小保方氏は最後まで特別扱いを要求していた

早稲田大学の博士号は取り消し

11月2日会見した早稲田大学の鎌田薫総長

世間の耳目を集めたSTAP細胞問題の中心人物、小保方晴子氏の博士号が取り消しとなった。2014年10月に早稲田大学は、小保方氏の博士論文に剽窃(ひょうせつ)など複数の不正があるとして博士号の取り消しを決めたが、大学側の教育指導責任をも認め、1年程度のうちに研究倫理教育を受けたうえで論文を訂正、再提出して審査に通れば、博士号の維持を認める、としていた。いわば執行猶予のついた博士号取り消し決定で、2015年10月30日に猶予期間が切れたため、取り消しが執行された。

大学側のさまざまな特例措置

この間、大学側は、2014年11月には指導教員を選出し、論文提出、審査のスケジュールなども小保方氏に伝えたという。大学に通学ができない小保方氏の状況を勘案し、研究倫理教育のためのe-ラーニングの受講環境を整えた。また、指導教員2名は5月以降、3度小保方氏を訪れたほか、メールや電話などで内容の確認や指導を行ったという。

だが、小保方氏から最初の訂正論文が送られてきたのが今年6月。訂正作業が不足している部分などを指摘するコメントをつけて差し戻し、8月に4度目の訂正稿を小保方氏に戻したあと、小保方氏側からは送られてこなかった。

そのため、10月29日に先進理工学研究科の運営委員会で、論文審査ができないことを確認し、翌30日には大学の研究科長会での議論を経て大学執行部によって取り消しが確定した。小保方氏からは期限の延長希望が出ていたとのことだが、「これ以上学位論文のないまま学位を維持することはできない」(鎌田薫・早稲田大学総長)との判断で、延長は受け入れられなかった。

この期に及んで、早稲田大学に期限延長を希望していたという小保方晴子氏(写真は2014年4月、撮影:ヒラオカスタジオ)

この件を報告する早稲田大学の会見は3時間に及んだ。会見の中で大学側がたびたび言及したのは、この問題での大学側の小保方氏への対応は「きわめて特例」であることだ。

博士論文の不正自体は本人の責任であるとしながらも、大学側の教育指導体制の不備を認め、通常であれば「即時取り消し」もありうる状況にもかかわらず、1年間の執行猶予をつけた。

また、今回の「論文再提出・再審査に関わる費用は一切大学側が負担し、今後も小保方氏に対する請求は行うつもりはない」(恩藏直人教授、早稲田大学理事/広報担当)という。

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