以前は1000円以下の国産ウイスキーを比べましたが、今回は1000円台前半、1000~1500円の範囲となります。

2000円までとなると、特にニッカが最もラインナップが豊富なことと、グレードの違いに幅があるため、1500円を区切りにしました。
1500円までは比較的スタンダード、その上になるとモルトウイスキーなどが出てくる本格派になってきます。

ラインナップがメーカーごとに多いため、メーカー単位で比べていきます。
なお、ラインナップに漏れがありますが、個人的に試したものを並べていますのでご了承ください(後々試したときには追記する場合があります)。

<サントリー> 
サントリーホワイト
(700ml、40度、1100円)
white2サントリーの第1号ウイスキーで、酒税法改正前は1級ウイスキーとして売られていました。
今でこそ角瓶やトリス、オールドがメインで、酒屋さんでもなかなかお目にかかれない銘柄になりましたが、昭和の時代においてはアメリカのミュージシャンを起用しておしゃれなイメージで売っていました。

実際に飲んでみると、確かにアルコールの刺激が強めで安さらしい味わいですが、角瓶よりもシェリー樽原酒ならではの華やかな香りが強めで、ロックでも十分飲めるようにブレンドされています。
ある意味オールドの弟分と言ってもいいでしょう。

<個人的評価>(A~E)
香り:C サントリーらしく、ピート香は控えめ。シェリー樽由来の華やかな香りが全面にくる。
味わい:B オールドに比べるとアルコールの刺激が強く、少々安っぽさを感じる。 
総評:B 角瓶を選ぶなら、こちらをおすすめ。



角瓶
(700ml、40度、1100円)
kakubin01サントリーが白札、赤札での失敗を教訓に、日本人向けに合う味を追求したウイスキーで、今はハイボールで飲むことをで大々的に宣伝している看板銘柄の一つです。

実際に飲んでみると、スモーキーな香りは抑えられているものの、わずかにシェリー樽原酒のようなレーズン、青りんごのような香りが感じられるくらいで、ウイスキーらしい香りに乏しく、ただアルコールの刺激だけが感じられる程度です。
それでもトリスやレッドに比べればマシかな、というくらいです。

個人的には、兄弟分である白角や黒角よりも印象が薄く、味わうためのウイスキーではないなぁ、という印象です。
サントリーがハイボールにすることを勧めていますが、実際にそうで、ロックで飲むウイスキーではない印象です。
コスパで言うと、今回のラインナップで言えば最低です。

<個人的評価>(A~E)
香り D:特段にかぐわしさを感じられない。
味わい D:アルコールの辛みが主体で、それ以外のウイスキーらしさが薄い。
総評 D: これで満足する人は、他社のウイスキーを飲むことをお勧めします。ウイスキー好きとは言えません。 


白角
(700ml、40度、1100円)
shirokaku1980年代後半に発売された兄弟分で、角瓶に比べて淡麗辛口、和食と一緒に飲んでも邪魔をしないことを売りにしています。

ロックで飲んでみると、ピート香はサントリーの中でもさらに薄いものの、アルコール由来の刺激も抑えめで、青リンゴのようなフレッシュなフルーティ感がある香りがやってきます。このあたりは白州モルト使っていることが窺えます。
味はビターな感じが強く、甘い印象は少ないです。 

黄角でも淡麗な印象があった私は、白角はもっと薄くてつまらないものになると思いましたが、意外にもスペシャルリザーブに近い白州モルト系の香りと味を持った印象を持ちました。 
淡麗辛口の名は伊達ではなく、甘みは抑えられて さわやかな印象に仕上げられています。
水割りやハイボールにして食中酒にするのもいいですが、ストレートやロックでやるのにも対応できる味になっています。

<個人的評価>
・香り B:さわやかな青リンゴのようなフレッシュなフルーティ感。華やかさは少ない。
・味わい C:ピート香、アルコールの刺激は少ないが、ビターな味わいが強い。
・総評 B:和食に合うウイスキーとしてふさわしいが、単体で飲むにも適している。

黒角(<黒43°>
(700ml、43度、1100円)
kurokakuアルコール度数が43度で角瓶よりも高めになっています。
原酒もパンチョン樽に貯蔵した物を主体にしているなど、角瓶とは味を変えています。

実際に飲んでみると、まず高めのアルコールによる刺激と比較的どっしりとした味わいが広がります。
香りはチョコレートに似たものとモルト由来のものが混ざった形になっています。時折オールドのような香りにもなってきます。

レギュラーに比べるとウイスキーらしいボディがあり、飲み応えがあります。
私はロックで飲むことが多いですが、この黒角ならロックでもいけます。
レギュラーではアルコールの刺激だけが強調された形になり、ウイスキーと言うよりも甲類焼酎を飲んでいる気になります。 

<個人的評価>(A~E)
香り:C レギュラーに比べて香りが強め。
味わい:B しっかりしたボディとウイスキーらしい味があり、レギュラーよりもストレート、ロックに向いている。
総評:B 家飲み用に気楽にやれる味と価格。レギュラーよりもガツンと来るものがほしい人向け。 

※サントリーオールドは、お店によっては1000円台前半で買えますが、都合により別記事で紹介します。

<ニッカ> 
モルトクラブ
(700mL 40度 1300円)

mcモルトクラブはモルト原酒とカフェモルトをブレンドしたウイスキーです。
カフェモルトとは、ニッカが所有するカフェ式蒸留器を使ってモルトのもろみを蒸留して作ったウイスキーで、分類としてはグレーンウイスキーになります。
しかし、一般で使われる複式蒸留器に比べてカフェ式では純度の低いエタノールしか得られない代わりに、原料の香りなどを残すメリットを持っています。

ロックで飲んでみると、アルコールの刺激が強いものの、その後はナシや青リンゴのさわやかな香りが主体になっています。
味わいも酸味が強めですが後からカラメルのような甘みとナッツのような香ばしさが来ます。

加水されていくごとにピートから来るスモーキーな香りが漂い始めます。奥からはバニラの香りもしてきます。
さらには濃いめの水割りやハイボールにしてもスイスイ飲めるスムーズさが出てくるので、いわゆるウイスキーらしさは薄いものの、角瓶以上に汎用性の高い香りと味を持ったウイスキーに感じました。

同等の価格にあるブラックニッカ リッチブレンドが王道の味だとすれば、モルトクラブはニッカの技術を堪能できる銘柄といえるかもしれません。

<個人的評価> 
・香り B:ウイスキーらしさは少ないものの、さわやかなフルーツのような香りを堪能できる。
・味わい C:ストレートやロックでは酸味中心、加水されると甘みが増してくる。
・総評 B:カフェモルトの味を手軽に楽しむには十分。

オールモルト
(700mL 40度 1400円)

allMaltモルトクラブ同様に、モルト原酒とカフェモルトをブレンドしたウイスキーですが、こちらの方がモルト原酒が多めになっています。

1990年に発売して以降「女房を酔わせてどうするつもり?」という台詞(中野良子、田中美佐子、石田ゆり子)が一世を風靡しました。

実際に飲んでみると、アルコール由来の刺激がまず強くやってきます。
ストレートやロックの飲み始めはそれが強くて香りがみじんも感じられませんが、トゥワイスアップやある程度氷が解けた辺りから、ニッカご自慢の余市モルトのバニラ香とスモーキーフレーバー、宮城峡モルトの華やかな香りがやってきます。

ところが水割りにするとその香りが一気に薄れ、ブラックニッカよりも劣ったイメージになってしまいます。水割りやハイボールにするにしても、割る量は少なめにした方がいい感じです。

意外にもカフェモルトの分量が多いモルトクラブの方が汎用性の高さを感じました。

<個人的評価>(A~E)
香り C: ロックかトゥワイスアップでないと香りが開かない。ストレートだとアルコール臭だけ。
味わい C: 全体的に余市、宮城峡モルトの味があるので、ニッカとして及第点。
総評 D: モルトクラブに比べて中途半端な印象。濃いめで飲む方がおいしい。

ブラックニッカ リッチブレンド
(700mL 40度 1300円)

bnrbブラックニッカは4つのボトルがありますが、その中でも最も新しいのがリッチブレンドです。

実際に飲んでみると、シェリー樽原酒ならではのレーズンを思わせる華やかな香りが前面にやってきて、スモーキーさは抑えた物になっています。味わいも比較的甘さを出した物になっています。
価格に対して、華やかな香りを売りにしたブレンドといえます。

ウイスキー初心者の若者をターゲットにしていると思われますが、ニッカにしてはチャラい印象があって、骨太いアイデンティティがすきな年配の方には物足りないかもしれません。
同じようなことが、現在のスーパーニッカのブレンドにもいえるでしょう。

<個人的評価>(A~E)
香り B: シェリー樽原酒の華やかな香りを堪能できる。
味わい D: 全体的に甘い。ニッカらしさが感じにくい。
総評 B: 初心者がウイスキーの香りの良さを堪能するにはいい銘柄。ただし軽い。 


ブラックニッカスペシャル 
(700mL 42度 1400円)

bnsp1965年に発売された元祖ブラックニッカを発展させた銘柄で、黒いボトルとローリー卿の肖像画が大きく描かれているのが特徴的なボトルです。 

1級ウイスキーとして発売し、2級ウイスキーとして販売したハイニッカとともにニッカの人気を引っ張ってきました。

実際に味わってみると、最初は当たり障りのなくスモーキーな香りも抑え気味ですが、シェリー樽原酒から来るであろう香りはリッチブレンドよりも濃厚。
しかし後味にスパイシーな刺激が加わって、リッチブレンドよりも癖を持った味になっています。
味わいは甘みを持ちつつもアルコール由来の辛みもあり、とても飲みごたえのあるボディになっています。

リッチブレンドに比べるとウイスキーらしい癖が強いものの、飲みやすい部類に入るでしょう。初心者がウイスキーとはどんな味かを知りたいのであれば、このブラックニッカスペシャルの味は十分な基準点になるでしょう。 

<個人的評価>(A~E)
香り B: シェリー樽原酒からの華やかな香りと、程よい余市モルトならではのスモーキーな香りが絶妙に絡み合う。
味わい A:他のブラックニッカと比べてもボディが重厚で飲みごたえがあります。アルコール由来の辛みがあるものの、濃い甘みもあとからやってくる。
総評 A:1000円台前半としてはしっかりとした味わいがあり、リッチブレンドよりお勧め。ノンエイジのブレンデッドスコッチにも対抗できるほどの個性。

ブラックニッカ8年
(700mL 40度 1400円)

blackNikka8ブラックニッカの中で最も熟成された原酒を使っているのがこの8年です。

実際にロックで飲んでみると、リッチブレンドのようなシェリー樽由来の華やかな香りが引き立ちますが、その後にリッチブレンドにはなかった強いピート香とアルコールの刺激がやってきます。
味わいも、余市由来のバニラやナッツのような甘い味が支配的です。

スペシャルに比べると少々軽めの印象で、スーパーニッカに通じた味になっています。
スペシャルは癖が強い、かといってリッチブレンドでは物足りないという人向けという感じです。
ブラックニッカ兄弟で、かぶらないような味の違いがあります。

<個人的評価>(A~E)
香り:B シェリー樽由来の香りが引き立ち、それでいながらピート香もしっかり。ウイスキーらしい香り。
味わい:C バニラやナッツの甘い味。熟成されていることで、アルコール由来の辛みは抑えめ。
総評:B 個人的にはスペシャルに次に飲み応えがあるように思える。




<キリン> 
ロバートブラウン スペシャルブレンド 
(700mL 40度 1400円)
 
rbsキリンが発売するロバートブラウンには2種類があり、1970年代に発売されたオリジナルと、1998年に発売されたスペシャルブレンドがあります。
後者の方が上位にあるようなイメージですが、価格ではスペシャルブレンドの方が安くなっています。

ロックで飲んでみると、まずやってくるのはバーボンのようなエステリーな香り、しかしバーボンや同社の富士山麓、ボストンクラブに比べるとかなり控えめ。あとから青リンゴのようなさわやかな香りとナッツのような樽由来の香りがついてきます。

味はアルコールの刺激が強く、多少酸味があるかどうか、という程度。 メーカーでは甘いと標榜していますが、長期熟成のウイスキーを飲んだ舌からすると、甘さはそれほど感じられません。
ボディはかなり軽い印象で、サラッとしています。個人的にはガツンと来る力強いウイスキーが好きなので、物足りなく感じます。 

氷が溶けて加水されると、さっぱりした印象はますます強くなる感じで、水割りやハイボールでクイクイ飲むようなウイスキーに思えました。
ただし、1000円ほどで買える富士山麓と比べてもあまりさは感じにくく、コスパでは負けている印象です。

<個人的評価> 
・香り D:エステル香は控えめ。ただ、青リンゴやナッツの香りも少なく、心に響かない。
・味わい C:アルコールからの辛みと多少の酸味が主体。それ以外はさほどに感じられない。
・総評 D:割って飲んでナンボ。取り立てて特徴的な部分が薄く、はまる気がしない。 
<まとめ>
 全部で10銘柄を紹介しましたが、価格を抑えつつもなるべく本格的なウイスキーとして追求しているものもあれば、割りきってスイスイ飲めて安っぽさを感じにくくした物もあり、バラエティに富んだラインナップになっています。

味わいにおいても、サントリー、ニッカ、キリンとそれぞれの違いを見せながらも、ニッカは新しい製品でサントリーファンを取り込もうという銘柄も存在しつつあります。
ハイボールから始まったウイスキーブームが、ロック、ストレートで飲む本格層を増やすこととなれば、この価格帯にも新たなラインナップが生まれるかもしれません。

 <個人的順位>
1位:ブラックニッカ スペシャル
2位:ブラックニッカ リッチブレンド
3位:黒角