韓国では職場や芸能界で「性接待」が日常茶飯事とまでいわれる。その背景には韓国社会の女性差別がある。韓国社会で女性差別がもっとも顕著な例は、職場、そして芸能界に蔓延し続ける「性接待」だろう。
職場での女性差別の例はキリがない。某企業では、女性社員が毎晩のように酒の席での接待を強要され、その流れで体の関係を持たされるケースも少なくないという。
芸能界での性接待問題はいまだに深刻だ。記憶に新しいのは韓国の女優チャン・ジャヨンが、番組プロデューサーや企業の重役に対しての性接待に耐え切れず、2009年3月に自殺したという事件。悲しいかな、このようなことは日常茶飯事で、社会に蔓延するものとして受け止められている。
2012年、韓国の歌番組『スーパーディーバ』に登場したイ・ウンジさんの番組内での告白も、大きな衝撃とともに受け止められた。
「14年前、無名の歌手として芸能事務所と専属契約を結びましたが、関係者が性接待を要求してきた。これを拒否したら、契約破棄と3億ウォン(3000万円)の損害賠償を請求されるなど、とても辛い時期を過ごしてきた」(イ・ウンジさん)
昨年3月には、芸能界デビューさせるという名目で、性接待を強要した某芸能事務所が摘発された。同事務所は「モデル専門企画会社」を看板に、約4か月間、インターネット上にアルバイト募集の広告を掲示。保証金としてお金を集め、約1800万円をだましとった。
さらに同事務所は、専属契約の意思がある女性に対して、借金を肩代わりし、整形手術費の全額を支払う代わりに、性的関係を結ぶように恐喝した。被害者はすべて20代で、性接待の被害を受けた女性は23人にも及んだ。
世界経済フォーラム(WEF)によれば、2014年現在、男女平等指数で、韓国は142か国中117位と低い(ちなみに日本は104位)。同調査では、「イスラム国」の拠点となっているシリアが139位。海外から見た韓国における女性の地位は、テロリストが跋扈する国家と大きな差がない。
そうした現状について、米カンザス大学社会学科のキム・チャンファン教授は自身のコラムで「韓国の男女平等指数が低い理由は、労働市場における女性の地位が低いからです。これまで韓国の高い教育熱が経済発展に貢献できたのは、人的資本投資を成功裏に進めてきた結果。しかし、労働市場から女性を排除すれば、これまで投資した資本は浪費したことになる」と警告している(『週刊東亜』2015年3月9日付)。
韓国の“男尊女卑社会”が相も変わらず、職場などでの「性接待」が当たり前となっている現状では、熱心な教育投資など水泡に帰すばかりだという。
建前では、韓国社会全体が「女性差別を排除しなければならない」とわかってはいる。女性の朴槿恵氏が現職大統領であることも、韓国が変わりつつある証拠だろう。ただ、根っこから女性差別を取り除くには、まだまだ時間がかかりそうだ。
文/張赫(フリーライター)
※SAPIO2015年11月号
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