「NHK短歌」司会の剣幸です。
今日もご一緒に短歌を楽しんで下さい。
それでは早速ご紹介致します。
第一週の選者は佐佐木幸綱さんです。
よろしくお願い致します。
どうぞよろしく。
先生冒頭の一首は?このごろね意識的にお酒の歌をたくさん作ってる。
意識的?若山牧水が一生の間に360数首作ってるんですね。
それを目標にして何とか越えようと。
向こうは40代で亡くなっちゃってるんで…。
そうなんですか。
もっとたくさん作らないととても間に合わないですけど。
大丈夫です。
もっとたくさん作れます先生。
お願い致します。
それでは今日のゲストご紹介致します。
タレントで女優のサヘル・ローズさんです。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
よろしくお願い致します。
ご出身はイランだそうです。
そうなんです。
今日はとってもすてきな和服で来て下さいました。
バラでサヘル・ローズ。
今日は後ろにもちゃんとローズをご用意下さいました。
和服が大好きなんですね。
可能なら毎日着ていたいぐらい。
というのも着ると身が引き締まる思いになるじゃないですか?背筋もピンと伸びますし日本の方の歩き方の穏やかさでしたりとか日本女性の一番美しい姿が和服の中に生まれるんじゃないかなと思いまして今日は短歌ですし…。
すみません耳が痛いです。
悔い改めます私。
そんな事ないです。
サヘルさん支えはドラマの「おしん」だったとお聞きしました。
小さい時にイランで「おしん」を見ていましておしんの小さいながらに懸命に生きる姿というのにすごく力を…。
吹き替えだったんですか?吹き替えですね。
その姿もそうだったんですけど女性って力強く生きてるんだって日本の人ってすごいと思ったんですね。
8歳の時に日本に来た時におしんを捜してたんですけれどおしんが街なかにいなくて驚きました。
短歌もお好きだそうですね。
すごく憧れています。
日本の短歌は限られた文の中に思いを込めてるじゃないですか。
すごく美しくて自分の国とも通じる部分があったりするので今日は出会えてすごくうれしいです。
早速ですが一首ご紹介頂けますか?あみさんはこの短歌を書かれた時まだ12歳だと思うんですね。
現在は21歳なんですけれども家庭にいろいろ事情を抱えていてでもそれを素直に短歌に綴っているんですよ。
誰しもが多分12〜13歳の時って家族とどう向き合ったらいいんだろうお父さんとどう話せばいいんだろうって悩む年齢ってあるじゃないですか。
それが素直にこの短歌の中には込められていてこの先にまだ「父はいない」ってこの先にまだ続きそう。
言葉がまだ生きていて歩いているような気がしてその後を追いたくなるような短歌なんですよね。
そこに私は魅了されましたし彼女の苦悩だったりとか自分も父親はいないんですけれどもそこがちょっと重なったりして惹かれますね。
「父はいない」って3回出てきますよね。
不思議なリズムになってそれが何か渦巻きみたいなね底なしみたいにずっと続いてくとおっしゃったけどそういう余韻がありますよね。
今日はたくさん短歌楽しんでいって下さい。
それでは今週の入選歌ご紹介致します。
題は「君」または自由でした。
一首目です。
大変つらい歌なんですけれどもご自身の奥様なのかあるいはもっと違う関係の方なのかちょっと認知症のような症状が進んでるんだけれどもそれがちょっと解放感になってるようなところも見えるというね歌としてちょっと救われた感じがするのが持ち味だと思いますね。
現実的に考えたらとってもつらいんですけど「心の絆を解かれるごと」という両方やっぱりつらい事と安堵してる部分というのが両方ある歌な感じがしますね。
下の句がうまいですね。
では次です。
サヘルさんどうでしょう?このあとのどういう思いで言って戸を閉めて消えてしまったのか気になるんですが押し花って小さい時に私もそのお花を見つけてきては押し花にしてずっとその思い出を取っておきたくなった経験って必ずみんなあると思うんですね。
その押し花を自分の相手に対する思いをそこに乗っけて押し花にして取っとこうとしたのかなと思うとみんなそれぞれに人とのつながりだったりとか大好きな方との思い出を取っとく。
きっと押し花にする事によって香りもその時の空気も残せるじゃないですか。
だけど「消えてしまった」というのがどっか切ない感じがしませんか?これも切ない別れの歌ですけどね。
ただ前の方は思い出のような事を言ってるんだと思いますけど余韻がね残ってそこが持ち味だと思いますね。
では次です。
これも面白いですね。
これ人間が4人登場してくるんですよね。
複雑なように見えるけど言い回しがとても面白いですね。
やっぱり短歌は言葉が大事なんで言い回しの面白さって一つ大事なんでねこれはそういう持ち味だと思います。
では次です。
サヘルさん。
これもどこか憂いがあって切なさを感じるんですけれども確かにでもこの方ともしかしたらもう会えないかもしれないと思った時にその方の目をちゃんと見たりとかすごく真剣にお互いの顔を見合ったりするじゃないですか。
「いつになく素直に笑う君がいて」という笑顔なんだけどどういった笑顔だったのかなって何となく知らない方なんですがきっとこういう笑い方をしていたのかなっていうそれがまた見えてくるのが短歌の良さですよね。
別れの予感のような事を歌ってるんですね。
「いつになく素直に笑う君がいて」相手に対する思いやりですよね。
その辺が温かい感じが伝わってきますね。
では次です。
気をつけよう。
私も口開けて寝てしまうので。
みんなそうだと思います多分。
こうやって君と呼ぶっていうそこに愛嬌があるのがまたすてきな短歌ですね。
これちょっとユーモラスな歌ですね。
随分昔の歌なんですけどね同じようなのがあるんです。
有名な歌なんですけどね。
昔から奥さんは口開いて寝てた。
筏井嘉一という方は北原白秋のお弟子さんの中で偉いお弟子さんの一人でね昭和の有名な歌人ですけど今から70年ぐらい前の歌なんですよ。
ありがとうございます。
では次です。
自由題で頂きました。
漢字が非常に多くてねニュースのような事を歌ってる。
ちょっとドキュメントタッチの…ずっと第四句まではねそんなような表現の面白さが一つあります。
まあ自意識過剰の人ばっかりだったら非常に住みにくい社会になると思うけどねでもそれがまたいろんな個性的な人間をつくったりして面白いというそういう批評の歌なんですね。
短歌には批評の短歌というのもあるんでねこれはこれでいいと思います。
では次です。
まあいろんなねどこが好きになるかっていろんなとこ好きになるんだけどこの方は背中の何とも言えない曲線が…。
流線型…。
ちょっとやっぱりエロチックな感じもあるしこういう愛の歌もいいと思いますね。
では次です。
笑ってしまいます。
想像しちゃう。
こういう戯画化と言いますか自分を戯画的に表現する作品これ一つのパターンとしてあるんですけどね「一生に一度は」ってリズム踏んでますよね。
それから「暴君関白」っていう所もリズム踏んでて音楽的にもちょっと面白いと思って読みました。
では九首目です。
結婚はしてないんですけど結婚したら確かに相手の下着でしたりお洋服を畳むってその時にあっ奥さんになったのかなとか旦那さんになったのかなっていう生活がかいま見えて日常の短歌だけれどもそういうのもやっぱり「水玉柄のパンツを畳む」っていうまたそれも想像できますよね。
すてきです。
表現が非常に具体的だからリアルなイメージを読者が浮かべる事ができますね。
そこが持ち味だと思います。
以上入選九首でした。
それでは特選の発表です。
まず三席をお願いします。
山口正二さんの作品です。
では二席お願いします。
橋村直子さんの作品にしました。
では一席をお願い致します。
兒玉瑛子さんの水玉のパンツにしました。
恋愛とか結婚の美しい面ではなくてねもっと本質的な場面っていうかなベーシックな所に光を当てて歌っておられますよね。
そこがリアリティーを感じるとおっしゃったけどね読者にイメージをもたらすんだと思いますね。
ありがとうございました。
以上入選作品のご紹介でした。
続いて「入選への道」。
今回惜しかった一首の添削です。
作品はこちらです。
湖面ですからねどこか緑の豊かな所に君と我と2人で乗っていてゆったりしている。
「揺らぎつつ…憩う」という文脈がきちっと通っているので一首としてはとてもすっきりとした感じがします。
ただ余分な部分があると僕には思えますんでそこを削除すればどうだろうか?「ボートの中に」と言わなくても「ボートに」と言えばいいんだろうと思いますね。
そこでこういうふうにしてみました。
「の中に」を取って「白い」というのを入れるんですね。
そうするとボートのイメージがもうちょっと鮮明になる。
そうすると背景の緑なんかと白いボートが対比されて波の色も見えてくるというねそういうところでカラフルになってくるんだろうと思います。
どうでしょうか?ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
では投稿のご案内です。
続いて選者佐佐木幸綱さんのお話です。
「非日常の美」という事で前田夕暮を取り上げてみました。
今読んで頂いたのはボクシングの歌ですよね。
しかも昭和の初めなんです。
多分まだね日本にはプロボクサーがいなくてアメリカのボクサーがやって来てねアメリカ人同士でエキジビションマッチをやった時に前田夕暮が行って実際に取材した歌だと思いますね。
大変好奇心の強い人でいろんな事を歌ってるんですけどねボクシングなんかは非日常ですからねそういうところを歌っています。
「顔がぢづざぐ」ってオノマトペですか?オノマトペについても前田夕暮は非常に早い。
しかも面白い斬新なオノマトペをいっぱい出してるんですね。
「顔がじぐざぐ」なんて…。
でも何か分かります。
あとね有名なのはねゴッホの「ひまわり」を歌った歌というのがあります。
これとても有名です。
向日葵が大きくて太陽がそれよりもずっと小さく見えるという。
これゴッホの歌が元になってるんで日本ではない光線が歌われてるんですね。
南仏のとても強い日ざし。
それを「金の油を身にあびて」という独特な表現をしています。
こういうふうにボクシングとか南仏の光とかゴッホの絵とかそういうふうな我々の日常生活の中をそのまま歌うんじゃなくてね違う所を好奇心の赴くままにさまざまな事を歌っている。
この人がやっぱり近代短歌の中で短歌を一つ広げていった人だというふうに思いますね。
さっきのオノマトペですけど例えばペルシャ語…。
ペルシャ語で犬とかニワトリとかってどういうふうに鳴くんですか?ニワトリは多分日本とちょっと違っていてクォッコリクー。
おお〜!クォッコリクーという。
コケコッコーという日本語とちょっと違うんですね。
母国語はペルシャ語なんですけれど日本の短歌にはどんな印象をお持ちですか?奥ゆかしさもそうなんですけれども控えめなんですが相手にストレートに自分の気持ちを提示できないのは短歌の魅力だと思うんですよね。
香りとかその雰囲気で遠回りなんだけれどもこういう事を言いたいのかなというのをすごく優しくリズムに乗せて相手に感じてもらうというのが押しつけじゃない感情の。
その提示こういう事を思ってるんだよっていう優しさがすごく見えてすてきです。
イランの場合結構ストレートだったりもします。
こう思ってるんだという情熱的に愛情を歌ったりとか気持ちを伝える時に短歌を使う事結構多いんですイランでは。
じゃあイランでもわりと詩とかというものは…。
多いですね。
よくお正月もそうなんですけれども家族を囲んで短歌でしたりとか詩集本だったりを開いてお父さんとかお母さんが読み上げてそれをみんなで聞いたりとかもう日常の中に詩といううたというのは入ってくるんですよ。
言葉の音楽を大事にされてるんだと思いますね。
声に出して発音するという。
今日本は短歌なんか読みますもんね。
声に出さないですもんね。
なるべく出したいですね。
そのイランのお好きな詩を一つご紹介したいと思います。
お願い致します。
ありがとうございました。
読んで下さって。
こんなんでいいのかなすいません。
すてきでした。
この歌ですごく伝えたいのは特別なものはないかもしれない。
それを持たなくてもいいんだよと。
でもすぐそばには大切なお母さんがいたりすごく自分の事を思っている友人がいたり何よりも神様が必ずあなたには付いてるよというすごく国民性が出ている。
そして国で小さい時から教わる自分自身の特別なものはなくてもいいから愛を持ちなさいというのを伝えている歌なんですよね。
これちょっとペルシャ語で聞いてみたいですよね。
お願いできますか?もちろんです。
ありがとうございます。
音楽的にきれいですね。
歌のようですね。
ありがとうございます。
全然分からないからですけれどもRだかLだかのラーンっていうのが非常に多くて。
抑揚をつけてリズムをつけてペルシャ語って元々話すんですが別にこういう短歌でしたりとか詩を読む事は学ぶわけでは特別ないんですがほんとに小さい時から家族が読み聞かせてくれているのでそれが自然と耳に残っているんですよね。
大人になると今度自分が大事な人でしたりとか家族のために読むというのが習慣になってくるので何となくですけどみんな日常に歌でしたりとか詩というのはあふれているし自分も何かを書く時についつい癖で歌っぽくなってしまうんですよ。
そのぐらい言葉というのは耳に残るものですし相手に心地よくさせるものなのでどれだけ言葉を大事にするかというのは皆さん教わります。
ほんとに心地よかったですよね。
そうですね。
今回番組のために短歌を作ってきて下さったんですよね。
ありがとうございます。
今日の題の「君」で一首お願い致します。
はい。
これはどうでしょうか?君は私自身を表しているんですけれども鏡の中の自分と会話する事ってありませんでしたか?会話しながら鏡の中の自分は一番何にも染まってなくて無機質だと思うんですよね。
その自分と会話する事によって落ち着く。
でもそれは外にいる私も鏡に映っている私も結局君…同じ人なんだよっていう。
向き合う事の大切さを表した短歌です。
漢字で書いてある「君」は私なんだけど片仮名で書いてある「キミ」は向こうの君なんですね。
そうなんです分けてます。
工夫されてますね。
女子はねよく鏡を見ますから鏡の中の方が真実の自分が映ってるような気に…。
ごまかせないんですよね。
とっても分かります。
ではもう一首自由題で作って頂きました。
お願い致します。
これは平和の事をすごく意識するようにしてるんですけどどこかですごく平和の中に居続けるとどれがほんとなんだろうっていつの間にか蜃気楼まやかしを見てしまっているようになってしまっていて目の前にあるものが果たして事実なのかそれが蜃気楼なのか平和をもう一回向き合ってほしいという気持ちで作りました。
全部平仮名でね「前」だけが漢字になってますけど何か意味があるんですか?力強さ目の前を見てほしいという。
目の前にあるものが果たして蜃気楼の平和なのか本物なのかという前に強調してほしかったんですよ。
後ろではなくて前を見てほしかった。
今とか現実とかっていう事ですか。
そうです。
平和っていうのはその国その国で考え方も違うしひと言に平和と言っても何かねまやかしのような気が私はどこかでちょっとしてるんですよ。
時代が違えばとか国が違えばとか。
時代が違うとね。
何となく蜃気楼っていうのはすごいよく分かります。
みんなが求めてるものなので是非本物にいつかは必ずたどりつきたいですよね。
今日はほんとにいろいろな短歌を見て頂きました。
いかがでしたでしょうか?改めて言葉の大切さでしたりとか日本ならではの短歌の魅力というのも感じましたしもう一回日常にも短歌をみんなが読み上げてほしいなと。
この魅力に皆さんが気付いて一緒に私も学びたいです。
改めて日本語の美しさ一つ一つに込められてる思いが深いのでもう一回私勉強して戻ってきたいと思います。
「百人一首」もやらなくなりましたもんね。
昔はね遊びの中でも歌歌ってたという感覚ありますけどね。
ますますいっぱい作って下さい。
こんなにすてきな短歌をお作りになるのを今日改めて知りましたけどほんとにすばらしかったです。
そろそろお時間になりました。
今日はゲストにサヘル・ローズさんお迎えしました。
ありがとうございます。
ありがとうございました。
佐佐木さん次回もよろしくお願い致します。
ではまた次週。
2015/11/03(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「君」[字]
選者は佐佐木幸綱さん。ゲストは女優のサヘル・ローズさん。イラン生まれのサヘルさん。幼い頃「おしん」を見て感動。日本で女優を目指すきっかけとなった。司会 剣幸
詳細情報
番組内容
選者は佐佐木幸綱さん。ゲストは女優のサヘル・ローズさん。イラン生まれのサヘルさん。幼い頃「おしん」を見て感動。日本で女優を目指すきっかけとなったという。【司会】剣幸
出演者
【ゲスト】サヘル・ローズ,【出演】佐佐木幸綱,【司会】剣幸
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:29671(0x73E7)