【巨人・由伸監督を支える男達】(3)村田善バッテリーコーチ、強い巨人へ正捕手づくり

2015年11月5日11時30分  スポーツ報知
  • ポール間のダッシュで走り込む(左から)河野、小林、鬼屋敷
  • 10月29日、ブルペンで高橋監督と話をする村田善バッテリーコーチ(左)

 今季、チーム付スコアラーを務めていた巨人・村田善則氏(41)がバッテリーコーチに就任した。現役時代に一緒にプレーした高橋監督らの信頼も厚い。巨人の捕手の育成は急務。小林誠司捕手(26)を筆頭に「正捕手づくり」を課題に挙げた。同い年で同期入団の松井秀喜氏(41)から激励のエールをもらい、責任の重さをひしひしと感じている。(取材・構成=楢崎 豊)

 これまでは「由伸」と呼び、親交のあった1つ年下の後輩が新監督に就任した。秋季練習のブルペンでは指揮官と投手に熱視線を送っている。

 「まだ多くは話をしていないけど、正捕手をつくりたいというのは監督との会話の中で感じました。いろいろと話し合いながらできると思います」

 現役引退してから7年。ユニホームを再び着ることになった。身が引き締まる思いはしているが、ひとつのメールがその責任感をより強くした。米国に住む同級生からだった。

 「松井(秀喜)からメールはありました。『おめでとう。由伸ジャイアンツ、由伸のために頑張って支えてください』、と。なので『(コーチ就任は)突然のことだったけど、いざ、こうやって話をもらうと責任の重さを感じる。ジャイアンツ、由伸のためにしっかり支えていくつもりだよ』と返信しました」

 松井氏からも、高橋監督からも信頼の厚い村田善コーチ。現役引退後から今季までスコアラーとして選手にデータや助言を送っていた。

 「もちろん初めてのコーチ業なので戸惑いもあります。ただ、より選手に近い立場で伝えることができると思います。立場が変わっても、変わらないことは選手と向き合うこと。自分の意見の一方通行にならないようにしたい」

 シーズン序盤の阿部から始まり、小林、加藤、実松、相川と捕手を固定できなかった。今季は12球団トップのチーム防御率2・78。バッテリーは一定の成果を残した。ただ、理想は捕手の一本化だ。森祇晶、山倉和博、村田真一、阿部慎之助。強い巨人には必ず正捕手がいた。

 「結局1人でできるのか、といわれると役割分担もあるので言い切れないけど、(阿部)慎之助に頼らなくなってから、正捕手がいない状態が続いている。やっぱり、正捕手を育てることが第一。小林、相川、加藤、実松。他にも若い選手がいる。ベテランも必要だけれども若い力を育てないといけない。その中で正捕手争いは小林が筆頭だけども、経験豊富なベテランの力も期待したい」

 昨年は先乗りとチーム付と2パターンのスコアラーをしていたが、今季から小林育成のための専任のチーム付スコアラーになった。小林の変化を一番近くで見ていた。リード面の変化は見えたのだろうか。

 「(小林)誠司が正しいと思える部分も多くあった。進歩は感じています。本当に彼のリードが悪かったら、12球団トップの防御率は出ない。失敗はどうしてもクローズアップされる。仕方がないし、当然のこと。ただ批判をされるというのは、周囲からしっかり1軍の捕手と認められている証拠だし、これからもつきまとう。そこに対してもっと自信を持ってもらおうと思う」

 進歩とは具体的にはどのようなものだろうか。

 「もちろん、まだまだですよ。でも、自分の中で考えられるようになってきた。良く試合が見えていると思った場面もあったし、自分はこう思ったから、こうリードしたというものが明確になった分、投手との意思疎通ができている。それは自信と経験からできるもの。以前は全然、それができなかった。頭が真っ白の状態で何も言葉が出てこなかったからだと思う」

 思い返せば、村田善コーチも現役時代に巨人時代の工藤公康投手(現ソフトバンク監督)と回が終わると毎度話をしていた。

 「工藤さんはものすごくデータを重視されていた。そのデータが生かされるのか、使えるものなのか、状況判断を求められた。『あれ、こう聞いていたけど、調子の状態が変わったな』とか洞察をどれだけできるか。『試合は生き物だ』と言われました。打たれても、抑えても『何で?』と聞かれた。そこで答えられるのが、捕手なんだと感じました」

 捕手は成功と失敗を繰り返し、成長していく。自身の経験を踏まえて助言をしていく。

 「成功したことは忘れがち。失敗は残る。失敗を失敗と受け止められるかで差は出る。当然、失敗する方が多いのだから、いかに記憶してつなげられるかが捕手は大事。村田真一コーチから僕が現役時代に教わったのですが、捕手が引きずってはいけない、と。すぐに切り替えることも大切。それを若い捕手たちにもこれから伝えていきたい」

 ◆村田 善則(むらた・よしのり)1974年4月24日、長崎県生まれ。41歳。佐世保実から92年ドラフト5位で巨人入団。95年に1軍昇格を果たし、2000年にはプロ最多の76試合に出場。巨人一筋で16年間プレー。08年現役引退。今季はチーム付スコアラー。「プレミア12」期間中は日本代表のスコアラーを務めるため、宮崎秋季キャンプには参加しない。右投右打。

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