2015-11-03
■お鍋食べたい秋 〜2015年秋に見た映画〜

先月はIFFJ記事に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』記事やら、フィルマガにたくさん書きました。要チェック!→ https://filmaga.filmarks.com/writers/17
そんな秋にIFFJ以外で見た映画。
『岸辺の旅』
今年のベスト級。非ホラーの幽霊譚、だと大林宣彦の『異人たちとの夏』があるけど、コッチは死人が意識的。死を意識していない人の世界と、意識してた世界がパラレルに存在していて、してなかった人がしてしまうと2つの世界が合体してしまう瞬間がゾクゾク来る。深津ちゃんはカカトがぺったりした靴がお似合いね。
『ハッピーボイス・キラー』
シンディ・シャーマンの『オフィス・キラー』を思わせるサイコ・キラーもの。飼っている犬や猫、さらに切り落とした女の子の生首がライアン・レイノルズの心の声を代弁して喋り、主観映像と客観映像が全然違う、というアイデアがそれほど上手くいってない感じ。ジェマ・アタートンの肉感は素晴らしいです。もっちもち。
『ファンタスティック・フォー』
後半まで実写『AKIRA』っぽい感じで、終盤に転調して『ウルトラ・ファイト』になる。そもそも「4」って書いてある青い揃いのボディスーツきた4人組のアッケラカンとしたスーパーヒーローモノなんか実写にしたら事故物件なの解りきってるのだが。身体がビロビロのびる奴とかいるし。アメコミ・ヒーロー映画は題材に正面から向き合って実写化する必要があるんだと思う。ジェシカ・アルバが下着姿でいや〜んとかさ。
『ジョン・ウィック』
『イコライザー』『96時間』に続く、なめてかかってたら実は強かった映画。犬がかわいくてかわいくて。パタパタ走って、子犬なのにおトイレも出来るあたりもかわいくてかわいくて。奥さん死んだ夜に「私がいなくなったアナタには愛を傾ける何かが必要」って手紙と共にかわいいかわいい犬が届いたら泣くよね。犬〜!
『ピッチ・パーフェクト2』
エリザベス・バンクス姐さん監督作の続編。コメディに主舵いっぱいに切って、ナンセンス・ギャグとアカペラを詰め込んだらストーリーが破たんしかけるほどの高密度になった感じ。『裸の銃を持つ男』くらい密度が高い。すごい。
『マジック・マイクXXL』
ソダーバーグが監督した前作は、男性ストリッパーに向けられる女性たちのあけすけな性の持つ“陽”と、下っ端ショー・ビジネスに渦巻くドラッグ絡みの“陰”の部分が強いコントラストであったけど、今回は“陽”のみ。フロリダ、タンパからマイアミまで(東京〜青森間くらい?)車で移動しながら、土地々々の女性をストリップで癒しながら旅をするという話。イヤなことが一切起こらない楽しい映画。
『ヴィジット』
初めて会う祖父母の家に一週間のお泊りをした孫のお姉ちゃんと弟2人が、夜な夜な爺さん婆さんの奇行に面食らっていたら、思わぬ事実が発覚するという話。低予算でのびのびと撮ってるのが手に取るように伝わってくる、イヤげギャグ満載のシャマラン映画。鬼ごっこに突如本気で参戦してくる婆さんの、怖いのと笑えるのとが一緒に来る感じとかサイコー!
『マルガリータで乾杯を!』
「インドで女性」で「障碍」があって「真っ白な肌」で性的に「バイ」というトコトン「差別される側」にいる主人公が、いろいろな関係性を切って自立していくというハードな話。オリジナルのタイトル『マルガリータをストローで』が、映画を見ると凄まじく重い決断だというのが解る。
『If Only』
東京国際映画祭にて。女優との同棲に後ろ髪惹かれながらも終止符をうった男が想いを断ち切るために出会い系でひっかけた女の子と旅に出る。お互い惹かれ合う部分もありつつ、どうしても前の彼女が忘れられずにグズグズしている。という、インディー系によくあるしみったれた男映画。監督の実体験を脚本化したそうで、まぁ一杯飲みに行こうや!
『OK Darling』
東京国際映画祭にて。『ディル・セ 心から…』『ボンベイ』のマニラトナム監督の新作。両親の離婚で心を痛めたヒロインと、結婚制度を否定し奔放に生きる男のメロドラマ。互いに惹かれあっているし、そのことをお互いに認めているのに結婚には踏み出せずにいるのが2人の関係性の障害になっているという、もう観念でしかない部分を視覚化して語るマニラトナム真骨頂という感じ。イイことがあると雨がザーザー降るところもマニ流。
『トランスポーター:イグニション』
唇の薄いイギリスイケメンが活躍する、だいたい55点のアクション映画。だが、日本版オリジナルエンディング曲がすごかった! エグザイル事務所の歌手らしいんだけど、「♪トランスポ〜タ〜! イグニション!イグニション!」って、今さら映画のタイトル連呼した曲なのには腹をかかえて笑った。だせぇwww
『江南ブルース』
孤児の義兄弟がヤクザ世界でのし上がっていくも、権力者に搾取されてしまう。という韓国現代ヤクザ映画。兄貴分の情婦と安宿で逢瀬をする場面で2段のデカイお重に海苔巻きびっしり入ってて「それ、全部食べちゃってね」って情婦に出ていかれた後、お重ひっくりかえす場面。自分の境遇に憤ってるのか、大量の海苔巻きを前に「もう食えるか!」ってキレたのかダブルミーニングぽくて笑った。
『マイ・インターン』
評判が良かったので見てみた。 ……これ、オタクが「セックスの対象じゃなくて幼女の可愛らしさが好きなので“萌え”だ!」って言ってるのの、線対照って感じ。幼女萌えの場合には、罪悪感でセックス・ファンタジーの対象にできないから「萌え」って言っている部分があるんだろうけど、その部分が一切ないところが特徴。「爺さんセックスはヨソで済ませてから来い!」って感じ。
清潔でアメリカン・トラディショナルなスーツを着こなして、自分のためなら多少危険なことも顧みず、何を言っても、何をやってもニコヤカに受け入れてくれる、インターン(だからタダ同然で雇ってあげているというスタンス)の老人というファンタジー。
この映画ではデ・ニーロが「お爺ちゃん」としてファンタジーの受け皿になっている。当然「何でも解決してくれて、何をしても受け入れてくれて、おいしいご飯を作って待っててくれるお婆ちゃん」というファンタジーもあると思う。どっかに。男の場合には「お婆ちゃん」の替わりに「すごい美人でボインでオレにベタ惚れ」という属性をくっつけがちなんだけど。
もちろん人のファンタジー(幼女萌えも老人萌えも)を否定するつもりは無いけど、自分のファンタジーでは無いから受け付けなかったなぁ。