ダーウィンが来た!「超危険!針山のキツネザル」 2015.11.01


ここはアフリカのマダガスカル。
高さ100メートル。
針のように鋭くとがった岩山がどこまでも続きます。
山の頂はまるで刃物です。
こんな危険な岩山を跳び回る生きものが今日の主人公。
カンムリキツネザルです。
(鳴き声)一歩間違えば谷底に真っ逆さま。
危険と隣り合わせの暮らしです。
今回生まれたばかりの赤ちゃんを抱えた1匹のお母さんに密着。
足に大ケガを負いながらも必死で赤ちゃんを守り育てる姿を追いました。
超危険な針山で命をつなぐカンムリキツネザルの子育て奮闘記です。

(テーマ音楽)アフリカのマダガスカル島。
荒野の一角に世にも奇妙な風景が広がります。
地元で「ツィンギ」と呼ばれる巨大な岩山です。
岩山のあちこちに刻まれた深い谷。
深さ数十メートルの谷が迷路のように続いています。
鋭くとがった岩山の頂。
「ツィンギ」とは現地の言葉で「とがって歩けない場所」という意味なんだそうです。
確かにこんなところ歩けないですよね。
岩がどれほど鋭いのかちょっと実験です。
ニンジンが真っ二つ!まるで刃物みたい。
超危険な岩山ツィンギ。
ここを住みかにしている生きものがいます。
今日の主人公カンムリキツネザルです。
一体どんな暮らしをしているんでしょう?カンムリキツネザルは原始的なサルの仲間。
頭のV字型の模様がカンムリのように見えるのが名前の由来です。
体長はおよそ35センチ。
ちょうどネコくらいの大きさです。
オスとメスの違いは体の色。
手前の茶色いのがオス。
向こう側の灰色がかったのがメスです。
鋭くとがった岩の上を跳ね回るカンムリキツネザル。
特に痛そうにはしていませんね。
どうして平気なんでしょうか?その秘密はカンムリキツネザルの体にあります。
特殊な足の裏です。
足の裏の皮膚がとても厚く底の厚い靴を履いているようなものなんです。
特に皮膚が分厚いのはこの部分。
指先には滑り止めの細かいしわもあります。
歩く姿をよく見るととがった岩に分厚い部分を当てているのがわかります。
ジャンプの時足の裏には体重の何倍もの力がかかりますがまずケガをすることはありません。
カンムリキツネザルは10匹ほどの群れを作り鋭くとがった岩山の上を移動しながら暮らしています。
おや?群れが崖を下り始めました。
やってきたのは小さな森。
針山の谷間にはこうした森が点在しています。
ここがカンムリキツネザルの食事場所です。
食べているのは木の実。
カンムリキツネザルは木の実が大好物なんです。
こちらでは木のうろに頭を突っ込んでいます。
たまった水を飲んでいたんですね。
ツィンギの谷間の森はほとんどが広さ100メートル四方程度。
必要な量の食べ物を得るにはその10倍もの森が必要です。
そのため毎日数キロも針山を移動しなければならないんです。
ツィンギは乾季の真っただ中です。
森の木々は葉を落として一時休眠。
カンムリキツネザルにとっては食べ物や飲み水に苦労する厳しい季節です。
木陰で休憩中の群れ。
あっ赤ちゃんがいます!赤ちゃんは生後1週間ほど。
母親は群れの最年長のメスキキです。
右はお父さん。
赤ちゃんのことが気になってしかたがないようです。
こちらの若いメスにも赤ちゃんがいます。
こちらの子は生まれてまだ2〜3日のようです。
カンムリキツネザルはよりによって厳しい乾季の真っ盛りに出産するんです。
この群れはキキ親子ともう一組の親子。
2匹の赤ちゃんのお父さんである1匹の大人のオス。
それに4匹の若いオスの全部で9匹。
私たちはこの群れに密着。
キキの子育ての様子を観察することにしました。
おなかに赤ちゃんを抱えたお母さん。
腰を高くして赤ちゃんが岩にぶつからないよう注意深くジャンプします。
赤ちゃんととがった岩の間はスレスレ。
あっ危ない!ぶつからないかハラハラさせられますね。
赤ちゃんも振り落とされないように必死です。
おやキキが立ち止まりました。
お乳の時間です。
移動中でもこうして止まって赤ちゃんにお乳を与えます。
その時です。
上空にタカが現れました。
(鳴き声)気付いたオスが声を上げ仲間に危険を伝えます。
(鳴き声)急いで岩陰に避難するキキと群れのメンバー。
複雑な地形のツィンギにはこうした天敵から身を隠せる場所がいっぱいあるんです。
タカは去っていきました。
再び移動を始めた群れ。
今度は行く手に大きな谷が現れました。
幅は6メートル。
深さ20メートル。
さあどうする?あっ跳んだ!すごいジャンプ力。
しかも全く助走なしで跳んでいます。
飛距離は体の長さの10倍ほど。
人間に例えるなら助走なしで電車1両分。
20メートル近い距離を跳んでしまうことになります。
頑丈な足の裏に加えてこの脅威のジャンプ力もまたカンムリキツネザルが針山ツィンギで暮らせる秘密です。
今度は赤ちゃんを抱えたキキ。
跳びました!赤ちゃんを抱えたまま跳んでしまうキキのジャンプ力もすごいですが振り落とされない赤ちゃんもすごいですね!谷を越えた群れ。
ようやく森に到着です。
しかし今は乾季。
見つけた木の実は鳥に食べられたのか中身はほとんど残っていませんでした。
赤ちゃんにお乳を与えるためお母さんは栄養をつけなければなりません。
しかたなく地面で食べ物を探す群れ。
何か見つけました。
落ちた木の実です。
ずいぶん堅そうですね。
この時期こうした古い実も貴重な食べ物。
あめ玉のようにしゃぶってわずかに残った果肉で飢えをしのぎます。
アゴが疲れそうですが背に腹はかえられません。
こちらはキキの赤ちゃん。
しきりにお乳をねだっています。
でもキキは満足に食べられず十分なお乳を出せないようです。
厳しい乾季キキにとってつらい状況が続きます。
第2章ではキキが前足に大けがを負ってしまいます。
赤く腫れ上がった足の指。
痛そうですねぇ。
けがを抱えての子育て。
キキは無事に赤ちゃんを育てられるんでしょうか?今日の舞台アフリカマダガスカルのツィンギ。
この奇妙な岩山はどうやって出来たんでしょう?岩の表面をよく見るとところどころに丸い模様のようなものが見えます。
これはサンゴの化石。
ツィンギの岩は昔海の底にあったんです。
およそ1億5,000万年前サンゴが積もって出来た石灰岩が隆起して地上に現れました。
そしてこの巨大な石灰岩は雨によって溶かされていきます。
長い年月の間繰り返し降った雨が無数の深い亀裂を刻み針のような岩山を形づくったんです。
岩山の谷間に広がる森。
ここの木々は驚くような方法で水を得ています。
岩の間から伸びる木。
根が岩の隙間に入り込んでいます。
ツィンギの地下に広がる洞窟の中。
木の根が岩を貫いて伸びています。
根の行き着く先には水があります。
森の木々はここから必要な水を得ているんです。
ツィンギの地下には一年中かれることのない川が流れています。
長年の雨が蓄えられて川を生み出しました。
豊かな地下水がカンムリキツネザルの暮らす森を支えています。
10月。
乾季は厳しさを増し果実の残っている木はどんどん少なくなっています。
食べ物を求めて移動するキキの群れはある場所にたどりつきました。
うわ〜!目がくらむほどの高さ。
崖の高さはおよそ100メートル。
下には広大な森が1キロ以上にわたって広がっています。
ここならまだ実を付けている木があるかもしれません。
群れの仲間も次々と崖の上にやってきました。
先陣を切るのは大人のオス。
続いてみんな次々と下り始めます。
でも切り立った岩壁に阻まれてたちまち立往生。
安全に下りられるルートがなかなか見つかりません。
森はまだはるか下です。
手がかりは岩のわずかな凹凸だけ。
キツネザルは指先だけで物をつかむことができるのでこんな時しっかりと体を支えられます。
そしてなんと横っ飛び。
足を滑らせれば一巻の終わりです。
見ているこちらがヒヤヒヤしますね。
こちらでも横っ飛び。
忍者顔負けの身のこなしです。
そしてオスがついに縦に走る大きな割れ目に沿ったルートを見つけました。
この割れ目に沿って下りればなんとかなりそうです。
一方こちらはキキ親子。
まだ上の方にいます。
重たい赤ちゃんを抱えているので思うように動けないんです。
慎重に手がかりを探します。
赤ちゃんも必死にしがみついています。
森が間近に見えてきました。
あと10メートル。
ついに到着です!ここにはいつもの小さな森とは違う種類の木が生えていました。
こんな大木まであります。
あっ木の実がたくさん!苦労して崖を下りたかいがありましたね。
こちらでは豆を食べています。
おなかいっぱいになったキキたち。
これで赤ちゃんもたっぷりお乳が飲めるはずです。
およそ1時間後。
群れは他の森に向かって再び移動を始めました。
ちょっと待った!何ですか?ヒゲじい。
せっかく来たのにもう行っちゃうんですか?そうですよ。
苦労してたどりついたのにもったいないじゃないですか。
この森は広いんだから木の実も多いでしょうしずっとここにいればいいでしょう。
そう思うかもしれませんが食べられる実はそう多くないんです。
どういうこと?ちょっとこれを見て下さい。
同じ木になった実でも色が違いますよね。
これは熟れ具合が違うためです。
カンムリキツネザルは熟れた実だけを選んで食べるんです。
あ確かに選んでますな。
熟れていない実には毒がある植物もあるんですよ。
え〜!そうなの?だから実がいっぱいあっても全部食べられるわけではないんです。
そうか。
でも広いんだから他の森よりは食べ物は多いでしょうね。
確かにそうなんですがこういう豊かなところではライバルも多いんです。
は?ライバル?他の群れです。
広くて豊かな森には他の群れもたくさんやってきます。
長居をしていると時には鉢合わせしてこんなふうにケンカになってしまいます。
あららずいぶん激しいですなぁ。
でしょ?ケンカで大きなケガでもしたらツィンギの険しい岩山を移動するのが大変になってしまいますからね。
なるほど。
だからキキたちは長居はせずに「つぃんぎ」の森を目指すというわけか…なんてね。
雨季が始まろうとしています。
(雷鳴)激しい雨。
森にとってもキキたちにとっても久しぶりの恵みです。
でもこの時期の雨は長くは続きません。
岩のくぼみにたまったわずかな雨水を飲むキキの群れ。
みんな先を争うように水たまりにやってきます。
強い日ざしが戻れば水たまりはすぐに蒸発してしまいます。
早く飲まなければならないんです。
赤ちゃんは生後およそ2か月。
キキの脇腹にいます。
おなかの下ではもう頭が岩にぶつかってしまうからです。
大きく育った赤ちゃん。
重そうですねぇ。
ある日赤ちゃんの成長が思わぬ事件を引き起こしてしまいました。
崖を登っているのはキキ。
ふだんなら周りにいるはずの仲間の姿が見当たりません。
一体どうしたんでしょうか。
よく見ると左の前足を使わずに3本の足だけで歩いています。
どうやらケガをしているようです。
あっ!指が腫れ上がっています。
岩でケガをしたようです。
カンムリキツネザルはジャンプの時は必ず足の裏の分厚い部分で着地して衝撃を和らげます。
キキは重い赤ちゃんを背負っているせいでバランスを崩して弱い指を岩にぶつけてしまったようです。
でもこんな状態でも赤ちゃんを背負わねばなりません。
指が岩に当たらないよう3本の足だけで進むキキ。
群れはどんどん先へ行ってしまいます。
キキは必死であとを追います。
でも痛みに耐えきれず時折立ち止まっては傷をなめています。
オスがやってきました。
遅れたキキを心配して戻ってきたんです。
オスが自分の背中に乗るよう赤ちゃんに促しています。
キキの負担を減らすつもりなのかもしれません。
でも赤ちゃんはやっぱりお母さんのほうがいいようです。
戻ってしまいました。
さらに2匹の若いオスもやってきて親子に寄り添います。
素早く動けないキキ。
もしタカにでも襲われたら逃げきれません。
みんなで守ろうというんでしょうか。
赤ちゃんが自力で歩けるようになるまでまだ1か月もかかります。
しかも赤ちゃんの成長とともに必要なお乳の量もどんどん増えていきます。
これまで以上に栄養をとらなければならないキキ。
このピンチを乗り切ることができるんでしょうか。
本格的な雨季を迎えました。
一斉に花が咲き花粉や蜜を目当てに昆虫が集まります。
そこにやってきたのはキキの群れ。
昆虫を狙っています。
捕まえました。
雨季は動物性のたんぱく質をたっぷりとれる絶好の機会なんです。
キキを見つけました。
赤ちゃんも無事です。
指はまだ腫れたまま。
傷は治っていません。
ところがケガした足も使っています。
子どもが大きくなり3本の足だけでは支えきれなくなったんです。
赤ちゃんは生まれて3か月。
これでは傷はなかなか治りそうにもありません。
それから1週間たったある日のこと。
崖の中腹に1匹のメスを見つけました。
腫れた指。
キキです。
でも背中に赤ちゃんがいません。
どうしたんでしょう?1匹で崖を下りていくキキ。
森の中キキの子どもです。
自分で歩き回れるようになり先に森に来ていたんです。
キキが追いつきました。
ついに重い子どもを背負って歩く負担から解放されたんです。
子どもを見守るキキ。
これで指の傷もきっと回復に向かうことでしょう。
木の上を元気に駆け回る子ども。
もう完全に1匹で行動できるようになりました。
子どもがキキと一緒に若葉を食べようとしています。
乳離れも始まったんですね。
カンムリキツネザルが乾季に出産するワケそれは食べ物が豊富になるこの時期に子どもを乳離れさせるためだったんです。
アフリカマダガスカル。
奇妙な岩山ツィンギで命をつなぐカンムリキツネザル。
鋭くとがった岩の上を跳ね回るその暮らしはいつも危険と隣り合わせです。
しかし針の山は意外にも森を育み豊かな食べ物をもたらしてくれます。
恵みの森を目指してカンムリキツネザルは針山を進んでいきます。

(前原)今こそ我々はもう一つの維新を起こす!2015/11/01(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「超危険!針山のキツネザル」[字]

針のように鋭くとがった岩山が立ち並ぶ、マダガスカルのツィンギ。ここに暮らすのがカンムリキツネザルだ。足を滑らせれば命はない。キツネザルの超危険な針山生活に密着。

詳細情報
番組内容
まるで「針山」のように鋭くとがった岩山が立ち並ぶ、マダガスカルのツィンギ。ここに暮らすサルの仲間、カンムリキツネザルが主人公だ。高さ100m、刃物のように切り立った岩の上で大ジャンプを繰り返すカンムリキツネザル。足を滑らせれば、谷底へ真っ逆さまの超危険な生活だ。今回、一匹のメスの子育てに密着。足に大ケガを負いながらも、必死に子どもを守り育てようとする姿をとらえた。果たして母子の運命は?歌:平原綾香
出演者
【語り】和久田麻由子,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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