大量虐殺兵器・原爆を唯一使用した米国の責任を明確に!『“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する―隠蔽されてきた日米共犯関係の原点』著者

配信日時:2015年11月3日(火) 19時20分
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『“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する――隠蔽されてきた日米共犯関係の原点』の著者、柴田優呼・オタゴ大学助教授(写真左)が講演。原爆を唯一使用したアメリカの責任を明確にする必要があると強調、“被爆体験”を21世紀世界への教訓とすべきだ、と訴えた。
2015年10月29日、『“ヒロシマ・ナガサキ”被爆神話を解体する――隠蔽されてきた日米共犯関係の原点』(作品社刊)の著者、柴田優呼・オタゴ大学助教授が日本記者クラブで講演した。戦後の米国の政治的な意図は、「日本がアメリカと従属的な関係になることだった」と指摘した上で、大量虐殺兵器・原爆を唯一使用したアメリカの責任を明確にする必要があると強調。日本国民は“被爆体験”を21世紀世界への真の教訓とすべきだ、と訴えた。発言要旨は次の通り。

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戦後70年の今日まで続く“ヒロシマ・ナガサキ”についての言説やイメージは、自然に培われたものではない。「原爆投下」の正当化の論理だけでなく、「ヒバクシャ」という表現の仕方も、恐るべき実態をあいまいにしている。米軍占領下の検閲で被爆者が沈黙を強いられる中、世界的ベストセラーとなったジョン・ハーシーの『ヒロシマ』は長期的な被害や放射能の影響は一過性であり小さいと記述しており、決定的な影響を与えた。

どちらも米国が創りだし、日本がこれを踏襲した。米国は、特別にハーシーだけに原爆直後の広島で取材をすることを許し、その書き方にも関与している。米国の政治的な意図は、日本をアメリカに従属する関係にすることだった。現在に至る日本の「永久敗戦」状態の起源と言えるものだ。戦争終結を決定づけたとされる原爆をいかに処理・総括するかは、戦後体制の正当性を支える出発点とも言える。

“ヒロシマ・ナガサキ”は、戦後の世界的な政治的枠組みの中から再検証されなければならない。広島・長崎の原爆について、現代日本人が当然のことと思っている基本認識が、実は「米国起源」なのだ。

原爆「投下」という表現は、米国の政治的倫理的な責任をぼかしている。「原爆を米国が世界で初めて唯一使用した」という表現が妥当である。このままでは日本は永久「敗戦」状態であり、米国永久「勝戦」が続き、日本はこの米永久「勝戦」を支えている。

米国のトルーマン大統領声明は、原爆を宇宙や太陽という普遍的で絶対的な存在と関連づけ、その使用も必然的で正しい行為のようなレトリック(修辞)となっている。反核・平和のシンボルとされてきた「ヒロシマ・ナガサキ」はカタカナで表記され一般化しているが、米国の原爆攻撃による大量虐殺イメージを薄める政治的な狙いによるものだ。

広島の「安らかに眠ってください。あやまちは繰り返しませんから」という慰霊碑の碑文に象徴されるように、原爆攻撃・被爆については誰の責任なのかがあいまいにされた。責任があいまいであるということは、本当の意味で反省できないし、繰り返さないための教訓とすることもできない。したがって、本当の意味で、核兵器に対する人類にとっての教訓とはなっていない。“被爆体験”を21世紀世界への真の教訓とすべきだ。史上最悪の兵器・原爆を唯一使用したアメリカの責任を明確にすべきである。

今後は、(1)多様で長期的な被爆体験や放射能の影響、トラウマとなった心の傷などをもっと前面に出すこと、(2)人間を大量虐殺する原爆のイメージを繰り返し伝えること、(3)米国の倫理的な責任を糺(ただ)すこと、(4)アジアの非核化に向け努力すること―などが、われわれ唯一の被爆国民の責務である。(八牧浩行)
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