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だんます!! 作者:慈楼
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第八話

 
「ふぁ、そろそろ新しいダンジョン造るかぁ」

 ゴブリンダンジョンは滑り出し上々で、まさか罪喰い(シンイーター)の連中が、二手に分かれて5つのゴブリンダンジョンの内、4つのダミーコア権限を勝ち取ったのには脱帽した。

 まぁ、もう一つのダンジョンはお察しの通り夜爪猫だ。
 あいつはやはり当初の予想通りキチガイであったとだけ、今は言っておこう。

 冒険者達が5層のLv.5ゴブリンを物ともせずにブチ殺している様は見ていて爽快であったが、開放から2週間、時既に全てのダンジョンでゴブリンが狩り尽くされる程の事態に陥っている。
 リポップ式なので、実際は狩り尽くされる事は無いが、5層で冒険者がリポップ待ちで行列を作っている程と考えて頂ければ、どれ程の狂気かわかって頂けるだろう。

 折角の冒険者に死者を出すのは控えたいので、次はレッドゴブリンとブルーゴブリンの出現するダンジョンを用意しようと思う。
 レッドゴブリンは膂力が強く、ブルーゴブリンはすばしっこいと考えて貰えばいい。
 徐々に強くしていくのが望ましいのだ。

 え?ラーメン屋跡地はどうなったって?
 冒険者の協力の元、鉄板とコンクリートで埋め立てられましたが何か?
 今はコンクリートの塊に殉職者の名前が彫られて献花台が置かれているような状態だ。
 まぁ、中身はエラい事になっているが、そのうちイベントにでも使おう。

 政府のまさかの対応に度肝が抜かれたが、流石にラーメン屋跡地のダンジョンだけで100人以上死んだからな。
 ドラゴンも万世警察署跡地で眠りこけっているが、140名もの警察官を皆殺しにしたからな。
 それも関係して埋め立てる事になったんだろ。
 ポイントは有難く使わせてもらう。南無。ってか乙。

 まさかドラゴンも、上空から一気に降下して警察署ごと叩き潰して生き残った奴をブチブチと爪で潰して殺すとは思わなかった。
 可愛いトカゲである。
 冒険者達は、ダンジョン終わりにドラゴンの写メを撮りに行ったりするらしい。
 その際には、顔の上に乗せてくれたりするとブチ猫が言っていた。
 基本人懐こいのである。
 可愛いトカゲである。

「コア、フォーマット出してくれ。それと、冒険者を後100人増やす、選考はそっちに任せる。罪喰い(シンイーター)は俺が選ぶから、面白そうな奴を選出しといてくれ。枠は5枠残しておいてくれたらいい」
『了解しました。それではデバイスを送ります』

 あいよーんと。
 ふぁぁ、ヤル気でねぇな。
 テレビでも見よう。

『こんにちわ、東京密着24時のお時間です。今世の中を騒がせている冒険者。秋葉原で甚大な被害を出したダンジョンやドラゴン、その凶悪な存在に打ち勝つ存在である冒険者に密着して参りました。それではご覧下さい』

 昼のニュース的なテンションで始まる冒険者の特集、どうせにゃんこ連盟関係だろうなと思いVTRが始まると、何故かブチ猫が出てきた。
 お茶返せ。

『今、私は都内で活動中の冒険者、ブッチーさんのお宅に来ております。かなりの高級マンションですが、どのような方が住んでいるのでしょうか?』

 ブチ猫の奴、かなりいいとこにすんでやがんな。
 俺なんか亜空間に作り出した六畳一間でパソコンとテレビと布団しかないっつーのに。

『あ、取材の方ですね。こんにちわ』

 テロップになんと可愛い!と表示されているが、そいつえげつないぞ。全然可愛くないぞ。
 闇魔法でゴブリン挽肉にして遊んでる悪い奴だぞ。

『どうぞ、入りますか?』

『はい、お邪魔しますぅ!かなりいいとこにすんでいらっしゃるのですね』

 ブッチーさん 年齢不詳!!
 クソ面白いんですけどこいつ。
 年齢ぐらい教えてやれよ。

『えぇ、これでも名誉あるギルド罪喰い(シンイーター)のギルドマスターをやらせてもらってるんで、TOPプレイヤーの一員として恥ずかしくない振る舞いを目指してます』

 ここで、ギルドとは目的を同じとする同士と結託するグループであると、テロップで説明されているが、えらい端折ったなってのが正直な感想だ。

『シンイーターですか、どういった活動内容なのでしょうか?』

罪喰い(シンイーター)は元々犯罪者出身の冒険者なのです。ですので、冒険者内のヒエラルキーは下層なのですが、その分、運営に近い存在でもあるのです。例えば断る事もできるのですが、ダンジョンマスターから依頼が来たりもしますね』

 ダンジョンマスターとは、今回の東京迷宮事件の首謀者であり、巨悪の根源であるとされている。
 まぁ、警察関係者からはそう思われるだろうな。

『ダンジョンマスターとは、今回の事件の首謀者ですよね?その依頼とはどう言った内容の物があるのでしょうか?』

『そうですね、簡単なのでホシバでコーヒー買ってこいとか…難しいのでは、タイムトライアルで30分以内に5層級のダンジョン制圧しろとかですね』

『その話だと、あの秋葉原の迷宮のような場所が他にもあるという事ですか?』

『ありますね、でも一つを除き冒険者しか入れない仕様なので、一般の方には関係の無い事ですけど』

『案内して頂くわけには?』

『勿論いいですよ、これはダンジョンマスターにも許可を頂いてますので、他の冒険者専用施設などの紹介もこちらの招待があれば可能ですので行けますよ』

『ありがとうございます。本日の密着よろしくお願いします』

『はい、よろしくお願いします。では早速行きましょうか』

 まぁ、確かにこれから冒険者になる奴の為にも、活動内容などは知っていて貰いたいので、夜爪に頼まれた通りに認証型ダンジョンの招待システムなどを組み込んで実装はしたが、実際は夜爪がもったいぶって途中で逃げて、冒険者は謎に包まれたままにって感じで番組が終わる事が多かったんだが、今回はクソ真面目のブチ猫が案内するならかなり面白い番組になるんじゃないだろうか。

 場面は変わってモザイク付きの街中に。

『ダンジョンマスターに会ったりするのですか?』

『まさか。コールで指示が来るだけですよ』

『所謂ステータスメニューと言う機能の事ですね?』

『はいそうですよ。ステータス、見れます?』

 宙空に浮かぶビジョンにスタジオがざわめく。

『まぁ、ゲームのステータスウィンドウみたいな感じですよ。これで仲間と連絡を取ったりするんです。じゃあギルメンと待ち合わせしてるんで皆さんに招待送りますね』

 そして冒険者ブッチーさんは、何の変哲もないコンビニのトイレに入って行くと姿を消す。
 とテロップが出る。
 そりゃそうなるよな。

『皆さん、ご覧下さい。今ブッチーさんはこのコンビニのトイレに入ったのですが、中にはブッチーさんの姿が見当たりません。一応店内を探してみましょう』

 店内をカメラが廻ると、レジカウンターで大剣を背負った赤髪長髪の美男子が店員の女の子と楽しそうに話している。
 店員の女の子にはモザイクがかかってはいるが。
 金髪で可愛いっぽい雰囲気が出ている。

『あれ?なんかの取材?参ったな、装備外してないから銃刀法だよね?消そ』

 目の前で男は大剣を消し去り、髪の毛をかきあげてニコッと笑う。イケメンである。
 でもコイツは最近頭角を現してきた冒険者のダイゴという元クソデブだ。
 絵に描いたようなクソデブだった奴である。

『グラナダの取材?どうせ猫耳関係だろ?ケモミミ旅飯店にしてくれよぉ。ここは俺らのギルドも使ってるから荒らして欲しくないんだよねぇ。もしラーメン屋のダンジョンみたいに封鎖されたらダンマスに泣きついちゃいそうだから気をつけてね。じゃあ茜ちゃん、また後でね!』

『はいダイゴさん!招待しといてください!バイト上がったらいきます!』

 安心しろ、すぐドラゴン突っ込ませてやる。
 お前のとこにな。
 それは冗談だが、テレビ局もそこまで馬鹿じゃないと信じたい。
 また警察がポイントに変わる結果になってしまうからな。

『もう、早く来て下さいよ』

 どうやら冒険者御用達の店があるらしい。
 とテロップが出た後に、ブチ猫が手招きをしている。
 そこで、スタッフ一同が恐る恐る中に入ると、そこには南国のビーチが広がっている。
 アナウンサー唖然である。
 してやったりだ。

『こ、これはどういう事でしょうか?コンビニのトイレの中が南国のビーチになっているのですが』

『ここはグラナダって言う冒険者専用のお店なんです。水着で頭にハイビスカスを付けている人が店員さんなんで、注文はその子たちにお願いします』

『あの、そこの店員さんが人気アイドルグループのなっぴーに見えるのですが?』

『そうですよ、なっぴーのデザインで造られた店員さんですから』

 信じられない光景にスタッフ唖然。
 そして、罪喰い(シンイーター)のメンバーの驚愕の姿が明らかに…。

 ここでCMだ。
 くそ、面白いやんけ。
 てか特集もんなのか?
 こんな番組なら俺も出たかった。

『おっ、テレビか?いえーい!メイズ見てるー?』

 カメラに向かってそんな事をしているのはシシオだ。
 だが、インタビュアーのアナウンサーはシシオのライオンの姿に発狂してしまうが、カメラはその様子を動じずに捉えている。
 プロである。

『おいシシオ。怯えているではないか』

『きゃあああ!!!!』

『どの顔が言ってんだ』

 ライオンの次はワニのような見た目、リザードマンのホリカワである。
 発狂されて当然だ。

『カメラ来てるなら装備外した方がいいですかね?』

『いや、ここは亜空間であるから法律は適用されないだろう。多分な』

 そこで比較的まともなガンジャが現れ、なんとか平静になったアナウンサーは、取材を再開する。

『この方達が罪喰い(シンイーター)のメンバーなのでしょうか?』

『ない、あと1人メイズって言う凄腕のイケメンが居るんですが、忙しいみたいで』

 いや、俺最近食っちゃ寝しかしてないよ?

『じゃあダンジョン行きましょうか』

 ダンジョン初潜入、世界初の撮影に成功とテロップが出て、ダンジョンに向かうまでの間のカットとスポンサーの名前が表示され、再び切り替わる。

 どうやら認証型に案内するようだな。
 コインランドリーを認証型にしているダンジョンは、唯一夜爪が制覇したダンジョンだ。

『では、こちらです』

『ご覧になられましたか?今、ブッチーさんが、このコインランドリーの中に消えました。私達も入ってみましょう』

 カメラが潜入すると、早速ゴブリンと戦っている冒険者の姿が映し出される。

『あの子達は、まだレベルが低いので浅いとこで鍛えているのですよ。ここは比較的空いてるんで、まだゴブリンと戦えるんですよ。他は激戦地でひどい時はリポップに10人以上並ぶ時もありますから』

 そう言って歩いて行くと、遠方から目を赤く光らせたゴブリンがじりじりと歩み寄ってくる姿がカメラに映し出される。

『ひっ!』

『大丈夫ですよ。ダークボール』

 手を広げて黒い球体を生み出し、それを投げつけると、ゴブリンは魔石を残して一瞬で塵となる。

『ブッチーさん、今のは?』

『魔法ですよ。一部の冒険者は魔法が使えるんです』

『魔法…ですか』

『えぇ、と言っても、難解なルーンを暗記して理解しなければ使えないんですけどね』

『それはダンジョンの外でも使えるのですか?』

『それは呼吸ができるかどうかって質問に似てますよ』

 恐らくこの辺は伝わらないだろう。
 だが、魔法が使えるってだけで冒険者になりたいと思う奴は増えるはずだ。
 まぁぶっちゃけ今現在申請来すぎて困っているが。
 やめて通知オフにしないと使えなくなる。

『こうやって一日中ゴブリンを狩って、稼いだお金で先程のグラナダのような店でどんちゃん騒ぎする。それが冒険者です』

『それはどの程度の稼ぎになるのでしょうか?』

『低層の弱いゴブリンだと、一匹殺してビール一杯程度ですね。普通に日本円に換金して飲みに行ってもいいかなとか思うんですけど、やっぱり冒険者の見た目は驚かれますからね』

『ちなみに、日本円に換算するといくらぐらいになるのでしょうか?』

『魔石ですか?ご想像にお任せしますよ。ただ、冒険者がいれば、資源が無限になるって事だけは知っておいて下さい。では深層に潜りますんでここまででお願いします。招待きりますね』

『あっ!!』

 気付けばコインランドリーの中にいた。
 的な所でVTR終了でスタジオに戻る。
 そこでは評論家達が何やら語るようだ。

『これは凄いVが撮れましたね。冒険者はすぐに雲隠れするので、全然取材が出来ていないんですよね』

『警察が冒険者の自宅に訪れた次の日には、空室になっていたりで足取りが掴めないですからね。恐らく、先程のお店やダンジョンのように、自宅も認証型にしているのではないでしょうか』

 その通りです。

『私も某掲示板で冒険者に応募しているのですが、デバイスとやらは届きませんね。ダンジョンマスターさんが、もしこの番組を見ているのであれば、広報部として私を冒険者にしてもらいたい物です』

 ハゲ散らかったなんちゃら教授が、そんな事を言っているが、これは利用しない手はないだろう。

「コア、このなんちゃら大学の名誉教授に今すぐデバイスを送れ。生放送中にだ」
『了解しました』

 この後も憶測で適当な事を抜かしていると、スタジオに突如白梟が現れる。
 あいつは案内先まで時空を切り裂く梟だからな。
 スタジオだろうが関係ない。
 そこで、スタジオが張り詰めるが、なんちゃら大学名誉教授はマイクが読み取る程の音を立てて生唾を飲み込んだ。

 その隣のジョリー佐藤は突然立ち上がり名誉教授に指をさす。

『それは研究機関に提出するべきです!!あの巨悪、大量殺人者のダンジョンマスターとやらに対抗できる手段になり得るはずです!!』

『あなたは何を言っているんですか!デバイスは送られた本人しか使えず、前にこのデバイスを提出した際には、デバイスは溶けて消え去り、使用しなかった者の所へ、一生涯冒険者になる事は無くなりましたと手紙が届けられたのですよ!私は新時代に選ばれたのです!!起動!認証!』

 そう言って名誉教授は即座にデバイスを起動する。説明書も見ずに。
 かなり勉強しているようである。

『何をしているかわかっているのか!!クソ教授!!』

『なんとでも言うがいい。私は秋葉原のドラゴンを毎日見に行っている。何故かわかるか!』

『今は関係ない話だろ!!』

『何故かわかるかと聞いている!!!』

 スタジオ大混乱だ。
 ジョリー佐藤も殴りかかろうとしているが、スタッフに止められている。

『あのドラゴンは念話が出来るのだ!!そしてドラゴンは私に言った!小さき者よ、いつか貴様が冒険者になる時あらば、騎士の職を選べ!さすれば私が加護を与え竜騎士としてやる。私を駆り空を翔けてみよ。知恵のある貴様の知らぬ世界が見えるぞ!とな!!私はあのドラゴンの背に乗せて貰える約束をしたのだ!!これに夢を抱かぬ男がいると思うか!!』

 中々熱い教授である。
 ドラゴンの背は胸熱だからな。

『だから私は、全てを捨ててでも冒険者になる!それを止める権利など、何処を見てるかわからないような貴様にあるはずがない!!』

『てめぇ言いやがったなこのやろう!!!』

 ここまで来ると爆笑である。

「コア、このおっさんに初期装備無しで飛竜の卵プレゼントしてやれ。秋葉原のドラゴンに加護貰うなら、その卵も炎天竜に育つだろうからな」
『了解しました』

 番組で揉みくちゃになりながらも名誉教授はデバイスの操作をし、着実にキャラクターメイキングを済ましていく。

『ほら見てみろ!笑わせてくれた礼に初期装備無しで竜の卵をプレゼントしてやると表示された!私は選ばれたのだ!!はははは!!音声認証!デバイスオン!!』

 名誉教授の声を認証すると、デバイスは溶けて教授の心臓に吸い込まれ、その姿は蠢き、徐々に姿を変え金髪碧眼の美男子になる。
 こんだけ早く見た目を決めれたのは、おそらく冒険者が造ったアプリで、デバイスのキャラメイクをコピーしたようなテンプレがあるので、それで元々数字を決めていたんだろうな。
 何万何億通りとあるから暇つぶしに最高だとか言っていた。
 まぁ、俺のデバイスより精密さには欠けるが、中々近い見た目を作れると聞いていたが、こんな所で役に立つとはな。
 凝るやつは2.3日キャラメイクするみたいだし。

 しかしシュールだ。
 ハゲ散らかったちっちゃいおっさんが、高身長八頭身の金髪碧眼の美男子に姿を変えたのだ。
 竜の卵を抱きながら。

 元の姿にはコンプレックスしか無かったと公言しているようなもんだ。

『ちくしょうが!!冒険者には国家反逆罪を適用すべきだ!!このクソ教授はもう人間じゃねぇ!』

『そうだよジョリー君、私はもう人間ではない。冒険者となったんだ。なんだこの沸き上がる力は!!ははは!!さぁディレクター君選びたまえ。このジョリー佐藤とか言う二級のカスを使うのか、冒険者を追う為に、そして竜を駆る私の姿を撮る為に私を起用するのか。流石にここまで言われてジョリー君を使うのであれば、私は冒険者稼業に勤しむよ』

 そこでディレクターがカメラに映し出されるが、ディレクターがカメラを拒否した後に、ジョリー佐藤はスタジオから連れ去られてしまう。

『さぁ、知的好奇心を満たそう。冒険者の全てを知ろうではないか!!』

 プツッとな。
 あーおもろかった。

 名誉教授の今後に期待だな。


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