創作和食店で、日本酒フローズンなるデザートを出す店があるそうです。
日本酒講座の女性の生徒さんいわく、「シャリシャリとした氷が口の中で溶けると、香りと甘味がひろがって美味しい」のだそうです。
そこで僕から「ところで、日本酒って何℃で凍るのでしょうと」質問。これ、あまり考えませんよね。まあ、冷凍庫で一升瓶や四合瓶を凍らせる人なんていませんから。
ワンカップでも、割れたらヤバイし。でも、アルミ缶ならボコッとトップが膨張するぐらいですから、試してみる価値はあります。
純粋なアルコール(100%エタノール)が凍る温度は、マイナス114.5度です。
しかし、いろんな酒は水とアルコール、さらに原料からできた化合物も混ざるので、そんなに低い氷点ではありません。
アルコール度数が高い酒ほど、氷点はマイナスに下がり、度数が低くなると、氷点は上がります。また、蒸留酒は醸造酒のように糖分等の不純物が少ないので、凍りにくくなります。例えば90度のスピリタスや70度のアブサンなどは、マイナス50℃を越えないと凍りません。
市販の日本酒は、おおむねアルコールを15%ほど含みます。
アルコール濃度15%の水溶液(水とアルコール)が凍るのは、マイナス7℃ほどですから、その前後の温度で凍るはず。ですから、家庭用の冷凍庫でビールや日本酒は凍ります。アルコール度数25度以上の焼酎やウィスキーは、温度設定的に難しいですね。
ちなみに、北海道旭川市の高砂酒造さんに「雪氷室しぼり」という、氷で作ったかまくらの中で搾る商品があります。それを搾るのは、旭川の気温がマイナス20℃近い真冬。聞いてるだけで搾った酒が凍りそうですが、雪氷室の中はマイナス2℃と意外に暖かい。だから、酒は凍りません。
ところで、凍ると困るのでアルコール度数30度ぐらいにメチャクチャ高くした日本酒が、かつてありました。それは、太平洋戦争前に、満州国で造られていた日本酒です。
僕のライブラリーに、広島県の銘酒「千福」の大手酒造メーカー・三宅本店さんの年史があります。この中に、昭和15年(1940)には現地に12社の蔵元があり、千福はダントツ1位の17550石を醸造していたとあります.
ただ、当時の満州は土地が肥えてなく米が不作で、日本国内も米不足のため輸出量は少ないので、どうにかして日本酒に近いアルコール飲料を造らねばならなかった。関東軍の軍人もたくさんいましたから。
造ったのは、いわゆる三増酒。しかも、満州の夜は寒いので、マイナス30℃なんてざらにあり、アルコール度数が低い酒だと一升瓶ごとバンバン割れてしまいました。
これをどうにかしようと、日本で初めてアルコール添加した度数の高い清酒を造ったのが、三宅本店さんなのです。
いわば、戦前の米不足と満州向けの酒が、アル添酒の始まりだったというわけです。
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