リニューアルの理由として、既存サイトで問い合わせが無いからという話しを良く伺います。しかし、効果を上げるためでしたらWebサイトのリニューアルは必要ありません。リニューアルは長い期間と多くのリソース、高いコストが発生します。さらにリニューアルが成功するか失敗するかも未知数、いわば博打の様なものです。
Webで効果を出すために一番重要な事は仮説検証のサイクルを高速で回す事です。PDCAを回す事で、最小コスト最小リソース最小工数で、失敗せずにサイトで効果を上げる事が可能です。仮説検証のサイクルを回していくと常に小さな失敗を繰り返しながら成功する方向に進み続けます。リニューアルのような大きな博打を打たずに結果を出す事ができるのです。
今回は、リニューアルをせずに既存サイトの運用改善に力を入れ、半年間で4倍まで問い合わせを増やした事例をお話しいたします。
目次
- 1 Webサイト改善実施の背景・課題
- 2 最初の一手は、徹底的に調査し「課題を見える化」する事
- 3 毎月のサイト改善で実施していった事
- 4 その結果、問い合わせは3ヶ月で2倍!半年後には4倍に!
- 5 なぜ、うまく行ったのか?
- 6 まとめ:ホームページで成果を出したいなら既存サイトの改善だけでOKです!
Webサイト改善実施の背景・課題
バリバリのIT企業、サイトのデザインもきれいでイケテル、しかし効果が出ていない、なぜなのか・・・
事例概要
会社名 | A社 |
---|---|
社員数 | 150人ぐらい |
サイト規模 | サイトA:50ページ前後、サイトB:50ページ前後、企業ブログ |
チーム編成 | WEBコンサルタント(私)と営業(アルファブロガー)の2名 |
期間 | 半年 |
結果 | CV数:50前後→3ヶ月で100超(2倍)→6ヶ月で200超(4倍) |
取締役の方が音頭を取り、WEBを積極的に活用しようという強い意志のもと、専任のWebデザイナーまでアサインした最高の布陣で挑んでいたWeb活用プロジェクトですが、あまりうまく行っていないようでした。サイトも一見すると非常にきれいで課題など無いように見えるのですが・・・。
課題が見えない・・・。さて、どうしたものか・・・。
大目標 Webサイトを使ったインバウンドマーケティングの実践
- テレアポ主体の営業から、ホームページの問い合わせを増やしサイトを使った見込み顧客獲得型営業(インバウンドマーケティング)へシフトしたいと考えていた。
背景と課題
- 取締役の方と社内のwebデザイナーの2名で、積極的にwebサイトを運用していたが問い合わせ件数は、あまり変化がなかった。
- 社内にWebデザイナーもいるためにWeb制作は自分達で可能だった。そのためサイト改善のコンサルティングだけを必要としていた。
- 一見するとサイトは非常に良くできており、デザインもきれいなうえにレスポンシブ対応でスマホでも最適表示されるように作られていた。
- SEO、広告、LP、などwebマーケティングの定石は実施していたがCVは横ばいだった。
最初の一手は、徹底的に調査し「課題を見える化」する事
そこで、まず実施した事はユーザー・サイト・競合を徹底的に分析し基本戦略を策定する事でした。
最初にやった事その1 数値目標の設定 – これをしないと始まらない –
- 数値目標は必ず設定しないと、ゴールが曖昧になる
- 数値目標はCV数を設定するのが一般的、獲得単価の軽減や、Web経由の売り上げアップというのもあり
- 数値目標を決めると、逆算して訪問数やリード数などの各指標の目標値も出せる
数値目標としてWebサイトからの問い合わせ件数を設定しました。先方からの要望で数字目標を設定しました。その目標を達成するために、どれだけの訪問数が必要か?フォームへ到達させるのはその何%か?そうなると何CV獲得できるるか?など詳細な数字を出し、何をすべきか戦略戦術を立案する事にしました。 (ちなみに目標の無いWebサイトリニューアルも結構あると思いますが、それ良くないです・・・。)
最初にやった事その2 サイト分析 – 数字でサイトの課題を見える化 –
02-01.ウェブ解析
- アクセス解析レポートを作成して課題の抽出
- 何が課題になっているかが数字でわかるレポート
Google Analyticsのデータから課題抽出のためのレポートを作成し、サイトの課題を数字で客観的に把握できるようにしました。
最初にやった事その3 ユーザー分析 – 現場の営業マンからヒアリング –
03-01.ユーザーニーズとギャップの整理
- ユーザー層の整理
- ユーザーニーズの整理
- ギャップの整理
実際に販売している現場の営業の方々とのミーティングを設定しヒアリングを実施しました。ユーザー像やニーズ、ユーザーが望むものやサイトの情報などを比較しギャップが無いかを洗い出しました。
03-02.ゴールの過程を見える化
- ゴールを達成する過程を視覚化
カスタマージャーニーを見える化し、ユーザーがサイトを発見し購入、さらにファン化するまでの過程で、Webサイトに必要な機能や、それがあるかないか出来ているか?などを洗い出しました。
最初にやった事その4 競合分析 -比較する事で見えてくる良い所、悪い所-
04-01.webサイトのマーケティング活用領域調査
- マーケティング視点で各競合の出来ている事、出来てない事を比較
04-02.ユーザー行動別サービス充実度の比較
- ユーザー行動順で比較
- ダイアグラムで見える化
04-03.コンテンツ・機能調査
- コンテンツ・機能を比較する
- 具体物の一覧把握
04-04.競合ポジショニング
- 俯瞰的・総合的に比較
04-05.競合分析レポートの作成
競合分析結果をまとめてレポートを作成しました。
最初にやった事その5 基本戦略の策定 – 調査した事をまとめよう –
05-01.プロジェクトゴールの設定
- 3つの視点とユーザー行動の流れに沿った重点課題の整理
- 3つの視点からのプロジェクトゴール
05-02.長期ロードマップの策定
- 中長期視点を持つことの重要性
- 既存概念を超えて
プロジェクトゴールの設定と合わせて、「改善すべき課題」、「Web活用やインバウンドマーケティング実現のためのあるべき姿」、「さらにそれを突き詰めるとどうなるか」など、メンバー間で共有できるよう資料を作成しました。少し盛ったところもありますが、こういった資料があると未来に希望が持てやる気が出ます。(あくまでロードマップですしPDCAを回す事で方向性が変わるかもしれません。士気を高める事や、お客さんを安心させる目的が強い資料です。)
05-03.定量目標と実施プランの策定
- 定量目標を設定
- 各ゴールに定量目標を設定
- 実施プランを策定
主に毎月の定例で確認する数字で、これらの定例目標を日々改善していくことでサイトの効果を上げていきます。
毎月のサイト改善で実施していった事
毎月1度お客様の所へ訪問し、アクセス解析の報告と改善提案をし何を実施するかを決め、決定した改善施策を先方で実施し翌月に定例をするという流れで進めました。
Webサイト改善でやった事その1 定例ミーティングの実施
- アクセス解析報告
私の作ったサイト課題がわかるレポートで、どこがボトルネックになっており、早急に改善すべきか?また、前回の改善の結果どの部分に変化があったのか?を把握します。
Webサイト改善でやった事その2 駄目な部分の改善
- 重要度の高い箇所のデザイン改善(ABテストで勘とフィーリングのデザイン制作から脱出)
使いやすさの改善や、ユーザーに直感的に商品のメリットを訴求するために重要度の高い部分からデザインを改修しました。 ただし勘や経験フィーリングに頼らないためにデザイン改修した場所はABテストを実施するようにしていました。デザイン改善に意味があったのかどうかをしっかりテストするためです。ABテストの結果はノウハウとして蓄積していけるため、このプロジェクト以外のデザインの質も向上させる事ができます。
- 必要だが足りていないコンテンツの追加
競合調査やユーザー調査から出てきたコンテンツの課題を改善しました。
Webサイト改善でやった事その3 他サイトの良い部分を真似る
コンテンツや顧客獲得までのシナリオなど、これも調査結果から出てきた他サイトの良い部分を取り入れ改善しました。
Webサイト改善でやった事その4 情報発信を強化
企業ブログはありましたが、ターゲットを設定し、そのターゲット向けにコンテンツを定期的に配信するという事が出来ていませんでした。ブログの方向性や記事のアイデアだしなどをミーティングしました。専任のブログ担当なども任命し、配信スケジュールも確定させました。その結果はてなブックマークのホットエントリーに入る記事も出てくるようになりました。 (私が関わってから1年経っていますが、A社はインバウンドマーケティングの実践方法を完全に物にしたようで、自社メディアをいくつも作ってバズらせているようです。webリニューアルに比べ、サイト改善は社内に新しい文化を作ったり、ノウハウを提供するというメリットもあります。一過性のリニューアルと大きく違う点ですね。)
Webサイト改善でやった事その5 顧客育成の強化
サイトに訪問しCVしなければ永遠に接点を失う・・・では非常にもったいないので、魅力的な問い合わせ方法を複数設定する。購入に至らなかったとしても見込み顧客と接点を持ち続け、検討度合いを前のめりにしていく施策を打つという事をしました。
その結果、問い合わせは3ヶ月で2倍!半年後には4倍に!
調査や資料作成は非常に大変でしたが、毎月の定例で私が課題の抽出と改善提案をし、その場で取締役の方が改善提案の実施を判断、GOが出た施策は即実行、翌月その施策の成果をチェックし、再度改善を実施する、というようにPDCAが高速で回りサイトの効果はすぐに出ました。(さらっと書いていますが、相当改善していますし、ここに書いていない秘密のyamamotoメソッドも使っています。ここに書いていない事の方が多いです。)
3ヶ月で当初の目標を達成、目標が割と簡単に達成できてしまったので軌道修正して4倍にしましたが、それも半年後には達成できました。
なぜ、うまく行ったのか?
成功を加速させてくれた要因として以下が考えられます。
バズらせる事が得意なアルファブロガーがいたから
このころ在籍していた会社はインバウンドマーケティングを実践する企業として有名でした。社内に専任のブログ担当が何名かおり、このプロジェクトにアサインされたのもブログ担当の人間だったためバズらせるノウハウを持っていました。バズが得意な人間と二人三脚で進められた事も大きな成功要因でした。
偉い人が強い意志を持ってWeb活用を進めたから
Webサイトで問い合わせを劇的に増やす事ができたのは、偉い人が強い意志を持ってWeb活用を進めたからです。私がコンサルしても大成功する企業と、何ヶ月たっても結果が出ない企業の2パターンに別れます。 結果の出ない企業は下記のようなケースが多いです。
- Web担当者が、がんばって社内調整してもうまくいかない(決定権が無いので素早く動けない、邪魔させる、上の了解が得られないので素早く動けない)ので改善施策を実施できない⇒PDCAの「plan」から進まないケースです。このケースがとても多い。
- サイトで効果が出たところで担当者の給料が上がるわけなはないので真剣にならない⇒なので丸投げせず偉い人が中心になって進めた方が良いです。
Webコンサルタントの永江一石さんが的確な指摘をしていたので引用します。
補足になりますが、いちばん仕事をしたくない相手は、中小企業なのに社長がなにもしないで担当者に丸投げするケース。こういう場合ははっきりとお断りすることにしています。中小企業の場合、多くは勤務条件や査定制度がしっかりできていません。加えて担当者がそれほど優秀で無い場合、最悪の事態となります。担当者にとっては一所懸命にやっても仕事が増えるばかりになり、いいことがなにも無くなるからです。仮に成功して売り上げがばんばん増えたところで、本人になにもメリットが無ければ頑張るわけ無い。したがって手を抜きまくります。これが人間。人間だもの、当たり前じゃん、相田みつを。
http://www.landerblue.co.jp/blog/?p=1589
ですが、この事例のお客様は偉い人が陣頭指揮を取りながら積極的にWeb活用を押し進めました。抵抗勢力も無く、半ば強制的にPDCAを高速で進める事ができたので成功したのです。(Webデザイナーの方などは業務がどんどん増えており大変そうでしたが・・・)
まとめ:ホームページで成果を出したいなら既存サイトの改善だけでOKです!
リニューアルはやっぱり高い
Webサイトのリニューアルはおそらく1サイト200万(サイト規模や制作会社によって全然違いますが)前後と非常に高いです。 また、高いコストをかけたとしても失敗する可能性もあります。問い合わせが増えなかった、1件も問い合わせが来ないというケースも良くあります。
デザインのきれいさとか、効果と関係ないです
今回の事例でもきれいなサイトは既にあったのですが結果が出ていませんでした。サイトのリニューアルで新しく・きれいなサイトが出来るかもしれませんが、それが効果を出してくれるかはわかりません。 WEB屋と自称している方々はきれいなデザインを作る事は得意ですが、効果を出す事は不得意です。そのため、リニューアルするだけで効果が出るとは考えない方が良いでしょう。
効果を求めるならPDCAを高速で回し改善のサイクルを進める事です。 サイトリニューアルに比べれば大掛かりで大変な事もないのでおすすめの方法ですよ。
コメントを残す