なぜ、手書きのメモはノートPCに勝るのか

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会議中、ノートPCやタブレットでメモを打ち込むのが当たり前となった。しかし、これは記憶への定着と内容理解の両方において、手書きに劣ることが実験で示された。

 

 HBRの編集インターンである私は、オフィスに通うようになって日が浅いが、会議にペンとノートを持ってくる人をごく稀にしか目にしない。かつて毎週の会議ではリングノートとペンが主流だったそうだが、時とともにノートPCや薄いタブレットに取って代わられたという。

 至極当然であろう。テクノロジーを駆使することが強く求められる今日、ミーティングの最中であっても、リンクを送ったり、オンラインで資料へのアクセスや会話をしたりすることが当然とされている。即座に達成感を得たい私たちはもはや、会議後に自分のデスクに戻ってから資料を送るという悠長なやり方には耐えられないのだ。それにはデジタルでメモを取るほうが便利なはずだ。

 では、手書きは滅んでしまったのだろうか。会議にペンと紙を持って行くのは恥ずかしいことなのか。

 この問いについて探ったところ、プリンストン大学のパム・A・ミューラーとUCLAのダニエル・M・オッペンハイマーによる研究では、答えはノーであるようだ。研究結果によれば、ノートPCだけでメモを取ると、新しい知識を吸収しづらくなるという。何も考えないまま、ただ逐語的に入力する傾向が強くなることが主な原因だ(英語論文)。

「ノートPCでメモを取る行為は、全般的な概念理解および新情報の記憶に悪影響を与えるか」

 ミューラーとオッペンハイマーは、この問いに対して3つの異なる実験を行った。

 最初の実験では、プリンストン大学の学生たちを一室に集めTEDの講演映像を何本か見てもらった。参加者には、講演を視聴しながらデジタルでも手書きでもよいので「授業でいつも自分がやっている方法でメモを取る」よう指示した。その後、講演内容について「事実関係を思い出させる質問と、概念の理解度を試す質問の両方に回答」してもらった。

 学生たちの得点は、手書きのグループとデジタルのグループで大幅に異なっていた。ノートPCを使った学生たちは、講演のあいだ「書き起こしに近い」長文のメモを取る傾向が見受けられた。しかし概念理解に関する質問では、手書きのグループのほうが有意に高い得点を取ったのである(事実関係のテストでは有意の差はなし)。ミューラーとオッペンハイマーは、ノートPCによる「逐語的な書き取り」が記憶の低下を招いたのではないかと考えた。

 だがPCでメモを取ることの弊害は、すべての言葉を捕らえようとしてしまうことに留まらないのではないか。そう2人は推測した。そこで第2の実験では、PCでメモを取る新たなグループに対し、講演を一字一句記録するのは避けるようにと指示した。「自分自身の言葉でメモを取ってください。話し手の言葉をそのまま入力するのではなく」と告げたのである。

 参加者たちは今回も講演の映像を見て、それぞれメモを取り、その後テストを受けた。

 逐語的なメモは避けるように、という指示は「まったく効果がなかった」。ノートPCを使った学生は、自分の言葉ではなく、やはり「書き起こしに近い」方法でメモを取ったのである。前回同様、逐語的なメモと低い成績の全般的な相関関係は変わらなかったという。

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