原子力規制委員会がきのうの定例会で、高速増殖原型炉「もんじゅ」に関して、日本原子力研究開発機構(原子力機構)に運転を任せるのは不適当であり、新たな運営主体を明示するよう、所管する馳浩文部科学相に勧告する方針を決めた。規制委は半年をめどに勧告に対する回答を求める意向で、新たな運営主体が示されない場合は、もんじゅ自体を抜本的に見直すよう求める構えだという。

 95年のナトリウム漏れ事故以降、20年にわたって安全を確立できなかった技術である。規制委は運営主体を代えることにもんじゅ存続の余地を残したが、原子力機構も、動力炉・核燃料開発事業団が改編された核燃料サイクル開発機構からもんじゅを引き継いだ経緯がある。

 単なる組織替えで済むわけがなく、といって有力な後継組織も見当たらない。安倍政権は、もんじゅの廃炉を決めるべきだ。福島第一原発事故の反省から生まれた独立委員会である規制委が初めて勧告に踏み切り、既存の運営主体に任せられないとした判断は重いはずである。

 もんじゅは12年に約1万点の機器の点検漏れが発覚、13年5月には規制委から運転再開準備を禁止する保安措置命令も受けている。これまでの保安検査で、8回にわたって保安規定違反を指摘された経緯もある。原子力機構に任せるのは不適当だ、との規制委の判断は当然だろう。

 もんじゅは、電力会社が抱える通常の原発と異なり、冷却材にナトリウムを使う。ナトリウムは水分と激しく反応する性質があり、取り扱いが難しい。

 理論的には、原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムをもんじゅで燃やせば、燃やしたより多いプルトニウムが得られるのだが、ナトリウム技術の習熟はまだ途上。漫然と延命していては緊張感が薄れ、安全は危うくなる。

 安全面での懸念に加えて、もんじゅの必要性自体も薄れている。ウラン価格は安値で安定しており、高速増殖炉を開発する経済的な理由はない。また、原発事故後、徐々にではあっても国産である再生可能エネルギーも育ってきている。

 さらに財政難を考えれば、維持費だけで年に約200億円かかり、実用化のめども必要性も疑わしい技術を抱え続けることへの疑問がぬぐえない。すでに先進国の多くは開発から撤退している。

 もんじゅは、廃炉にするしかない。その決断こそが、規制委勧告への回答であるべきだ。