(カメラのシャッター音)
(榊マリコ)死斑の状態から見て死亡したのは昨夜の午後10時から午前0時の間。
後頭部に打撲痕眼瞼に溢血点が見られるから窒息死ね。
(土門薫)おそらくあれだ。
(吉崎泰乃)何これ?シリコンゴムみたいね。
(相馬涼)なるほど。
液状のシリコンゴムに顔を押し付けて窒息死させてそのまま固めたんだ。
って事はこれ正真正銘のデスマスクですよ。
僕またズバリ的を射た事を言っちゃいました?まさか窒息死する瞬間の表情を…。
何かしら?わかりますか?宇佐見さん?
(宇佐見裕也)あ…すいません。
それ石膏じゃないすか?こいつを流し込んで固めたんすよきっと。
でもその固めた石膏自体はどこにもありませんよ。
(権藤克利)犯人が持ち去ったのかもしれませんね。
それが犯人の目的だったのかもしれないな。
遺体は洛北医大に。
泰乃さんはケースと周囲の写真を。
相馬くんは遺留品をお願い。
はい。
宇佐見さんは…。
大丈夫ですか?ちょっと外の空気を吸ってきます。
(風丘早月)うーん…。
肝臓腎臓肺にも鬱血。
肺外壁には鬱血点もある。
窒息死で間違いありませんか?ええ。
気道や食道にもシリコンゴムが入り込んでる。
やはり生きたままシリコンゴムに顔を押し付けて型を取った…。
犯人のゲソ痕がない?足跡を残していないという事は…。
(日野和正)靴底にフェルトかなんかを貼って上からカバーで覆うかしたんだろうな。
用心深い犯人ですね。
まさに足がつかない。
泰乃くんの方は何かわかった?それが犯行に使われたプラスチックケースも石膏を入れたポリバケツも大手メーカーの量販品で入手ルートをたどるのはほとんど不可能です。
逆に足がつかないとわかっていたから平気で残してたんじゃないですか?そう言う相馬くんは何かわかった?後頭部の傷から見て殴打に使われたのは直径5センチ程度のよくある鉄パイプです。
殺害方法は?被害者の身長と残されたデスマスクの跡の角度から見て犯人は被害者をシリコンゴム入りのプラスチックケースの前にひざまずかせたって感じですかね。
(相馬)仮に体重50キロの人間でも全体重をかけて被害者をシリコンゴムの中に押し込めば…。
犯行の最中に被害者が意識を取り戻しても窒息死させる事が可能…。
死ぬ瞬間の表情を残したいなら案外意識を取り戻すのを待ってたのかもしれませんよ。
だってその方が俄然リアルなデスマスクが作れるし。
相馬くん!僕なんか変な事言いました?自覚ないんだ…。
指紋や毛髪を残していない点から見ても犯人が用心深いというのは間違いないわね。
型を取るのに使ったのも硫酸カルシウムの半水和物。
どこででも入手可能な一般的な焼石膏だったし。
(権藤)失礼します。
被害者の身元が明らかになりました。
奥原幹彦48歳。
住宅総合メーカーの課長でした。
職場や家族関係でのトラブルは今のところ上がってきていません。
殺害される動機が見つからないって事ですか?動機は当然デスマスクでしょ。
なんたって犯人はデスマスクキラーなんですから。
勝手に名前付けないの。
犯行は深夜。
人気のない河川敷。
目撃者も期待出来ない。
もし仮に常軌を逸した動機だとすれば犯人の手がかりは犯行手段から絞るしかないわね。
(泰乃)何かわかりました?組成分析をした結果…あ…お疲れ様です。
市販のシリコンゴムや歯型を取るのに使うアルジネートなどとは別の組成だとわかりました。
(権藤)犯人が自分で作ったものって事ですか?ええ。
ですが高分子化合物で複雑な組成ゆえに製造方法まではこのラボではわかりません。
そう…。
ですが関西理科大学の高分子素材研究センターなら詳細な組成と製造方法がわかるかもしれません。
科学捜査研究所の榊です。
宇佐見です。
(倉石信貴)主任研究員の倉石と言います。
急なお願いで申し訳ありません。
送ってもらったシリコンゴムの分析結果出てますよ。
(宇佐見)市販のものとは違いますよね?一番の違いは硬化剤でした。
シリコンゴムなどを加工する時弾性や強度を高めるために有機過酸化物を加えるんですがこれにはそれの代わりにヘリギン酸という飽和脂肪酸の一種が使われています。
かなり珍しいケースです。
どうしてそんなものを?硬化剤はその種類によって固まる速度や硬化したあとの弾力などに変化が生じます。
様々なパターンを試してその用途に最も効果的なものを選んだのではないでしょうか。
(携帯電話)ちょっとすいません。
所長何か?今回の事件と極めて類似した殺人事件が10年前関東で起きていた事がわかった。
(佐久間誠)それも3件。
すなわち連続殺人だ。
1件目は埼玉県秩父市の廃屋。
被害者は専業主婦。
2件目は神奈川県川崎市の使われていない倉庫。
被害者は保険のセールスマン。
3件目は東京都練馬区の物置小屋。
被害者は女子大生。
3人の被害者は年齢も性別もバラバラだったがただ1つ殺害方法だけが共通していた。
つまりシリコンゴムによる窒息死。
それを型にして石膏でデスマスクを作り持ち去るという手口もまるっきり同じだ。
犯人は?警視庁と各県警本部が合同捜査を行ったが犯行は3件目を最後に途絶えいまだ犯人逮捕には至っていない。
まさかその連続殺人が…。
10年ぶりにこの京都で復活したらしい。
そう断定するのはまだ早い!まあとにかく10年前の連続殺人と今回の事件の関連性が明らかになるまでは事件の詳細は外部には絶対に漏らさないように。
わかりました。
所員全員に徹底させます。
もう1つ肝心な事がある。
3件目に殺された女子大生の名前は宇佐見一穂。
科捜研宇佐見研究員の妹だ。
宇佐見さんは10年前の事件と今回の…。
被害者遺族だ。
当然気付いてるはずだ。
だったらどうして…。
(泰乃)はいこれも!はい。
機材の点検まで僕の仕事なんですか?新人がやる決まりなの。
これからはよろしくね!はい!あれ?宇佐見さん。
帰ってたんだ。
戻りました。
お疲れ様です。
宇佐見さんちょっとお話があるんですけど。
ああだったら…。
事件の事ですよね?たった今刑事部長からうかがいました。
10年前何があったのかを…。
教えてください。
奥原幹彦さんの犯行現場でその事を言い出さなかったのは?ショックを受けたのは事実です。
でもそれよりもあの時点では今回の事件と妹の事件が同一犯によるものだという証拠は見つかっていませんでした。
いたずらに過去の事件を持ち出す事はかえって先入観を持つ事につながりかねません。
違いますか?確かに。
私たちの仕事はどんな状況でも証拠を客観的に分析して事件を早期解決に導く事ですよね?だから鑑定の妨げになってはいけないと思い妹の事はあえて口にしませんでした。
だとしたらもう1つだけ聞いていいですか?もし仮に今回の犯人が10年前と同一犯だとわかった時宇佐見さんはそれでも客観的でいられますか?それが出来なくなった時は私がこの仕事を辞める時だと思っています。
よいしょ。
(日野)警視庁から10年前の事件の捜査資料が届いた。
君の妹さんが巻き込まれた事件の事みんなに伝えたところだ。
客観的な鑑定や分析のためには知っておいた方がいいと思ってな。
もちろんです。
だったら10年前と今回の事件の比較検討早速始めましょう。
(権藤)10年前の事件で捜査線上に上がったのはこの8名。
いずれもシリコンゴムや石膏の扱いに慣れた人間です。
全員アリバイがありませんでしたが犯人と特定しうる決定的な証拠も見つからず逮捕には…。
現在の所在確認は?8名のうち7人は所在が確認されました。
5人は当時の住所のまま。
あとの2人は関東に在住しています。
残りの1人は?山平隆志。
10年前は映画撮影用の小道具の制作会社の社員でしたが事件後退職現在所在不明です。
まさかその後京都に…。
住民票を洗ったんですが山平隆志という人物は府内には登録がありませんでした。
10年前の事件で警察にマークされてると知っていれば名前を変えて潜伏してる可能性は非常に高いと思われます。
うん。
よし。
所轄に動員をかけて山平隆志が府内に潜伏していないか徹底的に調べさせろ。
(土門・権藤)はい。
(店長)篠口くんこれ倉庫に運んどいて。
(山平隆志)わかりました。
10年前の3件の犯行に使われたプラスチックケースと今回使用されたものはメーカーこそ違うもののやはり量販品でした。
ポリバケツもどこでも手に入るという点では同じです。
3件の現場ともゲソ痕はやっぱり見つかってないね。
(日野)今回の用心深い犯人像と一緒だ。
窒息させた方法のシミュレーション結果です。
被害者をひざまずかせて頭を押さえ込む方法も一緒でした。
手首の鬱血は縛られた跡。
後頭部には気絶させるための鈍器による打撲痕。
気道や食道に微量のシリコンゴム。
今回と極めてよく似ています。
宇佐見くんの方は?10年前の事件のシリコンゴムも今回のものと基本的な組成は同じでした。
硬化剤にヘリギン酸が使われている点も同じです。
10年前の事件の詳細は外部に漏れないように捜査本部が徹底した箝口令を敷いていた。
だとすると結論は?同一犯の可能性はかなり高いといえるわね。
(相馬)って事は今回の犯人が宇佐見さんの妹を…。
うるさい!10年前の連続殺人の時には何人か容疑者がいたんでしょ?所在確認が出来なかった人間が1人いる。
山平隆志。
現在37歳になります。
指名手配出来ないんですか?こいつが犯人であるという証拠は何1つない。
1ついいですか?はい。
捜査本部はどうして今回の事件を10年前の事件と関連付けて公表していないんです?現時点ではまだ両事件が同一犯であると確定していません。
万が一連続殺人だとすれば次の犠牲者が出るかもしれないんですよ。
注意を喚起する意味でも公表すべきなんじゃありませんか?連続殺人鬼が10年ぶりに復活したなんて発表したら世間に与える動揺は計り知れない。
警察は必要以上の不安をあおるような真似は出来ません。
そうですか…わかりました。
あの…逆に1つ聞いてもいいですか?なんでしょうか?もし仮に一連の事件がこの山平隆志の犯行だとしてこいつが目の前に現れた時あなたはどうするつもりですか?土門さん…。
鑑定結果を刑事部長に報告してくる。
(日野)おいおい出ちゃってるよ。
シリコンゴムや石膏の事まで書いてあります。
捜査本部にも箝口令は敷かれていたのに。
どうして…。
(相馬)「デスマスク連続殺人事鬼」か…。
これ書いた人僕と同じネーミングセンスですね。
まさか君がリークしたんじゃないだろうな。
いえいえ。
リークって…。
どうかしたの?宇佐見さんが新聞記者に?
(泰乃)ええ。
記者クラブの入館証をしてました。
それも東陽新聞の。
まさか宇佐見さんがあの記事を書かせたっていうの?私だって宇佐見さんの事信じてます。
だけど…。
次の犠牲者が出るかもしれないんですよ。
注意を喚起する意味でも公表すべきなんじゃありませんか?絶対にその犯人を見つけたいと思ったら事件の事を隠さずに世間に知らせて捜査にプレッシャーをかけようと思ったんじゃ…。
(サイレン)
(カメラのシャッター音)遺体や現場の状況から見てシリコンゴムによる窒息死ね。
奥原幹彦さんや10年前の3件と全く同じ手口。
通算5件目の殺人ってわけか…。
(権藤)土門さん。
おう。
記者クラブの入館証がありました。
確認したところガイシャは東陽新聞の記者。
西窪幸雄32歳。
東陽新聞って例のスクープ記事を書いた?あこの人…!
(相馬)あの時の記者。
どういう事だ?おととい駐車場で宇佐見さんと会ってたの見たんですけど。
その時の事を話してもらえますか?
(西窪幸雄)10年前に殺された宇佐見一穂さんのお兄さんですよね?いやあびっくりしましたよ。
(宇佐見の声)どこで調べたのか10年前の事件の事も詳しく知っていてあれこれ聞いてきました。
でも…。
今の私にお話出来る事は何もありません。
(西窪)やはり同一犯だと思われますか?もういいでしょ。
それだけです。
土門さん!知ってたのか?泰乃さんたちから聞いて。
でも記者に付きまとわれただけならなんの問題もないはずでしょ。
じゃあどうして被害者の西窪があんなに詳しい記事が書けたんだ?それは…。
仮に宇佐見研究員の話したとおりだとしても生前の被害者に関する情報だ。
捜査本部には報告をあげなくちゃならん。
前回と同じ死因は窒息死で間違いない。
これが気道に引っかかっていたシリコンゴムと毛髪。
毛髪…。
被害者のものかもしれないけどひょっとしたら…。
早速調べてみます。
ありがとうございます。
聞いたわ。
宇佐見さんの事。
風丘先生の耳にまで…。
こういう噂は伝わるのが早いから。
でもおかげで少しだけわかったような気がするの。
彼が前に私に言ってくれた事の意味が。
え…?
(携帯電話)
(携帯電話)すいません。
(携帯電話)所長何か…?宇佐見さんを外す?ああ。
今回の事件の片がつくまで自宅待機するようにとさっき佐久間部長から連絡があった。
どうしてです?宇佐見さんは何も悪い事してません。
もちろんそれはわかってる。
だがこの事件が10年前と同一犯だとすれば今回の鑑定に彼が関わる事自体捜査にはプラスにならないと上が判断したんだ。
それって宇佐見さんが…。
わかってくれ。
当該事件の被害者遺族という彼の立場はあまりに微妙すぎるんだ。
(ドアが開く音)宇佐見さん。
(泰乃)自宅待機なんかする必要ありませんよ。
いやいいんです。
所長や皆さんにこれ以上迷惑はかけられませんし何より科捜研の仕事に支障が生じて犯人の特定が遅れるような事は絶対にあってはなりませんから。
宇佐見さんの言うとおりです。
何があっても犯人を特定する。
それが今の私たちに出来る唯一の事です。
これ見てください。
殺害方法は前回と全く同じでした。
という事は10年前の3件とも同じ。
例の毛髪はどうだった?被害者の毛髪とは別な人物のものだと判明しました。
おそらく固まる前のシリコンゴムに混入して被害者の気道に入ったものと思われます。
(相馬)じゃあ犯人の?
(日野)DNAは取れそう?難しいかもしれません。
ただ表面に微量の火薬が付着している事がわかりました。
火薬…。
犯人の職業や潜伏先を特定する手がかりにはなるかもしれません。
相馬くん調べてみて。
(相馬)了解。
泰乃くんは?
(泰乃)プラスチックケースとポリバケツのメーカーが違いました。
違うって10年前の3件と?そうじゃなくて今回は10年前の3件と同じメーカーのもので奥原幹彦さん殺害の時だけ違うメーカーのものだったんです。
だとしたら犯人は4件目だけ違うものを使い5件目で10年前と同じものに戻した事になるわね。
どうして…?違うっていえば妙な事に気づいたんだけどね…。
なんです?指紋かせめて皮脂が残ってないか前回と今回のシリコンゴムの残りを調べたんだ。
結果指紋はなかった。
用心深い犯人ですからね。
それはないでしょう。
だがシリコンゴム自体の手触りが微妙に違う気がした。
手触り?どういう事です?正直専門外だからね。
化学は宇佐見くん任せだったし。
シリコンゴムを貸していただけますか?私が調べてみます。
(日野)これとこれと。
よいしょ!行こう。
よいしょ…。
(日野)悪いね。
奥お願いします。
(日野)はい。
やっぱり宇佐見さんがいないと…。
(ドアが開く音)
(泰乃)何やってんの?いや何って宇佐見さんにシリコンゴムのデータ送ってるんですよ。
ほら自宅待機なら家で仕事してもらえばいいかなって。
はい送信完了!
(日野)相馬くん君自宅待機の意味わかってないの?あれ?僕またなんかやっちゃいました?ううん。
科捜研に来て初めて役に立つ事したかも。
これが手触りの違いの正体?ひょっとして…。
(チャイム)風丘先生どうして…?自宅待機で退屈してんじゃないかと思って。
差し入れの宅配!
(早月)余計なお世話だと思ったらそう言ってくれていいから。
でもようやくわかったの。
白骨遺体が見つかった時宇佐見さん私にこう言ってくれた。
本当に大切な人を失った痛みはその瞬間より時間が経てば経つほど大きくなっていくものですから。
あれは宇佐見さん自身への言葉だったんだって…。
宇佐見さんと私がまるで同じだなんて思わないけどでも私になら少しは何か話せる事があるかなと思って…。
今でも恨んでますか?え…?犯人の事。
(ため息)私には子供たちがいるから。
もし私が犯人の事を心から恨み続けてたとしたらきっとあの子たちも同じようになる。
それだけは避けたかった。
正直子育てと仕事に追われて目の前の事でいっぱいいっぱいだったって言った方がいいかも。
答えになってないか…。
いやそんな事は…。
(メールの着信音)
(泰乃の声)「シリコンゴムのデータパソコンにメールしちゃいました。
調べてもらえますか?」シリコンゴムに硬化剤を入れてかき混ぜた場合固まる時に空気が入ります。
手触りの違いは気泡の大きさが違うためでした。
どうしてそんな違いが起きるんです?固まる速度やかき混ぜ方によるのかもしれないけど問題はこれ。
10年前の3件は5件目とほぼ同じなのに4件目だけが違うでしょ?どういう事だね?マリコくん。
私たちは4件目の事件を調べた時10年前の3件とは犯行に使われたプラスチックケースやポリバケツが違っていたのにその特異な殺害方法からてっきり同一犯の犯行だと思い込んでしまった。
でも5件目では10年前の3件と同じものを使った。
確かに変です。
犯人が4件目だけ別なものを使って5件目ではあえて10年前と同じものを使ったと考えるより4件目だけが別の犯人の犯行だと考える方が理にかなってると思わない?まさかコピーキャット?その可能性は高いわ。
それも過去3件の犯行手段を熟知して忠実に再現した巧妙な模倣犯。
こんな猟奇的な犯行をする奴が2人もいるってのか…。
まいったなあ。
…あそうだ。
毛髪の火薬の方は何かわかった?あああれならモデルガン用の火薬でした。
いくつかのメーカーに問い合わせ中で結果待ちです。
モデルガン用…。
毛髪に付着するぐらい使用してたとすれば持ち主はガンショップとかに出入りしていた可能性が高いな。
製品が特定出来れば販路から犯人を絞れるわね。
結果が出次第土門さんに連絡して。
(泰乃)マリコさんどこへ?高分子素材研究センター。
5件のシリコンゴムを全て調べてもらってくる。
(権藤)土門さん。
おう。
(権藤)5件目の被害者西窪幸雄のデスクからこれが。
「関西理科大学」…。
被害者の共通点が判明しました。
なんです?新聞記者の西窪は車で関西理科大学を訪ねています。
なおかつ4件目の奥原の勤める住宅総合メーカーは関西理科大学の高分子素材研究センターに研究開発費を援助しており奥原はその窓口だったそうです。
待ってください。
それってどういう…。
宇佐見さん!
(日野)宇佐見くんちょっと君自宅謹慎…。
(相馬)何かわかったんですね?送ってもらったシリコンゴムのデータを調べたんです。
過去の3件と5件目は同じでしたが4件目だけ硬化剤に使われたヘリギン酸の量が微妙に違いました。
(泰乃)製法が違うって事はやっぱり別の人が作ったんですね。
別のって犯人が2人いるとでもいうのか?マリコさんはそう言ってましたよ。
4件目は模倣犯の可能性が高いって。
おいちょっと待て。
どうやって模倣するんだ?過去3件殺害方法の詳細は一切公表されてないんだぞ。
確かに硬化剤にヘリギン酸を使ったなんて情報捜査関係者じゃなければ知りえないはずです。
10年前の捜査本部もシリコンゴムの鑑定を専門家に依頼したはずだ。
鑑定記録が捜査資料の中にありました。
鑑定を依頼したのは東都理科大学の野口教授…。
鑑定に協力したこの助手って…。
この人は今高分子素材研究センターの主任です。
主任研究員の倉石といいます。
そこなら今マリコくんが…。
何!?
(音声アナウンス)「おかけになった電話は電波の届かない…」榊が出ない。
(宇佐見)まさか…。
すいません携帯まで切ってもらって。
精密機器に影響が出るもので。
いえ大丈夫です。
サンプル調べました。
組成に違いはありませんでした。
手触りや気泡の大きさが明らかに違いますけど…。
室温や湿度によって固まり方や気泡の量も変わります。
たまたまじゃないでしょうか。
私にはどうしても違うように思えてならないんです。
考えすぎだと思いますよ。
犯行方法も同じだったんだしそもそも4件目だけが別だと考える方が無理がある。
…どうして?どうしてこれが連続殺人の証拠だってわかるんです?ハッハッハ…ほら東陽新聞に出てたじゃないですか。
あれを見ればこれがその証拠だと推測がつきます。
記事にも10年前と同一犯の可能性が高いって書いてあったし。
でも私は4件目だけが5件目や過去の3件と違うとは一言も言ってません。
なのにどうして4件目だってわかったんです?それは…。
4件目だけが組成が違う事を知ってるって事は…。
なんの話だか僕には…。
ああっ!頼むからおとなしくしてくれよ。
こんな事しても無駄よ。
やめなさい。
倉石!
(倉石)ううっ!ああ…!ああ…。
ああっ!大丈夫ですか!?奥原幹彦さんを殺害した事を認めるんだな?10年前のデスマスク殺人をコピーさせてもらいました。
「野口教授の助手をしていた時警視庁が鑑定依頼した資料を見て犯行の詳細を知ったわけか」あの時の資料は宝の山でした。
(倉石の声)何度も何度も読み返して全て頭に入れました。
そのうちに自分ならどうやるかもっとうまく出来るんじゃないかそんな風に思えてきて…。
だからってどうして10年も経ってから犯行を?現れたからですよ。
殺していい人間が。
奥原幹彦さんの会社は最近センターへの出資を打ち切ると言い出したそうだな?
(倉石の声)あの男が独断で決めたんですよ。
どんなに優れた研究かわかりもしないくせに。
(奥原幹彦)はっ!やめろ!やめてくれ!
(奥原)や…やめろ!やめろ…!
(倉石の声)やり方はしっかり頭に入ってましたから。
10年前の連続殺人と全く同じにすればその犯人のせいに出来るって…。
そのために記者の西窪さんを研究センターに呼んで事件に関する情報を流したんだな。
僕の言うとおりに記事にしてくれましたよ。
(携帯電話)どうした?
(権藤)「山平隆志の潜伏先がわかりました」おう。
あの店です。
間違いないな?
(権藤)5件目の毛髪から見つかったモデルガン用の火薬も取り扱ってますし客の証言もあります。
行くぞ。
この奥です。
山平隆志だな?京都府警だ。
どうして来たかわかるな?もう逃げられないぞ。
言っておくけど4件目は僕じゃないから。
(権藤)立て。
石膏で作った4個のマスクも全て被害者の顔と一致しました。
10年前関東で3件の犯行を行った山平は自分が疑われてると察して京都に逃れた。
独居老人をだまして養子になって名字を変えるなんて…。
そうやって10年間じっと息をひそめていたのに…。
突然自分の連続殺人を模倣する4件目が起きた。
(相馬)まさか真似されて頭にきたから5件目を…?…とはいえ模倣犯を見つけるのは容易ではない。
山平の怒りの矛先は4件目を自分がやった3件と同じだという記事を書いた西窪に向かい…。
やめろ!な?やめてくれ…。
やめてくれ!
(西窪)ああっ!
(日野)動機はなんなんです?あんなひどい殺し方をする。
この世で最もリアルなデスマスクを作りたい。
そのためには死ぬ瞬間の表情を切り取るのが一番だ。
本人はそう言ってます。
相馬くんの言ったとおりだったんだ。
さすがにうれしくないです。
答えは出ましたか?え…?目の前に犯人が現れたらどうするつもりか前に失礼な事を聞きました。
答えはまだ出せそうにありません。
何かが終わったわけじゃありません。
いや…多分これから始まるんです。
裁判などで新しい事実が1つずつ明らかになる。
そのたびに僕たちは傷つきそして1つずつ乗り越えていかなきゃならないんですから。
誤解してたみたいだな。
俺はてっきり宇佐見研究員が航空科研を辞めてまで科捜研に来たのは自分の力で10年前の事件の犯人を突き止める機会を狙っていた。
そう思っていた。
だからあんな事聞いたんだ。
うん…。
刑事の中にも長年やってると見失う人間がいるからな。
犯罪を憎む気持ちと犯人を恨む気持ちは違うって事をな。
きっと宇佐見さんは自分と同じ思いを味わう人間を1人でも増やさないように…。
そう願ってたはずよ。
ああ。
そう信じていなければ正しい分析なんか決して出来ないんだから。
2015/11/03(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
科捜研の女11[再][字]
「連続殺人鬼、空白の10年の謎!禁じられた科学鑑定」
シリコンゴムに顔を押し付ける殺人事件発生。同様の連続殺人事件が10年前に発生していたことが判明し…
詳細情報
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、風間トオル、斉藤暁、奥田恵梨華、高橋光臣、長田成哉、若村麻由美、田中健
【ゲスト】
梨本謙次郎、滝藤賢一
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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