何年前だろうか?「アサダチとは何ですか?」と妻から訊かれたのは。そのとき。心で泣きながら「僕らには関係ない事象さ、忘れてくれ」と答えてから僕のオペレーション・アサダチは始まったのである。
肉体的にも精神的にもツライ日々だった。己を追い詰めるような毎晩のXEVIOUS鑑賞。地獄の沙汰は金次第と教えられドル払いもした。ブラスター発射のためのマカ・亜鉛の摂取。すべて妻のためだった。仕事に追われ海外旅行に連れて行くことも出来ない可哀相な妻に、一度だけでいい、朝陽に浮かび上がるドルアーガを見せてあげたいという思いだけしかなかった。
すべて報われた。イシターは復活し、今、僕は超絶倫人ベラボーマン。僕は妻にこの勇姿を見てもらいたいと思って妻の名を呼んだ。あわよくば妻のマッピーをディグダグ出来るかもしれない。その前にパックマンされたいなぁ。そんな淡い期待に胸を熱くしながら。しかし隣室で寝ている妻からの反応がない。焦る。何をしているのだ。ポールポジションはそれほど長い時間維持できない。はやくしないとラリーXの機会は永遠に喪われてしまう。また一人でディグダグする生活に戻るのは構わない。けれどその前に、嘘でもいい、妻にドルアーガを誉めて欲しかったのだ。
強度は喪われ都筑区の欠陥マンションのように傾きはじめていた。こんな体たらくでは妻をオーダインに達せられない。僕は自分の分身をローリングサンダーして延命処置をはかった。「起きて!僕のワンダーモモ!ロリコット星から飛んできて!」そう叫びながら。朝六時のマンションで。しかし懸命の延命措置にもかかわらず僕のスカイキッドは墜落していった。
悲劇はそこからはじまった。諦め切れなかった僕は、地獄から蘇った景清が頼朝を目指したように妻の寝室を目指していた。「とう!」「とう!」「ふんっ!ふんっ!」既にくたびれていたエクスカリバーをぶら下げてそのようなときの声を上げる僕の姿は相当に醜かったのだろう。妻にとってはやってはいけないラインを越えていたのだろう。妻は極めて冷静に「馬鹿者!自分の部屋に帰りなさい…(YouZappedTo…)」と言い、以後、ドルアーガの魔力で石にされたように口をかたく閉ざしている。ドルアーガがカタクするのは僕であるべきなのに、世の中の需要と供給とはうまくいかないものである。そして今夜も石になった妻を救うべくドルアーガを登らなければならないのだ。