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第十六話
あー、夜だなぁ。
出かけるのも怠いしなぁ。
あの警察の子、冒険者なった途端にやたら連日連夜連絡しまくってくるし、なんだかなぁ。
悪い奴じゃないんだけどな。
出かけるってなっても、罪喰いのみんなはまだダンジョン潜ってるし、じゃあすぐ駆けつけるのはハクメイってなるのも嫌だしな。
あいついつ寝てんだろ。
毎日毎日24時間クラスで活動してるもんなぁ。
あまり表立って行動すんのもメイズのアバターだとよくないしなぁ。
木を隠すにも森の中って言うし、まだ露見してない冒険者として、別のアバター使うにも、今の197人って結構ネットとかで顔知られてるしなぁ。拡散すんなよ冒険者。
ネット社会って嫌ねぇ。
テレビ見よ。
有良とスギコミレニアムか…。
『じゃああんた何よ、あんたがディレクターだったらどんな番組作るのよ』
『いや、もう正直さ、時代の流れに乗らなきゃダメだよな!昼間の永井教授の番組なんて、常に30%超えるじゃん?』
『なーにー?まさかあんたも冒険者になりたいっていうわけぇ?』
『ちげーよバーカ。俺たちみたいなさ、それなりに呼んで貰えるようになった、いや呼んで頂けるようになった奴がふふふ、司会でさ、いや司会をやらせていただいてさ、ゲストは全部冒険者みたいな番組を作ったらいいんじゃないかと思うわけよ。それこそスギコと俺でもいいよ』
『…………』
『顔芸やめろよ』
『むん、面白そうね。でもほんとあんたやらしいわねぇ』
これには有良が顔芸で返す。
よくこんな脳みそ回転するよな。
スギコもあのデカイ体で殴ろうとするんだから恐ろしいわな。
『やらしくないわ。けど面白そうだろ?冒険者を呼べたらなんでも成立するんだけどな、けど稼ぎが違うから』
有良がお金マークを作りながら悪そうに笑う。
コイツっていい顔するよなぁ、こういう時。
『そうよねぇ、あっ!じゃあさじゃあさ、話を変えようじゃない。冒険者はお金では動かないでしょ?何をすればゲストで来てくれると思う?』
『えー?なんだそのたられば話は!でもさ、もう俗っぽい理由しか無くなるんじゃねーの?それこそあのアイドル軍団みたいな人気投票とかを番組で作ってさ、人気が欲しい冒険者は出演してくれるとかさ』
『あーっ!!』
突然指を差して大声で叫ぶと、有良は無表情になる。
『なんだバカ』
「ブホッ」
くそ、笑っちまった。
コーラ返せ。
『バカって何よ!デブなら言われてもバカはやめなさいよあんた』
『わかったからなんだよ!言えよ早くよ』
『勝手にネット情報集めてやっちゃえばいいんじゃないの?』
前屈みになってガチトーンでスギコが喋ると、有良はなんか言いたそうな怪しい顔をしている。
何企んでんだろ。
『面白い…かもね』
有良がその怪しい顔のまま、カンペに目線を送ると、スギコも白々しく目線を送る。
うまいよなぁ、こいつら。
やっぱ打ち合わせとかしてんのかな?
『でしょう?え?冒険者の特集撮ってきてます?』
『かはっ!!』
『言いなさいよぉぉ!!!無駄にコイツと喋っちゃったじゃない!!』
『コイツとはなんだバーカ!!』
『知ってて誘導したんだな!性格の悪いやつだよあんたは!!』
ここでVTRが始まる。
冒険者勝手にランキング。
冒険者の聖地で人気を聞いてみた。
まずは女子高生が出てくる。
Q.冒険者で誰か好きな人はいますか?
『えー、やっぱりダイゴさん?』
『えーうそぉ!!ちゃらいじゃん!』
『でもすごい優しいよぉ?』
その次は杖をついたおじいちゃんが出てくる。
そして同じ質問が。
『あい?冒険者?』
『知らないですよね』
『知っとるわい!やっぱりダイゴだの!あいつは軍人の気品がある!』
ただのチャラ男だった気がするんだが。
その後に出てきたのは紫色の眼鏡をかけたマダムなおばあちゃんだ。
『うーん、ダイゴさん。じゃない?あの子ね、いい子よ、ほんとに。毎日生きて帰れましたぁってご近所さんにお酒だとか、お米だとかを差し入れしてくれるのよね』
人気投票7票 第5位ダイゴとテロップが出て、VTRが切り替わる。
ダイゴと第5位をかけたわけではないと信じたいが。
大剣使いダイゴ。
冒険者ランキング13位の凄腕冒険者。
日頃の言動は気の抜けたチャラ男だが、迷宮の中ではかなり信頼の置ける上級冒険者だと言われているが、どんな人物なのだろうか?
って即席PVみたいなの流れるけど、ネットの拾い画のセレクトが、パンイチで戦ってたり茜ちゃんにしばかれてる酔っ払いのダイゴの写真のみなのが悪意しかない。
〔てなわけでダイゴさん探してみました。〕
いや、何処でもいるだろあいつは。
『すいません、ダイゴさんって冒険者の方しりませんか?』
『え?ダイゴさん?さっきコンビニのレジで茜ちゃんとしゃべってましたよ』
絶対そんな事わからなさそうなギャル系の女の子にインタビューすると、すぐに所在がわかる。
〔早速見つかった!?〕
とテロップが表示されるが、ダイゴはグラナダに入り浸りだからな。
冒険者についてちょっとでも知識があればわかるはずだ。
普通のおっさんのアナウンサーが、駆け足でコンビニに向かう誰得かわからん後ろ姿を見て、有良とスギコはワイプで笑っている。
コンビニに入ると早速赤髪長髪の大剣を背負ったダイゴの後ろ姿が映る。
最近冒険者みんな武器しまわなくなったよなぁ。
まぁ、いちいち装備選択もだるいもんな。
『YOUはダイゴさんですか?』
『外国人みたいな言い方やめろ。これ何?何の撮影?』
『土曜日のマジギレです』
『あっ!スギコミレニアムのやつ!あれ面白いよね!』
〔YOUはスギコなんかを知っていた!?〕
『なんかってなんだよコラァ!!』
ワイプでスギコが叫んでいるが、やはりバラエテイ番組のテロップは悪意があるよな。
それが面白くていいんだが。
『実は、冒険者の人気投票をしてまして。おめでとうございます。5位です!』
『まじか!?何人にアンケートとってんの?!』
『100人です』
『ん、何位まで出した中での5位?』
『5位ですね』
『ディスってるよね?!』
会場含めて爆笑、しかもここで次のVTRに切り替わってしまう。
なんて悪意のある番組なんだ。
人気投票12票 第4位ブッチー
名前の横に猫の手マークがあるのが憎い。
冒険者No.1ギルド、罪喰いギルドマスターブッチー。
とある番組で、冒険者の秘密を赤裸々に語り一躍時の人となったお馴染みネコ耳冒険者のブッチーだが、秋葉原ではどのような層に人気があるのか?
さすがにゃんこ連盟と兼任してるだけあって、写真のラインナップは思わず撫でてしまいたくなるような可愛い写真ばかりである。
夜爪がスタジオ借りきってオフ会したりするみたいだからな。
ダイゴみたいな失態にならないのは嬉しい誤算だったのではないだろうか。
アンケートはOLのお姉さんだ。
『だんっとつブチですね!みてください!ブチのストラップつけてるんです!』
『売ってるんですか?』
『作ったんです!好きすぎて!!』
そこで切り替わりDQNのお兄ちゃんが現れる。
『だんっとつでブッチーさんっしょ。あのただひたすら鍛えぬく感じ、マジ男っしょ!あんなちっちゃいのに』
次は中学生だ。
『うーんとね、モモカちゃんと、夜爪ちゃんと、あんこきなこ順当。でも強いて言えばブッチー。闇魔法右腕疼くよね』
なんだこのエロガキ。
てか闇魔法のルーンはお前には絶対解けないぞ。
番組では当然ブッチーさんを捜索。
幾度と聞き込みをするが、ブッチーの情報は入らない。
そこで某掲示板での検索を試みるが、ガセネタばかり。
『もう駄目ですね。見つかりません。3位の夜爪さん探しましょう』
夜爪っていっちゃったよコイツ。
結構楽しみしてたのに。
だが定番だ。
さすがテレビ。
諦めかけたその時!!とテロップが出てる。
ファミマの前に猫耳が三人いる!!!
そのテロップの後に駆け寄ると、ブチとクロと夜爪がみたらし団子三個入りを三人で分けて尻尾を揺らしている所に人集りが出来ている様子が映し出される。
ここで、クロと夜爪の紹介や、ファンのインタビューが流れて、三人の様子の続きが再び映し出される。
『人気投票2位、3位、4位独占ですけど、御三方は同じグループなんですよね?』
『そうにゃ!けどブッチーは本職があるにゃ』
『もぉー、にゃんこ連の時はちゃんと夜爪さんの部下ですよぉ』
『コイツ憎たらしいにゃ!ダンジョンでいっつも出しぬかれるにゃ!!』
『まぁまぁ、ギルマス、落ち着いて。お団子あげますから』
『はむっ、一個しかにゃいにゃ!!』
スタッフが混乱したのでここで撤収と出る。
はぁ、これでやっと1位か。
まぁ、ぶっちぎりで俺だろうな。
それでは堂々の1位は!!!!!
人気投票39票 第1位 ハクメイ
「ごっほ、え?なんで?」
映し出されるのは、迷宮の中でゴブリンが光に撃ち抜かれ、忍刀で斬り裂かれる様子が映し出され、墨で書いたような白い字でHAKUMEIと描かれる。
こんなプロモーションビデオいつ撮ったんだ?
まずは、街中で女子高生の集団が騒いでいる。
『多分多分!!多分だけど!!やっぱり1番はメイズさんで、でも多分投票とかしちゃダメな人なんですよ!!だから、世界のメイズさんで、ハクメイさんはみんなのハクメイさん!!』
『見て下さい!!ハクメイさんとメイズさんの2ショット!これツイッターあげたらRT2万超えたんですよ!!』
うるさい。
よく言ったテロップ。
まさにそれだ、このギャルどもやかましすぎる。
次は上野のキャバクラだ。
スタッフ絶対遊びに行ってただろ。
『あぁ、メイズ様って神様だからお祈りの対象だけど、ハクメイさんならチャラ打ちしてくれそうなガードの緩さがあるんですよねぇ』
『ウケる!!腐女子とか意味わかんなかったけどメイズさんとハクメイさんならありかも』
なしだろ。
ほら有良もなしだろって叫んでるよ。
次は工事現場のドカチンにインタビューしてる。
『ハクメイはやばいな。あいつこの前足場組むの手伝ってくれたんすよ。やばかったっす。工期10日は縮んだっすね。トレーニングになるからって渡そうとした金も受け取って貰えなくて今その金巡って揉めてますよ』
金の話をするな。
だが、そのインタビュー中に件の人物が現れる。
白い作業着を着たハクメイだ。
『おやかたちーす!!!』
『うわぁあお!!ハクメイ!!おめぇもう来んな!今揉めてんだよ!!お前が来たら金貰えなくなっちまう!』
『え?マジっすか?いくらなんすか!?てかテレビっすか?兄貴ー!!見てますかぁ!?ははは!じゃあ残り終わらして来ます!!』
『だから駄目だって言ってんだろ!!』
足場から飛び降りて10個の枠を持ち上げて、5階相当の足場を階段でも登るように飛んでいく様子を映し出される。
『まだカメラ撮ってたんすか?おーい!旭ヶ丘建創さーん!トビの親方さんにお金払ってくださいねぇー!!』
カメラの前でハクメイが騒いでいるが、おっさんは割って入りマイクを向ける。
『実は、人気投票で、まだ途中なんでわかってないんですけど、ハクメイさんかなり上位になるかと思うんでインタビューしたいんですよ』
『え?マジっすか!!じゃあメイズの兄貴とワンツーフィニッシュだと嬉しいっすね!』
お前がぶっちぎり1位だよ。
そこでスタジオに戻ると、二人は沈黙である。
『………………』
『………………』
『駄目だ、あれ御せないわ』
『お前が駄目なら私も駄目だよ』
だろうな。
上の奴らはまだわかるが、ハクメイは駄目だ。
自由すぎるからな。
つかテレビでまでハクメイとかあいつなんだ。
警察だったって過去を消したら人間あんなはっちゃねるもんなんかね。
「はぁ、コア太郎ちゃんちにゲームしにいく」
『了解しました。それではラビュラント・ガーディアンアバターで転移します』
「りょかい。あと、有良とコンタクト取れるなら取っておいてくれ。会いに行くから」
『了解しました』
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