李明博(イ・ミョンバク)前政権の任期が終わりに差し掛かるころ、当時政府の実力者として知られていたある人物を取材した。この人物は「日本軍慰安婦問題を解決させたいが、どう考えるか」と逆に記者に聞いてきた。慰安婦問題が再び韓国と日本の外交問題になりつつあった時期だ。記者は「政府の実力者としてこの問題を解決させたい」という意味に受け取った。
この人物に記者は「日本は法的賠償の支払いを受け入れるのか」「賠償ではなく補償となった場合、これを元慰安婦たちは受け入れるのか」と逆に尋ねた。この人物は「希望を持っている」と答えた。もちろんこの人物の希望はかなわず、日本は法的賠償を受け入れなかった。もちろん被害者側も拒否した。この程度で満足するのであれば、問題は15年前に日本が提示した民間基金による補償案で解決していたはずだ。「政府の実力者」の努力はこれで終わった。
この一連のやりとりが行われた当時、日本の首相は民主党の野田佳彦氏だった。昨年、記者は韓国記者団の一員として野田氏を取材した。首相在任中の野田氏は2011年末に当時の李明博大統領と京都で首脳会談を行ったが、この取材でその時のことが話題になると、野田氏は怒りを抑えることができない様子だった。顔は赤らみ、涙ぐんだ。当時の新聞の見出しは「57分の会談中、李大統領は45分にわたり慰安婦問題について語り続ける」だったが、これだけでもある程度状況を把握できる。おそらく首脳会談のほとんどが李前大統領の演説だったのだろう。李前大統領は慰安婦問題で日本に強い攻勢をかけた。真剣さもあった。野田氏との首脳会談ではどのようなやりとりが行われたのだろうか。