早稲田大学は11月2日、小保方晴子氏に授与した博士学位について、猶予期間が満了し学位の取り消しが確定したことを受けて、同大学における博士学位論文の取り扱いに関する記者会見を開催した。
今回の取り消し理由について同大学は、「一定の猶予期間に行われることを想定していた論文訂正と再度の論文指導について、研究倫理教育および不適切な引用などの論文訂正は終了したと認められるが、結果に至る科学的根拠の記述、あるいは記述の論理性など先進理工学研究科による指導に応えて、なされるべき訂正作業が終了しないまま、猶予期間が満了したため」であるとしている。
同大学は2014年10月6日付で「本大学において博士、修士または専門職学位を授与された者につき、不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したときは、総長は、当該研究科運営委員会委員会および研究科長会の議を経て、既に授与した学位を取り消し、学位記を返還させ、かつ、その旨を公表するものとする」という同学学位規則23条に則って小保方氏に授与された学位を取り消した。
一方で、学位を授与した先進理工学研究科側にも指導・審査過程に重大な不備、欠陥があったとして、2014年11月に新たに小保方氏の指導教員を選出。一定の猶予期間を設け、再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、博士論文を訂正させ、これが適切に履行された場合は学位を維持できるとしていた。
小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペーストや写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。
その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。また、再指導については、「メール、電話などで本人の体調を考慮しながら十分な指導を行った。また、2名の教員が3度直接訪問し面談を実施するなど、できることは十分にやってきた」としている。なお、指導教員と審査員は学位論文審査時からすべて入れ替えたという。
早稲田大学総長 鎌田薫氏は今回の決定について、「最大1年間でこの問題を解決するというのは、社会に対するお約束だと思っていた。また、学位のない博士論文が1年存在するというのは異常。あと1カ月、2カ月というならわかるが、延期の希望について具体的な日程が示されていない。いつになるかわからないまま放置するわけにはいかない」と説明した。
また、この問題を受けて同大学は、小保方氏以外の博士学位論文について2014年3月および10月にすべての研究科に対して不適切な博士学位論文の有無に関する調査を指示。同大学図書館が博士学位論文をリポジトリに掲載するサービスを本格的に開始した2006年度から2014年9月までに学位が授与された論文について調査を行うこととした。また、これ以後に学位が授与された論文についてもリポジトリ掲載前に確認を行っている。
現時点では2006年度以降に学位が授与された約2700本の論文についての調査はほぼ完了しており、その結果、学位取り消しの対象となる「不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明した」論文は発見されていないとしている。
しかしながら、研究の本質に関わらない部分において、引用不備などの訂正を要する博士学位論文が89本発見され、これらの論文のうち48本についてはすでに訂正作業が終了し、研究科運営委員会で訂正確認がなされている。訂正された論文は同大学のリポジトリで閲覧可能。国会図書館には、訂正報告書が納入されるという。
同大学では再発防止策として2014年10月6日に、「課程博士における博士学位および博士学位論文の質向上のためのガイドライン」を策定し、新たな研究指導および博士学位論文審査を実施している。鎌田総長は「学問の府として不適切な論文を放置しないということで、これまではいわば例外的な措置をとってきたが、残念ながら本来なされるべき訂正作業が終了しなかったため今回の決定に至った。今後は基本的な考え方に則り、博士課程における論文審査をより一層改善させることによって本学の教育の質の向上・信頼回復に努めていく所存である」とコメントした。
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