皆さんロシアの代名詞といえば…。
そう!もちろん…誰もが知るあのメロディーを生み出した偉大な作曲家ですが実は法務省の元エリート官僚。
働きながら音楽院に通い続け作曲家に転身した…やや遅めのデビューながらもあらゆるジャンルで名作を残しロシア人作曲家として初めてその名を世界に知らしめたチャイコフスキー。
その成功には重要な3人の人物が関わっていたのです。
「ららら♪クラシック」今回は名曲とその仕掛け人たちとの隠された物語をご紹介します。
「ららら♪クラシック」今回はチャイコフスキーの名曲集です。
ドラマチックなメロディーをたくさん作った偉大な作曲家ですけれども脱サラ作曲家だったという事ですね。
今回はですねチャイコフスキーにとても縁のある方をお招きしました。
演出家の宮本亜門さんです。
(一同)よろしくお願いします。
ようこそお越し下さいました。
縁があると言われてもなんか困るんですが…お会いした事ないんですけど。
そのゆかりあるという話ですけどチャイコフスキーとはどういう接点が?実を言うと僕ね引きこもりだったんですよ。
いつごろ?え〜っとね高校3年ぐらいかな。
部屋に1年間内側から鍵を閉めて誰にも会わないでそのこもってた時にクラシックのレコードが1枚ありましてそれがチャイコフスキーだったんですね。
序曲「1812年」。
いちはちいちになんですけどこの序曲を何回も盛り上げて聴いてだんだん体が熱くなってきてしまいにはベッドの上でジャンプしてました。
それで演出家という道を歩んでいこうと思って今までやってきてるんですけどね。
チャイコフスキーがいなかったら亜門さんは…。
そうですね。
彼の叙情的なメランコリックなあの劇的な世界というんですかあれがあったんでおかげで劇的に生きる事ができたのかもしれません。
今日はねどんな曲が出てくるのか本当に楽しみですけれどもまずはね簡単にチャイコフスキーのプロフィールを紹介したいと思います。
チャイコフスキーはロシアの非常に裕福な家庭で育ったようですけれども法律学校を卒業後法務省で官僚をして働きながらも音楽への情熱が諦めきれずに働きながら音楽院に通った。
そして裕福な家庭で育った癖が抜けずに稼ぎが僅かな頃も生活のレベルを落とさなかった。
それから若手の作曲家の援助や慈善事業にもお金を使ってたという事でまあ金欠。
もう圧倒的にこれが気になりますよね。
今回はですねチャイコフスキーの名曲を3つご紹介しますけれどもそれぞれ名曲誕生の仕掛け人となった人がいるという事でまずは1人目。
音楽院卒業後音楽教師として働きだしたチャイコフスキー。
実績がなかった彼を教師に大抜擢した人がいました。
モスクワ音楽院の創設者にしてロシアが誇る名ピアニスト…ニコライはいち早くチャイコフスキーの才能に気付いた人物なのです。
ニコライはまだ駆け出しで生活にも困っていたチャイコフスキーを気遣い自宅に下宿させてくれました。
そして古着を着続けていたチャイコフスキーに新しい服を贈り劇場やサロンに連れ出し多くの友人たちに紹介してくれました。
また作曲するうえでニコライは欠かせない相談相手になりました。
チャイコフスキーは彼のもとで次々に作品を生み出していったのです。
更に…。
有名なピアニストであったニコライは多くの演奏会でチャイコフスキーの作品を弾きそのキャリアを後押ししてくれました。
こうしてニコライの深い愛情に支えられたチャイコフスキーはある決断をします。
実はピアノを得意としなかったチャイコフスキーはずっとこの分野の作曲を避けてきていたのです。
そして1か月後のクリスマスイブ。
チャイコフスキーはこっそり作曲していた「ピアノ協奏曲」をニコライに披露しました。
その反応は予想とは全く異なるものでした。
実はニコライこれまでと違い自分に相談なく作られた作品の完成度が高かったため他のピアニストが手伝ったのではと疑い嫉妬したのです。
いつも新作には自信のないチャイコフスキーでしたがこの時ばかりは別でした。
…とそのまま曲を発表する事にしたのです。
こうして2人は決別したまま「ピアノ協奏曲」は別のピアニストによってアメリカで初演。
見事大成功を収めたのでした。
一切の交流を絶った2人がようやく和解したのはそれから3年後。
ニコライが曲の魅力に圧倒された事を認めたのです。
その後ニコライはこの曲をレパートリーに加え各地で演奏。
作品の魅力を伝える事に尽力しました。
チャイコフスキー初の出世作「ピアノ協奏曲第1番」です。
実は今いつもより早く僕たちは白ピアノの前に来ています。
美濃さんちょっと今日は楽曲解説早くありませんか?この曲に関してはどうしてもお伝えしたい事があるんですね。
「ピアノ協奏曲第1番」といえば…。
冒頭部分のピアノを上から下まで使ったこの動き。
これね。
実はこれ初演時はこうではなかったんです。
えっ!?最初のバージョンが一体どうだったのか気になりませんか?もちろん気になります。
最初のバージョンはニコライさんが聴いた…?そうです。
ちょっと弾いてみますね。
え〜!?こんな感じなんですか?どうですか?印象。
ちょっと弱気ですね。
「アルペッジョ」といってねこのピロピロピロッ。
何か白鳥でも舞っているようなキラキラキラッというような。
ほんとだ。
これはちょっとピアノパートをもっと華やかにするべきだとか印象的にするべきだとかいろいろと難癖をつけているわけですね。
よかったですね。
それがあってこれだけ世界的に耳に…世界中の人がこびりつく。
ね。
だいぶ印象がね…。
全然違う。
さてですねここで今日は僕からもですねちょっとご紹介したいものがあるんですよね。
この番組で取り上げる18世紀19世紀の音楽家っていうのは…チャイコフスキーあるんです。
声が?はい。
生の声が残ってますので。
誰か取ってたんですか?そうなんですよ。
ではちょっとお聴きになって下さい。
どんな声なんだろう?
(口笛の音)これ口笛?みたいですね。
(口笛の音)口笛あんまりうまくなかったですね。
顔と違う。
ね!私もっとバリトンですごくゆったりおしゃべりしててほしかったチャイコフスキーには。
ほんとにこう言うとなんですけど好きな人と会わない方がいいですよね。
作曲家としてその名が知られ始めた頃チャイコフスキーはニコライの家を出て1人暮らしを始めていました。
そんなある日一人の女性から仕事の依頼が舞い込みます。
依頼主は…鉄道技術者だった夫を独立させ巨万の富を築かせた人物です。
大の音楽好きで知られたメック夫人。
演奏家を雇って一緒に演奏したり若い音楽家を援助したりと音楽に興じる日々を送っていました。
中でも愛したのがチャイコフスキー。
彼女は崇拝する作曲家が借金まみれの生活をしている事を耳にし仕事を依頼してきたのでした。
そしてその仕事を終えたチャイコフスキーが受け取ったのは夫人からのお礼の手紙と驚くほどの破格な報酬でした。
これがきっかけとなり2人は文通生活をスタート。
その後14年にわたって手紙を交わすものの一度も会う事はありませんでした。
共に内向的で人づきあいが苦手な者同士。
手紙を重ねるごとに打ち解け信頼を寄せ合っていきました。
そんな穏やかな日々が半年を過ぎようとした頃ある事件が起こります。
チャイコフスキーが突然結婚したのです。
メック夫人はひどい嫉妬に駆られました。
しかし僅か1か月で結婚生活は破綻。
実はチャイコフスキーは同性愛者だったのです。
周囲からの偏見が家族に及ばぬよう形式的な結婚へと踏み切ったものの自由と愛が奪われた生活に耐えきれなくなったのでした。
更に結婚の準備資金により…仕事へも人生へもやる気を失ったチャイコフスキーは入水自殺を図ってしまうのでした。
もはや誰からも見捨てられるだろうと絶望していた時…。
手を差し伸べてくれたのはやはりあのメック夫人だったのです。
夫人はチャイコフスキーが抱えていた多額の借金を返済。
そして音楽院の給料の3倍にもあたる資金を毎年援助する事を約束してくれたのです。
自由に作曲できる環境を整えてくれたメック夫人へ感謝の気持ちを込めて書いたのが「交響曲第4番」です。
(「交響曲第4番」)う〜んすばらしい。
今最後のこの4番をメック夫人は聴いたんですか?ええ。
よかったですね。
その時の幸せたるや。
自分のためにねこれを贈って…。
「あなたの僕たちの交響曲」。
だってあの感情とあの喜びとあの入り方っていうのが全て本当に生きててよかったって。
メック夫人にとってもいい。
お互いにとってもウインウインの関係になってると思いますけどね。
ほんとに例えばこのメック夫人に対して…ああして下さいこうして下さいと注文があるわけではなくて「とにかくいいものを作りなさい」って言ってここに入れるっていう。
いろんな事を全部取れる。
一点に集中できるっていう時に人間の力ってすごく出てくるじゃないですか。
それにこの2人のなんかプラトニックな関係というのもちょっといいですよね。
でも深いですよね。
14年間ずっと文通だけで誰にも言えないきっとね…。
かえって文通は高まるんですよ。
でも結局芸術家というかやっぱり本質は生きる意味がものをつくったり…さあここまで「ピアノ協奏曲」とそして交響曲を紹介してきましたけれどもちょっとこちらをご覧下さい。
チャイコフスキーはオルガン曲以外ほぼ全ジャンルの作品を書いたと言われていてそして多くのジャンルでヒットを残しているという事で亜門さんでもチャイコフスキーといえばというジャンルが…。
これはこのあとはバレエでしょうもちろん。
チャイコフスキーがバレエ音楽を手がける以前音楽は単なる踊りの添え物にしかすぎませんでした。
振付家は音楽を粗末に扱いリハーサル過程で何度も曲の変更を求めました。
このため多くの作曲家はバレエ音楽の仕事を避けていたのでした。
そんな中ほとんど全ての分野でヒット作を書いていたチャイコフスキーはある決心をします。
そして初のバレエ作品「白鳥の湖」を発表したのです。
しかし雄弁にストーリーを語りドラマを展開させるかつてないバレエ音楽に振付がついてこれず初演は大失敗に終わったのでした。
これを機にチャイコフスキーは長期にわたってバレエ界を離れる事になるのです。
しかしあの苦〜い経験から11年後再びバレエ音楽の作曲依頼が舞い込みます。
依頼主は帝政ロシア芸術界のトップ…低迷していたロシア芸術を立て直そうと奮闘した人物です。
フセヴォロシスキーはロシア芸術の質の高さを世界に示そうと国の威信を懸けた大規模なバレエ作品を計画していました。
その題材に選んだのが…そしてこのバレエを完璧に仕上げるにはチャイコフスキーの音楽が不可欠だと考えたのです。
一方チャイコフスキーは「白鳥の湖」の失敗後名誉挽回を懸け他の分野でヒット作を連発。
巨匠に上り詰めていました。
そして多くの仕事を抱えフセヴォロシスキーからの依頼の手紙を読めずにいたのです。
それでもフセヴォロシスキーは返事を待ち続け根気よく手紙を送り説得を試みました。
その結果…。
その情熱に打たれたチャイコフスキーはバレエ界へリベンジする事を決意したのでした。
チャイコフスキーは今度こそ作品を成功させようと作曲にあたって…同じ志を持った2人は多くのアイデアを出し合い2年にわたる歳月をかけて作品を完成させたのでした。
公演は大ヒットを記録。
チャイコフスキーはフセヴォロシスキーの情熱によってついにバレエ音楽でも成功を果たしたのです。
(「眠りの森の美女」)
(拍手)ああいいなあ。
国の威信を懸けて。
これがまたいいですね。
仕掛け人という3人の登場人物がいましたけど何かやっぱり人としての魅力なんかこの人に手を差し伸べたくなるような放っておけない何かが…。
そうですね。
声は甲高いけどすごく魅力的だったんだろうなとは思いますね。
そうですね。
さっきの夫人への音楽もそうだけどグーッと入っていくっていうところではやっぱりすごいなと周りが…周りの人たちが心動かされたがゆえに彼に頼もうっていうふうにあったんでしょうね。
これが意図的に…大衆に受けるものだけを考えるとかいろいろ意図があるとやっぱり人っていうのは意図を読み取って適度な感動しかしなくなるんだけど…僕は引きこもりの時もウワーッと入れちゃうっていうかそういう力を持ってるっていうのは後世人々にこれだけ聴かれ続ける魅力を持ってるんでしょうね。
人生を変える一曲。
そんな一曲に出会ってみたいですね。
あっあの…すみません。
チャイコです。
実は一つお話しし忘れていた事があるんです。
メック夫人と文通し始めて2年後。
フィレンツェの別荘でバカンスを楽しんでいた夫人からお手紙が届いて。
あっちでもう1軒家を借りるから自由に使ってちょうだいって言うんです。
もうどんだけお金持ちなんだか。
その夫人のいる別荘はすぐ近くにありましたが私たちはいつもどおり会う事はなく手紙のやり取りで交流していました。
でも夫人は時々…私がいる家の近くを散歩しながら仕事中の私をのぞいたり…。
私は私で劇場に夫人がいると聞けばオペラグラスでその様子を遠くから眺めていたりしたんです。
私たちはお互いの行動を慎重に読み出会わないように気をつけていました。
そう。
この日だって同じようにしていたんです…。
でも!夫人はその日いつものお出かけ時間より少し遅れて出発されてなんと散歩中の私とばったり出くわしてしまったんです!もうびっくり!驚いた私が発作を起こした事は言うまでもありません。
…というわけで私たちは生涯会わなかったというのが定説ですが一度だけほんの一瞬ですがニアミスがあったというお話でした。
映画「ギャラクシー街道」。
2015/10/31(土) 21:30〜22:00
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「作曲家特集 チャイコフスキー〜名曲の“仕掛け人”たち〜」[字]
三大バレエ音楽やピアノ協奏曲…数々の名作を残した、ロシアの偉大な作曲家チャイコフスキー。その成功を支えた3人のエピソードを交えて、名曲誕生秘話をご紹介する。
詳細情報
番組内容
チャイコフスキー特集第1弾。三大バレエ音楽、ピアノ協奏曲第1番、バイオリン協奏曲…と数々の名曲を世に送り出した、ロシアが誇る偉大な作曲家です。しかし意外にも、そのデビューは遅く、元は法務省で働くエリート官僚でした。「脱サラアーティスト」はいかにして成功できたのか?今回は、チャイコフスキーを代表する3つの名曲をセレクト。名曲誕生の「仕掛け人」となった、重要な人物とのエピソードを交えてご紹介します。
出演者
【ゲスト】宮本亜門,【演奏】ピアノ…小山実稚恵,バレエ…ボリショイバレエ団,指揮…ヘルベルト・ブロムシュテット,指揮…尾高忠明,管弦楽…NHK交響楽団,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【語り】服部伴蔵門
ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ
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