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司法試験漏えい:明大大学院の元教授を在宅起訴

毎日新聞 2015年10月07日 20時13分

 司法試験問題の漏えい事件で、東京地検特捜部は7日、考査委員だった明治大法科大学院の青柳幸一・元教授(67)=懲戒免職=を国家公務員法(守秘義務)違反で在宅起訴した。一方、問題を教えられた20代の女性受験生については、漏えいを持ちかけたような刑事責任を問うべき事実は見当たらなかったとして立件を見送った。

 起訴状によると、元教授は今年5月中旬にあった司法試験前の2月上旬〜5月上旬、明治大法科大学院を昨年修了した教え子の20代の女性受験生に対し、いずれも憲法分野の短答式(マークシート式)と論文式の問題を、自身の研究室などでそれぞれ数回にわたって漏らしたとされる。

 法務省などによると、元教授は今年の司法試験で、憲法分野の問題を取りまとめる「主査」を務めた。関係者によると「女性に好意があり、自ら漏えいを持ちかけた」などと説明しているという。

 関係者によると、元教授は法科大学院の研究室などで、論文の書き方を受験生に繰り返し個別指導した。受験生が何度も答案を書き直すうち、元教授が作成した模範解答とほぼ同じ内容になったという。試験本番の論文は、教授が他の考査委員と共有していた複数の採点評価のポイントをすべて押さえた内容で、ほぼ満点を獲得。短答式試験も憲法は満点だったという。

 法務省は他の受験生の答案を再調査したが、この受験生と似たような答案は見当たらず、漏えい先はこの受験生1人だけと判断。特捜部も元教授の在宅起訴で捜査を終結した。

 考査委員は司法試験の問題作成や採点を担当する非常勤の国家公務員。法務省は9月、元教授を考査委員から解任し、東京地検に告発。明治大も元教授を懲戒免職処分としている。【近松仁太郎】

 ◇02年から司法試験考査委

 青柳元教授は慶応大大学院を修了後、横浜国立大や筑波大の大学院教授などを経て、2011年4月に明治大法科大学院教授に就いた。旧司法試験時代の02年から司法試験考査委員を務めていた。

 専門分野は憲法で、司法による人権保障やマイノリティーの人権などを主に研究していた。「人権・社会・国家」「わかりやすい憲法(人権)」などの著書や論文も執筆。川崎市の情報公開・個人情報保護審査会会長や神奈川県横須賀市の人権懇話会座長も務めた。

 1984年には「国公立女子大学の憲法適合性」と題する論文を公表。女子大設立は女性に対する差別だとしたうえで「女性を優遇しているように見えて、知的能力で女性を劣等と推定する固定観念に根ざすものだ」と指摘し、「教育における性差別の解消は、男女平等の実現にとって不可欠」と主張していた。【平塚雄太】

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