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【社説】

伊方原発 住民の安全を願うなら

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の再稼働に中村時広知事が同意した。誰も事故が起きないとは言っていない。逃げ場所さえ定かでないままに再稼働を許すのが、住民のためだと言えるだろうか。

 知事の判断は重い。

 電力会社との信頼関係に基づく“紳士協定”とはいうものの、事実上、原発を動かすための最終的なゴーサインになるからだ。

 立地自治体だけではない。たとえば愛媛県の場合であれば、百五十万県民の生命の安全を担うという意味で、その責任は限りなく重い。ましてや原発事故の影響は、県内だけにとどまらない。

 中村知事は決断を下すに際し、安倍首相から「再稼働を推進する責任は政府にある」との言質を引き出した。県民の安全を思うその姿勢は評価したい。

 しかし、もし事故が起きたとき、具体的にどのように責任が取れるのか。福島第一原発のその後を見れば、原発事故の責任など、首相にも取りようがないのは明らかだ。事故が起きてしまってからでは遅いのだ。

 九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、そして、伊方原発と、福島とはタイプの違う加圧水型原子炉の再稼働への“流れ”ができつつあるようにもうかがえる。“ひな型”に当てはめるようにして事を急ぐというのであれば、あまりにも危険ではないか。

 原発の立地地域には、それぞれに地理的な特殊性がある。伊方の場合は、それが特に顕著である。

 佐田岬という日本一細長いといわれる半島の付け根のあたりに、伊方原発は位置している。

 事故が起きれば、多くの県民が船で四国の外へ脱出することになる。災害史上前例のない大作戦になるだろう。

 福島のように、自然災害が重なればどうなってしまうのか。

 国は八日と九日に総合防災訓練を実施するという。せめてその結果を見届けてから、知事としての判断を下すべきではなかったか。

 中村知事は記者会見で「(原発は)あるかないかでいえば、代替エネルギーが見つかるまで…」と内心の苦悩をのぞかせた。

 今からでも遅くはない。避難に責任が持てない以上、自らの判断を見直して、その代わり代替エネルギー産業、あるいはその研究機関などを国策として立地地域に誘致できるよう、政府に強く働きかけるべきではないか。

 県民、そして国民の安全が第一ならば。

 

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