(英エコノミスト誌 2015年10月31日号)

ミャンマーの選挙は以前ほど不正操作されることはないだろうが、軍政は当分終わらない。

スー・チー氏、父アウン・サン将軍生誕100年行事に

今年2月、ミャンマー中部ナッマウで、アウン・サン将軍の生誕100年を記念する祝賀行事を終えた最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首を取り囲む支持者ら〔AFPBB News

 ミャンマーは11月8日に総選挙を行う。選挙は完全に自由で公正ではないが、競争はある。過去25年間で初めて、1991年にノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー氏率いる最大野党がボイコットしない選挙になるのだ。近年は私服姿で、多少真っ当になったとはいえ、60年間に及ぶ軍政に苦しめられてきた国にとって、これは注目すべき一歩だ。

 スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)は1990年、選挙で地滑り的勝利を収めた。

 本来、NLDが政権を発足させるはずだったが、将軍たちは選挙結果を無視し、その後の20年間の大半を通じ、スー・チー氏を自宅軟禁下に置いた(選挙の時点で、すでに自宅軟禁下にあった)。

 将軍たちは5年前、ごまかしの選挙をでっち上げ、NLDはボイコットした。今はもう少し有望な兆しが見られる。スー・チー氏は自由であり、野党は間違いなく再び勝利するだろう。軍は恐らく約束を守り、結果を受け入れるだろう。

2つの大きな変化にもかかわらず・・・

 これが起きようとしているのは、2つの重要な変化があったからだ。まず、2011年に、元将軍のテイン・セイン氏率いる新たな改革派政府が権力を握った。政府は軍部がミャンマーに巻き付けていた足かせを緩めることに取り掛かり、ほとんどの政治犯を釈放し、検閲を解除した。

 第2に、スー・チー氏はこれに応じて、戦術を変えて再び選挙に参加することにした。同氏は2012年、驚くほど公正な補欠選挙で国会議員になった。西側は歓喜し、昔の軍事政権に課していた制裁の大部分を解除した。

 だが、軍政はまだ終わっていない。選挙は、軍の条件に沿って実施される。軍は恐らく票を水増ししたり、結果を改ざんしたりはしないだろうが、それはひとえに、その必要がないからだ。