(ナレーション)
江戸時代初期京都で二人の芸術家が出会った
書家で陶芸家の本阿弥光悦と絵師・俵谷宗達である
二人が興したものは平安時代の大和絵に学んだ装飾性豊かな造形芸術であった
その芸術活動は後に日本美術の一大潮流となる
100年後二人に私淑した京都の絵師・尾形光琳がその装飾的な美を大成
更に100年後江戸の絵師・酒井抱一が発展させたその潮流はいつしか光琳になぞらえて「琳派」と呼ばれるようになった
(小倉さん)琳派は代々つながってきた流派っていうわけではなくて前の世代の作家さんなり作品なりに憧れを抱いた後世の人たちが模写したりとか同じ画題をですね取り上げてつないできたような…。
琳派誕生から400年
その系譜に連なる近現代の作品を見つめる
本阿弥光悦が洛北・鷹峯に芸術村を拓いて400年目に当たる今年
明治から現代まで琳派の影響が色濃い作品を集めた「琳派イメージ展」が開かれている
平安時代に成立した「伊勢物語」に登場する杜若は琳派に特徴的な画題である
琳派を敬愛した昭和のデザイナー田中一光の杜若
金泥銀泥を多用した装飾美も琳派の特色である
明治の洋画家・浅井忠は京都で図案教育に携わっていた
手本にしたのが琳派の鮮やかで簡潔な表現であった
(小倉さん)画題をですねこちらでは「琳派モチーフ」っていうふうに名付けてますけれども紅白梅とか風神雷神とかですねそういうものを描き継いでいったっていうところが一つの特徴。
あとは線よりは色面ですね。
鮮やかな色ですね。
近現代の琳派っていうのは定義もされてないですしどの作家がとかいうことも全然決まってないですので言葉の問題ではなく作品からまずはこういう感じが琳派なんじゃないかっていうのを皆さんに分かっていただけたらなと思って。
光悦が拓いた芸術村を描いた作品
縁側で景色を愛でる人物が光悦である
作者は…
明治の日本画家であり工芸デザイナーである
幕末の慶応2年京都の武家に生まれた雪佳は四条派の絵画と図案を学んだ
明治34年図案研究のため渡欧
アール・ヌーボーに出会い日本美術の影響を目の当たりにする
これからの工芸意匠とは何か
その答えを雪佳はかねてより傾倒していた琳派に求めた
漆芸家の実弟・神坂祐吉や京都の陶芸家と共同制作を行い数々の工芸品を世に送り出した
寺町二条にある…
日本で唯一手木版本を手がける出版社である
創業は明治24年
蔵には創業時に譲り受けた江戸時代から現在までの板木が収められている
その数実に10万枚を超えるという
雪佳は図案集の多くを「芸艸堂」から出版した
(山田さん)主に図案の参考になる今で言うデザイン書を出版しておりまして。
で当時雪佳さんっていうのは今で言うデザイナーさんだったのでそのなかで交流がありまして。
雪佳さんが描かれるデザインを本っていう形で出すときに「芸艸堂」からいろいろ出版物を出していた。
明治時代に首都が東京に移って流行の発信とかも全部東京になってたんですね。
で少し京都の工芸界が元気がなかった時代があったんですけどもそのとき現れてきた今で言う新しいデザイナーさんだったんです。
でもともと雪佳さんっていうのは日本画の方だったんですけどもそういう京都の工芸界を活性化するためにデザイナーに転向された方なんですね。
明治42年に出版された雪佳の集大成…
何もないところからやっぱり新しいデザインってできないんで。
皆さん着物の業界でも清水の絵師の人たちでも何か基になる雛形っていうか参考になる本が当時必要だったんです。
でそのなかで雪佳さんっていうのは今で言う琳派を題材にして新しいデザインを提案された方だったのですごく斬新だったんですね。
それを皆さん資料として購入されて帯ですとか器とかそういうものに転用されていた。
その基になる本だったんです。
「琳派イメージ展」では京友禅も展示
梅をあしらった振袖
流水模様は尾形光琳が描きはじめ琳派の画題として定着した
重なり合う青の曲線が印象的なデザイン
作者は光琳を慕った染色家…
昭和42年人間国宝に認定された
華弘は明治42年滋賀に生まれ京都で友禅の修業をする
四条派の画家にも師事し日本画の造詣を深めた
家業を継いだ息子の…
京都市立芸術大学を卒業後パリでデザインを学んだ
彼もまた人間国宝である
(森口さん)おやじ自身は尾形光琳のことを「光琳さん」と呼んでいましたしこよなく尾形光琳に憧れそして尊敬してたと思います。
琳派の…あるいは光琳のモチーフをなぞるのではなくあるいはそれを展開するのではなく自分自身の四条派の写生をベースにした…それをベースにして琳派風の造形思想といいますか…。
基づいてやってるような気がして。
昭和46年作…
(森口さん)余白だと思っていた部分が波の一部になりまた波の外になってます。
多くの場合に二次元というものの制約を逃れようとして立体的に見せたり一生懸命しますけれども琳派に限っては二次元性というのをしっかりと捉えてでその制約を見事に表現に生かしているという。
たぶんそれが僕琳派だと思うんですよ。
展覧会に出品されたフランスの画家アンリ・マティスの作品
二次元を強調する色面の構成に琳派のイメージが重なる
(来館者)色使いとかねそういうのがね若干やっぱ当然違うんだけどもフォルムだとかそういうところがすごくやっぱ通底したものがあるんじゃないかなっていう感じは持ちますけれども。
神坂雪佳さんはちょっと…だいぶこちらの近代の方ですのでなんか…尾形光琳の流れなんですけれどもやっぱりモダンな感じがすごくプラスされてると思いました。
デザイン性っていうのがより強く。
400年前に京都で生まれ先人を私淑する形でつながってきた琳派
江戸時代の絵師が創造した鮮やかな芸術潮流は時空を超えて響き合う
琳派の名品をご紹介します
2015/11/01(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]
「近現代の琳派」
詳細情報
◎この番組は…
古都1200年の歴史の中で守り続けられてきた寺社仏閣・祭り・伝統工芸などの中より「美の再発見」をテーマに、ハイビジョン撮影による高画質映像でお送りする「映像美術館」。
音楽
久石譲
公式HP
【番組HP】
http://www.mbs.jp/kyoto/
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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