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第二十七話
本日二話投下です。
お間違えのないようよろしくお願いします。
「お帰りなさいお兄ちゃん」
「あぁ、メイファーか。どうだ?うまい事やってるか?」
「うん、みんな元気になった」
とりあえずそんなこんなで、子供達は晴れて冒険者になったのはいいんだが、問題はハクメイだ。
とりあえず逃げた中国人共に駄目押しの豚アタックかましたらハクメイが片付けて豚の群れがビビってやがった件。
予定ではもう少し減らしてから追いやって、壁を立てて残り半分の広大な土地にあいつらを閉じ込めてやろうと思っていたんだが、かなり早い段階で阻止された。
まぁいい。ハクメイにムカついて、あいつごと閉じ込めてしまったが、飽きたら連絡してくるだろう。
むしろそこで仲良しこよしでもしておけばいい。
最期に睨んでたのは結構マジっぽかったしな。
俺は特例を除き、俺自身が冒険者に手を出す事は無いが、裏切るのであればそのゴミ箱の中に延々とダンジョンを増やし続けてやる。
別に今は人間を助けようとしているだけなので、これ以上の干渉はしないが、もし、今後、あいつが俺の前に害意を持って現れたり、革命家気取りで冒険者を煽動したりした場合に於いては、全力で完膚なきまでに叩き潰してキャラクターデリートしてやる。
まぁ、考えすぎかも知れんがな。
悪い癖だ。
とりあえずは、そんな事より目の前の難敵をどうにかする方が先決だ。
「おいジジイ。なんでお前は死を選ぶんだ?また歩きたい、生きたいって思わないのか?」
「…またお前か。放っておいてくれないか?ワシは長く生きた。この世の酸いも甘いも知った」
とりあえず俺は子供達にデバイスを渡し、簡単なゴブリンダンジョンを造り、戦い方、ポイントの使い方を教えた。
そして、次は捨てられた老人達にデバイスを配った。
若返り精気を漲らせた老人達も嬉々として迷宮に潜り、子供達には負けられないと武器を手に取った。
この辺の女子供はとりあえず冒険者に出来たが、この片足を無くしたジジイだけは、デバイスを受け取らないのだ。
「いくら神のような力を得ても、それを行使し、力を若さを命を与える事が出来ようとも、それに意味などない。今日を凌ぐ食事が無くとも、想像もできないような大金を得ようとも、人は満たされる事の無い愚かな生き物だ」
糞尿を垂れ流して路傍の石となっている浮浪者が、高説を垂れる。
だが、言っている事もわからんでもない。
そうかも知れんな、確かに満たされる事は無いのかも知れない。
「ただ巡るだけだ。盗めば盗まれ奪えば奪われ殺せば殺される。傷つけては傷つけられて、思えば思われ愛せば愛される。ただ単純に、それだけの事。お前はその奇異な力で、与えては奪い、奪われては与えてきたのだろう。満たされたか?神になり満たされたのか?何かを代償にしただろう。存在か?魂か?心か?それを満たす為に他人どころか世界にすら干渉し続けたのだろう。だからそうやって哀しそうな顔でワシに力を与えようと干渉してくる」
老人は無理に体を起こし、ぼっさくれの髪と髭で隠れた眼を此方に向ける。
敢えて言おう。
「なに言ってんだおめ」
俺の一言に目の奥を光らせていた老人は徐々にその光を失い、再び寝転がり、此方に背を向ける。
このジジイが大体考えてる事はわかる、高説を説いて俺がはぐらかし対話を拒否したとでも思っているのだろう。
だがそれは違う。
このジジイが言ってるのは、どん底を知った者の淀んだ答えだ。
幼児退行?鬱病?そんなんじゃない。
人間淀んだら自然に淘汰されようと身を受け流す、そしてあたかも自身の存在が自然と一体化したとでも言いたげに無を強調する。
だが、それは無力の中で思念を廻らせ続けている無とは全く正反対の意味のない思考だ。
もがき続けている者の足掻きそのものだ。
俺から言わして貰えば、コイツの言ってるのはそれっぽい言葉の羅列を並べた作文でしかない。
「こらジジイ!!なにいじけてんだよ。俺がデバイス使えって言ってんのは、お前の高尚な考えを述べさせて対話を求めてるからでもないし、お前を必要としているからでもない!!ただ単純に理由は一つだ!お前は俺が決めたレールの上に立ってしまった。お前はそれを災害に遭ったかのようにただ受け入れるしか選択肢が無いって事を知れ。とりあえず臭いしキモイからうっとおしいならこのデバイス使って足生やしてどっかに消えろ。ここらのガキがお前を養ってるのを聞いた。死にたいって言っときながらお前はガキ共が物乞いをして、せっせと運んで来た食事や水を受け取り、礼変わりに人の生を説き神にでもなったかのように其処に根を生やしただけの寄生虫だろうが!お前は足が無いから死にたいっていじけてるだけにしか見えねーよ!!」
「んなっ!!なんなんじゃお前は!!!」
もういいや、めんどくさいしイライラしてきた。
「コア、もうこいつ強制認証でいいや」
『了解しました、それでは種族はどうされますか?』
「もうオークとかでいんじゃない?死にたいみたいだし」
『了解しました、それで「待て!!待ってくれ!!あの異形の豚にするのはやめてくれ!」』
そこでジジイは再び体を起こした。
「やめてくれ?」
「やめて…ください。ワシが悪かった。すまん、だからあの豚にするのだけはやめて…くれ…」
初めからそうやって認めていれば良かったのだ。
ならば俺もあまりイライラしなくて済んだのに。
強引すぎる手段だがダンジョンマスターの特有技能である天貫く奈落を使用したが、太郎ちゃんに頼まれた移民問題の解決はした。
そして他国に冒険者を生み出す事も出来た、これで日本のダンジョン50層以上は行ける。
俺のこの国での目的は達成したと言ってもいい。
まぁ、ハクメイってイレギュラーはあったが、物事にイレギュラーは付き物だ。
結果を急げば綻びはできる、その崩落に巻き込まれたと考えておこう。
救いを求めるなら蜘蛛の糸は垂らそう、牙を剥くなら叩き潰そう、あいつは自由を手にした冒険者である限り、物語は自身の手で紡ぐはずだ。
うん、キモいな。
熱くなりすぎた。
さぁ、日本帰ろ。
「お兄ちゃん、あのね、右目がね、変になるの」
転移しようとすると、黒髪の少女メイファーが、俺の裾をちょいちょいと引っ張ってくる。
「そうか、教えてなかったな。それは鏡と呼ばれる魔眼だ」
「ま、がん?」
「そうだ。その眼はお前の存在を鏡とする事ができる。今のお前の弱い魔眼であればストックは一つしか持てない。だが、その眼の本質を理解する事ができれば、その魔眼は強くなる。全ては教えない、自分で理解しろ」
「うん?わかった」
少しサービスをし過ぎたかもしれないが、鏡は発動時にその眼に写した技を自身の技として取り入れる事が出来る。
ストックは一つ、上書きすると過去のストックは消えてしまうが、使い方を間違わなければ強力な魔眼であるのは間違いない。
ただ、デメリットとして鏡の所有者は、職を選択出来ない。
だからスキルを磨き上げて揺るがない武器にする事は不可能となってしまう。
それにレベルの差によっては同じパフォーマンスは期待出来ず、宝の持ち腐れになったりもする。
例えばグレイルの黒刀を写し出したとしても、黒刀に耐えうる大剣を装備するには、レベルが圧倒的に足りない。
先程挙げたのはほんの一例であるが、本質はいかに他人が磨き上げた最高峰のスキルをその身に写し、使用していくか。
この国の少女には皮肉が効いていていいのでは無いだろうか?
気に入れば盗み、レベル差が原因で劣化してしまう。
だが、鏡の本質を理解し昇華する事ができるなら、もし、次のステージに魔眼を進化させる事が出来たのならこの少女は間違いなく中国のNo.1冒険者になるだろう。
どうなるかはわからんが期待はしておこう。
やたら懐いてしまったので頭をポンポンと撫でておく。
「また遊びに来る。冒険者は自由だ。好き勝手に楽しめばいい」
「うん、聞いた。同じ冒険者を傷つける事だけしなきゃ冒険者は自由だって」
「そうだ。好きに生きろ!楽しまなきゃ損だからなっ」
「うんっ」
本当は冒険者なんて名前は、俺が後付けしただけの設定でしかない。
本来は冒険者では無く生産者、こいつらはプロダクターと呼ばれる存在だ。
延々と生み出される魔物を狩り、DMを稼ぎ資源や食料を無限に生み出す生産者、だが、奴隷のような響きのプロダクターより、自身が自由に生きる冒険者の方が響きがいいからって、名前を変えただけだ。
だが、貫けば偽りも真実となる。
自由に自分の為にプロダクターが生きる限り、奴らはプロダクターとしてでなく、冒険者として剣を振る事ができる。
俺はその偽りが真実になるようにそっと力添えをするだけである。
「じゃあなメイファー、みんなと仲良くするんだぞ」
「うんっ、ありがと、お兄ちゃん」
絶望していたメイファーがニコッと笑顔を見せ、背を向けて仲間の元へ駆け出すのを見送ると、俺の背後から「デバイスオン」と小さい声で呟く声が聞こえる。
「ジジイ、お前もその道を選んだんなら後は自由に生きろ。自分の足で立って生きろよ」
はい論破って感じで振り向きざまに言うと、そこには紫色の長い髪をツインテールにした美しい少女が座っていた。
「うん」
「うんじゃねぇ!!!」
どうしてそうなった。
めんどくせぇ、帰ろ。
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