その会社の名は箕面有馬電気鉄道
(一同)万歳!万歳!万歳!
(拍手)
社長は筆頭株主である北濱銀行の頭取岩下清周さんで父は実務を取りしきる役員という立場でした
(笑い声)ただいま!
(コウ)あ〜もう!飲まれへんのに無理して!おかあさんのおかげだ。
おおきに。
父はこの後この電車を阪急電鉄として羽ばたかせ歴史に名を残す事になりますが…
乗車券拝見しま〜す。
え?俺は〜お前の〜…。
あ〜!借金だるま〜!ハハハ!失敗すればお前は借金まみれだぜ!僕が借金をしてでも全損失を補填します!
(だるまの笑い声)ちょっちょっ…ちょちょちょちょちょ!ちょちょちょっ…。
働かなきゃ…。
開業しただけじゃ駄目なんだ。
働かなきゃ〜!
申し遅れましたが父の名は…
なんという力だ!
小林一三と申します
あっすいませんすいませんやりますやります!はい大丈夫です。
重い…。
休日の客足がいまひとつだな。
(佐藤)行楽列車という割に行く先は寂れた温泉くらいしかないんですよね。
そうか!家族みんなで出かけられればいいんだな!これ何だすか?温泉とプールもあるんやて。
(2人)はあ〜!けったいな。
(寒がる声)
(くしゃみ)あれ?何かあったんですか?ささ寒いんや!5分と入っとられん!
(岩下)大失策だな。
大金をつぎ込んで。
プールの水温を上げる事はできんのか?そうすると工事費もかかるし…。
じゃあ…何か別の客寄せを考えるしかないな。
はあ。
心の声「三越少年音楽隊宣伝効果絶大なり」。
あっあっあっあの〜…これってほんまなんですか?歌やら踊りやら芸事教えてもろうてその上お給金まで頂けると…?そのつもりですが。
あっ…。
ひ…人買いとかやないですよね!?とんでもない!このプールの跡地を使って劇場を作るんです。
そこで女の子だけのオペラをやるんです!オ…オケラ?いえいえ。
歌劇です歌劇。
か…歌劇?た…宝塚…宝塚少女歌劇団です!
父はさまざまな奇策を打ち出しました
(丸山)おやっさん一旦座って下さい。
うん。
…がそれは華々しくは見えたもののあくまで対症療法にすぎず経営的には相変わらずかつかつのままでした
京都か奈良神戸この辺とつながってないと乗客数が伸びないんですよねえ。
(ため息)らしくないんですよ。
岩下さん。
(平賀)まあ北濱は大阪軌道にも出資してるからなあ。
大阪軌道て生駒山ぶち抜いて工事中に崩落事故起こしたいうやつでっか?
(平賀)そうそう。
それで株価が暴落しちゃってね。
結局岩下さん自分の家屋敷抵当に入れて補填したって話だ。
え?えっそれ本当なんですか?
(平賀)はい。
よろしいですか?はい。
鉄道はスピードが命です!我が国の鉄道が今後1等国にふさわしいものになるためには何としても大阪と奈良を結ぶ生駒山をぶち抜かねばならんのです!
そして父にとって運命ともいえる年がやって来ました
お父様今日はパラダイスにいるの?ああいるぞ。
そうだ。
みんな来なさいよ。
今日は記念すべき初公演なんだから!そうね!じゃみんなで行きましょうか!そうしよ!おう!春子も行こうな!
(拍手)・「ここはどこの細道じゃ」・「鬼ヶ島への山道じゃ」ワンワンワンワン。
・「私は犬野腕三郎」ワンワンワンワン。
・「もしもしも〜し桃太郎さん」それ雉山にも1つ。
猿之助にも1つ。
(2人)ありがとうございます。
さらば!いよいよ出立と致そう!
(3人)かしこまりました!
(一同)・「…鬼ヶ島指して」進め!どうですか?おやっさん。
いいんじゃないか。
(2人)「歌遊び浮れ達磨」。

(拍手)
(一同)・「ころころころげて七転八起、」・「起きてギョロリと達磨さんは睨む」・「睨み目玉の向いたる方は」まあ随分珍だわねえ。
近頃もって奇抜だわねえ。

(一同)・「さても無芸な髭達磨」
(笑い声)
(観客たち)おお〜。
(悲鳴)
(笑い声)
(悲鳴)おまっ…お前何を考えてるんだ!絶対いかん!達磨は絶対いかん!
(拍手)もう台本は俺が書く。
花の…フンフンフンこずえだこずえ。
うん。
こずえ…。
辰郎米三!走ったらあかん!心の声「私腹を肥やす民衆の敵!岩下清周を断罪せよ!」。
冨佐雄うそだからなそれ。
岩下さんは私腹を肥やすどころか自腹を切ってるのが本当だ。
ほな何でこんな記事出るんですか?景気が悪いからな。
みんなうまくいってないから不満のはけ口が欲しいんだ。
それはその翌日の事でした
返せ〜!返せ〜!返せ〜!返せ〜!北濱銀行の悪徳資本家岩下清周は我々の預金を銀行の損失補填に使っていました!そうだ!
(一同)そうだ!このままの勢いで預金の引き出しが続くと北濱は…破綻します!・返せ!
某新聞のやっていた岩下たたきが過熱しついに取り付け騒ぎを引き起こしたのです
手を貸してくれる財界人はおらず…
汗水たらしてためた金を何やと思うとるんや!岩下さん!大丈夫ですか?大丈夫だ。
6月岩下さんは頭取を辞任。
8月には北濱銀行は事実上の倒産に追い込まれ…
(平賀)告訴?
(岩下)ええ。
背任や横領罪文書偽造。
全部で46件だそうです。
よくもここまででっちあげたもんだ。
大株主がこうなった訳ですから箕有電鉄はこれから相当な苦境に立たされる事になると思います。
平賀さんあなたの経験値で小林を助けてやってほしい。
(ため息)あなたの代わりが務まるんでしょうか。
私みたいな男に。
あいつの事業には人の息遣いがあります。
息遣い?あいつは初めに人ありなんです。
その日がこうあればいい。
そんな小さな欲望をすくい取って形にしそれを事業にする。
あいつが作り出す事業の先には豊かな生活が待っています。
だからこの国のため…お力添えを下さい。
やるのか?本当に。
やります。
これしかないですから。
その後北濱銀行を清算するため新しい重役陣が送り込まれてくる事になりました。
それに伴い予想されるのは北濱銀行が所有する箕有電鉄株の全売却
まあ要するに箕有電鉄さんの株は売ってしまおうという話ですわ。
分かりました。
では売ってしまって下さい。
小林さんは会社に思い入れあるから反対しはるんやないかて聞いてましたさかい。
そうですか。
まあ買うのは私ですから。
昨日の終値一株15円80銭という事でよろしいでしょうか?いや〜これで名実ともにお前の会社になった訳だな。
はあ…。
名実ともに借金だるまになりました!借金〜!だるま〜!返そう返そう。
なっ!ハッハッ。
ああ〜っ!平賀さん。
え?灘循環鉄道をうちで買収したいんです。
この状況でか?開発許可だけで誰も何年も手をつけなかった名目だけの会社ですから今なら底値で買いたたけます。
いやしかし…。
今の路線に加えてこの路線もうちで開発できれば大阪から神戸に至る大動脈が出来上がります。
現状のままでは乗降客数はどうやっても頭打ちです。
ここを脱却するためにはどうしても都市から都市へ至る大動脈になるしかないんです!箕有電鉄が株主総会で灘循環鉄道の買収を決議したようです。
とにかくスピード重視の電車にしたいんだ。
梅田から神戸まで30分で行きたい。
さ…30分!?開発が実現すれば…。
路線をできるだけ直線にする。
更に駅数を最小限にとどめる。
大幅な工事費の節減につながるはずだ!その路線は我が阪神電鉄と並列して走る事になります。
専務!専務!うちの株主たちから訴状が。
訴状?灘循環買収の決議案は無効だって話にしたいようです。
阪神の差し金かもしれんなあ。
阪神?
この訴訟のみならず父の身には次々と困難が降り続きました。
その最大のものは計画路線の変更を迫られた事でした
(大地主)別に難しい話違いますやろ。
わてらの家があるこの辺りを下げてこっちの山側へちょっと迂回したらええだけですがな。
うちの神戸線はスピード重視でやっておりますので。
(大地主)ほならこっからここまでを地下鉄にしはったらええ。
差額もお支払いしますよって。
あ〜それなら…。
地盤の問題もありますし工期が年単位で延びてしまいます。
差額の工事費だけでは収まりませんので。
(せきばらい)何で君がそんなに頑張るんや!君関西で商売をしていきたいんやろ?神戸線はここまでしてやらなあかんもんなんでしょうか?これやで。
これ…読みはりました?歌劇団の?ええ。
おやじが書いた上演台本をまとめたもんなんですけどね。
「此書を岩下清周翁に献ず」。
「私の会社は貴下のおかげによってこの世の中に生まれてきました。
貴下の理想は夢のような運命と共に幻の消えゆくように消えました」。
「私は毅然として全ての責任とあらゆる圧迫とに対抗すべき決心を必要としたのであります」。
(そろばんをはじく音)よく開業できたな。
借金〜。
何であんな名前にしたんだよ?
(丸山)はあ〜!そんなに速いんですか!そうらしいで!大阪から神戸まで阪神は60分阪急なら40分ですわ!そら阪神より随分速い!ハハ!せやから阪神急行!阪急阪急。
阪急なんですなあ!はあ〜。
速うて涼しいてええなあ。
阪神はいつも満員で暑うてかなわんわ。
ほんまや。
学生さん。
なあ?阪神は60分阪急なら40分!え!?40分!しかもがら空きで涼しい!
こうしてきれいで速うてがら空きの電車は速さはそのままにいつの間にかがら空きではなくなっていったのでした
小林。
岩下さん…。
元気でやってるようだな。
実はな…阪神から話があってな。
無益な競争に終止符を打って大衆のためにも阪急に…合併を考えてほしいそうだ。
いいですよ。
阪急が阪神を買収する形なら。
阪急が阪神をのみ込む方向なら話をします。
世間に見捨てられた会社は…あなたが救ってくれた会社は…それができるような存在になったんです。
(拍手)合併と言うなら阪急が上に立つべきです。
なぜなら…岩下清周が作った会社だからです!「この国を1等国にする」それだけを目指して闘ってきた男が作った会社だからです。
岩下清周の名は阪急とともに語り継がれるべきです。
「その陰に岩下あり」と。
回想岩下の夢はこの国を世界に冠たる1等国にする事だ!「その陰に岩下あり」と言わしむる事だ。

(一同)・「すみれの花咲くころ」・「はじめて君を知りぬ」
父は阪神との泥沼の闘いのあと阪急百貨店を創設。
その活躍は関西にとどまらず昭和9年には東京宝塚劇場を建設。
昭和12年には映画会社の東宝を設立しました
その経営哲学を書いた本はベストセラーを記録
大変申し訳ございません。
お使い下さい。
小林一三さんですよね?はい。
今読んでいらっしゃる?ああみんな!小林一三さんや!今太閤さんや!
今太閤と呼ばれその人気は全国区のものとなっておりました
(拍手)父は世間様にはどんなふうに見えてるんですかね?刃物のような頭脳を持った天才企業家でしょう。
阪急百貨店かて駅とくっついた百貨店なんて日本どころか世界初なんでしょう?百貨店を作る時の話なんですけど朝駅でじ〜っと立って乗客の事見てるんですよ。
で夕方僕が戻ってくるとまだじ〜っと立っていて…。
ちょっと買い物するのもしんどいな。
こっからまた乗り換えなあかん。
百貨店行くのも苦労やなあ。
ほしたら「みんな駅で買い物できたら便利なんちゃうか」って言いだして。
その何て言うか…父の発想は割とおばさんなんです。
確か百貨店の大食堂でライスカレーを20銭で出そうとすると採算が合わないという事があって…。
じゃあ採算のとれる牛を探せ!せやからそんな牛はどこにもいないんです。
じゃあ作れ!結局直営の牧場を作って帳尻の合う仕組みを作ってしまわれたんですよね。
安くていいものを求めてあの手この手を尽くすとそうなる訳です。
昭和15年は生活の風景はまだそれほど変わらない時期でしたが長引く日中戦争を背景に軍需が全てにおいて優先されていく世の中になるその過渡期の年でした
あ〜お帰りやす。
ああ。
みんな来てますよ。
お父様お帰りなさい。
おお春子来てたのか!おじいちゃま〜!あ〜よう来たなあ!うちの百貨店かて電力統制で営業時間短くさせられてるし…。
ああ賃金統制令な。
あれこのまま業種拡大されるんですかねえ。
え?そうなるとどうなるん?米三。
お前が働いても働いても給料は同じって事になるな。
え〜っ!?そんなん!やる気なくなるやないですか!軍需を満たすためにはとにかく資源も労働力も全てを国が統括管理するのが一番やりやすいって発想なんだろ。
泥棒だ!泥棒?統制なんてのは結局法で化粧した泥棒だ。
大体国がそんな発想しかできんから事変も終わらせられんのだ。
わしに国をやらせてみろ。
お父様。
あんなもん一発で解決だ。
そんなにうまくはいかないと思いますけどね。
ああ!?冨佐雄お前何か言いたい事あるのか?お父様?それ当たりです。
あっ!お父様?ああ!?近衛様からお電話でございます。
いや〜え〜あ〜駄目だ近衛様だ。
ああお待たせしました。
小林でございます。
近衛さんてまだ総理続けはるん?うん。
商工大臣!?わ…私が商工大臣ですか!?はあ…。
お父さんは政治には全く向いてないと思います。
わしのどこがだ!お父さんは自分が正しいと思う事を譲れない人やないですか。
政治というのは正反対の調整の世界ですよ。
バカにすんな!わしにだって調整ぐらいできる!大体今入閣したら統制の片棒を担がされるだけですよ。
小林さんは統制に反対のお立場ではなかったのですか?だだをこねてもしかたあるまい。
物が潤沢にあれば統制はおのずと必要はなくなる。
聖戦の完遂にもその方が有利に決まってる!
(企画院官僚)ではこれからよろしくお願い致します。
うん。
共に聖戦完遂に向けて頑張りましょう。
(企画院官僚)はい。
では失礼します。
どうなさいました?もっと高い椅子ないのか!これ本気なんですか?「増産によって統制を不必要なものにしていきたい」って。
目標のようですね。
こんな事でなんとかなるならとっくになんとかしてるよ。
もう経済の仕組みを変えねばならん事がどうして分からんかねえ。
当時軍部の意向を受けて統制経済を進めていたのは企画院の革新官僚と呼ばれる役人たちでした
あ…ああ…。
これ持ってって。
僕なりにねどうすれば増産できるか意見をまとめてみたんだ。
企画院でも参考にしてくれ。
閣下。
総理がお呼びです。
総理が?
(ラジオ)「歴史的使命を帯びて蘭印に…特派使節小林商工大臣は…」。
アメリカからの資源輸入が困難になった状況を受け父はオランダ領東インドに原油獲得の交渉に出かけました。
しかし…
「ドイツの同盟国となった以上オランダは交渉をする事ができません」との事です。
日独伊三国同盟締結の余波を受け原油交渉は膠着
何で今なんだ…。
閣下!
1か月以上にわたる交渉は無駄足に終わりました
(企画院官僚)お疲れのところ申し訳ございませんがお目通しを。
「経済新体制確立要綱」。
何だ?これは。
お留守の間に企画院の方から直接参与会議に提出させて頂きました。
僕の了承が必要なはずだが?もはや一刻も早く聖戦完遂に向け挙国一致体制を整えねばならぬ事となりましたので。
結構だ。
僕には僕の考えがある。
いやしかし…。
結構だ!ご質問等がございましたらお申しつけ下さい。
心の声「利益追求が結果において公益と一致するとの従来の経済理念を捨て去り高度国防国家体制確立のため公益優先の経済理念を重視し生産国家体制の完成を期する事。
各企業体においては資本と経営を完全に分離し資本は国家が管理し経営についても政府と軍の複合体の管轄下に置く」。
こんな事をすれば民間の活力が完全に死んでしまう。
どうだ?はい…。
訂正を発表して下さい。
僕が何かしたかね?勝手に直した私案を閣僚間で了承させたじゃないですか!こんな事されては困るんです!そうだ!そこには企画院との協議があったはず。
みんな僕の案でいいんじゃないかと言っていたがね。
我が国は決して共産主義国になるつもりではないと。
我々がやってるのは決して共産主義じゃない!資本は国家が管理し経営権も握り生産も管理し賃金は画一化する。
これのどこが共産主義じゃないというんだね?共産主義の定義についてご説明致しますと…。
こんな体制は人間の本性に合ってないんだよ!本性?人間の本性とはね欲だ。
我欲だよ!働けば給料が上がる。
ならば頑張って働く。
息子を学校にあげてやりたい。
ならば頑張って働く!世間に認められたい。
ならば頑張って働く!そういうちっぽけな…切実な…そういう希望のもとにしか活力を出す事はできないんだよ!おっしゃるとおりです。
人間は欲望のままに突っ走る事しかできない。
ならばその欲望すら管理するしかないんですよ勝つためには。
あなた方資本家は欲望をあおり暴利を搾取し懐をあたためる。
国益のための戦争だといくら説いても進んで資本を供するような高邁な精神などみじんもない。
我々に絶望を抱かせるのはあなた方俗悪な資本家…。
つまらないんだよ!お前らの案は!戦争をするのに足りないのなら法律を作って全部自分たちのものにすればいい!そうすりゃなんとかなるだろうって。
子どもでもできる発想だよ!君たちがこの国の誇る頭脳だというのならこの逆境を飛躍に変えるぐらいの案は出したらどうかね!「あ〜この手があったか」と膝を打つような体制でも作り上げろって言ってんだ!しかたないでしょうが!「何がなんでもやる。
物集めてこい」って軍が言うんだからしかたないでしょうが!無能か!何だとこの野郎〜!落ち着いて!離せ!落ち着け!くそったれ!腰…。
閣下…。
あ〜やだやだ。
(拍手)
父は自らの修正案を可決させました。
しかし…
先ほど議会を通過した経済新体制確立要綱の件ですが小林大臣が第三者に機密を漏えいされた疑いがあるとお聞きしたのですが…。
全く記憶にございませんが。
本当ですか?記憶にございませんが。
本当ですか!?どういう事だ!
企画院寄りとうわさされた議員によりあっけなく辞任に追い込まれたのでした
あなたも無能だと思いますよ。
結果として何もできなかったんですから。
だから「向かない」って言ったやないですか。
わしは間違ってない。
通るか通らないかなんですよ。
政治の世界は。
お前何でそんなに冷めてるんだ?どっちみち負けるからですよ。
僕は留学させてもらいましたから米英の生活を知ってます。
統制をかけようがかけまいが米英と戦えばどっちにしろ負けます。
まあな。
え?だったら何で…何で負けると思ってて首を突っ込むんですか?岩下さんとの約束だからだ!え?
(くしゃみ)
そして終戦を迎えました
(コウ)どないしはったんだす?電車走らせてくる。
はあ。
出発進行だ!
焼け野原を小豆色の電車が駆け抜けたのは敗戦直後の事でした
(丸山)宝塚を?もうやるんでっか?できるだろう。
劇場は空襲を逃れたんだ。
いやおやっさん世の中芝居どころやないんと違います?バカかお前は!こんな時だから…こんな時だからこそ…見たいんだ!
その後も父は失った生活を取り戻そうと老骨にむち打って走り回りました

しかしその結果…
再び大きな借金を抱える事になったのです
じゃあ2〜3日東宝の方に行ってくるから。
え?「え?」じゃないよ。
言っただろ。
80過ぎて借金持ちか。
お前もそろそろ引退したらどうだ?お…お前らがふがいないからこんな事になってんだ。
あ痛っ…あ痛っ…。
痛っ痛っ痛っ…。
おっと。
よっ…。
ありがとう。
ヘヘヘッ!はあ〜お互い年取ったな。
ハハハ!おやっさん!いらっしゃってたんですか?うん。
冨佐雄は外か?丸山さんまたお見舞いのお花…。
あっ…。
この花全部冨佐雄にか?あほら…ねえ…。
あの…実は社長その…。
がん…上顎にか?
(丸山)おやっさんも心臓よくないし冨佐雄さんは余計な心配をさせたくないからて。
出世なんて何の意味もない。
無意味だ。
(コウ)無意味?だってそうじゃないか!いくら出世したって死ぬ時はどうせ身一つだ。
後を託そうと思ったって!あいつがいなくなるんじゃ…。
おとうさん年越し冨佐雄のとこでしませんか?迷惑だろ。
あいつだって知られたくなかったみたいだし。
会いに行っても行かんでも死ぬ時は死ぬんですよ。
おとうさんは。
わ…わしが?おとうさんも…私も…冨佐雄も…死ぬ時は…死にます。
せやから…会いに行きましょ。
何だ…具合よさそうじゃないか。
あ…。
何読んでたんだ?「男のおばさん」?うまい事言わはるなあ。
フッ。
ん?約束?回想何で負けると思ってて首を突っ込むんですか?岩下さんとの約束だからだ!ああ。
岩下さんとな昔約束したんだ。
回想
(岩下)つまりな真の1等国とはこの国に生まれてよかったと思える国。
岩下はそう思う訳だ。
そういう社会になるようにしたいもんだって言い合ってな。
だからわしはそのために働かなきゃいかんと思ったんだ。
「僕も働きたいですお父さんのように80まででも」。
(すすり泣き)よし。
じゃあお前が治るまでわしが代わりにやってやる。
何かできる事はないか?
(丸山)おやっさん!おやっさんどないしはったんですか?忘年会と聞いてな。
ちょっと。
ああそうですか。
いや〜ありがとうございます。
今日東宝の忘年会なんです。
僕の代わりに…話してきてくれませんか?
(拍手)久しぶりに諸君に会う事ができてまことに喜ばしい限りです。
私はね…これからの日本というものをいろいろ考えておる訳です。
専門家の話も聞き研究もしこの国はすばらしい国になるという結論を持っています。
ただ…ただそうなるには一つ条件があるんです。
それはね…皆さんが全員働く事です。
働くというのはね…働くというのは本来とても楽しい事なんです。
夢を描いてね知恵を絞る。
努力をする。
その果てに笑ってくれる人がいる。
そしてその対価として報酬がついてくる。
これがねえ楽しい!
(笑い声)いやもう…実に楽しい事なんですよ!自分の人生がここにあると感じる事ができる。
回想
(岩下)つまりな真の1等国とはこの国に生まれてよかったと思える国。
お前は真の1等国に必要なものは何だと思う?努力はね絶対に報われなきゃなりません。
回想努力が報われる事じゃないですかね?報われる社会である事が必要なんじゃないかと。
報われるとうれしいでしょう?立場が変わったら今度は報いようとするでしょう?そういう循環を持つ社会は頼もしい事になると思うんです。
皆さんは知らないでしょうねえ。
働いても働いても報われないそんな時代が長く続いてしまいましたからね。
ですが皆さんはとにもかくにも生き抜いてここにいる。
生き抜いて今ここにいる事ができる。
ここまで…今日まで来られたのだから…。
きっと遠くない未来この国は…頼りがいのある国になります!この国で働く事が誇りであり得であり物心両面に報われる事が最も多い国になると思います。
皆さんなら必ずできる!そう期待しています!どうもありがとう。
これからもしっかりやって下さい!
(拍手)
小林一三享年84
これを最後のスピーチにその人生の幕を下ろしたのでした

(拍手)2015/11/03(火) 14:05〜15:03
NHK総合1・神戸
放送90年ドラマ 経世済民の男「小林一三」(後編)[解][字][再]

阪急電鉄や宝塚歌劇団をユニークな手法で創設し、現在にも通じるビジネスモデルを作り上げた小林一三。ローカル線を開業させた矢先、恩師が疑獄事件に巻き込まれ…。

詳細情報
番組内容
阪急電鉄、阪急百貨店や宝塚歌劇団をユニークな手法で創設し、現在にも通じるビジネスモデルを作り上げた小林一三の生涯をドラマ化。小さなローカル線を開業させたものの、乗客数は伸び悩み、一三はさまざまなアイデアを繰り出す。そんな時恩師が疑獄事件に巻き込まれ…。彼の成功を支えたのは、「こういう暮らしをしたい」という庶民の夢を的確にとらえる力。最後まで夢見ることを大切にした男の波乱万丈の生涯を描く後編。
出演者
【出演】阿部サダヲ,瀧本美織,井上芳雄,矢島健一,大東駿介,星田英利,神山繁,奥田瑛二
原作・脚本
【作】森下佳子
おしらせ
〜平成27年度文化庁芸術祭参加〜

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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