"ふぁぼ"が"いいね"に!どうなるTwitterの楽しみ方〜「SNSポリス」著者・かっぴーに聞く

2015.11.05 13:30

日本時間11月3日夜頃、Twitter内でツイートのお気に入りを示す「☆」=星マーク(いわゆる「ふぁぼ」)が、「♡」=ハートマークの「いいね」に変更された。先日、Facebookでの"あるある"ネタを漫画化した「フェイスブックポリス」を執筆したかっぴーさんこと面白法人カヤックでWEBディレクター・プランナーを務める伊藤大輔さんはこの変更に気づいてから30分ほどで、「ふぁぼ」に対する想いを漫画にしたためた...

twitter01.png 伊藤さんTwitterアカウント@nora_itoより

その漫画はこちら。「ふぁぼ」と「いいね」は違うことをテーマに「ふぁぼ」のこれまで愛されてきた使い方を四つ提示している。その内容からは、「ふぁぼ」による独自のTwitter文化への伊藤さんの愛情がひしひしと伝わってくる。
今後、我々はこの仕様変更にどのように向き合っていけばよいのだろうか?WEBメディア・kakeruで「SNSポリス」を連載中(今回の漫画も「号外」として掲載されている)の伊藤さんに急遽、お話を伺うことにした。

--まず、今回の変更を初めて目にした時の感想を聞かせて頂けますか?

伊藤:
思わず、二度見しました。人生で初めて「ちょ、待てよ」と口に出しましたね。
今思えば有り得ないですが、ツイートに貼ったリンク先のFacebook「いいね!」をTwitterで通知出来るようになったのかと思いました。それくらい「いいね=Facebookのもの」という先入観があったのだと思います。

--この漫画、周囲からの反応はどんなものがありますか?

伊藤:
ちょっと大げさですが(新宿の名映画館)スカラ座が閉店する時に、大勢の方が悲しんでたじゃないですか。「あれ、最近スカラ座行ってたっけ?」みたいな人もつられて。その時の感覚に近かったです。「無くなると聞いたら、途端に物悲しくなってきたな」って空気を大勢の人と共有出来たことは嬉しかったです。

--漫画にもある通り、「ふぁぼ」と「いいね」は意味合いが違うように思います。伊藤さんの考えるその意味合いの定義とはどのようなものでしょうか?

伊藤:
「ふぁぼ」より「いいね」の方が意味が限定的だと感じています。
「いいね」本家本元のFacebookですら、最近では「いいね」の限界を感じて「Reactions」という新しい感情表現を準備していますよね。「ふぁぼ」は例えば、寝坊したとか財布落としたとか、悪い出来事に対して「いいね」は押し辛いですが、「ふぁぼ」だと丁度いい。「すき」「わかる」以外に、場合によっては「ドンマイ」とも取れる"広義の共感"を示す発明的なボタンだったと思っています。

「ふぁぼ」の活用は実に多様で、「Aの人はRT、Bの人はふぁぼ」と(どちらかの回答かを選ぶ)アンケートとして使っているケースも見かけました。これは「ふぁぼ」が意味的に曖昧だからこそ生まれた文化だと思います。つまり、限定的な意味が無いから何にでも使えるんです。何かの合図で、目印で、相づちにもなる。

「TwitterがFacebookみたいになっちゃう」と言っている方も多く見かけますが、Facebookは「Reactions」で限定的だった「いいね」を、横に増やす事で突破しようとしている。そんな中でTwitterは、ここにきて豊かで曖昧な丁度いい合図を、限定的に定義してしまった。逆行しているのでは...という思いを、この漫画に込めました!

--FacebookとTwitterの使い方は、なんとなく暗黙で認識しているユーザーも多いと思いますが、改めてその違いを定義するとしたらいかがでしょうか?

伊藤:
そもそも、SNSは用途が定義されるまでが面白いと思っています。Twitterは6年間使っていますが、昔の方が圧倒的に面白かったです。懐古主義と言われたとしても。今よりもっと、どこの誰だか分からない危なっかしいアカウントが注目を集めていましたし、「共感したらRT」とか「ふぁぼれよ」とか、みんな好き勝手な使い方をはじめて、ちょっとした独自の文化が生まれました。今は、発言力で言えばタレントには敵わないし、すぐ炎上するリスクもあるし、みんなの秘密基地が公共の場になってしまった寂しさがあります。
SNSなんて、本当はどう使っても良いはずなのに、勝手に使われ方が限定されてゆくのはちょっと寂しいですね。

例えば今LINEは1万人を越えるグループが生まれたりして、いわば、大人がついてこれない使われ方をされている。この時期がSNSにとっての青春期で、一番危なっかしくて面白いと僕は思います。

そういった意味では、もうTwitterもFacebookも大差なく、どっちも退屈になってしまっているかもしれません。ただ、ごく一部の使い込んでいる人達は差を見出しているはずなので、そういった人達とは是非飲みながら語りたいですね(笑)。

--今後Twitterのユーザーはどのように対処していけばいいでしょうか?

伊藤:
実は、何も変わらないのかもしれません。これを機に人が離れて行くとも思わないし、一方で、今までの「ふぁぼ」的な使い方がまるで出来ないとも思わない。むしろ、ハートの新しい使い方を勝手に発明していって欲しいです。速攻カで「遊☆戯☆王も、遊♡戯♡王になっちゃうの?」とかネタツイートしていた人達は、ホントにセンス良いなと思いました。

とにかく、色んな遊び方ができたジャングルジムが、自由度が低いブランコになっちゃったくらいの事ではあるので、ブランコで何をしたら面白いかこれから考えていけば良いかなと思っています。

SNS界における様々な「あるある」を漫画にすることで一躍脚光を浴びた伊藤さん。今回の漫画も1,600RT(11月5日現在)を超えるなど多くの人の共感を得ているようだ。ひょっとすると、この盛り上がりがきっかけになって、新たな繋がりや使い方がTwitter上でまた生まれるかもしれない。
"SNSの今"を切りとる伊藤さんの新作情報は、Twitterアカウント「かっぴー(SNSポリス)」@nora_itoでも引き続き要チェックだ。

取材・文:市來孝人

SENSORS Managing Editor
PR会社勤務ののち、かねてより旅行でよく訪れていたロサンゼルスに在住。帰国後、福岡やシンガポールのラジオDJ、東京でのMC・ナレーター、ライターとして等の活動を経てメディアプランナーとして活動中。また、タレント・企業トップなど個人に特化したPR・ブランディングにも携わっている。

Twitter:@takato_ichiki
Instagram:@takatoichiki

おすすめ記事

最新記事