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第二話
『TNTテレビの秋山です。現在、私は秋葉原に来ております!どうやらここ電気の街秋葉原で何やら奇怪な事件が起きているようです。あちらをご覧下さい』
テレビに映し出されるのは、秋葉原の街中にある洞窟である。
『本日12時頃に、こちらの元某有名ラーメン店があった雑居ビル一階の居抜き物件を押しつぶし、このような洞穴が現れたのだそうです。このビルは今月より大規模改修工事の予定が組まれていたのですが、それに伴い某有名ラーメン店が移転をした直後にこのような!!あっ!!見て下さい!!警察の特殊部隊が調査をするようです!!』
マスコミのフラッシュを浴びながら、完全防備の警察官達がダンジョンの中に入って行くのが見受けられる。
こうならないように先日掲示板で警告したのだが、どうやら信憑性に欠けるといったヤツなのであろうか。
予想できた最悪はいとも簡単に巻き起こってしまう。
俺の自宅のPCからは、ダンジョン1階層の様子が事細かに映し出されている。
「全体止まれ!!人がいるぞ!!くそ!無線が使えないぞ!!」
「特殊メイクをした子供を発見!応答願う!応答願います!!ダメです、こちらも使えません」
どうやら警察官からするとゴブリンは特殊メイクをした子供に見えるようである。
俺からすると邪悪な小鬼でしかないんだが、警察は何やら話しかけながら近くに寄る。
そんな接近すると危ないぞ。
「君、そのナイフを捨てなさい。ハロウィンはまだ早いだろう」
「これは何かの撮影か?許可は出していないのか?」
一気に捲し立てても話し合いにはならないのは常識だろう。なぜ、警察官という人種はこうも自己中心的で協調性の無い者ばかりなのだろうか?
自衛官の爪の垢を煎じて骨の髄まで沁み渡るまで一気飲みさせてやりたいぐらいである。
自衛官がどんなんかは知らんけど。
「グゲゴ、グゲッ!グキャアア!!」
「うぉ!うが!ぐご!!!」
当然の如く、目を突き刺されて首を斬られた。
そりゃあ最弱のゴブリンだとは言っても、お前らの攻撃は攻撃判定されないから何をしようが無傷であるし、ゴブリンは弱いながらにも武装しているので、油断している警察官を殺す程度容易くできる。
某有名配管工が星を食ったら無双するのと状況は同じである。
「田嶋が刺された!!逮捕しろ!!発砲用意!」
「グゲゴ!!!」
「ぎぃやぁぁ!!!!足を刺されたぁ!」
「グギャ!グギャ!」
「くそっ!囲まれたぞ!」
今頃になって危険性に気付き、リボルバーの安全装置を外しているが、既に時遅しである。
既に四方から血の臭いに寄せられたゴブリンが警察を取り囲んでいる。
10人の警察官がいた所でどうにもならないのだ。
不死の捨て身とはそれ程までに脅威である。
「ひやぁぁあ!!」
パンッパンッと乾いた銃声が響き渡るが、ゴブリンに直撃しようと、それは何の意味も成さずに弾かれてしまう。
「ば、ばけものぉぉおお」
そうなんだよな。
結局、ゴブリンってのは化物なんだよ。
本来この世界に存在するわけない、空想の世界のモンスターであるゴブリンが、いざ目の前にいれば、それは化物以外の何物でもない。
「よぉしコア。1人だけ逃がして、後は全員殺すよう命令してくれ」
『了解しました。命令プログラム、正常に発動致しました』
銃声が止め処なく響き渡る中、実に9人の警察官の尊い命が失われた。
死因、ゴブリンによる斬殺死。
冒険者であれば恥中の恥の死に方である。
本来は、ニュースなどでイラッとした場合に外国にダンジョンを放置して嫌がらせしてやろうとは思ったが、重要な日本人を殺す事になるとは。
まぁ、情報戦の世の中で、猪武者みたいな事するからそうなるんだ。
俺は防衛手段を安売りしていたハズだ。
本来であれば、このデバイスを売って一儲けしようとも考えた。
でも、俺と同じ日本人であれば、この転生に近い冒険者システムを喜んで受け入れてくれると思っていたんだが。
『ひぃやぁぁああ!!悪魔が!あぐまがー!!』
『ご覧下さい!!!調査に入った警察官が取り乱しております!!糞尿垂れ流しで狂気の沙汰としか思えません!!』
ダンジョンから抜け出しのたうち回る警察官を見届けてテレビを消す。
別にテレビで見なくても、PCで見れるしな。
「むー!どくにゃ!どくのにゃ!!」
「ご覧下さい!!流石秋葉原と言ったコスプレイヤーが警察の制止を振り切り洞穴に入ろうとしています」
「ダンジョン攻略させるにゃああ!!!」
カオスだ。
どうしてこうなった。
そりゃそうだよな。
この治安国家の日本で9人も死亡者を出した謎の洞窟が繁華街の中にあれば、当然警察はそこを立ち入り禁止にするはずだ。
どうせこの後、何回か特殊部隊がきて検分やらなんやらで警察に囚われる日々が続くだろう。
くそ、ままならん。
「コア、今回の警察でポイントは貯まったか?」
『一人あたり1000Pの換算で、9000P増加しております。』
「うひょー!そんなに?流石地球だな。じゃあ新しいフォーマットPCに出して。新しいダンジョンつくるわ」
『了解しました』
こうなったらダンジョンを追加して、警察との我慢比べに入る必要があるだろう。
俺としては一刻も早くダンジョンがダンジョンとして認識され、冒険者が其処彼処に現れるようになるのが理想なんだが…。
ダンジョンがある事が普通とされてる3つの異世界フェリアース、グランアース、レィゼリン全てのダンジョンを手中に収めた最強のダンジョンマスターとして、4つ目の異世界に渡ろうとしたら帰ってきてしまったこの日本であるが、愛着があるし、強くあって欲しいと願っている。
初めはこの世界に干渉する気も無かったのだが、状況が変わったしな…いや、それは今は関係ない話だが。
今のままではこの美しい日本は終わる。
既にTPPだかTKGだかは知らんが、日本は国民の知らぬ間に、完全なる連合国の属国と成り下がっている。
諸外国に胡麻をすり、必要のない予算を無理やり組み立て毟り取られ。
言い出すとキリがないが、こうなってしまうと、日本に未来は無い。
ならば偶然とはいえ、神に等しい力を得てしまった俺が一日本人代表として、この日本を作り直そうではないか。
ジジイババアが安心してガキ共を見守れる、そんな日本に変えてみせようではないか。
熱くなりすぎたな。
では、その為の第一歩として、警察にはガンガン死んで貰って、この国の礎となってもらおう。
そして桜の紋章のように儚く散ってもらおうではないか。
『フォーマットの準備ができました』
あいよーんと。
3つの世界のダンジョンコアっていうダンジョンコア全てを取り込んだ俺のコアちゃんは、何時の間にか自我を持ち、果てはこの地球でのコンピューターを理解し、現代型ダンジョンコアへと進化を遂げた。
一昔前ならば、ダンジョンの階層構築など、全て口頭であったのだ。
それに比べたらなんといい時代になったのだろうか。
ただフォーマットに従い迷路を作り、罠やモンスターリポップの魔法陣などを設置して行くだけの簡単なお仕事である。
それに今回は既にサンプルとなるゴブリンダンジョンを作っているので、それをコピーしてペーストするだけの簡単なお仕事である。
1000Pも支払わねばならんのは玉に瑕だが。
出現場所の設定だが、これも設置可能場所をコアに算出させて、後で目立たない所を吟味すればいいだろう。
最悪コアに丸投げでいいしな。
とりあえずは秋葉原だ。
ここでダンジョンを常識化して、日本各地に設置する。
「あと適当にアバターを造っておいてくれ。平行思考で各ダンジョンの説明者として冒険者のサポートをさせる」
『了解しました。平行思考の代行を致しましょうか?』
「あぁ、そうだな。その方が楽でいい。頼む。性格は平和的な設定にしておいてくれ。見た目は…そうだな適当にネットで検索した人間を投影してくれ。もし、警察に囚われた場合を考え、念の為自爆出来るようにしておいてくれ」
最短で行きたいからな。
治安国家ならば、まずその治安を崩してみせよう。
ピコン
ふむ、どうせ猫だろう。
ん?
67件?
これはそろそろ掲示板も信憑性が出てきたか?
まずは夜爪猫からのメールはないか探そう。
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差出人:yotumeneko.nyaaa
宛先:danmasdesugananika
題名:夜爪猫だにゃあ
本文:
ダンマスダンマスー。
警察のせいでダンジョン攻略できないにゃ。
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差出人:yotumeneko.nyaaa
宛先:danmasdesugananika
題名:夜爪猫だにゃあ
本文:
ダンマスダンマスー。
こうなったらまず警察をどうにかするにゃ。
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こんな感じで夜爪猫さんから頂いたお便りは実に60件です。本当にありがとうございました。
でもとりあえず、折角それまでの人間であった人生を辞めて、冒険者を選んでくれた方であるから、Q&Aにはキッチリお答えしましょう。
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差出人:danmasdesugananika
宛先:yotumeneko.nyaaa
題名:ダンマスだ
本文:
とりあえず近日中に、冒険者専用のダンジョンを造るので、そちらでお楽しみ下さい。
ラーメン屋跡地ダンジョンと内容は同じになります。
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わかったにゃと2つ返事が来ていたが、あのキチガイはいつまで語尾にニャをつけるつもりなのだろうか。
まぁ、いい。
では、掲示板を見てみようか。
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