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ノーベル賞:梶田さん観測支えた電子の目 胸張る日本企業

毎日新聞 2015年10月07日 11時51分(最終更新 10月07日 12時43分)

東京大の観測施設「スーパーカミオカンデ」に使われている直径20インチの光電子増倍管=、田中泰義撮影
東京大の観測施設「スーパーカミオカンデ」に使われている直径20インチの光電子増倍管=、田中泰義撮影

 梶田隆章・東京大宇宙線研究所長が「ニュートリノ振動」という現象を見いだした大型観測装置「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)は世界最高の精度を誇り、多くの国内企業の技術が凝縮されている。ニュートリノを捉える「目」に当たる「光電子増倍管」を製造した電子機器メーカー「浜松ホトニクス」(浜松市)の晝馬(ひるま)明社長(58)は7日記者会見し「受賞に貢献できたのは社員にも喜び。日本のニュートリノ研究が世界をリードしている証しだ」と語った。

 スーパーカミオカンデは、ニュートリノが水にぶつかって発生する微弱な光を約1万1000本の光電子増倍管(直径50センチ)で捕まえる。その性能は、月面から地球に向けた懐中電灯の光をキャッチできるほどという。

 袴田敏一顧問(66)によると、梶田氏とは前身の「カミオカンデ」用の機器開発に着手した1979年ごろから付き合いがあった。梶田氏の印象について「電子管事業部の工場にやって来て、食堂の片隅でコツコツとデータを測定していた。妥協しないが、紳士的で温和な人」と話す。

 カミオカンデでは、小柴昌俊・東大特別栄誉教授がニュートリノの観測に成功して2002年のノーベル物理学賞を受賞。12年には同社の半導体検出器などがあるスイスの施設が物質に質量を与える「ヒッグス粒子」を初めて発見し、存在を予測していた研究者が翌年の同賞を受賞した。

 また、スーパーカミオカンデの巨大な水槽は、三井造船が建設を担当した。同社広報室は「当社の技術力で世界的な偉業に多少なりとも貢献でき、光栄です」と話した。【飯田和樹、沢田均、伊藤奈々恵】

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