大阪府知事選があす告示される。8日告示される大阪市長選とあわせ、22日の投開票に向けたダブル選が幕を開ける。

 両選挙とも橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会と自民党が候補を立てる。自民の候補を共産、民主も支援し、維新と反維新が正面からぶつかる構図だ。

 4年前のダブル選以来、維新と反維新の各党は泥沼の政争を続けてきた。大阪の厳しい現状をよそにした非難合戦はもうたくさんだ。大都市をどう再生していくのか。その道筋が見える建設的な政策論議を望みたい。

 維新は、大阪市の住民投票で5月に否決された大阪都構想を再び公約の柱に据える。

 住民投票の後、自民党が提案した大阪戦略調整会議(大阪会議)が機能不全に陥ったことが理由だ。だが、強硬姿勢で反対派の各党を突き放したのは橋下氏だ。民意に拒まれた都構想をもう一度持ち出す前に、対話で解決を目指す道をもっと模索すべきではなかったか。

 ダブル選を見越したタイミングで維新の党を分裂させ、新党結成に動いた橋下氏の行動や、政界引退を表明しながら選挙戦の前面に出るわかりにくさも、選挙で是非が問われよう。

 一方、反維新の各党は大阪会議を通じて大阪をどう立て直すつもりなのか。

 自民、公明は大阪市の行政区の権限を強める「総合区」の導入も提唱したが、都構想で市を解体しようとした橋下氏への対抗案との色合いが濃く、意義がいま一つはっきりしない。

 省庁の誘致や首都機能の分散といった自民の選挙公約も、スローガン先行の印象が強い。

 改めて、いまの大阪が直面している状況を直視したい。

 大企業は次々と東京に本社を移し、経済の地盤沈下が進む。生活保護の受給者は29万人にのぼり、半数が大阪市に集中する。少子高齢化も著しく、3大都市圏で最も早く人口が減少すると予測されている。

 維新、自民の両陣営はともにリニア中央新幹線の東京―大阪同時開業や北陸新幹線の早期整備を政策の目玉とした。安倍政権に強く働きかけるという。

 ただ、深刻な財政難にある国にすがり、大阪が抱える課題の解決につながるだろうか。

 貧困や教育、災害対策など一つひとつの課題の処方箋(せん)こそ今求められている。各候補は具体的な考えを聞かせてほしい。

 5月の住民投票の投票率は66%に達した。大阪を何とかしたいという思いの表れだろう。ではどうするか。選挙を通じ、有権者も考えてもらいたい。