ぼくらの民主主義なんだぜ [著]高橋源一郎

[文]武田砂鉄(ライター)  [掲載]2015年10月18日

表紙画像 著者:高橋源一郎  出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 842

■ことばの復興 君と、ここで

 「『ことば』もまた『復興』されなければならない」、朝日新聞「論壇時評」を「3・11」直後から担当し始めた著者は、初回の原稿をこのように締めくくった。それから4年間にわたる連載をまとめた本書を通読すると、「ぼくら」は様々なことばを用いて、権力の「再稼働」を警戒してきたことが分かる。
 本書では、いわゆる論壇以外のことばを積極的に引っ張り出す。何が起きてもすぐに忘れる「ぼくら」は、じゃあ忘れてもらおうと誘発する「国家」の働きかけに頷(うなず)きがち。この4年間、その煙たい働きかけに抗(あらが)ったのは、論壇で育まれる格式張ったことばだけでなく、ツイッター、ブログ、映画、演劇など方々で流れた柔軟なことばだった。
 原発事故、秘密保護法、安保法制など、個人の営みが何度も揺さぶられたこの4年間、「可能な限り耳を澄まし、小さな声や音を聞きとろうと努めた」著者は、「国家と国民は同じ声を持つ必要はないし、そんな義務もない」と記す。集団に通用することばを甘受するのではなく、あくまでも個人で営むことばを探し、持ち続けるべきだとする。
 なぜ、「ぼく」ではなく「ぼくら」なのか。著者から「出発点は個人なんだけど、お前と、君と、あなたと、ここでつくる民主主義だから」との解説を引き出したのは、学生グループ「SEALDs(シールズ)」のメンバーだ。その対話を収録した共著のタイトルは『民主主義ってなんだ?』。
 民主主義を「なんだぜ」と念押しした本を出したわずか4カ月後、「ってなんだ?」と学生たちと投げかけることになった。
 断定が疑問形に変わるほど揺さぶられたわけだが、共通するのは「ぼくら」であること。「ぼくら」は現政権の掲げる「一億総活躍」の複数形とはまったく違う。ことばの復興が、引き続き「ぼくら」に問われている。
    ◇
 朝日新書・842円=8刷10万部

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ぼくらの民主主義なんだぜ (朝日新書)

著者:高橋源一郎/ 出版社:朝日新聞出版/ 価格:¥842/ 発売時期: 2015年05月


民主主義ってなんだ?

著者:高橋 源一郎、SEALDs、高橋 源一郎、SEALDs/ 出版社:河出書房新社/ 価格:¥1,296/ 発売時期: 2015年09月


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