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第十七話
「うぉい!なんだよ太郎!!クソゲーじゃねぇか!!」
「知らねぇよ!GAOのランキング順に買ってんだからよ!!」
「なんであのモンスターが神なんだよぉぉ、モンスターじゃねぇかよぉぉぉ」
面白そうなゲームでボッコボコにされたなうである。
多分勝てたら面白いんだろうけど、カオス過ぎて勝てません。
てか普通にこの世界観から考えたら、俺が存在してるのって全然普通なのかもしんない。
いや、ゲームだからこそか。
わかってるけどね。
「ダンマス、ちょっとみてくんねぇか?」
太郎ちゃんがリモコンをピッと押すと、再び部屋の灯りが落とされカーテンが自動で閉まる。
そしてプロジェクターに映し出されるのは、世界各国のニュースだ。
コア、並列思考で処理する。補助してくれ。
《了解しました》
世界各国で流れているニュースを纏めたものは、言わずもがなダンジョンについて語られる物ばかりだったが、その中でも特に気になったのが、ロシアの親日式典とやらである。
こいつらは何をしているんだ?
「おい、日本に核落としたくてウズウズしてる脳筋が、なんでこんな式典開いてんだ?」
「こんだけの情報あって拾うのそこかよ!親日式典なんて今じゃどの国でもやってやがる。それじゃなくて、問題の中国だよ」
「あぁ、そっちか。移民問題で揉めてて国内外で恐慌状態って奴だろ?別に悪い話じゃないんじゃないか?勝手に死んでくれるなら万々歳だろ?」
「あぁ、中国に至ってはそれで間違いはない。だがな、その移民が韓国にも流れてるのが問題なんだ」
太郎は、再びリモコンを操作し、早送りし始めると、あるニュースで再び再生を押す。
そこには、韓国のおばはんと日本の阿波はんが握手をして写真を撮った後に会談をしている様子のみが映し出されている。
「日本海のドラゴンやらダンジョンやらが原因で、過剰なまでに中国から移民が流れているらしくてな、それを世界的に助けようと表向きはなってるわけだ。うちの阿波さんも当然、ダンジョンと日本は関係ありませんよってスタイルを現在は貫いてる。だが、それのせいで、正規に中国からの移民を日本でも受け入れる流れになってるわけだ。そうなってくると、日本各地で起こってるデモが更に悪化する可能性がある」
「うんうん、それの何が問題なの太郎ちゃん?」
「は?考えただけでやばいだろうが」
「いやいやいや、それってさ、中国のダンジョンマスターの意に反してるよね?韓国が言って来てるのかもしれないけど、結局は中国が日本に助けを求めたと。まどろっこしい考え方しなくていいんだよ。中国のダンマスが怒っちゃいました、以上まるだよ。それかさ、当初の予定通り韓国にもダンジョン出しちゃう?このババアきもいし」
「このタイミングで韓国にもダンジョン出しちまうと、もうさすがに言い逃れできないだろ」
「ふーん、まぁ、やり方はいくらでもある!心配すんな太郎!俺に任せろの巻」
太郎は少し困ったような顔を浮かべるが、心配しすぎである。
でも面白そうなネタが出来たから、ゲームどころでは無いのである。
てか罪喰いの新メンバーの選出すら未だに出来ていないのだが、まぁ世界は目まぐるしく忙しくしてくれるものである。
コア、俺を部屋に戻してくれ。
《了解しました》
「まぁ、太郎ちゃん!明日のニュース楽しみにしといてよ」
さて、まず部屋に帰って来たのだが、とりあえずコアで正確な情報を集めるのが先決だ。
「コア、日韓首脳で日本で受け入れるとなった中国人の移民の正確な数字はわかるか?」
『初期段階では、全国で3万人の受け入れを目指しているようですが、これからも増えるようですね』
「そうか、じゃあ韓国首席のアバターを三万体用意して韓国に放ってくれ。野生のパクチョネ事変だ」
『了解しました。コピー量産致します、1万5,000P使用しますがよろしいですか?』
「よろしいですよと。それで命令しろ。俺が言った通りの言葉を呟き続けろとな」
『了解しました。それでは高速量産しソウル市内の亜空間へ随時待機させます。定数に達したと同時に解放します。予測完了時間1時間24分です。よろしいでしょうか?』
よろしいですよと。
まぁこれで暫く大人しくしてくれればいいが、これはただの嫌がらせでしかない。
問題はなし崩しに結ばされた移民の受け入れを解決せねばならんだろう。
減らすならまだしも、増やすなんて以ての外であるしな。
まぁいい。
とりあえず出方を見るか。
『マスター。有良の端末にダンジョンマスター宛で数度連絡をし、是非お会いしたいとの事ですが』
「ん?あぁ、テレビの。いつならいいか聞いておいてくれ」
『それが、現在収録の待機時間のようで、今なら大丈夫だと先ほど連絡がありました』
「わかった。直接行く。メイズで頼む」
『了解しました』
直後に視界が切り替わる。
よくテレビで見るような芸能人の楽屋だな。
新聞を読んで俺に気付いていない有良がいる。
とりあえず片耳ウサギマスクかぶっとくか。
有良が座っているソファの前に座ると、それでも有良は気にせずにお茶をずずっと飲んで新聞を読み続けている。
むー、ここで俺が話し掛けると、俺が負けたような気がするんだが、どうであろうか。
てか有良の手が微妙に震えてるから、多分気付いてるんだろうな。
けどプロとしてキャラを貫こうとしてくれてるっぽいな。
そらそうだよな、ダンジョンマスターが交渉しにやってくるチャンスは、テレビに出ている芸能人だからこそ舞い込んで来たものだ。
テレビの有良のキャラを見て、俺がコンタクトしてきたと考えてるならそれを貫くべきだと思っているはずだ。
よしわかった。
君がそうなら、僕もそうしようじゃないか!
とりあえずテーブルの上の雑誌をとってソファにねっころがる。
それには有良も少し笑いそうになっているが、平常心を保って新聞を読んでいる。
俺はマンズデーという雑誌の袋とじグラビアを上から覗き「やば」と呟いて中身を必死で見ようとすると、これを使って切れば?と言わんばかりに免許証を渡してくる。
無言でそれを受け取り、袋とじを開いて無言で免許証を返す。
どうやらガッツリ局部が写ってるわけでもなく、ただ全裸で色々隠してます系らしい。
「磯村はただのクソデブだ」
これ無言対決みたいなもんじゃねぇのかよ。
けど、有良は普通に新聞読んでるしな。
コア、こいつ下の名前は?
《ヒロキです。》
「ヒロ君収録何時から?」
「四時からだな。後一時間だ」
「結構ながいな」
「芸能人は待つ仕事だからな」
…………。
ねぇ?どうしたらいいの!?
全然話が進まないんだけど?!
なんか面白い事言ってくれるんじゃないの?!
あれっすか、あれっすね、やっぱオフとオンの切り替えはキッチリしてますよ的な意思表示なんすかすかすか??
「ヒロ君ってさ、バラエティしかやんないの?」
「芸人だからな。ドキュメンタリーの真面目なトーンに俺は必要ないだろ」
「ふーん。いや今度さ、秋葉原のラーメン屋跡地の問題になったダンジョン開放して、浄化イベントを組もうかなって思ってるわけ。中の魔物がゴブリンキングクラスになって結構中身が無茶苦茶なんだわ。それで冒険者の密着みたいなん組んで力を合わせて解放!的な。冒険者の強さをアピール出来るし、もっと冒険者になりたいって奴が増えるかもしれんからさ。今でもいるにはいるんだけど、もっと当たり前の存在にしたいからな」
「なるほどな。面白いんじゃないか?喜んで製作も動いてくれるだろうけどさ、密着する冒険者はこっちで選ばせて貰ってもいいのか?」
「構わないが、ハクメイはやめておいた方がいいぞ?疲れる」
「いや、あれは無理だ。メタニウムってグループのダイゴって奴いるだろ?赤髪の。あいつの密着をしようって土曜日のマジギレで話が出てたんだ。その撮れ高があれば、ゴールデン組めるかもしんない。おもしろおかしくはするけどな」
「いいだろ。いい話し合いができた。ダイゴには俺から言っておく。報酬も用意するから確実に密着できると思う。また本人から連絡させるから、そっちでうまいことやってくれ」
「あぁ、頼むよダンマス」
握手を交わした直後に、瞬きをするとグラナダに転移している。
さすがコアさん、仕事が早い。
とりあえず、ラーメン屋開放イベントの下準備はできたか。
「ようダイゴ」
「はぁぁ、ダンマス。服装メイズのままだぞ?ちゃんと演じろよ」
「……メイズに借りたんだ」
「はぁぁ、それでいいけど。なっぴー!ダンマスになんか入れてあげて」
水着のパイオツカイデーな少女がその双丘をブルンブルンバインバインさせながら駆け寄ると、俺の前で前屈みになって胸を強調しながら注文を待つ。
なんて迫力だ。
「ブラッドオレンジください」
「はい!かしこまりましたぁ!!」
後ろ姿もまたよろしい。
未発達な肉感だが張りがあるのでお姉さん達とも対等に渡り合えるエロスを醸し出して……。
気付けばダイゴがジトーっとこちらを見ている。
「ダンマス、本当はコーラ飲みたかったでしょ?けどなっぴーが意外に可愛かったからおしゃれなやつ頼んだんじゃね?」
「お前……エスパーか!?」
「どわっはっは!!図星かよ!!!ほんでいきなりどうしたんだ?こんな時間にグラナダ来るなんて珍しいじゃねぇの?」
海パン一丁で完全にオフモードのダイゴがビールを飲み干したタイミングで、さっきの水着娘が俺のオレンジジュースを持ってきてくれる。
「なっぴー俺もビール。メガね!メガ!」
「はーい!そんなに飲んで大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。今日はオフだからな!」
空いたグラスを渡すと、水着娘は急いで厨房へ帰って行く。
何回か来た事あるけど、あの娘あんなエロかったかな?いや、もしや学習したのかもしれんな。
エロく見える人間臭さ的なものを。
てかそれより、ダイゴって夜中にひたすらダンジョン篭ってるけど、いつ寝てんだろな。
まぁいいか。
「うん、まぁ本題に入ろう。ダイゴ、お前今どうしても欲しいものあるか?」
「イカ焼き」
「買え」
あちゃーと額を押さえているが、マジで報酬イカ焼きにしてやろうか。
「うーーーん、欲しいものかぁ。ありすぎてむずいなぁ。けど、強いて言えばデバイスだな」
ここで急にダイゴの眼力が強くなる。
こちらの動揺を窺うかのような視線だ。
けど俺マスクしてるんだよね。
「ほう、それは何故だ?」
「うちのギルドに一人増えたの知ってるか?まぁ、ギルメンって言うよりは俺たちが実験台に良さそうって感じで寄ってきたんだけどな」
「ん?誰だ。メタニウムの構成はダイゴ、あんこきなこ、ヒカル、黒剣騎士だろ?」
「いや、一人増えた。システマだ」
流石に俺もそれにはビックリした。
システマはいつか俺が直々にコンタクトを取ろうと思っていた冒険者だ。
キャラメイクテンプレートや、ルーン解読真書などを独自に作ってる、初期組の中でも下位の迷宮に潜らない冒険者だ。
それが、結構イケイケのダイゴ達のギルドに?
「システマはやばい。何がヤバいって、あいつ知力極振りだ。元々賢いのに更に賢くなって逆にアホに見えるぐらいに脳みそがおかしい。そんなあいつが言い出したんだ。みんなダンマスにデバイスをお願いするべきだってね」
「ほう、そりゃ相当頭がいいな」
「システマが言ってるのは本当なのか?システマはデバイスがキャラメイクするだけの物では無く、特殊技能や魔法の能力を上書きする可能性を持っていると言っていたんだが」
システマという冒険者はやはり相当頭が切れるようである。確かにデバイスの重複使用は、他の世界では常識だ。
ただ、それは50層ダンジョンの踏破報酬として、宝物と別にデバイスを手に入れる事になっているので、実際にこの事実を知るにはまだまだ時間が必要だったはずだ。
まぁ、もう一つのデバイスの入手方法は、他の冒険者を殺す事なんだが、これに関しては制限を設けているので今は関係ない。
だが今大事なのはシステマだ。
システマはまだ誰も知らないその事実を言い当てた。
「それは正解だ。デバイスはこちらで制限は設けているが、言わばDPを具現化した物だ。その本来の能力は既存の存在の上書きだ」
「じゃあ俺はすっかり戦士職が固定になったってのに魔法も使えるようになるってのかよ」
「そうだ。上位職ってのがゲームとかでもあるだろ?ドラゴン教授の竜騎士も言わばそれだ。魔法を覚えるなら魔法戦士や魔法剣士やらと、ご想像通りの上位職がある。まぁ、ルーンの書き取りに合格すればの話だがな」
それを聞いてダイゴは手を握りしめてプルプルと震え始める。
「やっぱりそうかよ…じゃないと勝てねぇもんな……」
この反応の原因は先日の噂になっている失敗が原因だろうか?
問いかけてみるか。
「ジェネラル相手に致命傷食らったって話と関係あるのか?」
「あぁ、俺のレベルは26、TOPの奴らと大差はねぇ。けどぶっちゃけ限界感じてたんだ。大剣スキルを固定砲台にして、あんことヒカルがトドメを刺す。ずっとこれでやってきたんだが、ジェネラルクラスになるとスキルのディレイで確実に詰められる、ちっちぇ剣振り回してるシシオの方が確実に仕留められんのがムカついて仕方なかったんだ」
「そうか、まぁ初っ端から大剣でそこまで行けてるのが俺からするとおかしいんだがな。だが、一次職の壁って奴だ。上位職につけば、お前の悩みはなんだったんだってぐらいにはなれる。他所の世界でも最上位三本に大剣使いは必ず入る。焦らず確実に高みを目指せ」
「あぁ、ありがとうダンマス。なんか愚痴っちまったみたいで悪りぃな」
「気にすんな。で、だ。ダイゴ。お前のフレンドに芸能人の有良を追加してる。そいつに連絡して、一月後のラーメン屋跡地ダンジョン開放イベントまでに密着取材を受けてくれ。それを了承してくれたらお前にデバイスをやる」
それにはダイゴは訝しげに眉をひそめるが、少し考えた後に返事を返す。
「わかった」
「いいのか?」
「他でもねぇダンマスの頼みだ。頼まれたら喜んでやってやるよ」
「感謝されるようなことはした覚えがないがな」
「クソデブだった俺が、茜ちゃんみたいな可愛い子に惚れられてるんだぜ?感謝しなかったら畜生だろうがよ」
ふむ、こいつの場合は性格もイケメンになってる感じだな。
誰かハクメイを止めてあげて。
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