密漁:狙われるナマコ 中国の価格高騰背景 悩む産地青森
毎日新聞 2015年11月04日 09時18分
青森県の陸奥湾で組織的なナマコの密漁が相次いでいる事件を受け、県漁連の赤石憲二会長らが三村申吾知事に対し、県警や海上保安部などと連携した監視体制の構築や取り締まりの強化を要望した。青森県は北海道などと並び全国有数の漁獲量を誇るナマコの名産地。密漁者摘発は「氷山の一角」で、表面化しないケースも多いとみられ、早急な密漁防止対策が求められている。
10月30日に提出された要望書では、陸奥湾でナマコがホタテに次ぐ重要な水産資源であることに触れ、「中国での価格高騰を背景に、悪質巧妙で組織的な密漁が横行し、漁業・漁協経営に大きな被害を及ぼしている」と指摘。国への罰則強化の働きかけも求めた。
三村知事は「極めて遺憾。罰則の適用範囲拡大を国に働きかけ、密漁防止に努めたい」と応じた。要望書を手渡した赤石会長は「このままでは漁民を殺すようなものだ」と話した。
県警は10月、むつ市川内町沖の陸奥湾でナマコ約960キロ(時価約288万円)を密漁したとして、北海道函館市などに住む暴力団組員ら8人を漁業法違反(漁業権の侵害)容疑で逮捕。県警はグループが昨年9月ごろから密漁を繰り返し、2億円以上を荒稼ぎしていたとみて調べている。
県内では2007年に県海面漁業調整規則違反(採捕禁止期間における採捕物の所持)の罪で密漁者が有罪判決を受けるなど、過去にもナマコ密漁が度々、刑事事件に発展している。今年10月に摘発されたケースと同様、07年に計12人が逮捕された事件も暴力団組員が関与し、グループは密漁船の操舵(そうだ)役、潜水役などの役割分担をしていた。
県内では昨年も、漁業法違反などで9人が逮捕される密漁事件が起きている。【森健太郎】